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二次性高血圧とは?原因や症状・治療方法を解説

 公開日:2024/02/07
二次性高血圧とは?

高血圧と聞くと多くの方が頭に浮かぶのは、生活習慣や遺伝的な要因によって起こる高血圧です。これは、本態性高血圧または一次性高血圧と呼ばれているものです。

その一方で、特定の原因がわかっている高血圧があります。これを二次性高血圧といい、さまざまな健康上の問題から引き起こされ、原因も種類もさまざまです。

本態性高血圧のように原因を特定できないものとは異なり、二次性高血圧は特定の原因に起因しますので、症状を理解することで早めの治療や対策を打てます。

ここでは、一般的には少ないケースである二次性高血圧について、種類・原因・症状・治療などを説明します。

小鷹 悠二

監修医師
小鷹 悠二(おだかクリニック)

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福島県立医科大学医学部卒業 / 専門は循環器内科 / 2009/4月~2013/3月 宮城厚生協会坂総合病院 / 2013/4月~2017/3月 東北大学病院循環器内科・同大学院 医員 / 2017/4月~2018/5月 仙台オープン病院 循環器内科医長 / 2018/5月~ おだかクリニック 副院長 / 診療所での外来業務に加え、産業医、学校医としての業務も行っている。 また、医師業務以外の副業も積極的に行っており、ビザスクなどを通して企業の医療アドバイザー業も副業として行っており、年間70社以上の会社にアドバイザーとして助言を行うなどしている。 ライティングも行っており、m3.comや、Ubie病気のQ&A(https://ubie.app/byoki_qa/doctors/yn8ueqd6kjn)などにて定期的に執筆活動を行っている。

二次性高血圧とは

二次性高血圧とは
一般的にいわれている高血圧は、大半が生活習慣や遺伝要因によって発症しますが、具体的な原因は特定できません。
しかし、この本態性高血圧は、高血圧症全体の90%を占めています。では残りの10%はどういったものでしょうか。これが、二次性高血圧です。
二次性高血圧は原因を特定できる高血圧で、腎実質性・腎血管性・内分泌性・血管性・脳幹部血管圧迫・遺伝性・薬剤誘発性などの種類があります。
実際に二次性高血圧と診断されているケースは多くありません。ほとんどの場合は、本態性高血圧として治療をされています。そのため、結果的に改善が遅れる場合が考えられるのです。
逆に、早めに二次性高血圧であると判断されれば、原因である疾患に対する治療を行うことができます。それによって、高血圧の症状の緩和や合併症に対する対策がとますので、高血圧が改善する可能性があります。
一般の高血圧の治療は、長期間治療薬を飲み続けたり、生活改善を行ったりするものです。早めに二次性高血圧であることを特定し、適切に治療することは非常に重要です。

本態性と二次性の違い

本態性と二次性の違い
これまででわかるように、本態性高血圧は、原因が特定できない高血圧です。一般的には、生活習慣・遺伝的要因・加齢などによって引き起こされるといわれています。
一方、二次性高血圧は、ある特定の原因によって引き起こされる高血圧です。何らかの別の病気に付随するもの・薬の副作用・腎臓疾患・内分泌障害・薬物乱用などが原因となりえます。
本態性と二次性の違いで重要なことは、本態性高血圧では高血圧自体が問題であり、二次性高血圧では、原因となる疾患を治療することが重要であるという点です。
そのため本態性高血圧では生活習慣改善や薬物療法で症状の改善を試みるのに対し、二次性高血圧では高血圧の原因に対する治療を主に行います。
例えば、腎臓疾患が原因である場合は、まず腎臓の治療を優先して行うという具合です。

二次性高血圧の主な種類

二次性高血圧の主な種類
多くの疾患で、高血圧を症状の1つとしてあげています。
特に高血圧から発見されやすい二次性高血圧の原因疾患としては、腎血管性高血圧・薬剤誘発性高血圧・原発性アルドステロン性・PPGLなどの内分泌疾患があります。
では、それぞれについて、具体的に見ていきましょう。

腎血管性高血圧

腎血管性高血圧は、腎動脈が細くなることで起こる病気です。腎血管高血圧においては、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系という血圧を調節する人体のシステムが影響しています。
RAA系は血圧が下がったり塩分不足になったりすると活性化します。そのとき、最初に腎臓の緻密班という領域からレニンが分泌されるのです。
レニンは全身を循環して、アンジオテンシンノーゲンというタンパクからアンジオテンシンIIという血管収縮物質を作り出します。また、副腎からのアルドステロン分泌を促進させることもあります。これにより、血圧上昇を起こすのです。
腎血管性高血圧は、腎臓に血液を供給する腎動脈が細くなることで、緻密班からレニンが過剰分泌され血圧を上昇させてしまうものです。
腎動脈が細くなると腎臓への血流量が減少します。緻密班は、この状況を血圧や塩分量の不足と錯覚してレニンを分泌します。その結果、血圧の上昇に繋がるのです。
原因である腎動脈の狭窄は、高齢者であれば動脈硬化が原因であることが最も多く、若年から中年の女性においては線維筋性異形成や大動脈炎症候群などの血管炎が考えられます。

