【漫画付き】温シップと冷シップってどう使い分けたらいいの?
更新日:2023/03/27
薬局は元より、一部のコンビニでも簡単に入手できるシップ(湿布)の数々。その中には、スーっとした涼感をもたらしてくれる「冷シップ」と、じんわり温めてくれる「温シップ」がある。私たちはこの両者をどう使い分ければいいのだろう。東京都港区でみなと芝クリニックを開院している川本徹医師によれば、「冷シップは急性、温シップは慢性」という目安があるという。さらに詳しい話を伺った。
監修ドクタープロフィール:
川本 徹(かわもと・とおる)(みなと芝クリニック 院長)
筑波大学医学専門学群卒業、筑波大学大学院医学研究科修了。「“メスをとれる内科”たる外科医になれ」の教えの元、筑波大学附属病院の消化器外科で、内科医以上に内科のことを知っている外科医をめざす。筑波大学臨床医学系外科(消化器)講師、米国テキサス大学MDアンダーソン癌センター客員講師、東京女子医科大学消化器病センター外科非常勤講師などを歴任後の2010年、都営地下鉄三田駅の近くにみなと芝クリニック開院。2014年には、現在の地へリニューアルオープン。内科や外科から、皮膚科、整形外科、消化器科、肛門科まで、幅広い診療を行っている。
日本外科学会認定医、日本消化器外科学会認定医、日本消化器病学会専門医。
シップの適応症状と、その効果について
編集部温シップと冷シップ、使い分けのめどはあるのでしょうか?
川本先生「温シップは慢性、冷シップは急性」という区別でいいのではないでしょうか。以前から抱えている痛みや凝りには温シップ、急な打撲や捻挫の直後なら冷シップという意味です。
編集部温シップが効果的なのは、どのような症状でしょう?
川本先生温シップの目的は、患部を温めて血行を促し、痛みや凝りの原因物質を取り除くこと。効果的な症状として、なかなか収まらない膝関節症・加齢に伴う関節炎・五十肩・腰の痛みなどが代表的です。
編集部冷シップについても同様に教えてください
川本先生冷シップの目的は、患部を冷やすことによる炎症の沈静・鎮痛です。適応症状としては、突然の突き指・ねんざ、打撲・打ち身など。
ただ、温シップと冷シップを間違って貼ったとしても、症状が急激に悪化するようなことはありません。せいぜい「あれ? シップが効いてないな」と感じる程度。もしそうなら、逆のシップを使ってみてください。
ただ、温シップと冷シップを間違って貼ったとしても、症状が急激に悪化するようなことはありません。せいぜい「あれ? シップが効いてないな」と感じる程度。もしそうなら、逆のシップを使ってみてください。
編集部両方を組み合わせる場合もあるのですか?
川本先生そうですね。急性期といわれる期間は短い人で3日、長い人で7日ほど。ですから、最初は冷シップで、1週間をめどに温シップへ切り替えることもあります。切り替えの判断はみなさんでも可能で、自覚症状やシップの効き具合によって試してみてください。ただし、冷シップから温シップへという順序は変わりません。
炎症とは、間違って出された警戒警報のようなもの
編集部シップでの緩和が期待できる「炎症」とは、そもそも何なのでしょう?
川本先生例えば打撲をすると、体の中にある細胞が破壊されてしまいますよね。そうすると、細胞の中に閉じ込められていた物質が周囲に飛び出してしまうのです。中でもサイトカインという物質が問題で、炎症の主な原因とされています。
編集部さらに詳しく教えてください
川本先生もともとサイトカインはどの細胞にも含まれていて、体内にウイルスなどが侵入すると、必要に応じて放出されます。「ウイルスが来たぞ」と知らせてくれるわけです。しかし、打撲などで細胞が壊れると、必要もないのに放出されてしまう。その結果、免疫機能が反応して炎症を起こすのです。
編集部そうなると、シップの役目はサイトカインの働きを抑えることなのでしょうか?
