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白内障手術のリスクは?メリットやデメリットも解説

 公開日:2024/01/22
白内障手術のリスクは?

白内障は目の一部である水晶体が濁ることにより、徐々に視力が低下する疾患です。

加齢が原因のため50歳以上で増加し、80歳以上ではおよそ8割の方が白内障を患うといわれています。

非常にゆっくりと進行し、放っておくと最終的に失明の恐れもありますが、現在では日帰り手術も可能なほど治療が身近になりました。

今回は白内障の手術について掘り下げ、メリット・デメリット・合併症の話をします。

柿崎 寛子

監修医師
柿崎 寛子(医師)

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三重大学医学部卒業 / 現在はVISTA medical center shenzhen 勤務 / 専門は眼科

白内障手術のリスクは?

白内障手術のリスクは
白内障の手術は、白内障によって濁ってしまった水晶体を取り出し、眼内レンズを挿入するものです。
水晶体は目の中にある透明なレンズで、目のピントを合わせる役割を担っているため、水晶体が濁ると視界がかすんだり物がぼやけて見えたりします。
80歳以上の高齢者ではほぼ100%の方が発症しますが、発症を未然に防ぐことはできず、発症したら手術が必要です。
すべての手術には合併症のリスクがあり、白内障の手術も例外ではありません。白内障の手術には、術後合併症・術後感染症のリスクがあります。
合併症が起こる確率は0.1%、つまり1000人に1人の割合のため基本的には心配はいりません。しかし、合併症が起こった際に放置しておくと失明の危険性があるため注意が必要です。
術後、数日内に目の痛み・充血・浮腫みなどの違和感を感じたらすぐに受診を検討しましょう。

白内障手術のメリット

白内障手術のメリット
先ほど手術のリスクを述べましたが、手術はもちろんメリットの方が大きいです。
手術ときくと、不安や抵抗を感じるかもしれませんが、手術をせずに放置しておくと失明の可能性もある疾患ですから、きちんと治療を行いましょう。

視力を改善できる

白内障の手術の1番の目的は視力回復ですが、元々持っている近視・乱視・遠視の改善も期待されます。詳しく解説していきます。
白内障の視力回復についてはレンズによって異なります。
手術で使用する人工レンズには、焦点が1つの単焦点眼内レンズと2点以上に焦点を合わせることが可能であり、主に老眼対策に用いられる多焦点眼内レンズがあります。
その他、着色レンズ・非球面レンズ・乱視矯正レンズなどです。
単焦点レンズは近くか遠くかのどちらかにしかピントが合わないため、術後もメガネかコンタクトが必要になります。
多焦点レンズは近く・中距離・遠くなど最大5つの距離にピントを合わせることができます。そのため、術後は約8割以上の方が裸眼で生活を送っています。
どのレンズにもメリット・デメリットがありますから、自分の日常生活に合わせて担当医とよく相談して選択するのが大切です。

視界が良くなり生活しやすくなる

視界が良くなり生活しやすくなる
白内障になると、視界にかすみ・滲みが生まれたり強いまぶしさを感じたりします。
水晶体は眼のレンズですから、カメラのレンズが曇っている状態を想像するとイメージが湧きやすいでしょう。
これが、視界のかすみ・もやがかかった見え方・物が二重に見えるといった現象を引き起こします。
また水晶体が白く濁ると、光の屈折が上手くいかず網膜に像を結べません。網膜に焦点があたらないため、光が散乱してしまいます。
屈折異常によって乱反射が引き起こされ、ぼやける・眩しいといった症状も出現します。
手術によってレンズの曇りが取り除かれるため視界は一気に拓けることでしょう。物がはっきりと見えるため生活のしやすさは各段にあがります。

眼底を診察しやすくなる

眼底とは、眼球内部の後ろの方を指し、網膜・脈絡膜などの総称です。眼底にある網膜には血管が走っているのですが、網膜の血管は人の身体の中で唯一直接見ることができます。
そのため眼底を診察すると、眼の病気だけでなく高血圧による動脈硬化・糖尿病に伴う血管異常といった全身疾患の早期発見も可能です。
もちろん、緑内障・網膜色素変性といった失明に関与する重大な疾患の発見にも、眼底検査は用いられます。
白内障になると、水晶体の濁りにより網膜に到達する光の量が減少するため、眼底検査が正しく行えません。
手術によって、曇りのないレンズに変更することで網膜に光が届き、眼底を診察しやすくなります。

白内障手術のデメリット

白内障手術のデメリット
手術によって得られるメリットは大きいですが、もちろんデメリットもあります。
手術前に不安を解消するためにもマイナスな側面を正しく理解して、担当医と話し合うことが重要です。

