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1型糖尿病の寿命はどのくらい?症状や治療方法も詳しく解説

 公開日:2024/02/01
一型糖尿病 寿命

糖尿病は生活習慣病といわれていますが、1型糖尿病は生活習慣病ではありません。主に自己免疫を基いとした膵β細胞の破壊がインスリン分泌の低下をもたらす病気です。

1型糖尿病は発症すると多くの場合一生付き合っていく病気で、日々の血糖コントロールが重要になります。

それがいつまで続くのか、ご自身・ご家族の寿命はどのくらいなのかと考えてしまう方は少なくないでしょう。

本記事では、1型糖尿病患者の寿命・症状・治療方法などについて解説します。誰にも聞けずにいる疑問がある方の助力になれば幸いです。

久高 将太

監修医師
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)

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琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。

1型糖尿病の寿命はどのくらい?

砂時計
糖尿病患者の寿命は、国々の医療レベルによって異なり他国の統計を日本に当てはめることはできません。
残念ですが日本では、1型糖尿病患者のみを対象とした寿命の調査は実施されていないため、1型糖尿病に限った正確なデータを提示できません。
しかし、日本の1型を含めた糖尿病患者を対象としたデータは存在します。それは日本糖尿病学会が10年ごとに実施しているアンケート調査です。
この調査の2001年~2010年版では、糖尿病患者の平均寿命は一般の方より男性は8年短く71.4歳、女性では11年短く75.1歳という調査結果が出ています。
また徳島赤十字病院が独自に院内で行った2011年~2020年の調査では、男性患者の平均寿命が73.1歳、女性患者の平均寿命が80.4歳でした。
日本糖尿病学会の1970年代の調査では男性患者の平均寿命は63.1歳、女性患者の平均寿命は64.9歳でしたから、確実に患者さんの平均寿命が延びているのがわかります。
しかし、日本人全体の平均寿命も延びており、一般の方より10年前後寿命が短い事実に大きな変化はありません。
従って、糖尿病患者の寿命は個人差があるものの、一般の方の寿命マイナス10年程度と考えられます。

1型糖尿病の種類

女医
1型糖尿病は、主に自身の細胞を攻撃する自己免疫を基とした膵β細胞の破壊がインスリン不足を引き起こすために発症する病気です。
免疫抗体のGAD抗体・lA-2抗体などの膵島関連自己抗体が検出されるものを「自己免疫性」と、自己抗体が検出されないものを「特発性」と定義しています。
1型糖尿病は、進行スピードにより以下の3つのタイプに分類されます。

  • 劇症1型糖尿病
  • 急性発症1型糖尿病
  • 緩徐進行1型糖尿病

それぞれについて、以降の章で詳しく解説します。

劇症1型糖尿病

劇症1型糖尿病は、1型糖尿病の中でも急激に発症するタイプです。発症から1週間前後で注射でのインスリン補充が必要なインスリン依存状態になります。
自己免疫が起きていると血液検査で自己抗体が検出されますが、劇症1型糖尿病では多くの場合検出されないのが特徴です。
劇症1型糖尿病になると口渇・多飲・多尿などの高血糖症状を発症し、発症から1週間以内にケトーシス・ケトアシドーシスになり高度の脱水状態に陥ります。
これらの症状はインスリン不足が原因です。命の危険がある状態のため、早急にインスリンを補充する必要があります。

急性発症1型糖尿病

急性発症1型糖尿病は、1型糖尿病の中で発症が多いタイプです。
急性発症1型糖尿病では口渇・多飲・多尿などの高血糖の症状があり、症状が出始めてから3ヶ月以内にインスリン依存状態になります。
高血糖の症状は命の危険のサインであり早急な治療が必要です。急性発症1型糖尿病では血液検査で自己抗体が検出される場合が多く、検出される自己抗体はGAD抗体・lA-2抗体などです。
急性発症1型糖尿病では一時的に自己生産のインスリン効果が改善する場合もありますが、時間が経つとまたインスリンの補充が必要になります。

緩徐進行1型糖尿病

緩徐進行1型糖尿病は、半年から数年かけて徐々にインスリンの分泌が少なくなるタイプです。
発症からしばらくの間はインスリンの補充を必要としないケースが多く、2型糖尿病のように経過します。
しかし、徐々にインスリンの分泌が少なくなりインスリンの補充が必要になります。
当初は自己抗体が認められず2型糖尿病かと思われますが、やがて自己抗体が認められるようになり緩徐進行1型糖尿病と診断されるケースが多いのが特徴です。
緩徐進行1型糖尿病が疑われる場合、インスリン依存状態ではなくても膵臓を保護するためのインスリン治療を行う場合があります。

2型糖尿病と寿命に違いはある?

