女性がクラミジアにかかった場合の症状は?検査方法から対策までを解説
数ある性感染症の中でも特に感染者数が多いのが「クラミジア」です。誰もが一度は聞いたことがあるでしょう。クラミジアは、性行為の経験がある方であれば誰でも感染する可能性がありますが、現れる症状や想定される合併症は男女で異なります。今回は、クラミジアの特徴や感染経路をはじめ、女性が感染した場合の症状や合併症などについてまとめています。ぜひこの記事を参考に理解を深め、予防や早期治療につなげていただければと思います。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
クラミジア感染症はどのような病気か
クラミジアは正しくは「性器クラミジア感染症」といいます。クラミジア・トラコマチスという病原菌が、粘膜や分泌物に触れることで感染する病気です。性行為の経験があれば老若男女、誰でも感染する可能性があり、その感染部位によって名称は異なります。例えば、腟や子宮頸管に感染した場合はクラミジア性子宮頸管炎、尿道に感染した場合はクラミジア性尿道炎といいます。のどの粘膜に感染することもあり、この場合は咽頭クラミジアと呼ばれます。
世界で最も感染者数が多い性感染症
クラミジアは症状があっても気づきにくく感染率も高いことから、知らず知らずのうちに感染してしまい、さらにほかの人にも感染させてしまう可能性があります。そのため、世界的にも最も感染者数が多く、年間約120万人が感染しているといわれています。近年では、初交年齢が低年齢化していることにより、20代前半の女性や20〜30代の男性の感染者も多いとされます。また、日本性教育協会の調査では、日本の若年層のクラミジア感染率は世界でもトップクラスになってしまっていました。
感染から発症までの期間
感染してから症状が出るまでの期間を潜伏期間と言います。クラミジアの潜伏期間は1~3週間となっていますが、前述したようにクラミジアは症状に気づきにくく、いつ感染したかがわからないケースがほとんどです。ただ、症状がなくても感染していれば「病原体」は存在しているため、検査を行って感染の有無を調べることができます。
淋病との違い
淋病とは、淋菌に感染することで起こる性感染症です。男女ともに自覚症状の少ないクラミジアに対して、淋病は、男性の場合であれば尿道から黄白色の膿性の分泌物が出たり排尿時に痛みを伴ったりする、女性の場合であればおりものに変化が表れるなど、強い症状が出やすい傾向にあります。ただ、無症状の方もいるなど症状の出方の個人差は大きく、どちらに感染しているかを見極めるにはきちんと検査を行う必要があります。また、クラミジアと淋病では治療方法に大きな違いがあります。クラミジアは基本的に抗生剤を内服するのに対し、淋病は点滴または注射にて治療を行います。
クラミジアの感染経路
ここからは主な感染経路や、感染リスクの高い行為、感染を予防するための方法などについてご紹介していきます。
クラミジアの感染ルート
クラミジアは粘膜同士の接触や、腟・尿道からの分泌物の接触がある性行為により感染します。プールや大衆浴場など、性行為以外で感染することはありません。また、出産時に母体から子どもへ母子感染することもあります。
感染リスクが高い行為と傾向
特に感染リスクが高い行為としては、性器同士が直接触れ合ったり、フェラチオ・クンニリングスといったオーラルセックスを行ったりすることが挙げられます。これらの行為では性器やのどに感染します。また、男性器を肛門に挿入するアナルセックスでも感染する可能性があり、この場合は肛門や直腸・挿入した男性器がクラミジアに感染します。さらに、クラミジアに感染している人の体液がついた手で目を触ったりこすったりすると、目に感染してしまうこともあります。これらのことから、不特定多数の人と性行為を行っている、パートナーが多い、オーラルセックスをよく行う、避妊具を使わないという方は感染しているリスクが高い傾向にありますので注意しましょう。
クラミジアに感染しないための対策
では、クラミジアを予防するにはどうすればいいのでしょうか。対策方法を3つご紹介します。
1つ目は性行為の際は避妊具を装着することです。避妊具は望まない妊娠を防ぐだけでなく、淋病やクラミジア、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染予防も目的とされています。間違って装着すると効果は半減してしまいますので、正しく使用するようにしましょう。
2つ目は不特定多数のパートナーとの性行為を避けることです。不特定多数の方との接触はクラミジアや淋病だけでなく、他の性感染症のリスクも高めてしまいます。
また、検査を定期的に受けることは予防につながるため、3つ目の予防策といえます。
女性がクラミジアにかかった場合の症状
続いて、女性がクラミジアにかかってしまった場合に現れる症状について、詳しく解説していきます。該当する症状が複数あるという場合には検査を検討してみてもいいかもしれません。
おりもの(帯下)の増量
おりものには、腟内部の潤いを保ったり菌が子宮内に侵入するのを防いだりする役割があります。また、菌などの汚れを体の外に排出する役割を担っているのですが、このおりものの量が普段よりも多い、においがきついという場合は何らかの異常が起きている可能性があります。
不正出血
クラミジアに感染し子宮内部に炎症が起きると不正出血が出ます。「生理の期間じゃないのに出血が見られる」「血の色がいつもと違うように感じる」という場合は一度検査を受けるようにしましょう。
下腹部痛
下腹部に痛みを生じるケースがあるのもクラミジアの特徴です。性感染症が起きるような行為をした後に、生理じゃないのに子宮のあたりが痛むという場合はクラミジア感染を疑い、医療機関で検査を受けることをおすすめします。また、クラミジアの感染によって下腹部だけでなく上腹部にも痛みが出ることがあります。
