高血圧は何科を受診すべき?目安・治療法を紹介します
20歳以上の日本人の2人に1人は高血圧であるといわれています。しかし、自覚症状が出ることが少ないため、治療が必要な段階でありながら病院を受診していない人が多いのが現状です。
自分の血圧の数値がどのくらいだと病院を受診した方がいいのか・受診するなら何科に行けばいいのかお困りの方も多いのではないでしょうか。
この記事では高血圧は何科にかかるべきかをはじめ、病院を受診する目安・治療法・予防法もご紹介します。
監修医師:
小鷹 悠二(おだかクリニック)
目次 -INDEX-
高血圧は何科を受診すべき?
高血圧で何科を受診したらいいか迷ったら、内科・循環器内科を受診するようにしましょう。それぞれの診療科について詳しく解説します。
内科
高血圧で内科を受診する場合のメリットは通いやすさです。内科を標榜しているクリニックは多くあり、国民病ともいわれる高血圧の治療に対応しているところも多くなっています。
高血圧の治療では定期的にクリニックを受診する場合が多いので、通いやすさは重要となります。検査で血液の数値・心臓・腎臓などほかの臓器に問題があれば大きな病院を紹介してもらえ、血圧が気になるという方はまずはお近くの内科を受診してみてはいかがでしょうか。
ただし、クリニックによっては対応していない検査などもあり、必ずしも医師が高血圧や循環器疾患を専門としているわけではありません。
より専門的な検査や治療を受けたい場合は循環器内科を標榜しているクリニックを受診することも検討してみてください。
循環器科
循環器内科は血液の状態や流れ、それに関連する臓器の診療をしています。高血圧は循環器疾患であり、循環器内科は高血圧の治療を得意としています。
専門的な検査や治療が必要な場合は循環器内科を受診しましょう。また、通いやすいところに循環器内科を標榜している医院があるなら、そちらを受診することをおすすめします。
すでに頭痛・めまい・吐き気といった高血圧による自覚症状を感じる場合は、循環器内科を受診した方がよいでしょう。
高血圧で受診すべき目安は?
病院を受診するための目安になるものは血圧の数値です。それでは目安となる具体的な数値を見ていきましょう。
数値が一定以上になったら
診察室測定では最高血圧が140mmHg以上または最低血圧が90mmHg以上、家庭測定では135mmHg以上または最低血圧が85mmHg以上が高血圧の定義とされています。
一般的には医院で測定するよりも自宅の方がリラックスできるので、診断では家庭測定の数値を優先して用います。ただし、測定する時間帯などによって数値は変わるので、家庭測定では5〜7日間の平均数値を見ることが重要です。
健康診断などで受診を勧められたとき
健康診断で高血圧を指摘された場合、まずは1週間ほど自宅で血圧を測定してみてください。家庭測定での数値も135mmHg以上または最低血圧が85mmHg以上をこえるようでしたら高血圧であると判断できます。
高血圧は症状が出ていなくても重大な病気を引き起こす可能性がある病気ですので、自覚症状がなくとも1度は病院を受診してみることをおすすめします。
高血圧の治療法は?
高血圧の主な治療方法は薬物療法・食事療法・運動療法です。
それぞれの治療法について詳しく解説します。
薬物療法
薬物療法は薬を服用することで血圧を適正値まで下げる治療です。薬物療法をいつ始めるか、どんな薬を使用するかは患者さんの年齢・高血圧の程度・合併症の有無・心臓や腎臓などほかの臓器への影響を医師が総合的に判断して決定します。
降圧薬には大きく分けて以下の2つのタイプがあります。
- 利尿薬:腎臓に対して尿を体外に出す働きを促して、血管を循環する血液の量を減らすことで血圧を下げます。副作用は脱水・糖尿病などです。
- β遮断薬:交感神経の活性を抑制することで血圧を下げます。副作用は手足の冷えなどです。
薬物療法でもっとも重要なことは、降圧薬を飲み続けることです。
医師は血圧・血液検査の数値変化によって診断しますので、指示された容量・服用する時間帯などを守ることが大切になります。
また、薬によっては副作用がありますので、副作用がある場合はただちに医師に相談してください。
生活習慣の改善
生活習慣の改善は高血圧治療の第一歩です。生活習慣の見直しで血圧を適正値まで下げきれば薬物療法を用いる必要性がありませんし、服用している薬を減らせる場合もあります。
主に下記3つの方法があり、生活習慣を見直すことで血圧を下げられる可能性があります。
- 食事療法
- 運動療法
- 禁煙・節酒
食事療法でもっとも重要になるのが減塩です。
日本人の成人男性の1日の塩分摂取量は7.5g未満、成人女性の1日の塩分摂取量は6g未満が目安となっています。高血圧の改善・重症化予防を考えた場合の目安は1日6g未満です。
減塩調味料を使用する・塩分を含んでいるパン・麺類よりお米を食べる・塩分の高い味噌汁ではなく豆乳スープにするといった工夫から始めてみましょう。
