性病とは?代表的な種類とそれぞれの特徴や検査方法、治療法を解説
パートナーなどとの性行為によって感染する可能性のある性感染症、いわゆる性病というとHIV(エイズ)や梅毒をイメージしやすいと思いますが、それ以外にもさまざまな種類があります。
この記事ではそんな性病の種類とそれぞれの特徴やどのように感染するのかといった情報、そして感染しているかどうかを検査する方法などについて詳しく解説いたします。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
性病とは
性病とは、いわゆる性行為によって感染する可能性がある感染症を指す言葉です。性行為とは男性器の挿入を伴う行為のみではなく、オーラルセックスやキスも含みます。
ただし、性病は必ずしも性行為によってのみ感染するものではなく、例えば注射針を使いまわす行為やタオルを一緒に使用する行為などで感染してしまうケースなどもあり、性行為がなければ性病のリスクがまったくないということではありません。
代表的な性病の種類
性病として知られる代表的な種類には、下記のようなものがあります。
HIV(エイズ)
エイズはHIVというウィルスへの感染によって引き起こされる症状で、HIVとはHuman Immunodeficiency Virus、日本語でヒト免疫不全ウィルスの頭文字をとったものです。
免疫不全ウィルスという言葉のとおり、HIVは体内の免疫機能に必要な細胞であるリンパ球やマクロファージに感染して人の持つ免疫機能を低下させ、細菌やウィルスによる感染症、ガンといったさまざまな症状にかかりやすい状態にします。
HIVは感染後すぐに症状が出るものではなく、感染から2~4週間程度の間にインフルエンザのような初期症状が表れますが、その状態は数週間程度で一度落ち着きます。その後は一度無症候期となりますが、体内で少しずつウィルスが増殖していき数年から10年程度のうちに、健康な人であれば特に問題の内容な菌やウィルスに感染してさまざまな症状が出るようになりエイズ指標疾患と呼ばれる病気を発症するようになると、エイズを発症したと診断されます。
ただし、HIV感染からエイズ発症までの期間には個人差が大きく、人によっては感染後短期間で発症となるケースもあります。
免疫機能に作用するため、現在のところまだ完全な治療法は確立されておらず、感染した場合は発症を遅らせる治療がメインとなることや、エイズの発症が命に大きく関わることからとてもリスクの大きな感染症であり、代表的な性病として知られています。
梅毒
梅毒は梅毒トレポネーマとよばれる細菌による感染症で、感染すると初期症状としては感染部位の周囲にできものが形成されます。
初期症状のできものは1ヵ月程度で自然と消滅しますが、その後しばらくすると手のひらや足裏などに赤い発疹が表れ、さらに進行すると全身に赤いポツポツとした発疹が広がります。この赤い発疹がヤマモモ(楊梅)に似ていることから、梅毒と呼ばれるようになったとされています。
かつては梅毒が遊郭などを中心に広がる不治の病として恐れられていましたが、ペニシリンの開発によって治療可能な症状となり、感染しても適切な治療を受けることがで治療が可能です。
クラミジア感染症
クラミジアは性病のなかでも最も感染者が多い種類で、クラミジア・トラコマチス病原体への感染によって引き起こされます。
感染者との性行為による感染確立は30~50%程度とも言われていて、HIVであれば1%程度、梅毒であれば15~30%なので、感染しやすい病気ということがわかります。
また、クラミジアは感染していても症状が特にでないケースが多く、感染していると気が付かずに感染リスクがある行為を行ってしまいやすい点や、性器だけではなく喉や肛門にも感染するため、特に感染者が多い症状であるといえるでしょう。
クラミジアに感染すると、男性であれば性器の痒みや痛み、膿が出るといった症状が出る可能性があり、女性であれば同じく痒みやおりものの異常などが生じる可能性があります。
ただし、必ずしも全員に明確な自覚症状が表れるわけではなく、男性であれば5割、女性は7割程度が症状に気付かないとも言われます。
そのため、気が付かないうちに感染して症状が進行し、場合によっては不妊などにつながるなどのリスクもあるため、感染リスクがある行為をした際は検査を受けるなどして早めに感染の有無を確認することが推奨されます。
淋病、淋菌感染症
淋病は淋菌という菌の感染による性病で、クラミジアと同様に性器だけではなく喉や肛門にも感染し、感染確率も30~50%と高いため感染者数の多い病気です。
淋菌に感染すると男性の場合は尿道炎となり、女性の場合は子宮頸管炎をおこすほか、症状が進行するとやはり不妊につながる可能性があります。
淋病は抗菌薬によって治療が可能ですが、近年この抗菌薬への抵抗力をもつようになってきていることが報告されており、近い将来に治療が難しくなっていく可能性も指摘されています。
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマはHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染によって引き起こされる症状で、性器や肛門などに鶏のトサカのような形のイボができる症状です。
HPVはイボを形成するウィルスとして知られていて、確認されているだけでも100種以上が存在しているものであり、性行為の経験がある女性であれば80%は50歳までに一度は感染すると言われる程、ありふれたものです。
