眼瞼下垂の種類とは|原因やリスク・治療方法も詳しく解説します
なんとなく疲れ目・頭痛・肩こりがひどいと感じるときに鏡を見ると、なんとなく眼がおかしいと感じることがありませんか?もしかしたら眼瞼下垂の初期なのかもしれません。
まぶたが垂れたまま持ちあがらない眼瞼下垂には、いろいろなパターンがあるのですが、気を付けておいた方がよい目の病気のひとつです。
ここでは眼瞼下垂について、その症状や治療法から手術が必要な場合の費用まで、できるだけ説明することにします。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
眼瞼下垂(がんけんかすい)とはどんな病気?
眼瞼下垂(がんけんかすい)とは、まぶたが重力によって垂れ下がってしまう病気のことです。
眼瞼下垂になると、眼が疲れやすくなったり、運転や読書といった眼を使う作業の際に不都合が生じたりします。常にまぶたが垂れ下がった状態になるので、いつも眠たそうな表情に見えたりもするでしょう。
眼瞼下垂は年齢とともに増える傾向があります。また、糖尿病や神経障害などの病気によっても発症することがあります。
眼瞼下垂にも種類がある
眼瞼下垂には、下記のとおりいくつかの種類がありますが、それらは大きく2つのパターンに分けることができます。
ひとつめは「静的眼瞼下垂」です。これは、顔を静止した状態でもまぶたが下垂している状態を指します。静的眼瞼下垂は、まぶたを支える筋肉や結合組織の弱さに由来するものが多いです。
静的眼瞼下垂は、目が疲れやすくなって運転や読書などの際に不便を感じるなど、目の症状を引き起こします。
もうひとつは「動的眼瞼下垂」です。
これは、目を動かす際にまぶたが下垂してしまう状態を指します。動的眼瞼下垂は、眼瞼を持ち上げる筋肉の弱さが原因になるものが多いです。
動的眼瞼下垂は、目を動きにまぶたが追いかけることができなくなって、視野が狭くなることがあります。
両者に共通して、点眼薬や眼瞼を上げる筋肉を鍛えるエクササイズなどで、改善が可能です。ケースによっては、手術による治療が可能です。
腱膜解離性眼瞼下垂
腱膜解離性眼瞼下垂とは、腱膜(まぶたを持ち上げる筋肉と眼球を動かす筋肉を繋ぐ結合組織)が切れて、まぶたがたれてしまう病気です。加齢による結合組織の衰えや、外傷が原因になります。
腱膜解離性眼瞼下垂は、手術によって切れた腱膜を修復するものです。手術の方法は、病気の程度や患者の状態によっていくつかのパターンがあります。
手術によって、患者はまぶたを持ち上げることができるようになって、視力も回復します。
ただし、手術にはリスクも伴うので、事前に主治医とじっくり相談するようにしましょう。
眼瞼痙攣
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)は、眼を取り囲んでまぶたを持ち上げる役割を果たしている眼輪筋(がんりんきん)という筋肉が、意思とは関係なく痙攣を起こしてまぶたが開きにくくなる病気です。
病気は片目だけでなく、両目に起こります。症状が進むと痙攣の回数が増えて、ますます眼を開け続けることが難しくなり、視力低下や眼の疲れがひどくなります。仕事や人付き合いにも影響を与える場合もあるでしょう。
眼瞼痙攣の原因は不明ですが、神経障害やストレスや疲れに由来するものと考えられることが多いです。
眼瞼痙攣の治療には、痙攣を和らげる薬剤を投与したり、症状がひどい場合には手術をしたりします。最近は、ボツリヌス毒素をまぶたのまわりに注射して、痙攣を和らげる方法も用いられています。
腱膜性弛緩性眼瞼下垂
