「気温や気圧が頭痛に関係する」これってなんで?
監修医師:
高瀬 卓志(医療法人脳神経外科たかせクリニック 院長)
いまだ解明途中で、正式な「病気」ともみなされていない
編集部
台風が近づくにつれ、頭痛を訴える人っていますよね?
高瀬先生
そうした患者さんが実際にいらっしゃるものの、詳しいメカニズムまでは解明されていません。諸説ある中、ひとつだけ言えるとしたら、「内耳に気圧センサーがあるのかもね」という研究がなされていることでしょうか。
編集部
「気圧センサー」ですか?
高瀬先生
研究機関による調査では、気圧の変動にともなって患者さんの自律神経が乱れ、血圧や心拍数の変化を起こしたそうです。そこから「なぜ、頭痛を生じさせたのか」については不明ですが、頭痛を訴える患者さんがいることは確かなようです。同調査の報告によると、片頭痛を訴える人のうち25%〜50%近くの方が、「低気圧と関係している」と回答しています。
編集部
他方の気温変化については、どうなっていますか?
高瀬先生
「交感神経の興奮」と「皮膚の冷感受性」が関与していると考えられています。ですが、やはり頭痛に至る機序については不明確ですね。「片頭痛」の症状は通常、動脈の脈動リズムと合致しています。しかし、リズムを伴わない一般的な「頭痛」も散見されているため、「血圧や心拍数の変化」との因果が結びつきにくいのです。
編集部
気圧や気温変化絡みの症状って、頭痛だけなのでしょうか?
高瀬先生
なんともいえないですね。むくみやリウマチの悪化などを訴える患者さんがいる一方、本当に気圧や気温変化が関係しているのかどうかまでは解明できていません。ですから、起きている症状を緩和する“対症療法”で対応するしかないでしょう。
編集部
「低気圧症候群」や「低気圧不調」という言い方を見かけます。
高瀬先生
医師の間では「天気痛」と言うこともありますが、いずれにしても、診断が付けられるような正式病名ではありません。病名でないということは、固有の治療法が確立されていないということです。したがって、頭痛なら頭痛、リウマチならリウマチに対する治療を進めています。
頭痛薬の適切な服用が、現実的な予防法
編集部
続けて予防法や対処法です。頭痛の市販薬はどうでしょう?
高瀬先生
いわゆる「天気痛」を想定した市販薬が登場していますよね。しかし、患者さんによって効く頭痛薬がさまざまであることを考えると、「万能薬」とは思えません。月に数回服用する範囲で治まればいいのですが、常用するようになると、むしろ薬物乱用頭痛になりかねません。医療機関で処方するお薬も含めて、「用法・用量の厳守」が基本です。
編集部
天候由来の頭痛を予測するアプリもあるようですが?
高瀬先生
当院の患者さんでも使っている方がいらっしゃいます。予防の主な目的は“注意喚起”でしょうから、ある程度の予測ができれば、適切なお薬の服用タイミングを把握できます。また、予定していた飲み会を延期しようとか、そもそもの台風被害を回避しようとか、副次的な運用も期待できますよね。
編集部
「耳マッサージ」が効くといううわさも聞きます。
高瀬先生
お薬と違って医療行為ではないので、評価のしようがないですね。端的に言えば「その人次第」で、効く方もいれば、効かない方もいらっしゃるでしょう。否定するつもりはありませんが、推奨もいたしません。
編集部
ほか、予防法や対処法がありましたら教えてください。
高瀬先生
頭痛全般にいえることですが、規則正しい生活と“7時間”を目安とした十分な睡眠が大切です。とくに片頭痛の場合、「寝不足でも、寝過ぎても起きる」ことが判明しています。休日などに“寝だめ”して頭痛を誘発する方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
頭痛の原因を多角的に深掘りしてみる
編集部
天候由来の頭痛について、クリニックへ相談してもいいのでしょうか?
高瀬先生
もちろん構いませんが、本当に天候由来なのかを確認、検査する手段はありません。「天気痛」用の処方薬もありませんので、できることとしては、あくまで「今、起きている頭痛」に対する対症療法です。ただし、愛知医科大学病院のように「気象病外来・天気痛外来」を設けている医療機関も一部にあります。
編集部
対症療法が軸だとすれば、漢方薬も選択肢に入ってきますよね?
高瀬先生
はい。当院でも処方することがあります。その際、ご注意いただきたいのは、医療機関で個人ごとに適した漢方薬の処方を受けることです。他人に効いたお薬だからといってご本人に効くとは限りません。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
高瀬先生
気温や温度が頭痛に関係しているのでしょうけど、頭痛の原因はほかにも考えられます。最も避けたいのは、「自分の頭痛は台風で起きる」と“勝手に”思い込んでしまうことです。怖い病気が隠れているかもしれませんので、原因の検索は医師へ任せ、みなさんそれぞれに「つらい」と思う症状をストレートにご相談ください。
編集部まとめ
たしかに「台風のせい」にしてしまえば、謎や不安が取り除かれます。しかし、それこそが素人判断であり、むしろ受診機会を遠ざけてしまっているのでは。台風と頭痛は切り分けて考え、医学的なアプローチを試みましょう。高瀬先生によると「効く薬が、いい薬」であり、個人によって異なるのだとか。「効く薬」である可能性が高いのは、やはり、医師の処方薬だと思われます。
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