川本先生急性の炎症に冷シップを用いるケースでは、そう言っていいと思います。一方、急性期が過ぎた後や慢性の炎症に対しては、温シップで血行の促進をはかります。患部にたまった老廃物などを、より流し出してくれるからです。
編集部冷シップは必ずしも「冷やす」ものではないのですね?
川本先生昔の白い粘土のような冷シップは、おもに熱の吸収が目的でした。一方、現在のテープタイプは、厳密に言うと「冷たく」ないですよね。あの独特の涼感は、メンソールなどの成分によるものです。もちろん、消炎・鎮痛成分も含まれています。
ときどき、ぬるくなるとすぐに貼り替える人を見かけますが、消炎・鎮痛成分は徐々に出てくるように作られていますので、ほぼ1日中効いています。もったいないですから、貼り替えるのは1日1回で十分です。
ときどき、ぬるくなるとすぐに貼り替える人を見かけますが、消炎・鎮痛成分は徐々に出てくるように作られていますので、ほぼ1日中効いています。もったいないですから、貼り替えるのは1日1回で十分です。
編集部シップが適さない症状はあるのですか?
川本先生皮膚に傷があると、シップの刺激で痛みを生じてしまうでしょう。また、日光過敏症の方は皮膚炎を起こす可能性があります。さらに、ぜんそくの患者さんの場合、シップの成分がぜんそくを誘発するかもしれないのでご注意ください。
シップの選び方と、常備することの是非について
編集部市販品にはたくさんのシップがあり、どれを選べばいいのか迷います
川本先生基本は、冷シップか温シップかで選んでいただければいいと思います。シップごとに特徴のある成分を含んでいるものの、「この症状には、このシップが適している」というほど特化していないのでは。個人差もありますしね。
ただ、「ロコアテープ」という商品は、皮膚からの成分吸収がほかより優れているようです。適応は変形性関節症などに限られますが、医院での処方か、調剤薬局でもところにより取扱いがあるようです。
ただ、「ロコアテープ」という商品は、皮膚からの成分吸収がほかより優れているようです。適応は変形性関節症などに限られますが、医院での処方か、調剤薬局でもところにより取扱いがあるようです。
編集部処方されるシップと市販品は、どう違うのですか?
川本先生効果の違いもありますが、それより、患者さんの症状に合わせて選んでいるという点に注目していただきたいですね。その意味では、薬剤師さんへ相談するのもお勧めです。さきほどお話しした日光過敏症やぜんそくなどの禁忌症状なども、きちんと考慮してくれるでしょう。
編集部シップは、イザというときのために常備しておいたほうがいいのでしょうか?
川本先生慢性の方や、スポーツなどで外傷を繰り返すような方でもない限り、常備する必要はないでしょう。シップには使用期限がありますし、効果の薄れてきているものを持っていてももったいないですよね。
編集部最後に、読者へのメッセージがあればお願いします
川本先生実は、シップは日本独特の文化であり、海外の製薬メーカーでは製造していません。おそらく「内服薬のほうが手っ取り早い」という考え方をするのでしょう。一方、日本人にはお薬をのみたがらないという国民性があります。そんなことを知っていると、シップに対する関心が、より高まるのではないでしょうか。
編集部まとめ
「突然のケガには冷シップ、日ごろからの痛みや凝りには温シップ」。どうやら、この使い分けでいいようです。それにしても、サイトカインの働きや日本独特の文化であることなど、思わず人に話したくなるトリビアがたくさんありましたね。ぜひ、シップを日ごろの生活の中で、上手に活用してみてください。もちろん、我慢できない痛みや腫れの場合は、医師の診察を受けるようにしましょう。
医院情報
みなと芝クリニック
電話番号 03-3457-0555
住所 東京都港区芝2-12-1 桑山ビル2F
アクセス 「芝公園駅」徒歩4分、「三田駅」徒歩7分
「大門駅」徒歩7分、「浜松町駅」徒歩10分
診療科目
内科、消化器科、皮膚科、外科、整形外科、大腸肛門科
URL http://www.minatoshiba-cl.com/