腱膜性弛緩性眼瞼下垂(けんまくせいしかんせいがんけんかすい)とは、腱膜が弛緩してしまってまぶたを正常な位置に保つことができず、だらりと垂れてしまう状態のことです。
腱膜性弛緩性眼瞼下垂は加齢により発生して進行することが多いですが、睡眠障害・まぶたの外傷・神経障害などに由来する場合もあります。
病気の治療には、手術を行うことが多いです。手術は、眼瞼を支える腱膜を修復することによって眼瞼の位置を正常な位置に戻すことが目的です。
皮膚弛緩性眼瞼下垂
皮膚弛緩性眼瞼下垂(ひふしかんせいがんけんかすい)は、加齢によりまぶたの周囲の皮膚が肥大し、まぶたが下垂してしまう病気です。
皮膚弛緩性眼瞼下垂の症状は、眼瞼が下垂するため眼が疲れやすくなったり、運転や読書といった眼を酷使する作業がやりづらくなったりすることです。また眼瞼の肥大によって、顔の見た目にも影響を与える側面もあります。
皮膚弛緩性眼瞼下垂の治療は、手術です。眼瞼周囲の肥大した皮膚を切除することで、再びまぶたを持ち上げることができるようになり、視力も回復します。ただし手術にはリスクもあるので、医者と相談の上、リスクと利点をじっくりと比較して判断することが必要です。
また、手術が純粋に美観上の問題だと判断された場合には、健康保険が適用されないので、注意が必要です。
より長期的には、まぶた周りの皮膚の肥大を防ぐためにも、健康な生活習慣の維持を心がけるべきです。
眼瞼下垂の原因とは
眼瞼下垂の原因はさまざまですが、原因はひとつでなく複数のものが重なっている場合もあります。正確な原因を特定するためには、医師による詳しい診断が必要です。
- 神経性の眼瞼下垂:眼瞼を持ち上げる筋肉を制御する神経が障害を起こして、眼瞼が下垂してしまうことに由来します。これは、最も一般的な眼瞼下垂の原因です。
- 筋肉性の眼瞼下垂:眼瞼を持ち上げる筋肉の病気で、眼瞼が下垂することが原因になります。眼瞼痙攣が、この代表例です。
- 結合組織性の眼瞼下垂:眼瞼を持ち上げる筋肉をつなぐ結合組織の病気で、眼瞼が下垂してしまうことが原因です。腱膜解離性眼瞼下垂などがこれに該当します。
- 皮膚性の眼瞼下垂:眼瞼周りの皮膚の肥大によって、眼瞼が下垂してしまうことが原因です。皮膚弛緩性眼瞼下垂などがこれに該当します。これは、加齢によりまぶたの周りの皮膚が肥大し、眼瞼が下垂することに由来します。
- 先天性の眼瞼下垂:生まれつき眼瞼が下垂しているケースです。
- 加齢による眼瞼下垂:年齢が上がると、眼瞼を持ち上げる筋肉や結合組織が弱くなり、眼瞼が下垂してしまうことが原因です。
- 他の病気による眼瞼下垂:他の病気によって、眼瞼が下垂してしまうケースです。高血圧や糖尿病も、眼瞼下垂の原因になる場合があります。
先天性
先天性の眼瞼下垂は、生まれた時からまぶたが下垂している状態です。
胎児期に生じる遺伝的な障害などにより、眼瞼挙筋(がんけんきょきん)というまぶたを持ち上げる筋肉や結合組織、あるいはそれらを支える神経が正常に発達しなかったために起こります。
先天性の眼瞼下垂は他の病気と合併して発症する場合も多く、早期の発見と早期の治療が重要です。
先天性の眼瞼下垂には、次のようなものがあります。
- 遺伝性の眼瞼下垂:遺伝子の異常によって、眼瞼下垂が起こることがあります。家族に同じ症状がある人がいる場合、注意が必要です。
- 発達に伴う障害:眼瞼を持ち上げる筋肉や結合組織の発達が阻害されることにより、眼瞼下垂が起こることがあります。
- 他の病気による眼瞼下垂:他の病気によって、先天性の眼瞼下垂が起こることがあります。
