花粉症の治療は何科を受診したらいいの?
春の訪れと前後してやってくるのが、なかなかにやっかいな花粉症だ。厚生労働省の調べによると、日本人の有病率は2割以上とのこと。自覚症状の有無だけを問うなら、それ以上の割合となるだろう。そんな国民病ともいえる花粉症は、何科を受診すればいいのか。メディア歴も豊富な、水島耳鼻咽喉科の水島先生に答えていただいた。
監修医師:
水島 豪太(水島耳鼻咽喉科 副院長)
日本大学医学部卒業、東京医科歯科大学耳鼻咽喉科入局。同大学付属病院や一般医院勤務後、カリフォルニア大学サンディエゴ校へ留学。2016年、AGAヘアクリニック開院とともに、水島耳鼻咽喉科の副院長に就任。最新の知見・技術と地域特性を組み合わせた医療に努めている。耳鼻咽喉科専門医。日本耳鼻咽喉科学会、日本めまい平衡医学会、日本遠隔医療学会、日本再生医療学会、国際毛髪抗加齢医学学会などの各会員。
鼻の中をじかに調べているのは耳鼻科だけ
編集部
まず、花粉症の治療は、どのような医院が扱っているのですか?
水島先生
耳鼻咽喉科やアレルギー専門クリニックのほか、眼科、内科、お子さんの場合は小児科などが扱っています。
編集部
いろいろあるんですね。そのうち、推奨したい科目は?
水島先生
やはり、耳鼻咽喉科だと思います。花粉症の主な症状といえば、クシャミ・鼻水・鼻づまりに代表される鼻の症状でしょう。ところが、耳鼻科以外の医師は、原則として鼻の中についての「状態を診る」ことができません。患者さんへの問診から、間接的に診断を付けるしかないのです。
編集部
「状態を診る」とは、具体的にどのようなことでしょう?
水島先生
例えば、粘膜の腫れがどの程度なのか、鼻の中を目視して診断するということです。その程度により、お薬の処方も多岐に分かれます。また、季節の移り変わりによって、鼻の中の状態が変わってくる場合も考えられるでしょう。そうなると、処方する薬も変わってくるはずです。
編集部
花粉症の薬って、1つではないんですね?
水島先生
もちろんです。また、風邪と花粉症を同時に発症しているケースもあります。このとき、どちらかが快方に向かえば、もう、その薬は必要ないですよね。風邪はウイルスや細菌感染、花粉症はアレルギー。必要のない薬をのんでいても効果は望めません。
鼻水以外の症状がある場合は、その程度によって受診先を検討
編集部
「アレルギー専門クリニック」はどうなのでしょう?
水島先生
アレルギーは範囲が広いので、多くの場合、内科の先生が標ぼうしていることが多い印象です。花粉症に関しては選ぶとしたら、耳鼻科の医師がいる専門クリニックをお勧めします。
編集部
鼻以外の症状が顕著な場合は?
水島先生
それぞれの専門医院を受診してください。目がかゆかったり涙がひどかったりしたら眼科、花粉の時期に湿疹などが出ていたら皮膚科といった具合です。目や皮膚になると、逆に耳鼻咽喉科では、正確な所見をとることができません。
編集部
自分で何のアレルギーだかわからない場合、どの医院でも検査をしてもらえるのでしょうか?
水島先生
アレルギーを扱っている医院の大半で調べられることが多いと思います。アレルギーテストは血液検査でおこなうのが一般的で、その多くは、検査会社に出して調べています。もし不安なら、医院に電話して聞いてみましょう。花粉症に限らず、食物アレルギーなども含めた検査をご希望なら、内科や小児科がいいでしょう。
編集部
複数の医院をかけもってもいいのですか?
水島先生
構いません。その場合、お薬ののみあわせの問題がありますから、お薬手帳を持参しましょう。ただし、同じ科目の医院をかけもつことは避けた方がいいでしょう。同じ科ですと、治療方針の違いがある場合に患者様が混乱してしまうためです。
花粉症の治療開始は、「症状の出たとき」がベストタイミング
編集部
話を鼻の疾患に戻します。耳鼻科ではどのような診断を?
水島先生
鼻鏡(びきょう)という道具を使って鼻の穴を広げ、その中をくわしく診ることから始めます。アレルギー性鼻炎は、鼻水とクシャミが主訴の鼻汁・くしゃみ型(びじゅう・くしゃみがた)と、鼻が詰まる鼻閉型(びへいがた)に大きく分かれるんですね。どちらが強いかによって治療方針を決めていきます。
編集部
治療内容としては、薬の処方になりますか?
水島先生
はい。スプレータイプのステロイド点鼻薬か、抗ヒスタミンののみ薬が主な治療薬になります。しかし上記のどちらのタイプか、どちらも当てはまるかによって薬の選択肢は変わります。ただ、日本人はのみ薬を好む傾向にあり、「点鼻薬は嫌だ」という方も少なくありません。
編集部
いつ頃から花粉症の治療を始めればいいでしょう?
水島先生
花粉症の症状が出てからかその少し前でかまいません。かつては花粉症のシーズンが始まる2週間ほど前を推奨していたものの、ガイドラインも徐々に変わっています。「今年も来たな」と思ったときが、受診のタイミングと考えていただいてよいかと思います。
編集部
先生の医院では、「舌下免疫療法」を扱っていますか?
水島先生
扱っています。これも勘違いされる方が多いのですが、「完全に治すのではなく、症状を軽くする治療方法」と考えていただきたいですね。実際、9割に近い方が「改善を実感」されています。また、治療期間が2、3年続くことを考慮してください。オフシーズンでもモチベーションを保っていられるかどうかにかかっています。
編集部
最後に、読者へ向けたアドバイスをお願いします
水島先生
花粉にさらされる量を減らすには、室内へ持ちこまないことが重要です。コートや上着は玄関の外ではたき、花粉をできるだけ落としましょう。また、表面のツルツルした素材は花粉が付きにくいんですね。ほかにも、いろいろと工夫してみてください。
編集部まとめ
鼻の中をきちんと調べてくれるのは耳鼻咽喉科だけ。クシャミ・鼻水・鼻づまりが主訴の方は、ぜひ、参考にしてみてください。また、鼻が閉じると口呼吸になり、いびきや無呼吸症候群を発症しかねません。自分では気付きにくいため、日中にだるさや眠たさを感じたら、花粉による鼻づまりが原因かもしれません。心当たりのある方は、耳鼻咽喉科を受診してみましょう。
医院情報
所在地 | 〒272-0805 千葉県市川市大野町3-185 |
アクセス | 市川大野駅徒歩2分 |
診療科目 | 耳鼻咽喉科・アレルギー科・小児耳鼻科 |