性病検査を保健所で受けるメリット・デメリットは?ほかの検査方法も紹介
性感染症は、誰もがなりうる、身近な病気です。未治療の場合、重篤な健康障害を引き起こすリスクがあり、早期発見と治療が不可欠。そのためには、何より定期的な検査が重要です。
本記事では、性病検査を受けるべきシーンや、よくある性病、保健所を始めとする各検査機関のメリットなどを解説します。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
性病検査を受けるのはどんな時?
性病検査は定期的に受けることが推奨されますが、以下のような特定の事情がある場合は都度受けるようにしましょう。性病検査を受けることで、自分自身や大切なパートナーの健康を守ることに繋がります。
性器周辺に違和感がある
例えば排尿時に痛みを感じる、性器にいぼができる、かゆみがある、赤みや腫れが見られるなど、性器周辺に普段と異なる症状が現れたときは、性病の可能性があるため注意が必要です。このような症状が見られる場合は、速やかに性病検査を受けましょう。
また、治療を受けた後でも、体内に菌が残っている可能性があります。そのため、症状が改善された後も、再検査を通して完治を確認すること、そして定期的に性病検査を受けることが望ましいとされています。
複数の人との性交渉があった
複数の人と性行為がある場合、性病感染リスクが増加します。
リスクが高いと考えられる人は、最低でも月に一度検査を受けましょう。特に女性は性器だけでなく、並行して喉の検査も受けることが望ましいでしょう。また、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染や子宮頸がんのリスクに対しても注意が必要です。
パートナーに症状・感染があった
性行為を行ったパートナーに症状が現れるなど、何らかの感染が疑われる場合は要注意です。パートナーが頭痛や吐き気、排尿時の不調を訴えるなど、何かしらの異変が起きている時は、性病の可能性を考慮し、性病検査を受けましょう。
性病には、感染してもすぐに症状が現れない潜伏期間があるため、自分自身に症状がなくても、感染している可能性があります。そのため、パートナーに症状が現れた時点で、自分自身には症状がなくても性病検査を受けるべきです。これにより、早期に感染を発見し、適切な治療を受けることができます。
国内で多い性感染症の種類
性感染症にはさまざまな種類がありますが、中でも日本国内において感染例の多いものを紹介します。
クラミジア
世界で最も一般的な性感染症であり、とくに近年は若年層の間で感染が増加しています。
男性の場合は排尿痛や乳白色の分泌液、女性の場合はおりものの増加や不正出血などの症状が挙げられますが、多くの場合、症状が少ないか無症状です。そのため気づかないうちに進行し、不妊症などの合併症を引き起こす可能性があります。治療には抗生物質が効果的ですが、再感染のリスクもあるため予防が重要です。
淋病
クラミジアに次いで発生率が高い性感染症で、淋病とクラミジアに同時に感染するケースもあります。
男性は、比較的早期に尿道炎の症状が現れます。女性ではおりものの増加が見られることがありますが、症状が軽いため気づかないことも。放置すると深刻な合併症につながるため、適切な抗生物質での治療が必要です。
梅毒
感染してから数年にわたって進行する慢性的な感染症で、早期発見が非常に重要です。初期は無症状のことも多いですが、感染してからの時期によって異なる症状が現れます。初期にはできものが、その次には発疹、体中に腫瘍ができるなど、症状が消えては次の段階へと進行していきます。
近年感染者が増加していますが、適切な抗生物質で治療すれば完治が可能です。
保健所での性病検査とは
各自治体に置かれた保健所で、性病検査を受けることができます。
ここからは、各検査機関ごとの、メリットデメリットを解説していきます。
保健所での性病検査のメリット
保健所での性病検査は、多くの自治体で無料で提供されています。費用の心配をせずに利用できるのは、大きなメリットといえるでしょう。
さらに、匿名で検査を受けられるのも嬉しいポイント。心理的ハードルがぐっと下がります。プライバシーを保護しながら、気軽に検査を受けることが可能です。
保健所での性病検査のデメリット
一方で、検査できる性病の種類が限られていることがデメリットの一つです。保健所ではHIV、梅毒、クラミジアなどの一部の感染症のみ検査が可能で、他の感染症については検査を提供していない場合もあります。
また、検査可能な日時が限定されており、とくに平日のみの場合が多く見られます。忙しい人にとっては、検査を受けるのが難しいかもしれません。ただし、土日に検査を行う保健所もあるため、平日に時間を作りづらい人は、事前に確認してみましょう。
