性病検査は生理中でも受けられる?検査可能な種類や控えたほうがよい理由も解説
性病は自覚症状が乏しいため、発見や治療が遅れてしまいがちな疾患です。
早期治療ができれば後遺症もありませんが、治療が遅れれば神経系や臓器に障害を残してしまう可能性もあります。
そのため、性病の可能性があるのなら、問題がなかったとしても早急に検査を受ける必要があるでしょう。
しかし、検査を受けようとしたら生理を迎えてしまい、検査を受けても問題ないのか不安になる方もいるかと思います。
今回はそのような生理中の性病の検査事情について解説していきます。
監修医師:
澤田 樹佳(富山県のさわだクリニック)
20022金沢大学卒 / 2014年金沢大学大学院卒 / 現在は、富山県のさわだクリニック院長 / 専門は泌尿器科、在宅、緩和医療、東洋医学
保有免許・資格
泌尿器科専門医、指導医
医師へのコミュニケーションスキルトレーナー
目次 -INDEX-
性病検査は生理中でも受けられる?
性病は種類にもよりますが女性の場合、帯下の増加や不正出血など普段の生活でも起こりやすい症状があります。
そのため、発見が遅れやすく性病を疑った際は、早めに検査を受けるに越したことはありません。
しかし、検査を受けようと思っても生理を迎えてしまい、検査を受けてよいものか判断に迷う部分もあるかと思います。
そのような場合、どのように対処すべきなのか解説していきます。
血液検査なら可能
性病の検査の種類は以下の三つです。
- 血液検査
- 子宮頸部から分泌された帯下などを採取した培養検査
- 尿検査
生理中は膣内から出血するため、子宮頸部からの分泌物の培養検査に影響を与えるでしょう。
尿道も膣の近くにあるので、同じ理由で影響を与える可能性があります。
ある報告では、性病の原因の一つであるカンジダが検出されやすくなるといわれています。
しかし、血液検査であればたとえ生理中であったとしても影響はないでしょう。
膣から採取する検査は精度が落ちる可能性がある
生理中はカンジダが検出されやすくなるため、子宮頸部からの分泌物の培養検査は避けた方がよいとされています。
生理中に検査を行った場合、本当の性病の原因とされるものだけでなくカンジダが陽性となってしまうため、どちらが本当の原因なのかわからなくなってしまうからです。
また、一般的に生理中は性病検査の精度が落ちるとされるため、生理を避けて検査に行くことが推奨されています。
生理中でも検査が可能な種類
生理中でも可能な検査は血液検査のみです。血液検査で確認できる性病の種類は以下の三点です。
性病に関する血液検査では、性病の種類に応じて抗体が血液中に産生されます。この抗体が産生されているかどうかで、感染しているかを確認します。
そのため、抗体が産生されるまでに血液検査を行ってもあまり意味がありません。抗体が産生される時期は性病の種類によってさまざまとされています。
今回はそのような性病について深堀りしていきます。
HIV
HIVは人の免疫細胞であるCD4リンパ球に感染します。感染後は徐々に免疫の機能を低下させ、いずれはヒト免疫不全症候群(エイズ)を発症させてしまうでしょう。
HIVに感染しても初期症状が乏しいため、なかなか気付きにくいです。しかし、症状とは裏腹に免疫に関する細胞が徐々に減少していきます。
一方、血液中ではHIVの抗体が産生され、血液検査ではこの抗体があるかどうかでHIVに感染しているかを判断します。
抗体の産生はHIVに感染してから6~8週間程かかるとされており、HIVを疑う性行為があってからもしばらくは検査しても意味がありません。
また、HIVの検査は、どこの医療機関でもできるものではありません。各自治体のホームページにHIVの検査を実施している医療機関があるので一度確認してみましょう。
保健所ではどこでもHIVの検査を受けることができます。
梅毒
梅毒は性行為やキスなどで感染する性病です。症状として、できもの・しこり・ただれがありますが、症状が出現してからいったん消失するため治ったと勘違いしてしまいます。
梅毒には以下のような病期があります。
できものやしこりができるのは第一期です。その後1~3ヵ月程度経つと、手のひらや足の裏などに発疹が出現します。
しかし、このような症状も数週間~数ヵ月で消失するでしょう。そのまま症状がなく何年も経過していきますが、これが潜伏梅毒の時期です。
潜伏梅毒では症状はなかったとしても、梅毒自体は皮膚や内臓にどんどん進行しているといわれています。
症状が出現しても消失し長期間無症状で経過するため、患者さんには安心感が生まれてしまい、結果受診が遅れることになるでしょう。
潜伏梅毒期移行後、数年~数十年経過してから心臓や神経系に異常が表れます。このような症状で出現すると、命に関わる状態に陥る可能性もあります。
そして、この症状は治療できたとしても後遺症が残ってしまう可能性もあります。そのため感染を疑ったときは、早急に受診するようにしましょう。
ここで一つ注意していただきたいのが、梅毒に感染してから4週間以上経過していないと抗体ができていないため、血液検査をしても意味がないということです。
保健所や医療機関へ検査を受けに行く際は、性感染症を疑った時期から4週間以上経過しているかどうかの見込みを立ててから受診するようにしましょう。
骨盤クラミジア感染