運動をすることで心肺機能・血管内皮機能が改善され、血圧を下げる効果があるといわれています。ウォーキング・ランニング・自転車・水泳など毎日30分以上の定期的な運動が推奨されています。
ただし、薬物療法を行っている場合は副作用の可能性もありますので、運動中にすぐ息があがる・めまいがするといったときは医師に相談してください。
肥満は高血圧・糖尿病を引き起こす原因にもなり、心臓への負担も増加します。それらを予防するために運動療法と食事療法を併用して体重を落とすことも大切です。
肥満を解消するために脂肪を減らして筋肉をつけることも重要となります。運動の前後などにストレッチをして筋肉に刺激を与えましょう。ストレッチは血流を改善する効果も期待できます。
腕立て伏せなどの自重トレーニング・器具を使用するウエイトトレーニングなどの筋力トレーニングは、瞬間的に力を入れるため血圧が上がりやすいです。高血圧の方がやるのは注意が必要なので、運動療法に取り入れたい場合は医師に相談してください。
煙草に含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があり、血管が収縮すると血圧が上がります。高血圧の治療において喫煙は大敵ですので、禁煙をおすすめします。
また、飲酒は摂取量が多いと高血圧になりやすいです。1日に摂取する量をコントロールするとともに、休肝日を設けるようにしましょう。
なぜ高血圧で受診すべきなの?
高血圧で病院を受診すべき理由は自覚症状がほとんどなく、合併症を引き起こしやすいという特徴があるためです。
自覚症状が出てから受診したら、すでに合併症を発症していたといった事態は避けるようにしましょう。
自覚症状がないため
高血圧は自覚症状が出ない場合が多いですが、血圧が高い状態が続くと心臓や血管に負担がかかります。その結果、動脈硬化・脳卒中・心筋梗塞・心不全といった血管・心臓の病気を引き起こす原因となります。
自覚症状が生じたときには合併症を発症していることも多いので、早期発見・早期治療が重要です。定期的に健康診断を受けることで、血圧の変化や高血圧によって血管・心臓・腎臓などへ負担がかかっていないかわかる場合もあります。そのため、1年に1度健康診断を受けることをおすすめします。
健康診断で指摘されたり、自宅で血圧を測定して最高血圧が135mmHg以上または最低血圧が85mmHg以上の数値が続くようでしたら内科もしくは循環器内科の病院を受診するようにしましょう。
合併症のリスクが高まるため
血管は体中に張り巡らされているため、血圧が高くて負担がかかっている状態が続くとさまざまな臓器に悪影響を及ぼします。
主に下記のような合併症を引き起こす可能性があります。
- 脳血管疾患
- 心臓疾患
- 肝臓疾患
- 高血圧網膜症
- 血管疾患
- 認知症
高血圧の合併症として動脈硬化がありますが、進行すると腎臓の機能が低下して腎硬化症を発症する場合があります。さらに腎硬化症が悪化して腎不全になると透析治療が必要です。
目にはいくつもの毛細血管が伸びているため、高血圧によって高血圧網膜症という合併症が引き起こされることもあります。高血圧網膜症は網膜が傷ついて出血や白い斑点が発生する病気です。悪化すると網膜剥離を引き起こし、視界が狭くなったり視力が低下したりします。
脳や心臓に疾患が出やすいため
脳・心臓という体の中でも特に重要な器官のため、大きな病気につながる場合が多く注意が必要となります。
高血圧によって引き起こされる脳・心臓の主な合併症は下記の通りです。
- 脳梗塞:動脈硬化によって血栓ができやすくなると、脳に十分な酸素や栄養が送られなくなり組織が壊死してしまいます。
- 脳出血:高血圧によって脳の血管に負担がかかり破裂して出血する病気です。
- 狭心症:動脈硬化により血管が細くなることで、心臓に必要な血液を送れなくなります。
- 心不全:心臓の機能が低下して、体中に十分な血液を送り出せなくなります。
- 心筋梗塞:心臓に血液を送る役目を果たす冠動脈が詰まって心筋組織が壊死する病気です。
- 認知症:脳出血・脳梗塞の後遺症で認知症になる場合もあります。脳血管障害によって引き起こされる認知症は、高血圧の合併症の1つといえるでしょう。
動脈硬化となりやすいため
高血圧によって血管に負担がかかると、動脈の弾力性が失われ動脈硬化を引き起こします。
動脈硬化によって引き起こされる血液疾患は下記のものがあります。
- 閉塞性動脈硬化症:手足の動脈が狭くなったり詰まったりすることで十分な血液が送られなくなります。典型的な症状は歩行時に増悪する足の痛みです。
- 大動脈瘤:高血圧や動脈硬化によって大動脈の血管が弱くなり、その部分が膨らんでしまう病気です。膨らみが大きくなると胸や背中の痛み・息苦しさといった症状があり、破裂してしまうと命の危険性があります。
血管疾患だけでなく脳・心臓の合併症もこの動脈硬化から生じる場合が多いです。
動脈硬化を防ぐため早い段階から高血圧の治療に取り組めるように、血圧の高さが気になったら早めに医師に相談してみましょう。
高血圧にならないための予防法は?
