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睡眠薬の種類は?特徴や副作用も解説

 公開日:2024/01/10
睡眠薬の種類は?特徴や副作用も解説

睡眠薬は「なかなか寝つくことができない」、「熟眠感がなく寝ても疲れが取れない」などの睡眠障害の助けになります。

しかし、自分に合う睡眠薬の種類や選び方が分からず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そのような方に向けて、この記事では睡眠薬の種類や特徴について解説します。

また、服用時の注意点や副作用についても記事内で触れているため、睡眠に悩みを抱えている方はぜひ参考にしてください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

睡眠薬の種類

薬
睡眠薬は、非ベンゾジアゼピン系・ベンゾジアゼピン系・メラトニン受容体作動薬・オレキシン受容体拮抗薬の4つの種類があります。
以下でそれぞれの特徴について詳しくみていきましょう。

非ベンゾジアゼピン系

非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は依存性や副作用が軽減されるとして、臨床でもよく用いられる睡眠薬です。
主に非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、脳内のω1受容体に作用することで催眠効果を促し、深い睡眠へと導きます。
また非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、脳内のω1受容体に選択的に作用するため、以下のような特徴があります。

  • 深い睡眠を増やす
  • 依存性が少ない一方で、効果が中等度
  • 服用後の翌朝の眠気やふらつき等の副作用が少ない
  • 作用時間は超短時間型のものに限られる
  • 服用後の健忘(記憶が飛んでしまう症状)の副作用が出やすい

非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は比較的副作用や依存性が少なく使い勝手が良い一方で、薬効が中等度であることや、作用時間が超短時間であることが特徴です。
そのため寝つきの悪い方には効果的ですが、強い不眠症状に悩まされている方や、中途覚醒や早朝覚醒がある方には効果が認められない場合があるといえます。

ベンゾジアゼピン系

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は種類が豊富で、さまざまな不眠症状に合わせて使いやすい睡眠薬です。
効果がしっかりしており、脳の活動を抑えることで睡眠を促す薬です。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は脳内のω1受容体とω2受容体に作用することで、催眠・抗不安・筋弛緩・抗けいれんへの効果を発揮します。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には以下のような特徴があります。

  • 現在、使われている睡眠薬の系統である
  • 種類が豊富なため、幅広い不眠に合わせて使いやすい
  • 催眠効果だけでなく、不安や筋肉の緊張を和らげる作用を持つ
  • 即効性がある一方で睡眠のメカニズムが崩れやすく、浅い睡眠が増える
  • 長期間の服用により依存となりやすい

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には不安や緊張を和らげる効果があるため、幅広い不眠に合わせられるだけでなく、肩こりや頭痛によって眠れない方にも有効です。
一方で浅い睡眠が増え、睡眠の質が落ちてしまうのがデメリットです。
睡眠時間は確保できますが、深い睡眠が減ってしまい、翌朝の眠気の持続・ふらつき・健忘などの副作用があります。

メラトニン受容体作動薬

メラトニン受容体作動薬は、脳内ホルモンの「メラトニン」の受容体に作用し、自然に近い生理的睡眠を誘導するのが特徴です。
メラトニン受容体には、神経を抑制し体温を低下させることで睡眠を促す「M1受容体」と、体内時計を同調して睡眠のリズムを変動させる「M2受容体」の2つがあります。
メラトニン受容体作動薬は、この2つの受容体に作用することで、催眠作用や睡眠リズムを調節します。
メラトニン受容体作動薬の特徴は以下の通りです。

  • 自然な眠気を促し、睡眠のリズムを整える
  • 中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害に効果的
  • 依存性が少ない
  • 昼夜逆転を改善する効果がある
  • 服用後の翌朝に眠気が残る
  • 副作用として頭痛がある
  • 即効性がなく、効果発現までに2~4週間かかる

メラトニン受容体作動薬は、自然に近い睡眠状態を作り出してくれるため、入眠への強引さがなく依存性が少ない薬です。
一方で効果が得られるまでに時間がかかり、即効性に欠けるのがデメリットのため、入眠の頓服として使用したい方や強い睡眠障害を持っている方には向いていないでしょう。

オレキシン受容体拮抗薬

オレキシン受容体拮抗薬は、覚醒の維持に重要な物質である「オレキシン」の働きをブロックすることで、睡眠状態を促す作用を持ちます。
オレキシンは生理的に変動している物質で、日中は増加し、夜間は減少します。
つまりオレキシン受容体拮抗薬は、睡眠や覚醒の周期に関係しているオレキシンの働きを調節し、自然な眠気を強くする睡眠薬です。
オレキシン受容体拮抗薬は以下のような特徴を持っています。