尖圭コンジローマは良性のイボであるため痒みや痛みといった症状はありません。
HPVには尖圭コンジローマを生じるような低リスクのもの以外にも、子宮頸がんの原因となる高リスクタイプなどもあるため、予防接種の利用などが推奨されています。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)または2型(HSV-2)を病原体とする種類の性病で、感染すると性器やその周囲に水疱性の病変や潰瘍が形成されます。
ヘルペスは完治することができない病気として知られていて、感染すると神経を伝って上行していき、神経節に潜伏感染するため、ウィルスを完全に体内から除去できません。
そのため、一度治ったとしてもストレスや疲れなどによって免疫が低下すると再発してしまう可能性があり、実際にクリニックにかかる患者さんの6~7割は再発によるものといわれています。
唾液や体液に病原体が含まれ、感染力が強いため、性交渉を行わなくてもコップや箸の共有、お風呂やトイレなどでも感染する可能性があるとされます。
トリコモナス症
トリコモナスは原虫というアメーバの様な寄生虫が性器内に入り込んで炎症を引き起こすものです。
男性であれば尿道炎、女性であれば膣炎などを引き起こす可能性があり、通常自然に完治することはありません。
主に性行為によって感染しますが、下着やタオル、トイレなどでも感染する可能性があるため、場合によっては幼児などにも感染することがあります。
性器カンジダ症
カンジダ菌とよばれる真菌に感染することで引き起こされる感染症です。
男性の場合は尿道、女性の場合は膣内や性器周辺の皮膚に感染しますが、男性の発症率は低く、女性では頻繁にみられる症状とされています。
性器に症状が出ることや、性行為で感染する可能性があるため性病の1つとされますが、多くはストレスなどによって免疫が低下した際に、膣などにいる常在菌によって自己感染するものであるため、ほかの性病とはやや位置づけが異なるといえます。
性病はどうやって感染する?
性病の感染は、原因となるウィルスや菌といった病原体が性行為時の粘膜接触などによって人から人へ感染することでおこります。
ただし、病原体が含まれる場所や感染を引き起こす場所は性病の種類によって異なります。
例えばHIVであれば主に血液内や精液内、膣分泌液内にウィルスが含まれますが、感染はそのウィルスが微細な傷などから血液内に入る必要があるため、通常の性行為による感染確率はそこまで高いものではありません。
一方でクラミジアなどは粘膜に病原体が存在しており、粘膜同士の接触で感染するため感染確率が高くなります。
いずれにしても性病の感染は性器などに直接触れることでリスクとなるため、予防のためにはコンドームの適切な使用や、リスク行為があった場合には検査によって感染していないかを確認し、感染の拡大を防ぐことが大切です。
性病の心配がある場合の検査方法
性病の可能性がある場合には、まず下記のような方法で検査を行いましょう。
保険診療での性病検査
性器に痛みや痒みがあるなど、何かしらの自覚症状がある場合は保険診療での検査と治療が可能です。
性病の場合、男性であれば泌尿器科、女性であれば婦人科への相談が一般的です。
検査にかかる費用は疑われる病名などによっても異なりますが、例えばクラミジアであれば3割負担で2,000円程度で検査が受けられ、陽性と判断されればそのまま治療を受けることができます。
自費診療での性病検査
性病の検査を自費診療で行っているクリニックも多くあります。
自費診療は特に症状がなくても検査を受けることが可能で、また保険証も不要なため性病検査に行ったことが知られたくないという場合におすすめです。
検査費用はクリニックや検査内容によって異なり、HIVなど単独の検査で数千から1万円程度、複数の性病を一度に検査する場合は数万円からの費用が必要となります。
行政機関が行う性病検査
都道府県や市区町村でも定期的に性病検査が行われていて、基本的に無料かつ匿名で検査を受けることができます。
ただし、検査人数や時間などの制限が多いため、好きなタイミングで受けにくい点や、症状が出ている場合には検査を受けられないケースが多いというデメリットがあります。
実施している検査の内容などは行政機関によって異なるため、都道府県のホームページなどから確認してみましょう。ほとんどの場合で自身が住んでいる地域以外の場所でも検査をうけることができます。
自宅でできる性病検査
他人に知られることなく、手軽に検査を受ける方法が自宅での検査キットによるものです。
検査キットにもさまざまな種類がありますが、多くはWebなどで購入後に検査用のキットが自宅に配送され、マニュアルにしたがって検体(尿など)を採取して検査機関へ送ることで、数日後に検査結果をオンラインで確認することができます。
採取する検体の種類や検査にかかる費用は、どの種類の性病を判定したいかによって異なります。
いつでも好きなタイミングで検査が行える点や、自費診療での検査などと比べて低価格で受けられるものが多い点、そして誰にも知られずに行える点などが大きなメリットです。
まとめ
性病にはさまざまな種類があり、それぞれの症状や感染確率、完治が可能かどうかなどが異なります。
性病の対策として大切なことは、予防としてコンドームなどを適切に使用することと、早期に適切な治療を受け、また感染拡大を防ぐためにも検査を受けて感染状況を明確にすることです。
検査は自宅でいつでも簡単に行える方法がありますので、性病の心配がある方はまず一度、検査キットなどを使用してみてはいかがでしょうか。