20代で物忘れが激しいのは病気?物忘れの種類・対処法を紹介
物忘れは、高齢者に起こるイメージがありますが、若い人でも起こりうる現象です。若年性認知症といわれるように物忘れが激しいのは病気でしょうか。
若年性認知症は20代でも発症する可能性があります。それともついつい度忘れしてしまうだけでしょうか。
この記事では、20代の物忘れについて説明します。この記事を読むことで、若くして物忘れが激しいのは病気なのか、そうではないのかがわかります。
また対応策も身につくようになるでしょう。
監修医師:
勝木 将人(医師)
目次 -INDEX-
20代で物忘れが激しいのは病気?
記憶力は、20代をピークに徐々に徐々に衰えます。記憶力・判断力・適応力なども衰え始めます。
しかし、人の名前を忘れてもヒントを与えると思い出すなど、自分で記憶力の低下を自覚しているような物忘れは、誰にでも起こることです。
それだけでは認知症というものではありません。
20代の物忘れの種類
20代でも思い出せないという経験はあります。では20代の物忘れの種類にはどのようなものがあるのでしょうか。
色々な種類がありますが代表的な、若年性健忘症・若年性認知症・解離性健忘症・うつ病による物忘れについて説明します。
若年性健忘症
若年性健忘症は、20代や30代の若年齢層が発症する健忘症です。一般的には出来事の一部を忘れる方が多いです。
若年性健忘症は軽度であればそのうち自然と記憶を取り戻す可能性が高いです。しかし重度の場合では、新しい情報の記憶が困難になることがあり注意が必要です。
若年性認知症
若年性認知症とは認知症の一種ですが特に65歳未満で発症する認知症です。
病気の症状などは高齢者の認知症と大きく変わりませんが、老化現象ではありません。
認知症の物忘れには、体験したこと全部を忘れることもあれば、物忘れをしている自覚がないこともあります。
また、認知症では、記憶障害やさまざまな認知機能障害が生じるため、日常生活に支障をきたすことがあります。
解離性健忘症
簡単に説明すると、ストレスが原因で忘れるということです。
解離性健忘症の解離は、ストレスへのある種の防衛規制で、各種感覚がまとまったものが分離することで離隔ともいわれます。
実際の症状は、離人感(自分が自分ではない感覚)と健忘(忘れてしまう症状)、そして体の症状などさまざまな形で出てきます。
そしてこれは1個だけでなく、いくつかの症状が合併することが多いのです。
解離性健忘症の健忘は過去の経験を思い出せなくなることです。脳の病気や、薬の影響などで出ることもありますが、ストレスが背景の解離性健忘の場合もあります。
つまり、解離性健忘とは、強いストレスへの反応である解離性障害の一つです。強いストレスがあると、そのストレスに関係することの記憶を忘れるものです。
ストレスに関連して記憶がない・忘れている、という場合は解離性障害の一つ解離性健忘の可能性があります。
個人差はありますが一過性で戻る人もいれば、持続する人もいます。ほかの解離性障害の症状(離人感など)と合併する形での物忘れもあるのです。
うつ病による物忘れ
うつ病の物忘れは、集中力が続かないことに関連します。脳の働きが悪く集中力困難と連動し、物忘れや記憶障害が起こることがよくあるのです。
うつ病の原因としてストレスがありますが、ストレスは記憶の中枢である脳の海馬(かいば)に対して悪影響を与えます。
この種の物忘れの特徴は、以前覚えていたことを忘れることより、新しく覚えることが困難です。
若年性認知症の症状は?