骨盤クラミジアはクラミジアに感染してから、骨盤まで炎症が広がってしまった状態のことをいいます。
クラミジアは無症状で経過することも多く、発見や治療が遅れがちになる疾患です。
クラミジアも血液検査で抗体の産生の有無によって、感染の有無を判断します。
しかし、抗体の産生には1~3週間はかかるとされており、検査を受ける場合は感染を疑ってから1ヵ月は経過してからがよいでしょう。
生理中はなるべく控えるべき検査
生理中は淋菌やクラミジアなど、膣からの分泌物である帯下を採取するような検査は精度が落ちるといわれています。
そのため、生理期間が終了してから行うことが推奨されている施設がほとんどです。
今回は、そのような生理中では精度が落ちてしまう検査方法について紹介していきます。
膣分泌物検査
膣分泌物検査では膣から分泌される帯下を採取し、培養する検査する方法です。
性病の原因になる淋菌やクラミジアは性行為などによって感染し、膣内で炎症を引き起こします。
炎症が起こることで帯下の分泌量が増えたり、膿状のものが分泌されることで、尿臭の原因となります。
検査では専用の機械を膣内に挿入し、膣分泌物の性状を確認します。確認する項目は以下の部分です。
- 量
- 色
- 臭い
- 血液の混入具合
採取した分泌物は顕微鏡で観察し、性病の種類を診断します。この方法で特定できるのは、膣トリコモナスやカンジダなどです。
淋菌やクラミジアは顕微鏡では診断できず、培養検査やPCR検査を行う必要があります。
膣内の分泌物を採取する作業は、痛みを感じることが少ないといわれているため、できるだけリラックスして検査を受けましょう。
尿検査
排尿時痛などの尿道に異常があるような所見がある場合は、尿検査を行います。
特に尿道から分泌物があるような尿道炎を疑うような所見は、クラミジアや淋菌の可能性があるため分泌物の採取も行われます。
採取された分泌物は培養検査やPCR検査にかけられ、結果によって診断が下されます。
また、分泌物だけでなく尿の性状の確認も行います。確認する項目は以下の部分です。
- 尿の色
- 混濁具合
- 臭い
ここで一つ注意していただきたいのが、尿道炎の症状があるというだけでは性病ではないということです。
尿道炎の原因は大腸菌やブドウ球菌など発症する原因菌は多岐にわたり、淋菌やクラミジアだけではありません。
ただし、どの原因菌であっても放置してしまうと炎症が広がり、生殖機能にも影響を及ぼしかねません。
排尿時痛などの尿道炎の症状がある場合は、婦人科などを受診して早急に対応しましょう。
皮膚擦過検査
陰部にただれなどの皮膚症状がある場合、綿棒を使用して病変部位からの擦過物を採取し、培養検査にかけます。
カンジダが原因である場合は、皮膚擦過検査で特定することができます。
カンジダは皮膚にもいる常在菌で、健康な人ならカンジダの感染は免疫で防ぐことができます。
しかし、何らかの理由で免疫力が落ちてしまい、カンジダの感染力に負けてしまい感染してしまうことがあります。
視診
視診は性病で必須で行う検査ではありませんが、腫脹やただれなどの症状がある場合は行われます。
外陰部の変化であれば視診のみで診断を下せることもありますが、見えない部分にある場合は診断することは難しいです。
観察できない部分は、実際にその部分に触れて痛みの程度などを診ます。
診察のときは看護師が付き添ってくれるので、リラックスして診てもらいましょう。
女性の場合、男性医師に抵抗があるかもしれません。そういった場合は、事前に保健所や医療機関に相談することで、調整してもらえる場合もあります。
性病検査を生理中に行う不安を減らしたい場合は?
性病の検査を行おうとしても、不安や恥ずかしさからなかなか検査に踏み切れないという方もいるでしょう。
性病は性行為の経験があれば、誰にでもリスクがあります。
性病は放っておくとどんどん炎症が広がり、重症化することはあっても自然治癒することはありません。
発見や治療が遅れてしまうと治療期間が延びたり、不妊の原因になることもあります。
そのため、性病を疑った場合は検査を受けて早急に対応する必要があります。
原則は生理が終わってから検査する
性病かどうかを確認する検査は血液検査から尿検査などがありますが、生理中では行えない検査があります。
それが、尿検査や膣内分泌物検査などです。これらの検査は生理中の場合精度が落ちるという理由で、生理が終わってから検査を受けることが推奨されています。
検査キットを使って調べる
保健所や医療機関を受診する時間がない方は、検査キットを一度試してみてもよいかもしれません。
検査キットは調べる性病の種類によって値段が異なり、値段が高いもの程検査できる性病の種類が豊富です。
検査キットを注文したら郵送で届き、説明書に沿って検査物を採取し返送するだけです。結果もインターネットで確認することができるので便利です。
検査キットさえ届いていれば、生理後すぐに検査できるところが検査キットのメリットです。
編集部まとめ
性病の検査や生理時の注意点について解説しました。生理中の性器に関わる部分の検査は、生理が終わってから行う必要があるようです。
性病を疑い不安になる気持ちもあるかもしれませんが、性病は誰にでも起こる可能性のある疾患です。
また、自分が性病にかかってしまっている場合、パートナーも感染している可能性があります。
そのため、受診する際はパートナーと一緒に検査を受けるようにしましょう。
参考文献