薬剤誘発性高血圧

薬剤誘発性高血圧
薬剤誘発性高血圧は、高血圧以外の治療薬が原因でおこる高血圧です。よく処方される薬剤としては、鎮痛剤である非ステロイド性消炎鎮痛剤(プロスタグランジン産生障害)があります。
また、漢方薬に含まれる甘草が原因でおきる偽性アルドステロン症も重要です。原発性アルドステロン症と同様の低カリウム血症を伴うことがあります。
薬剤誘発性高血圧は、ほかにステロイド・交感神経刺激薬・抗癌剤だけでなく、一般薬・サプリメント・漢方・健康食品が原因である場合も考えなければなりません。
薬剤誘発性高血圧の場合は薬剤の投与開始と血圧上昇の時期が一致することで疑えますし、薬剤を中止すると高血圧が改善しますので判断がしやすいといえるでしょう。

原発性アルドステロン性

アルドステロンが過剰に分泌されることによって高血圧になる病気です。血圧を調節するレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系といった、血圧が下がることや塩分不足に対応するシステムが関連しています。
血圧が下がったり塩分不足になったりすると、血管を収縮させたり、腎臓からのナトリウム排泄を抑えたりして血圧の上昇を促すでしょう。
通常アルドステロンの分泌はレニンが増加することで促進されます。
しかし、原発性アルドステロン症ではアルドステロンが過剰に分泌されてしまい、ネガティブフィードバックが発生し、レニンの産生が減少してしまうでしょう。
原発性アルドステロン症を起こす疾患としては、アルドステロン産生腺腫(APA)と特発性アルドステロン症(IHA)が考えられます。まれに悪性腫瘍が原因である場合が考えられますので、注意が必要です。
原発性アルドステロン症は二次性高血圧の中で最も多い原因疾患といわれています。ほかの合併症が多いことも有名です。

PPGL

PPGLは、カテコラミンというホルモンが過剰分泌されることで高血圧になる病気です。
カテコラミンとは、アドレナリン・ノルアドレナリン・ドパミンといった交感神経を活性化させるホルモンで、神経伝達物資です。
ストレスにさらされると交感神経を活性化するためにカテコラミンを分泌します。それによって、ストレスに対応した興奮状態になるのです。
カテコラミンは傍神経節と呼ばれる器官で生成され、その1つである副腎髄質を起源とする腫瘍が褐色細胞腫です。副腎以外の傍神経節由来の腫瘍は傍神経節腫瘍になります。この2つの腫瘍を合わせてPPGLと呼んでいます。
PPGLは原発性アルドステロン症に比べると多くはありませんが、一過性の激しい血圧上昇を誘発しますし、腫瘍が悪性の可能性がありますので、放置できない病気です。

二次性高血圧の原因

二次性高血圧の原因
二次性高血圧の原因は、本態性高血圧とは異なり、さまざな特定された疾患によって引き起こされます。
では、どのような原因が考えられるのでしょうか。

腎臓の病気

腎臓が正常に機能しないときは、体内のナトリウムや水分のバランスが崩れるため、血圧が上昇することがあります。腎臓は血圧を調節する重要な役割を果たしているためです。
たとえば、腎臓の炎症性疾患である腎炎は、腎臓の機能を損ない高血圧を引き起こす可能性があります。その中でも、糸球体腎炎・ループス性腎炎は注意が必要です。
多発性嚢胞腎は腎臓に嚢胞が形成される遺伝的な疾患ですが、腎臓機能に損傷を与えるため、高血圧を引き起こすことがあります。腎動脈狭窄は、腎臓に血液を供給する腎動脈が狭窄するので、腎臓が血液圧を維持しようと高血圧が発生するでしょう。
腎臓移植後にも高血圧になるリスクが高まります。腎臓移植を受けた患者さんは、免疫抑制薬の使用や腎臓の異常に関連した高血圧のリスクが高まるためです。

薬の副作用

薬の副作用
消炎鎮痛薬であるNSAIDsには血圧上昇効果があります。また一部の降圧薬 (β遮断薬、ACE阻害薬、ARBや利尿薬)の効果を減らします。
漢方薬に含まれる甘草や肝庇護のためのグリチルリチンは、偽性アルドステロン症による血圧上昇の原因の1つです。
さらに、慢性腎臓病に伴う貧血で使用するエリスロポエチン製剤・免疫抑制剤のシクロスポリンなどが高血圧の原因となる薬として挙げられます。
また、経口避妊薬やホルモン補充療法薬として使用されるエストロゲン製剤・抗うつ薬などの交感神経刺激作用を有する薬なども同じようなリスクがあります。
 

ホルモンの異常

ホルモンの異常が原因で二次性高血圧になることがあります。その代表的なものが、副腎腫瘍です。
副腎皮質から過剰にアルドステロンが分泌される副腎腫瘍により、ナトリウムの再吸収が増加し、血圧が上昇します。その結果、高血圧が引き起こされます。
甲状腺疾患も原因であるの1つです。甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症は、高血圧の原因となる可能性があります。
ほかにも、甲状腺ホルモンや副甲状腺機能亢進症も高血圧の原因になりえます。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に一時的な呼吸停止が起きるものです。呼吸が浅くなったり停止したりすることで高血圧が発症します。これは、いびき・肥満・日中の眠気などが起きたときに、簡易モニターや睡眠ポリグラフィーの分析により診断できます。

