これも生理痛?生理中の頭痛の原因から対処法までを解説
生理痛と言えばお腹や腰の痛みが一般的ですが、頭痛も見過ごせない症状の一つですよね。実は、生理と頭痛には密接な関連があり、その原因や対処法も多様です。
この記事では、生理中の頭痛がどのように起こるのか、それにどう対処すればよいのかを解説します。エストロゲンの減少が頭痛を引き起こすこともあれば、生理中のストレスや疲労が関与する場合もあります。さまざまな視点から生理痛と頭痛の関係を探ることで、少しでも皆様の生活の質が向上する手がかりを提供できればと考えています。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
生理痛と頭痛の関係
生理痛と頭痛は一見すると関係ないように思えますが、実は密接なつながりがあります。
どのような関連性があって、何が要因で頭痛が起こるのでしょうか。
生理痛の原因が頭痛の原因にもなる
生理痛の大きな原因として、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが挙げられます。エストロゲンは生理周期に応じて濃度が変わり、その変動が生理痛を引き起こします。しかし、エストロゲンの影響はそれだけにとどまらず、頭痛にも影響を及ぼすことが知られています。
特に、エストロゲンが減少した際に片頭痛を引き起こすと言われています。片頭痛は非常に強い頭痛で、日常生活に大きな支障をきたす場合もあります。エストロゲンが減少することで血管が収縮し、それが頭痛を引き起こすようです。このように、エストロゲンの減少が生理痛と頭痛の両方を引き起こす要因になっているのです。
生理中のストレスや疲労によって起こる頭痛もある
エストロゲンの減少以外にも、生理中に特有のストレスや疲労が頭痛の原因となる場合があります。生理中は体調が優れないことが多く、それが精神的なストレスを生んでしまうことはよくあります。また、痛みや体調の不調によって十分な休息が取れず、疲労が溜まることも少なくありません。
このようなストレスや疲労が高まると自律神経のバランスが崩れ、それが頭痛を引き起こす可能性があります。特に自律神経の乱れは頭部の血管の収縮や拡張に影響を与え、それが緊張型頭痛や片頭痛を誘発することがあるのです。
また、ストレスが頭痛を引き起こすメカニズムは自律神経の乱れだけではありません。ストレスが高まると体内でコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。コルチゾールが過剰になることによっても、頭痛が発生しうることが研究で示されています。言い換えれば、生理中に感じるストレスや疲労は、直接的にも間接的にも頭痛を引き起こす可能性があるのです。
生理中に起こる頭痛は緊張型頭痛かも
前述のように、生理中にはさまざまな要因で頭痛が起こりえます。特に、緊張型頭痛が発生する場合が多いと言われています。ここでは緊張型頭痛とは何か、それが生理中にどのように起こるのかを解説していきます。
緊張型頭痛とは
緊張型頭痛は、その名の通り緊張やストレスが原因となることが多い頭痛です。頭の両側が締め付けられるような感覚や、重いヘルメットをかぶっているかのような圧迫感があることが特徴です。一般的には急激な痛みではなく、むしろ長時間にわたる違和感や軽い痛みが続くことが多いようです。
緊張型頭痛は、自律神経の乱れや筋肉の緊張によって引き起こされる場合があります。特に生理中は、ホルモンバランスの変動やストレス、疲労が重なるため、緊張型頭痛が発生しやすい状況が作られていると言えるでしょう。
緊張型頭痛は一般的には薬物治療などで症状が和らぐ場合が多いと言われていますが、生理中に起こる場合はその他の要因も絡む可能性が高いため、一筋縄ではいかないこともあります。
生理中の緊張型頭痛の対策
緊張型頭痛は特に生理中によく見られる症状ですが、対処法がないわけではありません。生理中に緊張型頭痛が起こった際の具体的な対策方法をいくつか紹介します。
ストレッチなど無理のない運動
緊張型頭痛が起きる原因の一つは筋肉の緊張です。筋肉を和らげる目的で、ストレッチや軽い運動をしてみるのが効果的です。例えば、首や肩の筋肉を優しくほぐすストレッチは頭痛の軽減につながります。
また、ウォーキングや簡単なヨガなど無理のない運動をしてみるのも良いでしょう。これらは心拍数をあまり高くしないため体への負担が少なく、生理中でも比較的安全に行えます。運動によって血流が改善されると筋肉の緊張も解消されやすく、頭痛が和らぐことが多いと言われています。