さらに、検査結果が陽性であっても、すぐに治療を開始できないのもデメリットの一つです。これには、紹介されたクリニックでの予約が取りづらい場合などの理由が挙げられます。
保健所以外での性病検査:クリニック
保健所での性病検査と並んで、クリニックでの性病検査も一般的な選択肢の一つです。
クリニックでの性病検査のメリット
クリニックでの性病検査では、検査できる項目が非常に多いです。HIV、梅毒、クラミジアに加えて、保健所の検査でカバーできない性器ヘルペス、尖形コンジローマ(HPV)、B型肝炎、C型肝炎など、さまざまな性感染症の検査が可能です。
また、クリニックで性病検査を受けた場合、検査結果が陽性であった際には、そのままノンストップで治療を始めることが可能です。治療開始までの時間を短縮できることは、患者にとって大きなメリットとなります。
クリニックでの性病検査のデメリット
クリニックでの性病検査は、その診療時間や地理的な位置によって利用できる時間や場所が限られます。とくに、住んでいる地域にクリニックが少ない場合や、クリニックの診療時間が自分の生活スケジュールと合わない場合、検査を受けることが難しくなるかもしれません。
また、待合室で他の患者と顔を合わせる必要があるのもデメリットでしょう。匿名で検査を受けられる保健所とは異なり、クリニックでの検査では、予約や受付時に個人情報を提供する必要があります。
また、費用が発生する点も見逃せません。HIV検査などの場合、自費診療では5,000円から10,000円程度の費用がかかります。ただし、すでに症状があり、医師が必要と判断した場合は、保険診療で検査することもあるようです。
保健所以外での性病検査:性病検査キット
保健所やクリニックでの性病検査に加えて、市販の性病検査キットを使用する方法もあります。
市販の検査キットでの性病検査のメリット
市販の検査キットを使用する最大のメリットは、自宅や好きな場所で、好きな時間に検査を行えることです。これにより、クリニックの診療時間に縛られることなく、プライベートな時間を利用して検査を行うことができます。
また検査キットを使用する場合、クリニックを訪れる際に必要となる他の患者や医療スタッフとの直接的な接触がありません。これにより、プライバシーを保護しつつ、性病検査を受けることが可能です。
市販の検査キットでの性病検査のデメリット
市販の検査キットは自費で購入する必要があり、検査には一定の費用がかかります。価格はキットによって異なりますが、検査の種類によっては数千円から数万円の範囲で変動します。
また、検査キットを使用して性病検査を行った場合、治療を開始するまでに時間がかかることも忘れてはならないデメリットです。
主な性病の治療の流れ
性病の治療は、感染症の種類によって異なる検査方法と治療薬が用いられます。ここでは、クラミジア、淋病、梅毒の主な治療の流れについて解説します。
クラミジアの治療
クラミジア感染症の検査には、頸管粘液や膣分泌物の検査、うがい液を用いた喉の検査、血液検査などがあります。これらの検査は、病原体そのものや病原体の遺伝子、抗原の有無を確認することで感染の有無を判定します。
治療には、マクロライド系やニューキノロン系の抗菌薬が使用されます。
淋病の治療
淋病の診断には、頸管粘液や膣分泌物、うがい液、尿や分泌物から病原体を検出する方法があります。酵素免疫法やPCR法などの検査方法を用い、感染の診断を行います。
治療では、抗菌薬の経口薬や注射薬が使用されます。耐性菌の存在もあるため、治療後には効果の確認として再検査が必要です。
淋病感染者の一部はクラミジアにも感染していることがあるため、その場合は両方の治療が行われます。
梅毒の治療
梅毒の診断には、血液検査による抗体検査が主に用いられます。感染の状態や感染期間などを正確に判断するためには、医師に感染の可能性がある時期や予防状況を伝えることが重要です。
治療にはペニシリン系の抗菌薬が効果的で、国内では経口治療が一般的ですが、2021年9月には、世界的な標準治療薬であるベンジルペニシリンベンザチンの筋注製剤の国内製造が承認され、選択肢として広がっています。
神経梅毒の場合は抗菌薬の点滴治療が行われ、治療期間は病期によって異なります。
性感染症は早期発見・治療が重要
性感染症は自然に治癒することがありません。放置すると病状が進行し、不妊症や母子感染など、他の深刻な疾患を引き起こす可能性があります。
また、感染者が自覚症状を持たないことも多く、知らない間に周囲に感染させてしまうリスクもはらんでいます。
まとめ
性感染症の早期発見と迅速な治療は、本人だけでなくパートナーや、身近な人たちの健康を守るうえでとても大切なことです。そのためには、定期的に検査を受けることが欠かせません。自分にあった機関で、適切に検査を受けましょう。
参考文献