性病検査(性感染症検査)の方法は?検査が受けられる診療科・検査内容を解説
もし「性病に罹患したかもしれない」と感じたら、どのように検査を受ければよいのでしょうか。
今回の記事では、性病が疑われる場合に検査を受ける方法・医療機関へ行く場合の診療科・検査の種類などを解説します。
記事の最後では、性病検査を行ってから結果がわかるまでの時間もまとめているので、併せて参考にしてください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
性病検査(性感染症検査)の方法は?
性病が疑われる場合、検査を受けるには医療機関への受診・保健所での検査・キットを使用した検査という3つの方法があります。
それぞれの方法のメリット・デメリットなどは下記のとおりです。
医療機関
医療機関で検査を行うメリットは、診断後すぐに治療を開始できることです。
また検査できる病気の幅が広いため、異常を感じているが病気の種類までわからない場合にも、適切な検査を受けられるでしょう。
なお、何らかの症状がある場合の診察・検査費用には医療保険が適用されます。そのため、費用は全額自己負担にならず、患者さん自身の負担割合に応じた請求となります。
保健所
各地域の保健所では、無料で性病検査を行っています。ただし、検査可能な項目はHIV・梅毒など一部の病気に限られる点がデメリットです。
なかには淋菌・クラミジア感染症の検査を行っている保健所もありますが、検査可能な項目は事前に確認することをおすすめします。
保健所で検査を受けるメリットは、前述のとおり無料であることと、匿名で検査ができることです。
なお、匿名での検査のため保健所では感染の有無に関する証明書などは発行されない点には注意が必要です。
検査キット
上記の方法のほか、市販の検査キットを利用して性病検査をすることもできます。検査キットのデメリットは、医療保険が適用されず、全額が自己負担となることです。
また、使用するキットは病気ごとにわかれています。そのため、病気に適したキットを自分で選ばなければなりません。
もし「症状があるが、どのような性病か見当が付かない」という方には医療機関の受診をおすすめします。
しかし、なかには医療機関・保健所に出向く時間がない方もいるでしょう。このような場合には、さまざまな性病検査がセットになっているキットの購入も選択肢の一つです。
検査キットを使用するメリットは、上記のとおり自宅で検査ができることです。
検査キットは、受診の時間が取れない方のほか、受診しているところを人に見られたくない方にも利用しやすい方法といえます。
また、市販の検査キットは医療保険が適用にならないため「医療保険の情報から泌尿器科・婦人科などの受診歴を家族に知られたくない」という方にもおすすめの方法です。
ただし、検査キットで陽性になった場合や、陰性であっても何らかの症状がある場合には、早期に医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。
性病検査が受けられる診療科
もし性病の感染が気になって医療機関を受診する場合には、何科を受診すればよいのでしょうか。
患者さんの性別・症状の現れ方により適した診療科は異なる可能性があるため、今回は5つの診療科をまとめました。
性感染症内科
性感染症内科は、名前のとおり性感染症を専門とする診療科です。しかし、性感染症内科のみを標榜しているクリニックには入りにくいと感じる方もいるかもしれません。
そのほか、性病かわからないが気になる症状がある場合にも、性感染症内科を受診してよいか不安に感じる方もいるでしょう。
このような場合には、泌尿器科・婦人科・内科などを併設している性感染症内科をおすすめします。
泌尿器科
患者さんが男性の場合、尿道・性器に関する病気を専門とする科は泌尿器科です。
また、女性の場合も排尿時痛・排尿障害などが症状の中心であれば、泌尿器科でも診察が可能なケースが多いでしょう。
ただし、泌尿器科は女性の性病に特化した科ではありません。そのため、排尿時に限らず性器周辺の症状が気になる方は、後述の婦人科をおすすめします。
婦人科
患者さんが女性の場合、性病・性器周辺の症状を専門とする診療科は婦人科です。もし検査の結果が性病ではなかった場合にも、婦人科では性器周辺の症状に対する治療を行えます。
初めて婦人科にかかることに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、婦人科の専門は性病・妊娠などに限定されません。
婦人科は月経痛・月経不順・更年期障害など女性に関する病気・不調を幅広く専門とする診療科なので、通いやすい条件の婦人科を探し、まずは受診してみてはいかがでしょうか。
皮膚科
性病の症状は、性器周辺のみに現れるとは限りません。特にHIV・梅毒などの場合は、全身に発疹がみられる場合もあるため注意が必要です。
また、オーラルセックスなどが原因となって唇・口の周りに皮膚症状が現れることもあります。
このように皮膚に関する症状が現れた場合には、皮膚科でも診療を受けられるでしょう。
ただし、検査により性病と診断された場合には、病気の種類により適した診療科に紹介になる可能性があります。
そのため、患者さん自身に「性病ではないか」と思い当たるエピソードがあれば、事前に連絡をして受診の可否を確認することをおすすめします。
耳鼻咽喉科
前述のとおり、性病のなかにはオーラルセックスでも感染するものがあります。このように感染したものは、唇・口の周りのほか、喉に症状が出る可能性があります。
喉の症状を専門とする診療科は、耳鼻咽喉科です。そのため多くの耳鼻咽喉科でも性病の検査を行えます。
ただし、皮膚科の場合と同様に性病検査を行っているかどうか事前に確認を行ったほうがスムーズに受診ができるでしょう。
また、必要に応じて検査後に治療に適した診療科が紹介される可能性もあります。
性病検査の検査内容は?