天秤
1型糖尿病と診断されたとき、考えたくなくてもご自身やご家族の寿命を考えてしまう方も多いでしょう。
1型糖尿病と糖尿病患者の多数を占める2型糖尿病とで、残された時間である寿命の違いがあるのかも知りたいと思うのは当然かもしれません。
インスリン治療が一般的でなかった過去においては、1型糖尿病はあっという間に命を落としかねない病気でした。
しかし、インスリン治療が確立されてからは、1型糖尿病の方の寿命は確実に伸びています。それでも、2型糖尿病と1型糖尿病の寿命を比較した正確な統計データはありません。
1型糖尿病も2型糖尿病も発病後、どれだけ適切な治療を継続するかが寿命の長短に大きく関わります。
寿命を延ばすためには医師の指示を守り、できるだけ合併症のリスクを減らすことが大切です。

1型糖尿病の症状

医師
1型糖尿病の代表的な症状は、口渇・多飲・多尿・体重減少です。多飲は口渇にも影響され、多尿は多飲にも影響されます。
それぞれの症状について、以降の章で解説します。

多飲

水
多飲は1型糖尿病患者の典型的な症状で、大量に飲み物を飲む症状です。1型糖尿病になると血糖値が急激に上昇するため、体は血液を水分で薄めようとします。
血液中の増えた水分は尿として排出する必要があるため、尿の量が多くなり脱水状態を引き起こします。
脱水のため口渇(口や喉の渇き)が激しくなり、異常に大量の飲み物を飲んでしまうのが1型糖尿病患者の多飲です。

多尿

トイレ
多尿も1型糖尿病患者の典型的な症状です。多尿は急激に血糖値が上昇した血液を薄めるために、血液中に送り込まれた水分が尿として排出されるために起こる症状です。
多飲・多尿は脱水を引き起こし、放置すると生命の危険もあります。異常な喉の渇きと異常に大量の尿は糖尿病のサインです。
多飲・多尿に気付いたら早急に内科を受診しましょう。

体重減少

1型糖尿病では体重が減少するケースがあります。1型糖尿病になるとインスリンが不足し、血液中のブドウ糖を十分なエネルギーに変換できません。
そうなると体は脂肪や筋肉を分解してエネルギーを得ようとし、脂肪と筋肉が減ってしまい体重が減少します。
急激に体重が落ちるのは、体に何か異常が起きているサインです。1型糖尿病の可能性もありますが、他の病気の可能性もあります。できるだけ早く健康診断を受けましょう。

1型糖尿病患者の寿命を伸ばす治療方法

時計
1型糖尿病は適切な治療の継続で寿命を延ばせる病気です。代表的な治療方法のインスリン治療は、即効性と効果が高い治療方法として知られています。
また生活の中で行う食事療法運動療法による血糖コントロールも一般的な療法です。外科的な治療としては、膵臓移植があります。
それぞれの治療方法について、以降の章で解説します。

インスリン自己注射

注射
1型糖尿病の場合、自分でインスリンを分泌する量が絶対的に不足しているため、外部からインスリンを補給する必要があります。
インスリン自己注射は強化インスリン療法と呼ばれ、2種類のインスリン製剤を使い分ける療法です。
通常の分泌を補うのが基礎インスリンで、持効型インスリンや中間型インスリンのインスリン製剤を使用します。注射の回数は1日に1~2回です。
食事の前には追加分泌を補うために、超速効型インスリンや速効型インスリンを追加注射します。
強化インスリン療法の注射の種類・量・注射するタイミングは病状によって異なります。ご自身の病状と生活に合うよう主治医とよく相談しましょう。

食事療法

1型糖尿病の場合、特に食べてはいけない物はありませんが、カーボカウントのためには食べる炭水化物の量を知っておくのが重要になります。
蛋白質や脂質でも血糖値は緩やかに上昇しますが、炭水化物はより早く血糖値を上昇させます。カーボカウントはこの炭水化物の量を把握し血糖をコントロールする食事療法です。
カーボカウントでは、食事に含まれる炭水化物の量に合わせて食前のインスリン投与量を調整することで血糖値の安定化を図ります。
また、食前のインスリン投与量に合わせて食べる炭水化物の量を決められます。しかし、自己流のカーボカウントはおすすめできません。
カーボカウントに興味がある方や実行してみたい方は、主治医や管理栄養士に相談してください。

