【アレルギー性鼻炎】レーザー治療のメリットとデメリットを教えて《漫画付き》
アレルギー性鼻炎の治療方法の一つに、レーザーで「鼻の粘膜を切除する」という進め方があります。なぜ、鼻の粘膜を切除すると、鼻炎が治まるのでしょうか。その効果は、どれくらい続くのでしょう。「浅井耳鼻咽喉科医院」の浅井先生に、メリットとデメリットも含めた着目点を教えていただきました。
監修医師:
浅井 和康(浅井耳鼻咽喉科医院 院長)
聖マリアンナ医科大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学医学部助手就任後の1999年、父親が開業した「浅井耳鼻咽喉科医院」を、同じ横浜市港南区上大岡の立地で継承・リニューアル。耳鼻咽喉科疾患一般ほか、補聴器の相談や漢方薬の処方なども手がけている。医学博士、日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。
恒久的な処置ではない点に注意
編集部
アレルギー性鼻炎の治療に「レーザーがいい」と聞きますが?
浅井先生
効果的といえるでしょう。レーザー治療では、鼻の粘膜、つまり“アレルギー性物質に反応する部分” を物理的に切除して少なくします。ですから、アレルギー反応が弱まります。
編集部
その一方で、鼻水には、花粉のようなアレルギー性物質を押し流す働きもありますよね?
浅井先生
そのとおりです。何をもって「いい」とするかは、考え方が分かれます。「有害物質を排除する」という機能が失われたら、大変なことになりかねません。ただ、花粉などのアレルギー反応は鼻水が“過剰”だから、レーザーで部分的に減らしましょう。そう理解していただければ、うれしいです。
編集部
レーザーは、鼻水と鼻づまりのどちらに有効なのでしょう?
浅井先生
両方です。鼻の中にあるセンサーが減ることで鼻水を抑えられますし、腫れた粘膜を部分的に切除することで鼻づまりが解消されます。どちらかといえば、「粘膜の腫れによる鼻づまり」に効果的なのではないでしょうか。鼻水は、お薬でも抑えられますからね。
編集部
ズバリ、レーザーのメリットは?
浅井先生
投薬療法で効果がなかった患者さんや、妊婦さんのような投薬治療が好ましくない方でも、施行可能であること。加えて、市販品の点鼻薬に頼らない生活ができることです。また、日帰り手術が可能で、いつでも気軽に受けられます。
編集部
デメリットはありますか?
浅井先生
焼灼した粘膜の自然治癒により、いずれは効果を失ってくることです。人にもよりますが、効果が望めるのは、半年から2年前後でしょうか。もし、花粉症のようにシーズンが決まっているアレルギー性鼻炎なら、「毎年、シーズン前に手術する」のも方法です。他方、ハウスダストのような通年のアレルギー性鼻炎なら、「ぶり返したときに再手術」すればいいでしょう。
必要な時間は、わずか20分程度
編集部
レーザー治療の流れについて、一般的なところを教えてください。
浅井先生
初診時に、鼻の内視鏡による検査や、抗体の有無を調べる血液検査などをおこないます。レーザー手術を用いるかどうかは、患者さんの希望にもよります。まずは、「薬物療法を試してみたい」という方もいらっしゃいます。
編集部
レーザーを選択した場合は?
浅井先生
基本的には、手術日を予約していただきます。手術時間は、麻酔が効くまでの約15分に加え、レーザーで約5分、合計して20分といったところです。
編集部
保険の有無と費用についてもお願いします。
浅井先生
保険適用が可能で、3割負担として、“両鼻”9,000円弱です。鼻のレーザーを“片鼻”だけにすることは、原則としてありません。
編集部
手術後の通院は必要でしょうか?
浅井先生
最低でも1回は必要です。手術から1週間後をめどに、経過観察やかさぶたなどのお掃除をさせてください。この間、鼻水や鼻づまりがひどくなることもありますが、手術跡から出血するようなことはありません。なお、手術の効果が低く、再照射を検討する場合でも、1〜3カ月ほどの期間を空けて施術します。
編集部
どの標ぼう科を受ければいいのでしょうか?
浅井先生
もちろん耳鼻咽喉科です。ただし、レーザーを扱っているかどうかは、ホームページや電話などで確認してください。
多くの選択肢から自分に合った方法を
編集部
半年から2年前後をめどに「受け続ける」という点が斬新でした。
浅井先生
必ず「受け続ける」ということではないですけどね。それでも、レーザーは患者さんの負担が少ない方法といえますから、随時、気軽に受けられると思います。お薬での治療が向かない方は、積極的に検討してみてください。
編集部
レーザー治療の目的は、鼻炎に限られるのですか?
浅井先生
「いびきが改善した」という症例もあります。いびきが鼻づまりによるものであれば、結果的に良くなることも考えられます。ちなみに当院の場合、いびきの改善そのものを目的とした「喉のレーザー手術」は扱っておりません。
編集部
薬や手術以外で、アレルギー性鼻炎を治す方法はあるのでしょうか?
浅井先生
スギとダニに限られますが、「舌下免疫療法」という方法もあります。特徴としては、「成功すれば、その効果が一生続くこと」です。お薬や手術の煩わしさから解放されます。ただし、最低でも3年間の治療期間が必要です。その間、お薬やレーザーを併用することもできます。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
浅井先生
レーザーでの治療は、アレルギー性鼻炎に限らず、慢性の鼻づまりに対しても有効です。病名を気にするより、ご自身の症状に応じて相談されてはいかがでしょうか。口呼吸は、風邪などのかかりやすさとも関係してきますので、ご注意ください。
編集部まとめ
鼻の粘膜に照射するレーザー治療。その最大の長所は手軽なことで、短所は恒久的な効果が得られないことでした。レーザーによる焼却術は、内臓などの切開手術と異なり、患者に負担がかかりにくい手術といえるでしょう。例えるなら、膨らんできた足指のタコを削るようなもの。リスクが比較的少ない安全な方法ですので、ぜひ、選択肢の一つに加えてみてください。
医院情報
所在地 | 〒233-0001 神奈川県横浜市港南区上大岡東1-11-32 |
アクセス | 京急線・上大岡駅東口から徒歩1分 |
診療科目 | 耳鼻咽喉科 |