若年性認知症の初発症状としては性格が変わったようになる・言葉がでにくいといった症状です。
そのためうつ・精神的ストレス・更年期障害などと見分けがつかないことがあります。
若年性認知症は、先ほども説明しましたが物忘れが激しくなる病気です。それでは、具体的にはどのような症状が起こるのでしょうか。
食事をしたかどうか忘れてしまう
認知症による物忘れは脳の病気です。認知症が原因である場合はそのできごとがあったこと自体を忘れ、忘れたという自覚もありません。
食事をしたことも忘れます。認知症による物忘れは徐々に進行します。
脳の老化や加齢が原因である場合は、記憶の一部が欠落するもので加齢による物忘れは進行しません。
時間や場所がわからない
仕事でアポイントの日時を間違えたり、現在の日付や時間がわからなくなったりといった見当識障害が現れます。
また自分がいる場所がどこかわからなくなります。
そのため、仕事や家庭での失敗も増えることになるのです。
家族や身近な人がわからない
若年性認知症が進行すると過去の記憶が失われ人間関係についての見当識障害がでてくるのです。
家族や友人などの人間関係やつながりもわからなくなってしまいます。過去の記憶が失われると、子どもを自分の親や親族と間違えることがあります。
例えば20代以降の記憶をなくした場合、自分に子どもがいるとは思わないので親や親族と勘違いしてしまうのです。
判断力が低下する
若年性認知症は、理解力や判断力が低下するため、今まで当たり前に行っていたことができなくなります。
例えば、物の片付け方がわからなくなる・仕事の書類が頭に入らない・レジの計算ができなくなる・運転中の判断が遅くなる、といった症状が現れます。
ルーティンの作業が苦手になる
若年性認知症は物事を計画して実際に行動に移すことが難しい実行機能障害になり、普段何気なくしている一連の作業や動作ができなくなるのです。
例えば、普段している料理の工程がわからなくなったり、食材を焦がしてしまったりします。
また、電化製品の操作など少し複雑なものになると扱えないことがあります。
計算が苦手になる
計算力を担っているのは、脳の前頭葉です。若年性認知症になると前頭葉の機能が低下し計算ができなくなることがあります。
計算力が衰えると、簡単な足し算や引き算ができなくなるのです。そのため買い物だけでなく、家計の管理ができなくなり日常生活が困難になります。
20代の物忘れの対処法
20代の物忘れの対処法は、これから紹介するTODOリストを活用したり、スマートフォンのアラームを活用したりは簡単にできます。
物忘れで日常生活に影響が出ないよう、忘れない・思い出せる工夫をしましょう。
物忘れを防止するには、目に見える対策だけではなく普段の生活習慣も見直し、脳の活性化と健康な身体の維持に努めましょう。
また、早めに医師に相談することも大事です。
TODOリストを活用する
TODOリストを作り、行動する内容をチェックすることは効果的です。するべきことを洗い出してリスト化することで、何をする必要があるのか明確になります。
TODOリストの内容を緊急度や重要度で分けておくと、やるべきことの優先順位がわかりやすくなるでしょう。
TODOリストを作成できない場合は、付箋にメモし常にチェックすることで物忘れを防止できます。
必ず行うことは付箋に書き、見えるところに貼ることです。メモ帳だと書いたことを忘れてしまう可能性があるため、効果が期待できないでしょう。
付箋は入手が簡単で、終われば捨てるだけなので後片付けも簡単です。
物忘れに特化したツールを利用するのも期待ができます。生活をしていると薬を飲む時間なのか、友達との約束の日なのか、今日が何をする日かわからなくなることがあるのです。
大事な日を忘れないようにするためのツールがあります。一例を挙げると、薬の飲み忘れをサポートしてくれるロボットを活用する方法があります。
それは、ロボットアームが薬を与えるのではなく、決まった時間に適切な薬を提供してくれるものです。
声で薬の時間を教えてくれたり、家族に服薬状況を知らせたりする機能も備えています。このようなロボットを利用するのも効果的です。
また、デジタル時計で日付が大きく表示される「デジタル日めくりカレンダー」は便利です。物忘れの激しい人にとっては、今日が何日かを把握することが重要ですが、紙のカレンダーと組み合わせることで忘れる心配が減ります。
また、やるべきことに着手する時間を決め、時間通りに行動すると効果が上がります。
アラームを活用する
スマートフォンのアラームやリマインド機能を使うことは物忘れに効果的です。時間になれば、することを教えてくれるからです。
その上、いつ何をするのかが具体的に把握できます。そのためすぐに物事に着手できるのです。
アラームは大切なツールですが、セットした目的を忘れてしまうことがあります。そのような場合は、スマートフォンのアラーム機能に「ラベル」を付けてみてください。
それぞれのアラームに名前をつけることで、予定を思い出しやすくなります。「アラームラベル」で検索して調べてみると良いでしょう。
早めに医師に相談する
若年性認知症は、疲れやストレスのせいでは、と考えてしまい診断が遅れる場合があるのです。
物忘れの中には専門的な治療をしたほうが良い場合がありますので少しでも異変に気が付いたら、かかりつけの病院に相談しましょう。
早期受診・早期診断によって薬で進行を遅らせます。
20代と若い世代での認知症は一般的では有りません。何か重大な病気が隠れていることもあるので、早めに脳神経科や精神科を受診しましょう。
20代の物忘れを予防する方法はある?