二次性高血圧の症状

二次性高血圧の症状は、本態性高血圧と同じようなものが多くなります。しかし、もともとの原因となる症状に関連したものもあります。
高血圧の典型的な症状としては、頭痛・頭部や首の圧迫感・めまいなどです。腎臓関連が原因の場合は、血尿・むくみ・尿量の変化・腰痛などがあります。甲状腺関連の原因の高血圧では、多汗・体重減少・手のふるえが出る場合があります。

頭痛

二次性高血圧で頭痛が起きる場合は、一般的な高血圧の症状と判断はつきにくいでしょう。ただいくつかの特徴を持っています。
二次性高血圧の頭痛は、後頭部に現れることが多いと報告されています。また、その痛みには鈍痛や圧迫感が伴うことが特徴です。
二次性高血圧の頭痛は長時間にわたって継続することが多く、繰り返しの発生も特徴です。

動悸

動悸
動悸は、高血圧に関連して現れることが多く、脈の拍動を強めたり、脈を速くします。動悸をきたす原因となる症状としては、原発性アルドステロン症・褐色細胞腫・甲状腺機能亢進症・バセドウ病などです。
症状として通常よりも心臓の拍動数が速く感じられますが、これは高血圧によって心臓に負荷がかかっているためです。心臓の鼓動が強く感じられ、胸部や首の血管で鼓動が脈動することもあります。
動悸から、不快感・不安定感を引き起こすことも考えられ、ストレスが増加します。

体重減少

高血圧の原因となる疾患が腎臓疾患の場合は、腎臓の機能が低下することで、体重減少が起きる場合があります。
また副腎腫瘍によるアルドステロンの過剰分泌は、低カリウム血症を引き起こし、結果として体重減少が起きる可能性があります。
甲状腺機能亢進症などの甲状腺関連の疾患では、代謝率を増加させて体重減少を引き起こすのです。
体重減少は、高血圧が直接の原因ではなく関連したほかの症状が原因であるため、それに応じたアプローチが必要です。

二次性高血圧の治療方法

二次性高血圧の治療方法
二次性高血圧は、原因となる症状がありますので、治療方法も血圧の原因に応じて異なります。
これは、高血圧の原因となる特定の疾患の治療が最優先で行われるからです。たとえば腎臓疾患の場合は、腎臓の機能を改善する治療が行われますし、副腎腫瘍の場合は手術による腫瘍の摘出が行われるでしょう。
また、本態性高血圧と同様に、血圧を降下させるために薬物療法が使用されることもあります。原因となる疾患によっては、複数の薬物が併用されます。

薬物療法

二次性高血圧の薬物療法は、高血圧の原因によって異なります。これは、まず原因である特定の疾患を治療するからです。
腎臓関連の原因による高血圧の治療には、利尿薬・アンジオテンシン変換酵素阻害薬・アンジオテンシンII受容体拮抗薬などが使用されます。
甲状腺機能亢進症などの甲状腺関連が原因の場合は、甲状腺機能を正常化するための薬物療法を行うことが一般的です。
薬物が原因の高血圧の場合は、その原因となる薬物の中止をしたり、代替薬を検討したりすることから始めます。

外科手術

二次性高血圧の原因が特定の疾病の場合、必要に応じて外科手術が選択されます。
たとえば、副腎腫瘍によって過剰にアルドステロンが分泌されることで高血圧が引き起こされる場合、副腎手術が必要となります。手術によって腫瘍を取り除き、アルドステロンの分泌を制御するのです。
腎動脈狭窄などの腎臓関連が原因の場合には、腎臓動脈形成術やステント挿入などの手術が検討されます。血流を改善するために行われる手術です。
甲状腺の機能が、腫瘍によって阻害されている場合は、手術により甲状腺腫瘍を取り除きます。
遺伝性の疾患の1つにポリシスティック・キドニー病(PKD)があります。これは、腎臓の機能障害やその他の合併症を引き起こすことがあり、高血圧も可能性の1つです。
PKDによって高血圧が引き起こされている場合は、腎臓の大きな嚢胞が血圧に圧力をかけることが直接的な原因の場合があるため、腎臓移植や腎臓摘出などの外科的なアプローチの可能性があります。

編集部まとめ

まとめ
二次性高血圧は、原因となる症状がわかっていることが多く、それらに対してアプローチすることで、改善されます。しかし、それだけではなく、普段の生活習慣改善も重要です。

普段から、塩分摂取量のコントロール・体重管理・適切な食事・適度な運動・禁煙・アルコール制限などを意識しましょう。

また、常に血圧をモニターリングしておくことも重要です。薬物などが原因の二次性高血圧の場合など、すぐに判断できるものも少なくありません。

担当の医師に相談しながら、血圧の自己管理をすることが大切です。

この記事の監修医師