度数の修正が必要になることがある

眼内レンズを挿入するにあたって、術前に正確な眼軸長の測定が必要です。
ここで正確な値を測定できなければ、術後に屈折度数のずれが生じ、視力が低下する場合があります。もし度数ずれが起こった時は修正が必要です。
白内障の手術を保険適用内で行う場合は、単焦点レンズを選択します。単焦点レンズは、近くか遠くのどちらかにしか焦点を定められないため、必ずメガネが必要です。
多焦点レンズを選択した場合でも、細かな文字を見たい時・暗い場所で作業を行う時にはメガネが必要になることがあります。

メガネが必要になることが多い

また、術後には必ず保護メガネと呼ばれるメガネの装着が必要です。
保護メガネはピントを合わせる目的とは異なり、術後ケアの1つとして、目にホコリ・ゴミが入るのを防いだり手で目を触って感染が起こるのを防いだりするのを目的としたものになります。
術後数日~1ヵ月程度は保護メガネを着用すると良いとされています。

白内障手術には入院が必要?

白内障手術には入院が必要
平成初期の白内障手術は、手術時間が長く術後の安静も必須であったため、入院で行うのが一般的でした。
現在では、医学の進歩によって手術時間は20分前後と速さ・安全性が向上しています。そのため、希望すれば日帰り手術が可能です。
しかし、翌日に術後の状態を確認する必要があるため、当日・翌日に来院する手間はかかります。また、白内障は一般的に高齢者に多い疾患です。
何度も通院する手間・自己点眼の正しい方法の習得・術後すぐで眼が不自由な状態での移動を考慮し、日帰り手術のデメリットが大きい場合は入院をおすすめします。
必ずしも入院が必要ではありませんが、日帰り手術を希望する際には、担当医・家族と話し合って本当に可能かどうかを確認しましょう。
手術自体は高機能眼内レンズの開発や手術機器の進歩によって、昔と比べて各段に安全に行われるようになりました。
しかし術中・術後合併症は現在も存在しており術後の眼の機能低下を招きます。
術前検査をもとに、術中・術後合併症のリスクが高い場合は入院での手術を行うか、事前に担当医とよく話し合っておくことが大切です。

白内障手術の主な合併症は?

白内障手術の主な合併症は
白内障手術における術中・術後合併症のメカニズムは、医学の進歩とともに次第に明らかになってきていますが、現在も多数存在しています。
中には、術後数か月経過してから発症する疾患もあるため注意が必要です。代表的な術中・術後合併症について詳しく解説します。

後嚢破損

後嚢破損とは、手術中の合併症です。白内障の手術は水晶体の濁りを取り除くために水晶体の周りにある水晶体嚢と呼ばれる部分にメスを入れます。
そして中の濁った水晶体を取り除き、新しい人口レンズを挿入します。その際、水晶体嚢の後面にキズをつけてしまうのを後嚢破損といいます。
後嚢破損は、決して稀ではなく水晶体が硬かったり後嚢破損を起こしやすい眼を持っていたりすると、どんな熟練した医師でも起こりうる合併症です。
たとえ起こってしまったとしても適切な対処を行えば無事に手術を終えることができます。

術中虹彩緊張低下症候群

術中虹彩緊張低下症候群
白内障の手術を行うには、瞳孔が縮瞳していると眼内の様子を詳しく診ることができません。
そのため、事前に散瞳薬を点眼して強制的に散瞳させた状態を作り上げる必要があります。散瞳が不十分な状態で手術を行うと難易度が上がるため危険です。
通常は散瞳薬を点眼すると、瞳孔が8mm程開いた状態がキープされます。
しかし特定の内服薬を常用していると、術中虹彩緊張低下症候群と呼ばれる現象が起こり、瞳孔が開きにくく1度開いても術中に閉じてしまいます。
術中虹彩緊張低下症候群を引き起こすとされている薬剤は、前立腺肥大症・高血圧症・統合失調症に対して処方されるものです。
事前に相談しておけば、術前に対策をとることで安全に手術を行えるため、普段飲んでいる薬は医師・薬剤師に相談しましょう。

創口熱傷

現在主流になっているのは超音波白内障手術と呼ばれる術式です。
濁った水晶体を取り出すため角膜に3㎜程度の創口をつくり、そこから超音波で皮質・核を粉砕した後に吸引します。
超音波の出力が増加したり、超音波時間が長くなったりすると創口熱傷が起こります。
創口熱傷は、切開創の閉鎖不全のリスクが高まる危険な合併症です。核が硬い白内障の場合は、超音波の出力時間が長くなると予想されるため術式の変更が必要になります。