  • 自然な眠気を促してくれる
  • 中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害に有効
  • 依存性が少ない
  • 服用後の翌朝に眠気が残ることがある
  • 夢を見る頻度が増え、悪夢になる場合がある

オレキシン受容体拮抗薬は自然な睡眠状態を作り出してくれる睡眠薬であり、入眠への強引さがなく、依存性が少ないことが特徴です。
そのため入眠障害に対してはやや効果が不十分な場合があり、効果や副作用に個人差がみられるのがデメリットです。
またオレキシン受容体拮抗薬は睡眠の質に影響し、夢をみているレム睡眠を増加させるため、悪夢を見る頻度が増えます。

作用時間による睡眠薬の特徴

砂時計
ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は臨床で主に使われています。
これらは脳の機能を低下させることで催眠作用をもたらしており、効果発現のためには作用時間が重要です。
またこの作用時間が異なることにより、幅広い不眠症状やさまざまな睡眠障害に対応でき、大きく分けて超短時間型・短時間型・中時間型・長時間型の4つがあります。

超短時間型

超短時間型睡眠薬の作用時間は2〜4時間で、効果のピークは1時間未満であり、超短時間型の睡眠薬には以下のような特徴があります。

  • 半減期(血中濃度が半分になるまでにかかる時間)が2~4時間
  • 入眠障害に効果的
  • 服用後の翌朝に眠気が残るなどの「持ち越し効果」がほとんど起こらない

代表的な薬として、マイスリー・アモバン・ルネスタ・ハルシオンがあり、これらは非ベンゾジアゼピン系とベンゾジアゼピン系の薬に分類されます。

短時間型

短時間型睡眠薬の作用時間は6〜10時間、効果のピークは1〜3時間であり、短時間型の睡眠薬には以下のような特徴があります。

  • 半減期(血中濃度が半分になるまでにかかる時間)が6~10時間
  • 入眠障害や中途覚醒に効果的
  • 服用後の翌朝に眠気が残るなどの「持ち越し効果」があまり起こらない

代表的な薬として、レンドルミン・エバミール・リスミーがあり、これらは全てベンゾジアゼピン系の薬に分類されます。

中時間型

中時間型睡眠薬の作用時間は12〜24時間、効果のピークは1〜3時間であり、中時間型の睡眠薬には以下のような特徴があります。

  • 半減期(血中濃度が半分になるまでにかかる時間)が12~24時間
  • 中途覚醒や早朝覚醒に効果的
  • 服用後の翌朝に眠気が残るなどの「持ち越し効果」が生じやすい

代表的な薬として、ユーロジンやベンザリン、サイレースがあり、これらはベンゾジアゼピン系の薬に分類されます。

長時間型

長時間型睡眠薬の作用時間は24時間以上、効果のピークは3~5時間であり、長時間型の睡眠薬には以下のような特徴があります。

  • 半減期(血中濃度が半分になるまでにかかる時間)が24時間以上
  • 中途覚醒や早朝覚醒に効果的
  • 薬の作用が1日中ずっと持続する

代表的な薬にはドラールがあり、これはベンゾジアゼピン系の薬です。

不眠症のタイプ別の睡眠薬の種類は?

お薬手帳
不眠症のタイプによって適切な睡眠薬の種類が変わります。
以下では、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害の不眠症のタイプごとに、適切な睡眠薬を紹介します。

入眠障害の場合

「なかなか眠れない」、「寝つきが悪い」などの入眠障害の場合には、超短時間型睡眠薬が使われます。
超短時間型睡眠薬は効果発現までの時間が非常に短いため、入眠障害に向いています。

中途覚醒の場合

「夜中に何度か目覚めてしまう」、「眠りの途中で起きてしまう」などの中途覚醒の場合には、中時間型睡眠薬が使われます。
中時間型睡眠薬は効果発現までに比較的時間がかかるため、中途覚醒に向いており、不安や緊張が原因で睡眠障害を生じている方にも適しています。

早朝覚醒の場合

顔を覆う女性
「もっと眠りたいのに、朝早くに目覚めてしまう」などの早朝覚醒の場合には、中時間型睡眠薬や長時間型睡眠薬が使われます。
薬の効果発現までの時間がゆっくりなため、睡眠中も長い時間効いてくれます。

睡眠薬にはどんな副作用がある?