物忘れは、認知症自体を防ぐことで予防できます。具体的には、周りの人とコミュニケーション・食生活や生活習慣を整える・日記を書く・パズルやゲームをすることです。
それぞれについて説明します。
周りの人とコミュニケーションをとる
人とのコミュニケーションが少なくなると脳を使うことが少なくなり、脳の機能が低下しやすくなります。
コミュニケーションすることは、脳で考え相手の言葉に反応することなので物忘れ防止に有効です。
脳が情報を体系立てて相手に理解してもらおうとしています。その作業を通じて、これは大事な情報なのだと判断しているので記憶に残り易くなります。
できるだけ家族・友人・同僚とコミュニケーションをとり、脳を活性化しましょう。
また、人と会話をしながら相手の名前を何度も呼ぶのは忘れないために良いことです。
脳は何度も同じ情報が入ってくるほど必要なものと判断するため、長く記憶に残ります。人の名前を覚えるのなら、相手の顔を見ながら何度も名前を呼ぶのがおすすめです。
初対面の人に会う機会があれば、その人の名前を口に出しながら呼び、外見などを想像するのも記憶の助けになります。
外出するのもコミュニケーションが増え、脳に適度な刺激を与えられるのでおすすめです。
食生活や生活習慣を整える
食生活や生活習慣を整えることは物忘れ防止には非常に大事です。
タンパク質には記憶力を高める効果があります。そこで、納豆と卵をかけたご飯は、記憶力の維持に役立つといわれているのです。
納豆は記憶力を高める効果が期待できるレシチンや血流を良くするとされるナットウキナーゼを含みます。
また、卵からはコリンやレシチンという脳の記憶形成をつかさどる働きが期待される物質を含んでいます。さらに、米などの糖質は脳のエネルギーです。
物忘れを予防する食べ物は次のとおりです。
サンマ・アジ・イワシ・サバなどの青魚には、不飽和脂肪酸であるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれます。
- 緑黄色野菜・果物
- コーヒー・緑茶
- オリーブオイル
- カレー
- 大豆製品
- 赤ワイン
適切な睡眠も記憶力を維持するのに重要です。脳は人が寝ている間に記憶を整理します。適切な睡眠時間は6時間半~7時間半はとりましょう。
運動習慣も日常生活に取り入れましょう。1日30分程度のウォーキングなどの有酸素運動は体の血流を促進し、脳に必要な栄養や酸素を供給します。
生活習慣病の予防にもつながりますので、一石二鳥です。少し汗をかく程度で毎日ウォーキングを習慣化することをおすすめします。
日記を書く
感情が伴う記憶ほど長く残りやすいので、1日の出来事を言葉で日記に書くことは物忘れ予防に効果的です。
日記を書くときは内容やできごとだけでなく、そのできごとから自分はどのように感じたのかを言葉で表現することが効果的になります。
ブログやツイッターなどに感想を投稿するのもおすすめです。毎日書くことをルーティン化することで記憶に残りやすくなります。
パズルやゲームをする
パズルやゲームは、脳を使い考えて解きます。それは脳に適度な刺激が加われば、脳内の血流が良くなり脳が活性化されるのです。
活性化されることで認知機能の低下を防げ、忘れ予防効果が期待できます。人間の脳には、前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉という4つの領域があります。
記憶に影響を与えるのは前頭葉の前頭前野です。パズルやゲームは、この前頭前野を刺激し活性化することで脳が老化する速度を落とします。
20代の物忘れは何科を受診すればいい?
受診する科は物忘れ外来など、認知症を専門に扱っているところになります。
脳神経外科・神経内科・精神科などで診てもらう場合は認知症専門の医師がいるかを、事前にチェックしましょう。
受診にあたっては、日常生活や行動も判断材料となるので、家族の方が付き添うのが良いでしょう。
また、いつ頃発症したのか症状はどうなのか、経過などまとめておくと医師は判断しやすくなります。
編集部まとめ
20代の方の、物忘れの種類・対処法を紹介しました。20代の物忘れの種類には若年性認知症・解離性健忘症・うつ病があります。
そのうち、若年性認知症の症状としては、食事をしたか忘れる・家族や身近な人がわからない・判断力が低下する・ルーティンの作業が苦手になるなどの症状がみられます。
症状が激しいときは医師の診断を受けましょう。
TODOリストを作成し、スマートフォンのアラームを活用することで、対策が立てられます。
周りの人とコミュニケーション・食生活や生活習慣を整える・日記を書く・パズルやゲームをすることも物忘れ防止となります。
物忘れを防止するには、目に見える対策だけではなく普段の生活習慣も見直し脳の活性化と健康な身体の維持に努めましょう。
20代と若い世代での認知症は一般的では有りません。何か重大な病気が隠れていることもあるので、早めに脳神経科や精神科を受診しましょう。
参考文献