性交痛
子宮頸管や骨盤腹膜炎に炎症が起きている場合、性交時に痛みを感じるようになります。「これまで問題なく性行為が行えていたのに、痛みを感じるようになった」という場合は何らかの疾患が隠れているかもしれません。
のどの痛み
後述する咽頭感染を起こすと、のどの奥に痛みが生じます。この場合、性器に感染した場合よりも治療に時間がかかるということがわかっています。
男性の症状について
ここまで女性がクラミジアにかかった場合の症状をご紹介してきましたが、冒頭に紹介したとおりもちろん男性もかかる可能性があります。男性に生じる主な症状としては、尿道のかゆみや不快感、軽度の排尿時痛、精巣上部の腫れ、尿道からの分泌物などが挙げられます。
クラミジア感染による主な合併症
クラミジア感染を放置すると、子宮頚部から腹腔内へと進展しさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。しかし症状が現れないケースが多く、卵管障害や不妊症が判明して初めてクラミジア感染症と診断されることも少なくありません。このことから、症状が軽い一方で、合併症や後遺症などが深刻化しやすいということが理解できるかと思います。ここからは、クラミジアによる主な合併症について見ていきましょう。
子宮頸管炎
子宮頸管炎とはその名の通り、子宮頸管に炎症が起きる疾患です。半数ほどの確率でおりものの増加や不正出血、下腹部痛、性交痛といった症状が現れますが、もう半数は無症状です。放置すると、将来的に卵管炎や腹腔内感染へと進展する可能性があるため、無症状でも早い段階で治療を行うことが大切です。
子宮付属器炎
子宮に付属している卵管や卵巣に菌が侵入し、炎症を起こした状態のことを子宮付属器炎といいます。自覚症状が少ない一方で、卵管の炎症を放置すると子宮外妊娠や卵管性不妊の原因となるため、パートナーにクラミジア感染の疑いがある場合やおりものの増加・不正出血・下腹部痛といった症状がある場合、内診時に圧痛がある場合は分泌物検査を行うようにしましょう。
骨盤腹膜炎
クラミジアによる炎症が卵管を通じて骨盤内まで上がっていくと、骨盤腹膜炎を起こしてしまいます。骨盤腹膜炎は下腹部の強い痛みや性交痛、発熱などの症状が現れるため、診断しやすいのが特徴です。ただ、クラミジアが原因となっていることがわかるまでには時間がかかるでしょう。さらに、骨盤腹膜炎まで進行してしまっている状態だと、卵管周囲癒着や骨盤内の癒着が生じていたり、卵子のピックアップ機能に障害が起きる可能性も高いです。適切な治療を行わなければ自然妊娠は難しくなります。
肝周囲炎
炎症がさらに上昇し、肝臓の周囲にまで及んでしまうことがあります。これを肝周囲炎といいます。下腹部の痛みに加えて、上腹部の激しい痛みを伴いますが、内科や外科を受診してしまうことが多く、クラミジア感染だとわかるまでに時間がかかり、その間に状態が悪化してしまうというケースも少なくありません。
子宮外妊娠、不妊症
子宮付属器炎の項目で紹介したように、卵管に炎症が起きると子宮外妊娠を起こすリスクが高まります。これは、卵管の卵子を輸送する機能が低下することが理由として挙げられます。また、炎症によって卵管内の組織や腹膜がくっついて詰まり、不妊症になってしまう可能性があります。
そのほかの合併症
オーラルセックスなどによって、クラミジアがのどに感染することがあります。これを咽頭感染といいます。さらに、クラミジアに感染した女性がそのまま出産した場合、赤ちゃんの目に感染して充血や目やに、まぶたの腫れといった新生児封入体結膜炎という合併症を引き起こします。
クラミジア感染症検査
最後に、クラミジアに感染しているかどうかを調べるための検査方法についてご紹介します。米国予防医療専門委員会は、「性的に活動的な24歳以下のすべての女性と、感染リスクが高い25歳以上の女性」という方は検査を定期的に受けることを推奨しています。
検査を受けるタイミング
繰り返しにはなりますが、クラミジアは症状を感じにくい疾患です。その一方で、1回の性行為における感染率は30〜50%と比較的高く、注意が必要です。検査を受けるべきタイミングとしては、「性行為時に避妊具を使わなかった」「パートナーがクラミジア陽性と診断された」という場合が挙げられます。
病院・クリニックでの検査
クラミジア感染を調べる方法は2つあります。1つは尿や腟分泌物、うがい液などを採取しクラミジアそのものを調べる検査です。
もう1つは、血液を採取し、クラミジア感染によってできる抗体を調べます。後者の検査は、女性の腹腔内感染を疑う場合に用いられます。医療機関によってどのような検査を行っているかは異なるため、クリニックのホームページや医療ポータルサイトを見たり、クリニックに直接確認したりするなどして、事前に確認しておきましょう。
検査キット
「検査を受けたいけど病院に行くのは恥ずかしい」「誰かに知られてしまうかもしれない」と受診をためらっている方もいらっしゃるでしょう。そんなときは、誰にも知られずに性感染症の検査を受けることができる「検査キット」を用いるのがおすすめです。検査キットを使う流れとしては、まず、インターネットなどで販売されている郵送検査キットを購入し、手順に沿ってご自身で検体を採取します。その後、返送用の封筒に検体を入れてポストに投函しましょう。検査結果は後日、インターネットなどで確認することができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。クラミジア感染は無症状であることが多い一方で、不妊症や子宮外妊娠などにつながる危険性があるということをご理解いただけたはずです。検査を行って早期に発見できれば卵管に影響を与えずに治療が行えますし、検査で陰性であればより安心して今後の生活を送ることができます。もし気になる症状や行為があった場合は、一度検査を受けてみることをご検討ください。
参考文献