上記の診療科にかかった場合、具体的にはどのような検査を行うのでしょうか。性病のなかには、視診のみで診断できるものと、血液・尿・おりものによる検査で診断されるものがあります。
視診
視診とは、医師が症状を観察することです。視診のみで診断できる性病には下記の2つがあります。
- 性器ヘルペス
- 尖圭(せんけい)コンジローマ
男女ともに見られる性器ヘルペスの主な症状は、性器周辺の小さな水疱・潰瘍です。
皮膚症状にはかゆみ・痛みをともない、また患部に炎症が起こることで脚の付け根にあるリンパ節の腫れ・痛みを感じる方もいます。
一方、尖圭コンジローマは性器周辺にピンク・白・茶のイボのようなものがみられる病気です。
病気が進行すると、イボが鶏のとさかのようになり外科手術が必要になる場合があります。
血液検査
性病のウイルス・細菌は性器のみに留まるケースが多いです。しかし、下記の性病は原因となるウイルス・細菌が全身に広がっていくため、血液検査により感染が調べられます。
これらの病気に対して適切な治療を行わなかった場合、パートナーに病気を感染させるだけでなく、重篤な症状が現れることがあるため注意が必要です。
具体的には、HIVは進行すると全身性の免疫不全に陥る可能性があります。
また、梅毒は放置すると数年~数十年をかけて心臓・脳などに広がることもあり、いずれも命に関わる病気です。
また、骨盤内クラミジアは性器から骨盤内に広がることで腹膜炎を引き起こすほか、将来的な不妊の原因になる可能性があります。
尿検査
男性の場合は、下記の性病が疑われる場合に尿検査を行います。
- 淋菌感染症
- トリコモナス感染症
- クラミジア感染症
従来の検査は尿道内の膿を採取する方法であり、強い痛みを伴うこともありました。しかし、現在では多くのケースで尿検査での診断が可能です。
なお、上記の感染症に罹患すると排尿時の痛み・尿道から膿が出る・精巣の腫れ・発熱などの症状を自覚する男性は少なくないでしょう。
一方で、少数の患者さんは無症状のことがあります。このようなケースでも、セックスパートナーが上記の性感染症だった場合には一緒に検査・治療を受けることをおすすめします。
おりもの検査
患者さんが女性の場合、前述の淋菌感染症・トリコモナス感染症・クラミジア感染症が疑われたら、子宮頚部の分泌物・おりものを採取して検査を行います。
検査の内容は、男性の尿検査と同様で培養検査・PCR検査です。
女性が上記の感染症に罹患した場合でも、男性と比較すると目立った症状が現れない方が多いとされています。
しかし、半数以上の方には下記のような症状が現れます。
- おりものが増える
- 発熱
- 下腹部痛
- 性交痛
- 不正出血
特に性交痛・不正出血は、病気が進行した場合に現れやすい症状のため注意が必要です。
このように症状の現れ方が男女で異なるのは、原因となる細菌・原虫が留まりやすい部位が異なるためです。
男性の場合には前立腺・精嚢・尿道などが感染の中心ですが、女性は膣内・子宮頚管・尿道などが感染の中心となります。
検査結果がわかるまでどのくらいかかる?
性病は種類ごとに検査方法が異なり、検査結果が出るまでの時間も検査方法により異なります。検査を受けてから結果がわかるまでにかかる期間は下記のとおりです。
- HIV:通常検査…約1週間、即日検査…20~40分
- 梅毒:精密検査…翌日、即日検査…当日中
- 淋菌感染症・トリコモナス感染症・クラミジア感染症:通常検査…当日または翌日、迅速検査…2~4時間
- カンジダ症:数日~1週間
- ヘルペスウイルス感染症:抗原検査…約15分、抗体検査…4~5日
- 肝炎:即日検査…15~30分、NAT検査…4~5日
なお、今回紹介した「結果がわかるまでにかかる時間」は、検体採取からすぐに検査を行った場合に結果判明までにかかる時間の目安です。
そのため、検査施設を併設している医療機関と、当日の検体をまとめて外部の検査機関に委託している医療機関では結果がわかるまでの期間が異なる可能性があります。
また、医療機関・保健所・検査キットの販売者ごとに迅速検査の可否など、実施可能な検査項目が異なる場合があるため事前に確認することをおすすめします。
編集部まとめ
性病は、主な感染経路が性的接触であることなどから「人に知られたくない」と考える患者さんが多い病気です。
しかし、自然に治癒する可能性が低い病気もあり、また適切な治療を行わなければ命に関わる性病もあります。
そのため、症状・生活歴などから性病の感染が疑われる場合には、早期に検査を行い必要な治療を受けることが大切です。
メリットが大きい検査としては、無料で受けられる保健所の性病検査・治療に直結しやすい医療機関での検査が挙げられるでしょう。
一方、時間的な都合・受診への不安などから自宅での検査を希望する方には、市販の検査キットがおすすめです。
なお、市販のキットを使用して陽性が出た場合には、医療機関での治療が必要となります。症状・市販キットで陽性が出たことなどを伝えたうえで、医療機関を受診してください。
参考文献