運動療法

運動
重い合併症がない方で血糖値が落ち着いている方には運動療法もおすすめです。適度な有酸素運動筋力トレーニングには血糖値を下げる効果があります。
運動療法に適した有酸素運動はウォーキング・ジョギング・水泳などです。筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせると血糖値を下げる効果が高いといわれています。
「継続は力なり」といいますが、運動療法継続が大切です。運動療法で血糖値が下がっても、止めてしまうと3日程度で元に戻ってしまいます。
運動療法ではインスリンの補充量や補食を調整し、低血糖にならないように注意が必要です。あらかじめ主治医と適度な運動内容やインスリンの調整などを相談しましょう。

膵臓移植

グリーンリボン
1型糖尿病の根治を目指す方法として、膵臓移植と膵島移植があります。
膵臓移植は大きな手術になるため膵臓単体ではなく、腎不全が伴っていれば腎臓も同時に移植するのが一般的です。
膵島移植は膵臓の中でもインスリンを作る細胞がある膵島のみを移植する方法です。
どちらの移植も成功すると自分でインスリンを分泌できるようになるため、インスリン依存状態から脱せる可能性があります。
その反面、移植後は自分のものではない臓器への拒絶反応を抑えるため、免疫抑制剤の服用が必要になります。

糖尿病の合併症

寒気
1型糖尿病で様々な合併症を発症する可能性があります。その中でも3大合併症といわれる「糖尿病性腎症」「糖尿病性網膜症」「糖尿病性神経障害」について、以降の章で解説します。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は、長期にわたる高血糖で腎臓が傷んでしまい腎臓の機能が低下する病気です。傷んでしまった腎臓は回復が難しく、症状が進むと人工透析が必要になります。
長期にわたる高血糖状態が原因ですから、1型糖尿病を発症して直ぐに糖尿病性腎症になるわけではありません。しかも初期には自覚症状がないため発見が遅れやすい傾向があります。
糖尿病性腎症はできるだけ早い段階で発見し、腎臓を労わることが大切です。血液検査や尿検査で発見できますので、定期的に検査を受けましょう。

糖尿病性網膜症

糖尿病性網膜症は、血糖値が高い状態が続き網膜の細い血管が傷んでしまった状態です。症状が進むと最悪の場合、網膜剥離や眼底出血を起こし失明する可能性があります。
糖尿病製網膜症を悪化させないためには、日頃の血糖コントロールが重要です。また早期に発見できると、レーザー治療などで大きな出血を防げる可能性が高くなります。
気になる症状がなくても定期的な眼科受診をおすすめします。

糖尿病性神経障害

高血糖状態が長く続き末梢神経の代謝に異常が起こり、不要な物質が溜ったり神経の働きが阻害されたりした状態が糖尿病性神経障害です。
神経障害の現れ方は個人差がありますが、主に以下のような症状が現れます。

  • 感覚の異常:両足の先のしびれ・痛み・冷感・皮膚の感覚低下など
  • 胃腸運動の異常:胸焼け・吐き気・食欲低下・消化不良・下痢・便秘が起きやすいなど
  • 心臓や血圧調節の異常:無痛性心筋梗塞・起立性低血圧・頻脈・徐脈など
  • 四肢の異常:太もも・臀部の筋肉の萎縮や筋力低下。足の変形・上肢や下肢の痛みや痺れなど
  • 眼や顔面の異常:眼球運動の障害・顔面神経麻痺など
  • 発汗障害:汗をかかなくなる・乾燥肌になる
  • 血糖コントロールに影響する異常:無自覚性低血糖・食物の消化スピードの変化

神経障害そのものが命に関わるケースは多くありません。しかし、合併症に気付きにくくなり、重症化してしまう可能性が高まりますので注意が必要です。

編集部まとめ

夫婦
1型糖尿病患者に特化した統計情報がないため正確な寿命は提示できません。しかし、糖尿病患者全体では一般の方より10年程度短いというデータがありますので、寿命の参考にはできるでしょう。

1型糖尿病で大切なのは血糖コントロールです。適切な血糖コントロールで腎不全や合併症を防ぎ、寿命を延ばしましょう。

1型糖尿病患者はインスリンを分泌できないため、インスリンを外部から補充する必要があります。インスリンは自己注射で補充するのが一般的です。

血糖値を下げる療法として、インスリン自己注射以外にカーボカウントや運動療法があります。これらの療法は自己流ではなく、医師や管理栄養士の指導の下で行うことをおすすめします。

この記事の監修医師