術後眼内炎

術後眼内炎は、白内障の術後に眼の中で細菌が繁殖してしまい、化膿した状態になることをいいます。症状は、眼痛・充血・視力低下・まぶたの腫れ・眼脂の増加です。
術後眼内炎には、早発性・遅発性の2つがあり、どちらも手術を終えて自宅に帰ってから発症します。
発症率は0.052%と非常に稀ですが、視力低下の危険があるため術後は注意が必要です。
早発性術後眼内炎は、術後2週間以内に発症し、早い人では3日以内に症状が出現します。早発性の場合、眼の中に侵入している細菌は手術中に入ったものであるため強毒菌です。
急激な視力低下の危険性があるため、症状が現れたらすぐに受診して処置する必要があります。
遅発性術後眼内炎は、術後1ヵ月以降に症状が現れます。手術が終わった後に何らかの細菌が侵入することが原因ですが、弱毒菌ですが症状を確認したらすぐに受診しましょう。

眼内レンズの傾きや脱臼

眼内レンズを入れた後、レンズが正常の位置ではなくずれてしまうことを傾き・脱臼といいます。
原因は、水晶体嚢と呼ばれる眼内レンズが入っている袋と眼球壁をつなぐチン氏帯の力が弱ったり切れたりするためです。
チン氏帯はハンモック状であり、加齢に伴って少しずつ力が弱くなります。
1度ずれたり脱臼したりすると、自然に戻ることはなく最終的に眼の中に落下して視力が低下します。傾き・脱臼に対しては眼内にレンズを縫いつける再手術が必要です。
術後は毎日見え方を確認し、おかしいと思ったらすぐに受診しましょう。

黄斑浮腫

黄斑浮腫は、網膜の中心部である黄斑に血管から漏れ出た水分が溜まって、むくみが生じる疾患です。
多くは糖尿病が原因ですが、術後に決められた点眼を怠ったり飲酒などの禁止事項を守らなかったりすると起こりやすいです。
片目をつぶってもう片方の眼だけで物を見た時に、ゆがんで見えたりぼやけて見えたりする場合は黄斑浮腫の可能性があります。
浮腫の程度・状態に合わせて治療法は様々あり、軽いものであれば薬物療法が選択されます。
その他、注射・手術などの治療法もあるため、医師と話し合って適切な治療を行いましょう。

眼圧上昇

白内障の術後は基本的に眼圧が下がるのですが、一時的に眼圧が上がってしまう場合があります。
手術中に眼内の液体が流れ出てしまったり、術後に眼内で炎症が起こったりすることが原因となります。
その他手術のために、眼の中にスペースを作り出す際に使用する粘弾性物質と呼ばれるゼリー状の薬剤が眼の中に残ってしまうのも原因の1つです。
眼圧が上がると角膜に浮腫をきたし、見えにくくなったり緑内障を発症するきっかけになったりするため注意が必要です。眼圧を下げる点眼薬を使用し、定期的な検診を行います。

後発白内障

後発白内障の症状は白内障とまったく同じであり、術後5年以内に2割の方が発症するといわれています。
手術の際に、水晶体を包んでいる袋である水晶体嚢の前面は取り除かれますが、後面は残されています。
水晶体嚢の後面に白内障の原因である濁った細胞が残っており、増殖すると後発白内障の発症です。
完全な予防法はないため発症をなくすことはできませんが、発症してしまってもレーザー治療で完治できます。

白内障手術の費用相場は?

白内障手術の費用相場は
眼内レンズの種類・保険適用の有無によって費用額は大きく異なります。
単焦点レンズを選択した場合のみ、保険適用です。日帰り手術を想定し、自己負担割合1割で片目約1万5千円・2割で約3万円・3割で約4万5千円になります。
入院で行う場合は差額ベット代・食事代が必要です。
多焦点レンズを選択すると保険適用外になるため、レンズの種類・手術方法によっても異なりますが、40万円~70万円(税込)を想定しておくと良いでしょう。
所得・公的制度の使用によっても金額は左右されますので、あくまで目安としてください。

編集部まとめ

まとめ
白内障は、加齢によって発症し80歳以上の方では有病率ほぼ100%と、高齢者にとって身近な疾患です。手術によって改善しますが、手術は必ずリスクを伴います。

手術のリスクを正しく理解し、サポートしてくれる家族・医師と話し合って自分に適したレンズ・手術方法を選択しましょう。

この記事の監修医師