自宅でできる寝たきり予防について教えて!
寝たきりになると、身体にどのような影響が生じるのでしょうか。また、どのようにして起きるのかも気になります。寝たきりによる悪影響や原因、ならないようにするための予防方法について、「理学療法士」の平井さんに質問してきました。
監修理学療法士:
平井 一真(理学療法士)
理学療法士として総合病院や訪問看護ステーションでリハビリテーション業務に携わった後、資格を活かした医療や介護系のWebライターとして活動。根拠に基づいた記事執筆を得意としており、様々なWebコンテンツにて執筆実績多数。理学療法士。福祉住環境コーディネーター2級、食生活アドバイザー3級。
寝たきりは身体に様々な悪影響をもたらす
編集部
寝たきりとは、どのような状態なのでしょうか?
平井さん
現在のところ、寝たきりに明確な定義はありませんが、日中のほとんどをベッドや布団の上で過ごしている状態のことを指すことが多いですね。寝たきりかどうかを判断する指標として、厚生労働省が平成3年に公表した「障害高齢者の日常生活自立度」という指標があります。この指標によると、「屋内での生活に介助が必要で、日中の生活の主体がベッド上であること」を寝たきりとしています。
編集部
なぜ、寝たきりになってしまうのでしょうか?
平井さん
寝たきりになる原因は、大きくわけると「身体的な理由」と「精神的な理由」の2つです。身体的な理由とは、病気やケガなどで長期間の入院や安静を余儀なくされることにより、身体機能が低下することです。もう一方、精神的な理由は、加齢に伴い活動意欲や認知機能が低下して、活動量が乏しくなることが挙げられます。
編集部
寝たきりになると、身体にどのような影響がありますか?
平井さん
まず、1日の活動量が低下するため、全身の筋肉が衰えていきます。さらに、活動量が乏しくなることで、骨への刺激が少なくなって骨粗しょう症になったり、血液循環が悪くなって内臓の働きが低下したりすることが考えられます。また、1日中ベッドの上にいるため、外からの刺激が少なくなり、うつ状態や認知症が進行してしまうケースも考えられます。
寝たきり予防にはスクワットがおすすめ
編集部
寝たきりにならないようにするためには、どうすればいいのでしょうか?
平井さん
寝たきり対策には、日頃の活動量を維持することが大切です。病気やケガをしないように、バランスのとれた食生活や適度な運動など、健康的な生活を心がけるといいでしょう。また、高齢者は転倒による骨折が、寝たきりのきっかけとなるケースがあります。転倒による骨折を予防するためには、筋力トレーニングや骨を丈夫にする「ビタミンD」を含んだ食品を摂取することも大切です。
編集部
寝たきりの予防には、どんな運動が効果的ですか?
平井さん
大前提として、全身の筋力を鍛えることが重要ですが、特に下半身の筋力を鍛える運動がおすすめです。下半身の筋力が低下すると、移動時の疲れを感じやすくなったり、バランスを崩したときに身体を支えられずに転倒リスクが高くなったりします。そのため、日常的に下半身の筋力トレーニングをおこなって、活動量やバランス能力を維持・向上させるといいでしょう。
編集部
具体的に、どのようなトレーニングをするのがいいのでしょうか?
平井さん
寝たきり予防におすすめの運動は「スクワット」です。スクワットは、お尻や太ももなどの大きな筋肉を使うため、効率的に下半身の筋力を鍛えられます。また、スクワット以外にもバランス能力を高めるために、「片足立ち」も効果的です。ただし、トレーニングの際には、転倒に注意しておこなうようにしてください。
食事や人との関わりも大切
編集部
運動以外で、寝たきりの予防法はありますか?
平井さん
身体的な機能を維持・向上させる運動以外だと、精神面を活性化させて活動性を高めることも大切です。精神面が落ち込んでしまうと、うつ状態や活動意欲の低下が生じ、家にこもりがちになってしまいます。また、運動する意欲も湧かないため、運動をしようと思ってもなかなか行動に移せなくなってしまうでしょう。
編集部
精神面のケアをするには、どうすればいいのでしょうか?
平井さん
過去におこなわれた研究によると、地域のコミュニティに参加している人の方がコミュニティに参加していない人に比べて、健康が維持され、要介護状態になりにくいという報告がされています。つまり、活動量や他人との関わりを増やすことが精神的に好影響を及ぼすと言えるでしょう。
編集部
食事面で意識することはありますか?
平井さん
食事は、積極的に「タンパク質」を摂取するよう心がけましょう。せっかく運動しても、筋肉の材料となるタンパク質が含まれた食事をとっていなければ、むしろ逆効果です。タンパク質が豊富に含まれている肉や魚、豆類、乳製品、卵などを食べることをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
平井さん
寝たきりになってしまうと、筋肉だけではなく骨や内臓、さらには精神面にも悪影響が生じます。寝たきりによる身体への害を避けるためにも、日頃から健康的な生活を心がけて、病気やケガを予防することが大切です。また、今回ご紹介した筋力トレーニングや地域コミュニティへの参加などを積極的におこなって、寝たきりを予防していきましょう。
編集部まとめ
寝たきりとは、1日のほとんどをベッドの上で過ごしている状態で、身体に様々な悪影響を及ぼす原因となることがわかりました。病気やケガなどが原因で寝たきりになってしまうことは、何となくイメージできていましたが、精神面の影響でも寝たきりになる可能性があるのは驚きですね。身体面と精神面、両面から健康を保てるような生活をするよう心がけましょう。
倦怠感がある、情緒不安定、喉が詰まる感じの症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。