毒にも薬にもなる!? 「ナチュラルブルーライト」って一体なに?
スマホやPCなどのディスプレイから発せられるブルーライトについては、一般的な周知が進んできたようです。しかし、「かわばた眼科」の川端先生によると、「ナチュラルブルーライト」なる青い光もあるのだとか。一体どこから発せられ、どのような影響が考えられる光なのでしょう。詳しい話を伺いました。
監修医師:
川端 秀仁(かわばた眼科 院長)
千葉大学医学部卒業。千葉大学大学院医学研究院修了。千葉県千葉市の山王病院にて眼科部長に就任。2002年、千葉県浦安市に「かわばた眼科」開院。大阪大学理学部数学科・早稲田大学理工学部大学院(現・早稲田大学理工学術院)の就学・指導経験を生かし、光学の観点を診療に取り入れている。医学博士。日本眼科学会認定眼科専門医。
可視光の中で最も高エネルギーな光
編集部
スマホの使い方に関して、ブルーライトの悪影響が話題になっていますよね?
川端先生
PCやスマホの画面から放出される光は、波長にすると440~460nm(ナノメートル)前後で、これは「デジタルブルーライト」と呼ばれています。他方、青い光は太陽光などの自然な光にも含まれ、対比の意味から「ナチュラルブルーライト」と呼ぶことがあります。その波長は、400~500nm前後となっています。
編集部
「デジタルブルーライト」だけが、目への弊害を生んでいるのですか?
川端先生
そうではありません。「ナチュラルブルーライト」も網膜へ悪影響を及ぼす可能性があります。青い光は波長が短く、もともと高いエネルギーをもっているのです。つまり、網膜の組織障害を起こす可能性が、それだけ高いということです。
編集部
たしかに、「太陽を直視するな」と言いますよね?
川端先生
それは別問題です。太陽光などの強い光を長時間直視したら、誰でも失明しかねません。太陽光は、デジタル機器から発せられる光と比較にならないくらい強いエネルギーをもっています。
編集部
紫外線も含め、太陽が怖くなってきました。
川端先生
しかし、太陽光には、ヒトの自然な生活リズムを整えてくれる重要な役割があります。網膜色素変性症などの視細胞が萎縮し、光覚を失った人でも、強い光を見た時の瞳の収縮運動は残っており、正常な生活リズムを保っている場合があります。最近発見された480nm前後の青色光のみに反応する「第3の光受容体」が、正常な生活リズムを司っていると考えられています。例えるなら、「光を利用した自然の目覚まし」が、私たちに備わっているのかもしれませんね。
太陽光そのものの功罪を把握しておく
編集部
青い光の特徴はわかりました。太陽光全般に広げるとどうでしょう?
川端先生
太陽光を浴びることで得られる代表的なメリットとしては、ビタミンDの生成です。また、すっきりとした目覚めに関与し、自然な生活リズムを維持してくれます。間接的な部分まで広げると、食物を育ててくれるなど、計り知れない恩恵が考えられます。
編集部
今回は、話題をヒトの目に絞りましょう。
川端先生
慶應義塾大学医学部の研究によると、太陽光に含まれる「バイオレットライト」に、近視の進行を抑える働きがあるそうです。屋外で遊ぶ子どもと室内で遊ぶ子どもの比較調査から得られた結果です。ただし、屋外で遊ぶ子どもほど「遠くを見る」ので、「バイオレットライト」の影響だけで近視を論じることはできません。
編集部
そうした恩恵は、具体的な治療方法や商品化に生かされているのですか?
川端先生
医療機器の認定を目指しているメーカーもあるようですが、「認可された」=「近視がこの世からなくなった」ではありません。効く人と効かない人、効果の大きい人と少ない人との差は、当然にして生じるでしょう。
編集部
他方で太陽光は、網膜への影響といったデメリットもあるのですよね?
川端先生
青い光全般は「加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)」を起こしやすいとされています。可視光のなかで、最もエネルギーが高いからですね。また、目のレンズが濁る「白内障」の原因は紫外線とされています。総じて、過度な日光の浴びすぎが「視力の悪化」を招きかねません。
「目に気持ちいい」は、勘違いしている可能性も
編集部
話が変わりますが、空も青いはずなのに、眺めていると心が癒やされるのは不思議ですね。
川端先生
青い光の与える「心理的な効果」と、そのエネルギーによる「器質的な影響」は、分けて考える必要があるでしょう。たしかに青い光には、「心を落ち着かせる効果がある」とされています。メリットを感じる人もいるでしょう。
編集部
青つながりで、海に出ている漁師さんって、目が悪そうな印象です。
川端先生
それは海や空から届く青い色というより、ズバリ紫外線の影響でしょうね。たしかに、「白内障」と「翼状片(よくじょうへん)」という目の病気は、漁師さんに多発しています。ですから、みなさんがマリンスポーツをする際は、サングラスの着用を推奨します。冬場のゲレンデと同じようなケアをしてください。
編集部
サングラスを選ぶ際は、主に「紫外線カット」の機能を優先するのでしょうか?
川端先生
そうですね。加えて気になるなら、ブルーライトもカットしてくれるサングラスを選ぶといいでしょう。ちなみに青色の反対色(補色)は「黄色」です。黄色のサングラスをかけるだけでも違ってきます。事実、白内障の方の水晶体を取り出すと、黄色く変色していることがあります。ヒトの目は、自然に青い光を補正しているのかもしれません。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
川端先生
米国眼科学会は、「ブルーライトと失明に関連性はない」と、否定的な立場をとっています。ですから、青い光を恐れすぎもせず、かといって無頓着にもせず、適切に対策していきましょう。
編集部まとめ
自然界に含まれる青い光全般を、「ナチュラルブルーライト」と言うそうです。可視光のなかでは「短波長」に分類され、波の数が多い分、高いエネルギーをもっているとのこと。それだけ目に悪い道理ですが、「第3の光受容体」を反応させるなど、生活に深く関わっている光でもあります。安易な二分論に陥ることなく、必要なものは必要なだけ取り入れ、浴びすぎに注意しましょう。
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