高血圧を予防するには生活習慣の改善が重要です。特に心がけたいことは運動・減塩・禁煙・節酒です。それぞれの改善方法について解説します。
運動を取り入れる
運動をすると代謝が良くなり、肥満の解消にもつながるので高血圧の予防として効果的です。ウォーキング・ジョギングといった有酸素運動を30分以上行うことが望ましいとされています。
ただし、運動をするうえでもっとも重要なことは継続することです。続かなければ効果が薄くなってしまいますので、初めは毎日ではなく週に3日運動するなど無理のないプランを立てて、少しずつ運動する日を増やしていきましょう。
減塩とアルコールを控える
和食はヘルシーに思えて、醤油や味噌など意外と塩分を多く使っています。塩分を過剰摂取すると体内に水分が溜まって血圧を上げる要因となります。
また、お酒を摂取しすぎると血圧が上がりやすいので1日の飲酒量を抑えることが重要です。おつまみも塩分が高いものが多いので注意しましょう。
- 減塩調味料を使用する
- 味噌汁は具だくさんにして汁を少なめにする
- スープは飲み干さない
- 漬け物や梅干しなどの塩分が高いものは控える
- 休肝日を作る
- おつまみは控える
食事療法も運動と同じように続けることが重要ですので、無理のない範囲で減塩・節酒を行うようにしましょう。
禁煙を試みる
タバコは「百害あって一利なし」といわれますが、血圧や血管に対してもデメリットが多いです。喫煙することで交感神経が刺激されて一時的に血圧が上昇します。
ニコチンに血管を収縮させる作用があり、喫煙することで血管にダメージが生じます。血圧が高い方が喫煙すると動脈硬化を進行させて血栓ができやすくなるでしょう。その結果、狭心症・心筋梗塞といった病気のリスクを高めてしまいます。
高血圧の改善においては医師から必ず禁煙を勧められますし、治療においてマストと考えた方がいいでしょう。どうしても禁煙できないという方は、禁煙治療を行っているクリニックを受診することを検討してみてください。
高血圧は受診し放置しないことが大切
高血圧を放置すると、主に下記のような病気を引き起こす可能性が高くなります。
- 動脈硬化
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 脳卒中
- 大動脈瘤
- 心不全
高血圧は血液疾患・心臓疾患・腎臓疾患などさまざまな病気を引き起こす原因となります。
自覚症状がないため、気づいたときには重大な病気に発展してしまっている場合も多くサイレントキラーと呼ばれています。
家庭での血圧測定・毎年の健康診断などで早期発見をして、速やかに内科・循環器内科を受診して早期治療を心がけましょう。
編集部まとめ
これまで高血圧で何科を受診すべきかをはじめ、高血圧の特徴・治療方法・予防方法などを見てきましたがいかがだったでしょうか。
高血圧はもはや日本人にとって身近な病気になりましたが、自覚症状がほとんどないため治療の必要があるのか迷っている方も多いでしょう。しかし、放置してしまうと血管・心臓・脳・腎臓などに重大な合併症を引き起こす可能性がある病気でもあります。
早めに高血圧の治療に取りかかれば、生活習慣の見直しで症状を改善できる場合もあります。そのためにも、定期的な健康診断の受診・家庭での血圧測定によって早期発見することが大切です。
健康診断で血圧の高さを指摘されたり、家庭で血圧を測定して最高血圧135mmHg以上または最低血圧が85mmHg以上が続くようでしたら、内科や循環器内科に相談してみましょう。
参考文献