【漫画付き】40歳を過ぎると「目の病気」が増えるらしいけど、何に気をつければいいの?
40代後半から始まることの多い老眼。もしかしたら、あらゆる目の不具合を「老眼のせい」にしていませんか。失明に至ってから後悔しても間に合わない目の病気。その内容や予防法、将来への備えなどについて、「うえだ眼科クリニック」の上田先生を取材しました。
監修医師:
上田 至亮(うえだ眼科クリニック 院長)
防衛医科大学校卒業。防衛医科大学校病院眼科医員、自衛隊中央病院眼科医長、荻窪病院眼科部長などを勤めた後の2018年、東京都杉並区内に「うえだ眼科クリニック」を開院。「患者さんを自分の家族だと思う」スタンスの元、日々の診療にあたっている。医学博士。日本眼科学会認定眼科専門医、日本医師会認定産業医、厚労省認定臨床研修指導医、身体障害者認定医。
早期の発見とエイジングケアが重要
編集部
中高年の目の病気で、気をつけたいのは何でしょう?
上田先生
厳密には病気ではないですが、どうしても避けられないのが、老眼でしょう。ほか、かかる恐れの高い病気としては、白内障、加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)、ドライアイ、結膜炎などでしょう。緑内障も怖い病気ですが、中高年特有というわけではなく、若い方でもかかります。
編集部
加齢黄斑変性とは、どのような病気ですか?
上田先生
目の奥の網膜に生じる状態異常です。網膜に新しい血管が伸びてくるのですが、これは非常にもろく出血を起こしやすいのです。この血管からの出血により黄斑の組織にダメージを与えて、「見え」を悪くします。欧米では、失明原因第1位となっている病気ですので、要注意ですね。網膜の修復は、今の治療技術をもってしても困難です。
編集部
これらは、誰にでも起こりえる老化現象なのですか?
上田先生
老化に加え、家族歴が大きく関わっているとされています。たとえば、ご両親が白内障だと、ご本人も白内障にかかりやすいようです。上に挙げなかった網膜剥離(もうまくはくり)や網膜裂孔(もうまくれっこう)もなども同様です。
編集部
なぜ年を取ると、病気にかかりやすくなるのでしょう?
上田先生
目の病気に限らないことですが、「活性酸素」が主な原因と考えられています。活性酸素とは、体内に取り込んだ酸素の“燃えかす”のようなもので、体のさまざまな細胞にダメージを与えます。水晶体へのダメージが長年にわたって積み重なると、白内障になるという具合です。
編集部
治療は可能なのでしょうか?
上田先生
元の状態に戻すことを「治療」とするなら、老眼は治療できません。老眼鏡などの使用が前提になります。加齢黄斑変性も、病状の進行を食い止めるまでで、改善はできません。白内障、ドライアイ、結膜炎については治療方法が確立されています。
編集部
そうなると、早期の受診や予防がカギになりそうですね?
上田先生
コレといった予防法はないため、健康診断や特定健診による早期発見を推奨します。あえて言えば、バランスの良い食事と適度な運動が、予防になるでしょうか。たとえば、目尻にある分泌腺が停滞すると、ドライアイを引き起こします。そうならないよう、健康な体を維持し、エイジングケアに努めてください。
遅きに過ぎることはない、思い立ったら受診を
編集部
一般論として、中高年になると、目はどうなっていくのでしょう?
上田先生
老眼の進行により、遠近のピントが合わせづらくなったり、年齢に応じて少しずつ視野が欠けたりする、白内障の進行によりぼんやりと映るなどの症状が起こります。もちろん、様々な疾患による失明のリスクも考えられます。
編集部
高齢者の転倒事故などをよく耳にします。どうすればいいのですか?
上田先生
まずは、老眼鏡を“素直に”作っておくことです。抵抗感があるかもしれませんが、「見え」を確保するに越したことはありません。転倒はもちろん、「6」と「8」の読み違いによるトラブルなど、周囲を巻き込むことも考えられます。メガネや老眼鏡の処方は眼科でも扱っていますので、遠慮なくご相談ください。
編集部
症状がある程度進んでからでも、受診することの意味はありますか?
上田先生
できるだけお役に立ちたいと願っています。検査によってご自身の状態を把握できますし、我慢しない生活のために何ができるのか、一緒に考えていきましょう。
万が一、ロービジョンになってしまったら
編集部
「見え」が悪くなっていくと、どうなるのでしょう?
上田先生
参照:公益社団法人 日本眼科医会 「中高年からのロービジョンケア」より
https://www.gankaikai.or.jp/health/47/03.html
編集部
治療が難しいとなると、どうすればいいのでしょう?
上田先生
「見え」が改善できない以上、「見えるモノ」を工夫していく必要があるでしょう。たとえば、パソコンやスマホの画面を、「白地に黒文字」ではなく、「黒地に白文字」にするなどです。また、拡大鏡や音声式の時計、火を使わない電磁調理器など、ロービジョン関連のグッズも増えてきました。40代は、マイホームを取得する年代と重なっています。設計や家具選びの際、将来のロービジョンにも配慮してみてはいかがでしょうか。
編集部
ロービジョン対策の一般的なところを教えてください。
上田先生
色使いやコントラスト、あるいは照明の明るさなどで見えやすくすること。また、段差や障害物といった危険を取り除くこと。音声によるアシストが受けられるようにすることなどでしょうか。ほかにも、まだまだあると思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
上田先生
40代の20人に1人は緑内障といわれています。片目の視野が欠損していても、もう片方の目で補ってくれるため、なかなか気づきにくいでしょう。どのようなご相談でもかまいませんので、ぜひ、「目を検査する機会」を作って定期的に検査をしてみてください。
編集部まとめ
先生のおっしゃるように、「目を検査する口実」を意図的につくることが、目の病気の発見につながります。目は、“替え”が効かないにも関わらず、情報を得る重要な器官です。40歳になったら、場合によっては30代のうちからでも、目の定期検診を始めてみてはいかがでしょうか。また、将来的なロービジョンリスクも、心の隅に留めておきましょう。
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