【漫画付き】卵巣がんは「ひっそりと」進行する…リスクを減らす意外な方法とは
毎年約8,000人が罹患し、約4,500人が死亡している卵巣がん。しかし、腫瘍が小さいうちは無症状のことも多く、気づいた時には大きくなっていることも稀ではありません。気になる初期症状や治療法、意外な予防法をホワイトレディースクリニックの白須宣彦医師に聞きました。
監修医師:
白須 宣彦(ホワイトレディースクリニック 院長)
1957年生まれ。杏林大学卒業後、山梨医科大学にて研修。インフォームド・コンセント(説明と同意)をモットーに、患者とのコミュニケーションを大切にした医療を提供している。所属学会は日本産科婦人科学会、女性のための抗加齢医学研究会。趣味はテニス、スキー、ゴルフ。
卵巣がんは、自覚症状がほとんどない
編集部
本日は「卵巣がん」についてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
白須先生
よろしくお願いします。
編集部
まずはじめに、卵巣がんでは、どのような症状が起きるのでしょうか?
白須先生
実は、卵巣がんにはほとんど自覚症状がなく、気付いた時には進行している可能性が高いのです。腫瘍が大きくなってくると、お腹が張ってきたりといった症状で「なにか変だな」と気付かれる場合が多いですね。
編集部
未然に防ぐ方法はないのでしょうか?
白須先生
自覚症状はほとんどないので検査で発見するしかありません。子宮頸がん検診を受ける際に、内診と超音波検査もあわせて受けることをおすすめします。
卵巣腫瘍の約90%は「がん」ではない
編集部
検査で卵巣がんが見つかったら、パニックになりそうです。
白須先生
実は、検査で卵巣に腫瘍が見つかっても、約90%は卵巣がんではないのですよ。
編集部
えっ? 「腫瘍」=「がん」ではないのですか?
白須先生
実は違うんです。卵巣にできる腫瘍の90%程度は良性で、残りの10%程度が悪性といわれていて、もし悪性であれば、卵巣がんというケースが多いですね。
編集部
では、摘出するのは悪性の場合と考えればいいですね。
白須先生
悪性であれば手術による摘出、あるいは抗がん剤で治療することになります。良性であれば、とりあえずは経過観察ですね。良性であっても、大きくなってしまうようなら手術を受けることになります。
編集部
良性の場合の経過観察はどれくらいの期間になりますか?
白須先生
腫瘍が大きくなってしまうかどうかが問題ですから、経過観察の期間は人によってまったく違います。2~3ヶ月で倍ぐらいになってしまう人もいれば、2~3年たってもあまり変わらない人もいます。
良性の腫瘍には「卵巣茎捻転」の危険性あり
編集部
良性の場合でも、大きくなれば手術が必要ということですが、どのくらいの大きさになったら手術を受けることになるのでしょう?
白須先生
だいたい6~7センチぐらいになってくると、手術を検討する時期に入ります。
編集部
腫瘍が大きくなると、自分でもわかるようになりますか?
白須先生
それはわからないでしょう。よほど大きくなって、おなかがふくれてくればわかりますが、5~6センチ程度ではまったくわかりません。ただ、卵巣腫瘍が大きくなると、困ったことが起こる可能性があります。
編集部
困ったこと? それは何でしょうか?
白須先生
卵巣腫瘍(または嚢腫)茎捻転(けいねんてん)と言って、卵巣がおなかの中でクルッと回転してしまうのです。そうすると卵巣周囲の血管や組織がねじれてしまうので、卵巣に血液が行かなくなり、放置していると卵巣が壊死(組織が腐ってくる)しまいます。卵巣腫瘍(または嚢腫)茎捻転と確定されたら緊急手術をしなければいけなくなります。
編集部
卵巣茎捻転を起こすと、どのような症状が表れますか?
白須先生
激しい下腹痛に見舞われます。吐き気や嘔吐を伴うこともあります。そのような症状が表れたら、すぐに医師に連絡してください。嚢腫が小さいうちは回転してもすぐに元に戻るので、そこまでの症状は出ないのですが、大きくなると卵巣茎捻転の危険性が高まりますから、注意が必要です。
ピルの服用は卵巣がんの発症率を抑える
編集部
卵巣がんの患者は年々増加していると聞きます。検査以外に卵巣がんを予防する方法はないのでしょうか?
白須先生
卵巣がんを防ぐという点では、ピルが注目されています。5年間継続してピルを飲んでいると、飲んでいない人に比べ卵巣がんは2~3分の1ぐらいに減ってくるという研究結果が発表されています。
編集部
そんなに減るんですか!? 凄いですね!
白須先生
排卵時には卵巣の皮膜を破って卵子が飛び出すため、排卵のたび被膜に傷がついてしまいます。しかし、ピルを飲むと排卵しないので、傷ができず卵巣がんのリスクが少なくなるのではないかと考えられています。
編集部
ピルで卵巣がんの発症率が下がるだなんて、とっても意外です。
白須先生
そうですよね。ちなみに、ピルの服用によって子宮体がんの発症リスクも減るという研究結果もあります。とはいえ、必ず防げるわけではないので、定期的な検査は受けていただきたいですね。
編集部まとめ
50歳を過ぎると卵巣がんの罹患率が上がります。女性は油断できません。婦人科の受診は気が重いものですが、気づきにくい卵巣がんを見つけるためには、定期的に検査したほうがよさそうです。
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診療科目 | 婦人科 |