性病検査はいつから可能?すぐに検査しても意味はない?
性病の検査はリスクがある性行為の後すぐには行えないことはご存じでしょうか?性病には感染から一定期間の潜伏期間などがあるため、正確に検査結果を得るためには性交渉からしばらく期間を開ける必要があります。
この記事では正確な検査がいつから可能なのかや、適切な検査の受け方などについて詳しく解説いたします。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
性病の潜伏期間と検査可能時期
性行為によって感染するリスクが生じる性病、性感染症は、リスクがある行為の後すぐに症状が表れるものではありません。
性病は、ウィルスや菌に感染してから体内で徐々に増殖していき、一定量を超えることで病気として表れるため、それまでの期間は特に症状もない潜伏期間となります。
また、性病検査は血液検査や唾液、尿などの検体からウィルスや菌への感染を確認する方法であるため、感染後すぐのタイミングでは病原体を検出することができず、正確な検査が行えません。
こうした検査を受けても正確な診断が行えない期間をウィンドウ期(ウィンドウ・ピリオド)とよび、性病の検査はこのウィンドウ期が過ぎてから行う必要があります。
ウィンドウ期は性病の種類によっても異なるため、いつから検査が受けられるかは検査を行う病気の種類によって変わります。
性感染症の種類別の潜伏期間やいつから検査可できるか
性感染症のうち、代表的なそれぞれの種類についての潜伏期間や検査がいつから行えるかをご紹介します。
HIV(エイズ)
HIVは人の持つ免疫細胞に感染し、進行すると免疫不全によって生命に関わるような重大な症状を引き起こすウィルスです。
現在のところHIVを完治させる治療法はなく、感染した場合は症状を抑えるための治療を継続する必要があります。
HIVは潜伏期間が長いウィルスで、感染から発症までに数年から10年程度の期間がかかります。
初期症状として感染から2~4週間後にインフルエンザのような症状が表れることがありますが、こうした症状は数週間で消滅し、その後しばらく無症候期の潜伏期間となって、発症します。
潜伏期間が長いため、感染していることに気が付かず、リスク行為をしていないのにいきなり発症したと感じるようなケースもあります。
HIVの検査は早い方法では感染機会の13日後から可能で、これはNAT検査という採取した検体を専門の機関で増幅させて行う方法の場合です。
通常の血液検査では抗体の有無を調べるため、体内に十分な抗体が作られるまでの2~3ヵ月程の期間がウィンドウ期となり、正確な検査を行うまでに長い期間が必要になるという特徴があります。
早期に検査を行った場合は正確な診断が行えない場合もあり、完全に感染を否定するためには2ヵ月以上が経過してからの検査が推奨されます。
梅毒
梅毒は梅毒トレポネーマという菌の感染によって、症状が進行すると体中に赤い発疹が生じることのある性感染症です。
梅毒の症状が表れるまでの期間は平均して3週間程度とされていますが、早い場合は10日程度、遅い場合は3ヵ月近く経ってから発症することもあります。
なお、梅毒は症状が出たり消えたりしながら進行していくため、疑わしい症状が表れたが自然と治ったと勘違いしてしまい、症状が進行していくこともあります。
検査が可能になるまでのウィンドウ期が3~6週間とされていて、潜伏期間や検査可能になるまでの期間に個人差が大きいという特徴があります。
クラミジア感染症
クラミジアは性病のなかで最も感染者が多い病気で、クラミジア・トラコマチスという病原体が粘膜から感染していきます。
粘膜への感染であるため、性器以外にも喉や肛門などにも感染する可能性があり、オーラルセックスでも感染を拡大させてしまうケースがあります。
クラミジア感染症の潜伏期間は1~4週間程ですが、男性器に感染した場合は尿道の痒みや痛み、膿が出るといった自覚症状が出やすいのに対し、女性の場合や喉などへの感染については自覚症状が出にくく、感染の発覚が遅れてしまうことも多いため、感染に気が付かずに性行為をして広がってしまうという場合もあります。
検査は感染の可能性がある日から2~3日程度から可能となりますが、病原菌の量などによっては正確な診察ができない場合もあるため1~3週間程度空けてからの検査を推奨するクリニックも多いです。
淋病、淋菌感染症
淋病は淋菌という菌の感染によって炎症が生じるもので、クラミジアと同様に粘膜へ感染します。
近年オーラルセックスによって感染が拡大している症状で、男性器への感染の場合は尿道の痛みなど自覚症状が表れやすいのに対し、女性への感染や喉への感染については自覚症状が出にくいため、知らずに感染拡大をさせてしまう可能性が高いといえます。
淋病の潜伏期間やウィンドウ期は2~7日間程度で、性行為後の早い段階で症状が表れやすく、検査が可能になる症状といえます。
泌尿器科や婦人科で検査を行う場合、クラミジアと淋病がセットで検査となる場合が多いです。
性器カンジダ症
カンジダ症は真菌によって炎症が引き起こされる症状で、性的な接触によって引き起こされるケースがあるため性病の1つとされていますが、免疫力の低下などによって常在菌が繁殖することで引き起こされるため、性行為などがなくても発症する場合があります。
潜伏期間やウィンドウ期は2~7日間とされますが、上記の理由から性行為の時期に関わらず、症状が気になるときに検査を行うという形になります。
