【漫画付き】女性はとくに注意! 膀胱炎の予防策とは?
痛みやかゆみを伴うという「膀胱炎」。プライベートな部位だけに、自覚があっても、受診をためらってしまう人が多いのではないでしょうか。もし、有効な予防方法があるのなら、知っておきたいところです。そこで、泌尿器科が専門の「ももたろう腎・泌尿器科クリニック」の船橋先生に、正しい知識を教えていただきました。
監修医師:
船橋 健二郎(ももたろう腎・泌尿器科クリニック)
昭和大学医学部卒業、昭和大学外科系泌尿器科学大学院修了。一般医院や独立行政法人東京災害医療センターなどの勤務を経た2016年、埼玉県蕨市に「ももたろう腎・泌尿器科クリニック」開院。泌尿器科専門クリニックとして最新の設備を備え、童話『ももたろう』に随行する“お供”のような立場を目指し、患者中心の医療に努めている。医学博士。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。
「膀胱炎」の種類と仕組みについて
編集部
まずは、「膀胱炎」という病気について教えてください。
船橋先生
一般的に膀胱炎といえば、「急性膀胱炎」のことを指します。主に大腸菌などの細菌が尿道をさかのぼり、膀胱で繁殖して、炎症に至ります。
編集部
症状としては、どのようなものがあるのですか?
船橋先生
尿意が強くなる、尿を出し終わっても残尿感がある、排尿時に痛む、尿が濁ったり臭ったりするなどですね。また、症状が悪化すると「腎盂腎炎(じんうじんえん)」という病気を引き起こし、高熱を引き起こしたり腰などへの強い痛みを伴うこともあります。
編集部
「腎盂腎炎」とは何ですか?
船橋先生
菌による感染が「膀胱」でとどまっていれば「膀胱炎」です。菌が腎臓内にある腎盂という器官までさかのぼると、「腎盂腎炎」を生じさせます。
編集部
慢性の「膀胱炎」や「腎盂腎炎」もあるのですよね?
船橋先生
あります。急性を一言で言えば、菌による感染症です。これに対して慢性は、糖尿病や神経障害、尿路結石などのさまざまな病気が原因となって発症します。また、急性が繰り返されると、菌の有無に関わらず、炎症を引きずってしまいかねません。このようなケースも、慢性と診断されることがあります。
編集部
急性の「膀胱炎」は、繰り返されやすいのですか?
船橋先生
女性の場合はそうかもしれません。年に1、2回は“普通”といえるでしょう。患者さんの中には、年のせいで片付けたり、市販薬で対処されたりする方も少なくありません。おそらく、病院に行くほどつらくなかったり、自覚そのものが薄いのでしょう。
その生活習慣が「膀胱炎」の原因かもしれない
編集部
感染の原因となる菌の種類は何でしょう?
船橋先生
ほとんどの場合、便の中にいる大腸菌です。また、膣(ちつ)の中で繁殖した雑菌が尿道へ侵入するケースもあります。
編集部
菌の感染経路として考えられるのは?
船橋先生
注意して頂きたいのは、大腸菌をまき散らしてしまう水洗便座ですね。また、トイレットペーパーの質が関係することもあります。公衆トイレで使われるようなトイレットペーパーはちぎれやすく、尿道付近に線維を残しかねません。すると、その繊維に菌が繁殖してしまうのです。用を足した後、ゴシゴシこするのではなく、押さえるように拭くことをおすすめします。
編集部
「感染」ということは、免疫力が関係してくるのでしょうか?
船橋先生
十分に考えられるでしょう。睡眠不足やストレスなどには気をつけていただきたいですね。また、糖尿病やステロイド薬の服用時などによって、免疫力が下がっているときに感染することもありえます。
編集部
「膀胱炎」になりやすい人はいるのでしょうか?
船橋先生
尿道の短い女性は、膀胱内への菌の侵入が起こりやすいのでなりやすいです。加えて、女性の膣は菌の温床となることがあります。性行為はもちろん、性行為をしなかったとしても、一度侵入した菌が繁殖しかねません。また、男女を問わず、水分の摂取量が少ないことも原因のひとつです。排尿によって菌を排出する機会が少なくなりますからね。
菌を体内へためないためにも、水分摂取が重要
編集部
「膀胱炎」を防ぐために、普段から気をつけたいことは?
船橋先生
水分をたくさん取ることです。とくにお酒を飲んだ翌朝は、軽度の脱水症状になり、尿が出にくくなっています。より気をつけてください。あとは、先ほどお伝えしたトイレットペーパーの質や使い方に気をつけることですね。
編集部
目安となる、1日の水分摂取量を教えてください。
船橋先生
一般に、「体重1キロあたり、30ミリリットル」といわれています。ですので、体重が50キロだったら、1.5リットルという計算ですね。この数値は、食事に含まれる水分を含みません。単純に「飲む量」として捉えてください。尚、アルコールは計算外です。水だけでなくお茶やジュース類なども前提としています。
編集部
ほかにも注意点があれば、お願いします。
船橋先生
身もふたもない言い方になりますが、女性の場合、「ある種の宿命」と捉えたほうが、ストレスを抱え込まないかもしれません。風邪と同じような感覚で、あまり気にしすぎないことも大切です。ただし、糖尿病や尿路結石などが関わっている場合もありますので、受診だけはしてください。
編集部
「膀胱炎」の治療方法は?
船橋先生
菌による感染症の場合、抗生物質が有効です。他方、「糖尿病」や「前立腺肥大」といった基礎疾患が疑われる場合は、それぞれの治療を検討していきます。漢方薬で抑えるケースも少なからずあります。
編集部
受診先としては、婦人科なのでしょうか、泌尿器科なのでしょうか?
船橋先生
受診しやすいほうでいいと思います。女性にとっては、婦人科のほうが受診しやすいでしょう。ただし、“菌とは無関係な慢性疾患”の場合、菌の有無を調べる尿検査だけでは判明しません。慢性疾患を見逃されてしまう可能性があります。婦人科の受診後、症状を繰り返したり、初期治療で改善がみられなかったりしたら、泌尿器科へご相談ください。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
船橋先生
夏場は、「膀胱炎」のシーズンといえるでしょう。せっかく摂取した水分が、汗によって排出されてしまうからです。脱水症の予防もかねて、小まめな水分摂取を心がけてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
どうやら、「膀胱炎」予防の決め手となるのは、普段からの水分摂取にあるようです。加えて、船橋先生がおっしゃられていた水洗便座の使用や排尿後の処理の仕方に心当たりがあるようなら、考え直してみましょう。なお、船橋先生によると、「押さえつける」だけで済む“高吸収性”のトイレットペーパーが市販されていておすすめとのこと。スーパーやドラッグストアなどを探してみてください。
医院情報
所在地 | 〒335-0002 埼玉県蕨市塚越2-6-7 パラドールⅡ 1・B |
アクセス | JR京浜東北線「蕨駅」東口より徒歩4分 |
診療科目 | 泌尿器科・内科・男性皮膚科 |