眼瞼拳筋が緩んでいる
主に加齢により眼瞼を持ち上げる筋肉(眼瞼拳筋、がんけんきょきん)が緩んでしまって、眼瞼が下垂することが原因です。加齢が原因になる他に、疲れやストレスなどによって発症する場合もあります。
眼瞼拳筋が緩んでいる場合は、適度な運動やストレス軽減などが重要です。また、定期的な健康診断を受けることで早期発見、早期治療につなげることが大切です。
眼瞼拳筋が緩んでいる場合は、適度な運動やマッサージなどで、眼瞼下垂が改善する可能性があります。眼瞼下垂が進行した場合には、手術をする場合もあります。
まぶたの皮膚がたるんでいる
眼瞼下垂の原因として、まぶたの皮膚がたるんでいるというケースもあげることができます。
年齢が上がるとまぶたの皮膚が肥大して持ち上げる力が足りなくなり、眼瞼が下垂してしまうからです。また、睡眠時にまぶたが押しつぶされることで、眼瞼がたるむこともあります。
まぶたの皮膚がたるんで起こる眼瞼下垂としては、皮膚弛緩性眼瞼下垂が代表例です。
眼瞼下垂の原因が皮膚弛緩性の眼瞼下垂の場合、手術が有効です。手術をすることで眼瞼を持ち上げることができるようになります。
別の病気によるもの
眼瞼下垂の原因として、眼以外の他の病気に由来する場合があります。これは他の病気によって、まぶたを持ち上げる筋肉や結合組織に障害が起きて、眼瞼が下垂してしまうことが原因です。
別の病気による眼瞼下垂は、その病気と共に発症します。主症状が治療されれば眼瞼下垂も改善されることが多いです。
具体的には、以下の病気が眼瞼下垂の原因となることがあります。
ステロイド:ステロイド薬を長期間使用した場合に、眼瞼を持ち上げる筋肉が弱くなり、眼瞼が下垂することがあります。
高血圧:高血圧によって、眼瞼を持ち上げる筋肉が障害を受けて、眼瞼が下垂することがあります。
糖尿病性:糖尿病によって、眼瞼を持ち上げる筋肉が障害を受けて、眼瞼が下垂することがあります。
眼瞼下垂を放置するリスク
眼瞼下垂は、眼瞼の自然な形状を崩して視野を遮ります。また下垂した眼瞼は、睡眠障害を引き起こすこともあるでしょう。
ハードコンタクトレンズの長期間装着が眼瞼下垂につながることは、よく知られています。あるいは白内障の手術を行うと、その影響で眼瞼下垂がひどくなるかもしれません。
一方で眼瞼下垂の手術を行うと目を開けやすくなる代わりに、眼瞼が眼球を保護する涙をキープしにくくなり、ドライアイや結膜炎の原因になる可能性があります。
また眼瞼下垂は、顔の見た目を変え、より老けた印象を与えることもあります。このため、外科手術を受ける人もいるほどです。
眼瞼下垂の治療方法
眼瞼下垂の治療方法には、医学的手段と外科的手段があります。
医学的手段としては、点眼薬を使用することで、眼瞼を上げる効果を得ることができます。天眼薬を使用しながら、眼瞼を上げるエクササイズを行うことも有効です。
しかし、医学的手段は眼瞼下垂の場合あくまでも補助的な治療法です。メインの治療法は、あくまでも次の外科的手段です。
外科的手段は、眼瞼下垂を治療する手術のことを意味します。最も一般的な手術は、眼瞼の筋肉を切除する眼瞼下垂手術です。この手術は、眉毛の下にある眼瞼の筋肉を切除することで、眼瞼を上げる効果を得ることができます。
また、眼瞼下垂は、顔の見た目を変え、より老けて見せることもあるかもしれません。このため、美容外科や整形外科で行われる眼瞼下垂手術もあります。これらの外科的手段は、医師の指導の下で行う必要があります。
治療後に起こる可能性のある合併症
眼瞼下垂の治療に伴う合併症には、手術痛・出血・腫れ・感染・視力低下などがあります。