マイコプラズマ・ウレアプラズマ
マイコプラズマやウレアプラズマは性器や喉に感染して炎症などを引き起こすものです。
マイコプラズマ肺炎が良く知られていますが、性病の場合とは別物の細菌で、性病のマイコプラズマは飛沫感染はせず、性行為などの接触による感染となります。
マイコプラズマとウレアプラズマはそれぞれ2種類ずつ原因菌がありますが、そのうち保険診療で検査が可能なものはマイコプラズマの内の1種類しかないため、それ以外に感染しているかどうかを確認する場合は自費診療での検査が必要になります。
そのため、尿道炎などの症状が出ているときに保険診療でクラミジアや淋病が検出されなかった場合に原因不明となり、自費での検査を行って正確に判断ができるというケースがあります。
クラミジアなどと同様に自己治癒するものではなく、放置していると症状が進行して不妊などの原因になるため、早めの検査と治療が必要といえるでしょう。
潜伏期間は3日から5週間程度と個人差による差が大きいですが、検査はリスク行為があった日から2~3日程度経過後に受けられます。
B型肝炎
B型肝炎はウィルスによって肝機能障害が生じるもので、精液や膣分泌物などに含まれるウィルスが血液や体液を介して感染します。
B型肝炎はワクチンによって予防することもできるため、ほかの性感染症と比べて対策がしやすいといえるでしょう。
B型肝炎の潜伏期間は2週間から6ヵ月程で、自覚症状がなかなか表れずに病状が進行してしまうこともあります。
検査はリスク行為から2ヵ月程度で受けることができるため、HIVなどと一緒に検査を行って感染状況を確認するとよいでしょう。
潜伏期間やウィンドウ期もほかの人に感染する?
性病の潜伏期間やウィンドウ期は病原体となるウィルスや菌などの量が少ない期間ではありますが、だからといって病原体がないわけではありません。
微量なウィルスや菌でもほかの人に感染する可能性はありますので、リスクがある場合の期間については性的な接触などのリスク行為は避けるか、コンドームなどを適切に利用してしっかりと予防をするように心がけましょう。
リスク行為後はいつから安全といえる?
各種性病のなかでもウィンドウピリオドが長いものとしてHIVが挙げられ、HIVの代表的な検査方法である抗原検査ではリスク行為から3ヵ月が経過している場合に検査を行って陰性が確認されることで、はっきりと感染の可能性を否定できるとされます。
検査方法によってはこれよりも早い段階で行えるものがありますが、その方法によって偽陰性の可能性などもありますので、検査を受ける際はその正確性についてよく医師などに相談するとよいでしょう。
なお、リスク行為から3ヵ月というのはあくまでも適切に検査を受けて陰性が確認された場合であって、症状が無ければ大丈夫ということではありません。
自覚症状が出ていなくても、感染していて潜伏期間の状態という可能性があるため、リスクがある場合はしっかりと検査を行うようにしましょう。
性病検査の受け方
性病の検査にはいくつかの方法があり、それぞれにメリットやデメリットがあります。
症状はないがリスクが心配な場合に受けられる行政機関の検査
都道府県や市区町村などの行政機関では、定期的に性感染症の検査を行っています。
検査は無料で受けることが可能で、住んでいる自治体以外でも検査をうけることができますが、検査日程が月に数回など限られる場合が多く、検査を受けられる人数も制限があるため、しっかりと日程調整を行うといった対応が必要となります。
また、検査を受けることができるのは自覚症状が出ていない場合に限られるケースがあるなど、自治体によって検査内容やルールに違いがあるため、まずは利用できる検査があるかどうかを調べてみるとよいでしょう。
性病の症状がある場合は対応する診療科に相談する
性器の痒みや痛み、不正出血などの自覚症状がある場合は、泌尿器科や婦人科といった診療科に相談するとよいでしょう。
症状がある場合は保険診療で価格を抑えて検査が可能で、そのまま治療もできます。
ただし、マイコプラズマなど一部の症状は保険診療での検査が行えないため、自費診療での検査などが必要となる場合もあります。
いつでも周りに知られずできるオンラインでの検査が便利
近年広まっている方法がオンラインでの検査で、検査キットを購入して自宅で尿や血液などの検体を採取し、専門機関に送ることで誰にも知られることなく、いつでも自分のタイミングで検査をうけることが可能です。
検査したい性病の種類によって検査方法やリスク行為後いつから検査が可能になるかなどが変わるため、オンライン検査の受付サイトなどで受けたい検査とその詳細をよく調べてから受けるようにしましょう。
まとめ
性病の検査がいつから可能になるかは、病気毎のウィンドウ期によって異なりますが、おおむね2~3ヵ月程度経過すれば、一通りの検査ができるといえるでしょう。
こうした感染症の多くは自然治癒する可能性が低く、放置しておくと病状が進行してリスクが大きくなってしまいますので、できれば早めに検査を受け、必要に応じて治療を行うようにしましょう。
オンライン検査であれば日程の調整や人にバレたくないといった場合にも適していますので、心配はあるけれどなかなか検査に行けないという方は、オンライン検査の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
参考文献