花粉症対策に漢方薬という発想! 西洋薬と比べて、こんな利点があった
「体には優しそうだが、本当に効き目があるのか不安」。もしかしたら、漢方薬に対して、そんなイメージをもってはいないでしょうか。それに、花粉症は現代病の一種で、漢方固有の長い歴史が経験していない領域という気もします。さまざまに湧く疑問を、「新井五行堂醫院」の新井先生に投げかけてみました。
監修医師:
新井 紀元(新井五行堂醫院 院長)
西洋の薬よりもピンポイントに効く
編集部
花粉症には「眠くならない漢方薬がいい」と聞いたことがありますが本当でしょうか?
新井先生
「副作用が少ない」という点は、漢方薬の大きなメリットですね。ただし、「全くない」わけではありません。たとえば、「麻黄(まおう)」という生薬が入った花粉症の漢方薬では、不眠や血圧の上昇といった副作用も散見されています。
編集部
となると、漢方薬のメリットとは?
新井先生
まず、生薬が自然由来であることです。人類にとってなじみのあるものを使用しています。他方、西洋のお薬は化学成分、つまり、人類の歴史の中で体に取りこんでいなかったものも含まれます。さらにメリットを挙げるとしたら、西洋のお薬より選択肢が多いことでしょうか。その人の症状に合った、ピンポイントの改善効果が得られます。
編集部
花粉症のケースでは、どのような漢方薬が処方されるのでしょう?
新井先生
多くの場合、初手として処方されるのが「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」です。しかし、このお薬が効かなくても、他の漢方薬に変えて二の手、三の手が打てます。多用はしませんが、アレルギーの原因物質を“黒焼きにしてのませる”などという方法もありますよ。
編集部
えっ? どういうことですか?
新井先生
考え方としては、西洋医学の「舌下免疫療法」と一緒です。アレルギーの原因物質を、あえて取り入れて慣れさせていくわけですね。さすがに黒焼きは例外的な処方ですが、進め方が多彩であるだけに、「ムダに終わる」ということはほとんどありません。大抵は、患者さんごとに適したお薬が見つけられます。
編集部
花粉症はどちらかというと「現代病」ですよね? 2000年の積み重ねがあったのでしょうか?
新井先生
花粉症はなくても鼻水やくしゃみは2000年前からありましたよね。漢方薬は基本的に、花粉やウイルスといった原因を問いません。結果としての症状を取り除く学問体系です。そして結果としての涙や鼻水、くしゃみなどは、ヒトが昔から変わらず抱えていた症状なので、漢方での対応が可能なのです。
かゆみなのか、くしゃみなのか、涙なのか
編集部
漢方の仕組みはわかりました。続いて、具体的な診断方法について教えてください。
新井先生
じつは、60項目以上にわたる、細かな設問事項があるのです。たとえば、その中の「気虚(ききょ)」の欄なら、「全身に無力感がある」「息切れがしやすい」「物を言うのがおっくうに感じる」などです。もちろん、すべてを伺うわけではありませんが、患者さんに関係ありそうな設問から、「この患者さんは、こういうタイプであろう」という診断を付けていきます。
編集部
患者さんのタイプと症状がはっきりすれば、それに適した漢方薬が処方されると?
新井先生
そういうことです。ただし、初回の処方量は1〜2週間程度にしています。再受診していただいて、効き目がありそうなら継続して月単位で処方します。あまり効果が望めなかったら、二の手、三の手を検討します。
編集部
同じ花粉症でも、人によって漢方薬が異なるのですか?
新井先生
同じ鼻水でも透明でサラサラだったり、色が付いていてネバネバだったり、人によって異なりますよね。ですから、必ずしも万人に「同一」の漢方薬を処方するわけではありません。
編集部
なるほど、花粉症で「目のかゆみ」だけがひどい人もいますしね?
新井先生
そうなったら、全く別の漢方薬です。不思議なもので、目と陰部は経絡でつながっているのです。花粉症で目のかゆみを訴える患者さんに「陰部はどうですか」と伺うと、やはり「かゆい」という方がいらっしゃいます。東洋医学には、西洋医学に介入できない、独特の知見があります。
本格的なシーズンが訪れる前に体質改善を
編集部
漢方が結果へのアプローチだとすると、一生、漢方薬をのまないといけないのですか?
新井先生
「根本原因が解決されない」ということですね。基本的にはそうなります。少なくとも、西洋医学のように「鼻の粘膜を焼き切る」といった対応はできません。ただし、体質改善を図る漢方薬もありますし、「結果へのアプローチ」ならではのメリットもあります。
編集部
どういうことでしょう?
新井先生
「原因がわからずとも、治療できる」ということです。西洋医学の場合、原因を突き止められないと、手詰まりですよね。アレルギーのパッチテストに現れないと、なにに対するアレルギーかわからない。しかし、漢方薬なら症状の問診で処方・服用を行うことができます。
編集部
漢方薬の利点が、だいぶわかってきました。
新井先生
加えて、西洋のお薬と併用して服用できるのが、漢方薬の特徴です。「西洋のお薬で症状を取り、漢方薬でそのお薬を効きやすくする」といった使い方もできます。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
新井先生
漢方薬で花粉症対策をするとしたら、年末から年始にかけてが「始めどき」です。いままでの進め方で改善できなかった方は、一度、漢方薬をご検討ください。花粉症の漢方薬は、そのほとんどが、保険適用となっています。
編集部まとめ
自然由来の生薬で体に優しい、眠さのような副作用が“少ない”、多岐にわたる選択肢の中から自分に合った薬が処方される、西洋医学にないアプローチが可能、原因不明でも症状を治められる、西洋の薬と併用できる。たった1回の取材で、これだけのメリットが確認できた漢方薬。だからこそ、市販の漢方薬ではなく、漢方医の見立てに沿った処方をしてもらいましょう。
花粉症、鼻づまり、くしゃみが止まらない症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
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