熱がある女性
睡眠薬には以下のような副作用が挙げられます。
1つ目は急な眠気や眠りの深さが増すことが挙げられ、睡眠薬の内服により眠くなるまでの時間が短くなることや、眠りが深くなることがあります。
特にベンゾジアゼピン系の睡眠薬の場合、中枢神経系を強く抑制する作用があるため、このような副作用が現れるのが特徴です。
2つ目に挙げられる副作用は、錯乱や幻覚です。睡眠薬の服用により、薬物が体内に蓄積され、服用後の翌朝も作用が持続している場合があります。
これにより眠気の持続だけでなく、錯乱や幻覚などの症状を引き起こす可能性があります。
3つ目に挙げられる副作用は、記憶障害です。睡眠薬には、記憶の形成や保持を阻害する作用があります。
そのため、長期的な睡眠薬の服用により、記憶障害を引き起こす可能性があります。
4つ目に挙げられる副作用は身体依存です。睡眠薬の長期的な服用により、身体が睡眠薬に頼ることで睡眠を確保するようになり、睡眠薬の中止が難しくなります。
5つ目に挙げられる副作用は精神依存です。
睡眠薬の長期的な服用により、「睡眠薬を飲み続けないとイライラする」、「睡眠薬を手放すことに不安や恐怖を感じる」などの精神的な依存を引き起こす可能性があります。
以上の5つが代表的な睡眠薬による副作用です。睡眠薬を使用する際は、主治医と相談して必要な処方量や使用期間を守ることが重要です。

睡眠薬を服用するときの注意点

薬と手
睡眠薬を服用するときの注意点にはどのようなものがあるのでしょうか。
以下では具体的に服用時の4つのポイントについて解説します。

寝る前に飲む

睡眠薬は就寝直前に飲みましょう。
特に超短時間型睡眠薬や短時間型睡眠薬は作用発現時間が早いため、服用後も活動していると、転倒などの不慮の事故につながる恐れがあります。
睡眠薬は寝る前に服用しましょう。

食後すぐには飲まない

食事
睡眠薬を食後すぐに服用すると、効果に差が出てしまうため、食後すぐには飲まないようにしましょう。
例えばドラールなどの睡眠薬は、食後すぐに服用すると効果が強く出すぎる可能性があります。
そのため、睡眠薬は食後すぐには飲まないようにしましょう。

お酒と一緒に飲まない

お酒
アルコールは睡眠薬の代謝を遅らせる効果を強めるため、睡眠薬をお酒と一緒に飲むことは危険です。
お酒と併用することにより、意識消失や記憶障害を引き起こす可能性があります。また、体内にアルコールが残った状態での服用も、お酒との併用と同様に危険です。
睡眠薬はお酒と一緒に飲まないようにしましょう。

依存性

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の場合、長期に渡って毎日服用することにより「同じ薬を服用し続けたい」、「薬がないと不安になる」などの依存状態となる場合があります。
さらに精神的な依存状態だけでなく、もともと得られていた効果が弱くなる「薬剤耐性」や、服用量を減らした際や中止した際に不快な症状が生じる「離脱症状」が現れる場合があります。
薬剤に対する精神的な依存・耐性・離脱症状の状態となると、睡眠薬の減量や中止が難しくなるため、必要以上に長く服用し続けないことが重要です。
一方で、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の毎日の服用や長期服用の必要がある場合もあるため、主治医と十分な相談を行いながらの服用が望ましいでしょう。

自分の症状に合う睡眠薬を相談しよう

医療従事者
睡眠薬は自分の症状に合わせたものを選び、使用することが大切です。自分の症状に合った睡眠薬を選ぶためには、以下の3点がポイントです。
まずは、自分が抱えている睡眠障害の種類を知りましょう。
睡眠の質が低下しているのか・入眠に難しさを感じているのか・早朝から目が覚めてしまうのかなど、自分の睡眠障害の種類を理解することが大切です。
2つ目は、医師に相談することです。
睡眠薬の処方は医師によって行われるため、自分で薬を選んで服用してしまうと不適切な使用となり、健康被害を生じる可能性があります。
医師に相談し、自分の症状や生活環境を伝えることで、適切な睡眠薬を処方してもらいましょう。
3つ目は睡眠薬の種類を理解することです。睡眠薬にはさまざまな種類があり、作用時間・副作用・効果がそれぞれ異なり、症状によって適切な睡眠薬が異なります。
睡眠薬の種類を理解し、自分に合ったものを服用しましょう。
これらの3つのポイントを踏まえながら、自分の症状に合う睡眠薬を選ぶことが大切です。

編集部まとめ

寝る人
睡眠薬には大きく分けて4つの種類があり、特徴や副作用は薬によってそれぞれ異なります。

また作用時間もそれぞれ4つのタイプに分けられ、入眠障害・早朝覚醒・熟眠障害など、生じている睡眠障害によって睡眠薬は使い分けられます。

このように、睡眠薬にはさまざまな種類があるため、自分の症状に合ったものを服用することが大切です。

この記事の監修医師