手術痛は、手術後の炎症や筋肉の切断による痛みが原因です。出血は、手術中に出血して起こるケースが多いです。手術後に炎症が起こり、腫れを引き起こすこともあります。手術中に感染を起こす恐れもあります。視力低下は、手術中に誤って網膜にダメージを与えることが原因です。
また手術後には、まぶたのシワや不自然な形状・まぶたの開閉が左右で同期しない・眼球が感想するといったことが起こる場合も多いです。これらは、手術後の患者さんによって異なります。手術後は、医師によるフォローアップが必要です。
ドライアイ
ドライアイは、眼瞼下垂の治療後に起こる可能性のある合併症の一つです。
手術後には、眼瞼が上がったために眼球に涙が十分に流れなくなることがあります。涙が足りないため眼粘膜が乾燥し、痛み・不快感・病理学的変化が起こることもあります。
ドライアイの治療は、点眼薬を使用することで涙を補充する方法がおすすめです。眼球に直接涙を流す方法も可能です。眼瞼下垂の治療後には、医師によるフォローアップが必要になります。
腫れ・内出血
眼瞼下垂の治療後に起こる可能性のある合併症の一つが腫れ・内出血です。腫れが起こるのは手術中に筋肉を切断したり、手術後に炎症が起こった場合です。内出血は、手術中に出血した場合に起こります。
腫れや内出血は、手術後数日から数週間程度の間に生じて、次第に収まることが多いです。腫れや内出血が長期間続く場合は、再手術の必要が生じる場合もあります。手術後は、医師によるフォローアップが必要です。
眼瞼下垂の治療にかかる費用
眼瞼下垂の治療にかかる費用は、手術の種類や地域によって異なります。手術費には麻酔費・滞在費などを含みます。一般的には、保険適用(3割)の場合で数万円程度、すべて自己負担の場合で30〜60万円程度です。
なお、美容外科や整形外科で行われる眼瞼下垂手術は保険が適用されない場合が多く、その場合は全額自己負担になります。
編集部まとめ
眼瞼下垂は決して命に関わる病気ではありませんが、視力に障害を及ぼす可能性のあるやっかいな病気です。
この病気も他の病気と同じように、早期発見・早期治療が大切です。多くの眼瞼下垂の患者さんは、症状が進行してからはじめて医者の元を訪れますが、初期の段階だとたとえ手術を受けなくてはいけないとしても、簡単なもので済むはずです。
この記事を読んで「もしかして私も眼瞼下垂かもしれない」と感じた方は、是非早めに眼科医を訪ねてください。
参考文献
- 眼瞼下垂に悩むかたへ|公益社団法人 日本眼科医会
- 眼瞼下垂症|大阪市立総合医療センター
- 眼瞼痙攣|社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 福井県済生会病院
- 眼瞼下垂|公益財団法人 日本眼科学会
- 白内障手術が眼瞼下垂の引き金になる?|有田眼科
- 老け顔の原因はまぶたのたるみ!?たるみを撃退し若々しい目元に!|OZAKI CLINIC
- 眼瞼下垂にオキシメタゾリン点眼が有望|m3.com
- 眼瞼下垂|かめざわ眼科
- 眼瞼下垂の手術後に起こり得る痙攣などの後遺症や合併症リスクについて解説|共立美容外科
- 眼瞼下垂の「詳しい原因」と「手術のやさしい解説」|日本医科大学 武蔵小杉病院
- 腱膜性眼瞼下垂の手術で三叉神経固有感覚の誘発の減少による睡眠障害治療効果の研究|KAKEN
- 眼瞼下垂を進行させないための究極の予防方法と治療方法とは?|武田眼科監修 眼瞼下垂治療ナビ
- 眼瞼下垂手術の費用相場は?保険適用と自由診療のケース別に美容外科医が解説|共立美容外科