「ピルを飲むと太る」って実際ウソ・ホント?【漫画付き】
ピルに興味はあっても、副作用の可能性があれば、躊躇してしまうのは当然だ。ほかにも心配される副作用や、処方されるピルの種類や安全性について、保険が適用されるかどうかなど、ピルについての気になるあれこれを、町田東口クリニック院長の古谷元康先生に伺った。
監修医師:
古谷 元康(町田東口クリニック 院長)
新潟大学医学部を卒業。新潟大学医歯学総合病院勤務を経て、長岡赤十字病院、JA神奈川県厚生連の相模原協同病院と伊勢原協同病院を歴任。平成3年に町田東口クリニックをオープンし、院長に就任。母体保護法指定医師、日本産科婦人科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本臨床内科学会。
ピルを飲んで太る(脂肪が増加する)ことはない
編集部
「ピルを飲むと太る」と聞いたことがありますけど、実際どうなんでしょう?
古谷先生
体重が増えることを「太った」と表現するのであれば、本当です。ただし、ピルによって「脂肪」が増えることはありません。増えるのは体内の「水分」です。また、体重増加する人の割合は数パーセントと非常に低く、増えてもせいぜい1~2kgです。当院でもこれまでピルを1000人以上に処方していますが、太ったからやめたいという方はほとんどいません。
編集部
体重が増加する人に傾向はありますか?
古谷先生
生理不順でピルを飲んでいる人です。生理不順の人は排卵をしないため、女性ホルモンが分泌されない人が圧倒的に多く、更年期と同じ状態になります。更年期の症状の一つが体内の水分量の減少で、これがしわやたるみの原因にもなります。しかし、ピルを飲むと女性ホルモンが増えるため、体内の保水力が高まり、身体が瑞々しくお肌のつやがよくなります。体内の水分が増えた分、中には多少体重が増加する人もいます。しかしそれを太ったと考えるのは間違いです。むしろ、肌が若々しくなったことを喜ぶべきでしょう。
編集部
ピルを飲むと食欲が増して太りやすくなる、と聞いたことがありますが?
古谷先生
たしかに、ピルの副作用の一つに「空腹感」があります。その影響で稀に、いつもより食べる量が増えてしまう人がいます。ただ、我慢できないほどの空腹感ではなく、多少食べる量が増えても運動を習慣化すれば、太っていくことはありません。
編集部
ピルには他にどんな副作用がありますか?
古谷先生
時々、気持ちが悪くなる人はいます。ピルに含まれる女性ホルモンにより、妊娠したときと同じ状態になり、つわりの症状が出るためです。ただそれもごく稀で、症状が出た場合も2~3か月ピルを飲んでいるうちに、体が少しずつ薬に慣れて症状がなくなっていきます。いずれにしても低用量ピルであれば、副作用の心配はほとんどありません。
避妊用の基本は、より安心な低用量ピル
編集部
ピルには、低用量ピル以外にどんな種類があるのでしょう?
古谷先生
避妊に使うのは主に低用量ピルですが、それ以外に超低用量、中用量、高用量のピルがあります。いずれも、使われているホルモン剤はエストロゲンで一緒ですが、含まれる量が違います。超低用量と中用量ピルは、主に月経困難症などの治療用の薬として処方されます。高用量を使うことはほとんどありません。今回お話している「ピル」は、基本的には低用量ピルを意味しています。中用量、高用量ピルの場合は、低用量ピルよりも副作用が出る可能性が高くなりますから使用には注意が必要です。
編集部
超低用量ピルも、避妊に効果があるのでしょうか?
古谷先生
超低用量ピルは、海外では避妊用として許可されている国もありますが、日本国内では避妊での使用は認められておらず、効果のほどもわかりません。何社か、超低用量ピルを販売している会社はありますが、避妊用としての許可をとっていないため、「避妊に使える」というと薬事法違反になってしまいます。そのため、国内で医師が避妊用に処方することもありません。
編集部
ピルを処方してもらうためには、診察が必要ですか?
古谷先生
保険適用の症状は、医師の診断によるピル治療がおすすめ
編集部
ピルが保険適用になるのはどんなときでしょう?
古谷先生
保険適用になるのは、生理痛がひどい月経困難症や子宮内膜症で、診察により、治療が必要と認められたときだけです。避妊や、生理周期をずらすのは病気ではありませんから、保険は適用されません。
編集部
ピルを飲むことに抵抗があるのですが、生理痛がひどいときは、治療したほうがいいのでしょうか?
古谷先生
最近、生理痛を我慢していると、将来的に心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなるということがわかってきました。痛みが続くと、体内で炎症性サイトカインという成分が作られ、動脈硬化の原因になるからです。生理痛を痛み止めでごまかすのではなく、痛みが出ないようにピルで生理の周期を70日や120日などに調整して、生理痛をなくすほうが体への負担は少なくてすみます。ピル以外の治療法もありますので、生理痛がひどい場合は、積極的に治療をしたほうが良いでしょう。
編集部
今は通販でもピルを買えるようですが、気をつけることはありますか?
古谷先生
ピルは、本来は医師の処方箋がないと売れない薬です。ですから、オンライン診療による処方を除き、通販でピルを販売している会社は薬機法違反になります。その薬を購入して使用する側の人は違法にはなりませんが、自己責任で使用することになります。海外のジェネリック薬も通販で売られていますが、ある国内の製薬会社がその薬を購入して調べてみたら、ほとんどが偽薬だったそうです。安いからと安易に手を出すと、望まない妊娠をしてしまったり、体調を崩したりすることもあります。通販のピルは、国内外のものを含め、手を出さないのが一番です。
編集部まとめ
ピルを飲んで体重の増加する人もいるようですが、「太る」という表現は適切ではなさそうです。また、体重が増えたとしてもわずか1~2kg。ピルの副作用には、「空腹感」、「吐き気」などがありますが、症状が出る人は稀で、2~3か月服用を続けているうちに、体が慣れて症状がなくなるようです。
ただし、いずれもピルは最も一般的に使われている「低用量ピル」を服用したときについてのこと。ピルには、含まれる女性ホルモンの量により、以下の4種類があります。
・超低用量ピル
★低用量ピル・・・避妊用ピルとして一般的に使用されている
・中用量ピル
・高用量ピル
避妊用のピルの処方には、診察は必要なく問診などのみですが、保険は適用されません。一方、生理痛のひどい場合のピルを使った治療には、診察が必要ですが、保険が適用されます。生理痛を我慢するほうが体によくないので、ピルによる治療がすすめられています。
避妊用に使用する場合のピルは、通販で安く販売されているものもありますが、効果や安全性に問題があるケースがあるので、利用しないようにしたほうがよさそうです。
医院情報
所在地 | 〒194-0022 東京都町田市森野1丁目35番8号 ヴィンテージII 3F |
アクセス | 小田急線「町田駅」北口から徒歩1分 |
診療科目 | 産婦人科、内科、女性内科(性感染症) |