ただし、運動の際は無理をしないよう注意が必要です。特に生理中は体調が不安定な場合があるため、そうでない時と比較すると少しの運動でも疲れやすくなる場合があります。そのため、無理をしてしまうとかえって体調を崩してしまう可能性もあります。
ストレス解消
頭痛の原因として、精神的なストレスは見逃せません。特に生理期間中はホルモンバランスの変化によって感情が不安定になりやすく、ストレスも溜まりやすいでしょう。それが頭痛のきっかけになることも少なくありません。
いつでも誰にでもできるストレス解消方法として、深呼吸をすることが挙げられます。酸素がしっかりと脳に行くことで、頭痛が軽減されることがあります。いつでも行えるので、深呼吸はストレス解消の基本方法と思っておいても良いかもしれません。他にも、好きな音楽を聴く、瞑想する、友達と話すなど、心地よい環境を作ることも有効です。
ストレス解消に効果的なものは人それぞれなので、何が自分に合っているのかを見つけておくことも重要です。もちろん、最も効果的なのは自分がストレスを感じる原因を特定して解消することですが、それが難しい場合は上述したような手段で一時的にでもストレスを和らげると良いでしょう。
体を温める
生理中の頭痛を和らげるもう一つの方法は、体を温めることです。温度が低い環境にい続けると筋肉が緊張し、それが頭痛を引き起こす可能性があります。暖房を利用する、厚着をする、暖かい飲み物をとるなど、その場で可能な方法で体温を上げるように工夫してみましょう。
特に効果的なのは、温かいお風呂に入ることです。ただし、生理中はお風呂の温度を高くしすぎると体調を崩す可能性があるので注意が必要です。適度な温度で心地よく温まることで血行が良くなり、筋肉の緊張が和らぎます。
体を温めることで、頭痛だけでなく生理痛も和らぐ可能性があります。もし、生理中の不快な症状が多い場合は、体温を適切にコントロールすることで、全体的に快適な状態に近づけるかもしれません。
生理痛がくる少し前から起こる頭痛は片頭痛かも
生理が始まる少し前になると、頭痛を感じる方は少なくありません。これは単なる偶然や疲労だけが原因ではなく、片頭痛の可能性も考えられます。特に生理周期と頭痛が一定の関連性を持っている場合、それは「月経関連片頭痛」と呼ばれることもあります。
片頭痛とは
片頭痛は一般的な頭痛とは異なり、特定の部位(特に頭の片側)で痛みが発生することが多い頭痛です。この痛みは脈打つような感覚があり、激しくなると吐き気や光に対する過敏性などの症状を伴うこともあります。
片頭痛の原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要素や環境、さらには食生活やストレス、そしてホルモンの影響が関与していると考えられています。特に女性に発症することが多いと言われており、ホルモンの変動が大きい生理前に片頭痛が起こるケースが少なくありません。
生理痛と片頭痛はそれぞれ別の要因で発生する場合も多いようですが、ホルモンの影響で両方が重なることもあります。例えば、生理前にエストロゲンのレベルが低下することで片頭痛を引き起こす可能性があります。生理痛が始まる少し前に頭痛が出現する場合、それは片頭痛の可能性が高いでしょう。特に痛みが激しく、日常生活に支障をきたすレベルであれば、専門の医師に診てもらうことをおすすめします。
月経関連片頭痛とは
月経関連片頭痛は、その名の通り、生理周期と密接に関係している特定の種類の片頭痛です。多くの場合で生理が始まる前後5日以内に発症し、生理が終わると症状も和らぐようです。
少なくとも3回以上の生理周期で頭痛が発生し、その他の可能性(例えば、他の疾患があるかどうかや、薬の副作用が発生しているかどうか)が排除された場合に月経関連片頭痛と診断される場合が多いそうです。月経関連片頭痛を正しく診断できる可能性を上げるためには、頭痛の日記をつけることがおすすめです。いつどのような頭痛が発生したのかを記録しておくことで、生理周期と頭痛の発生がどれくらい一致しているのかを明らかにすることができます。
月経関連片頭痛が発生するのはホルモンの変動、特にエストロゲンとプロゲステロンのレベル低下が引き金の1つであるとされています。生理周期に沿ってこのホルモンレベルの低下が起こるため、頭痛も周期的に発生する傾向があるのです。
月経関連片頭痛には特別な治療法が必要であり、一般的な頭痛治療だけでは効果が限定される場合もあります。症状が続く場合は、専門医の診察が必要です。
生理痛と関連が深い月経関連片頭痛の対策
月経関連片頭痛は一度始まると非常に厄介ですが、対策方法も存在します。ここでは、基礎体温表の活用から睡眠の質まで、多角的な対策を具体的にご紹介します。
基礎体温表を付けて予測を立てる
月経関連片頭痛は生理周期と密接に関わっているため、基礎体温表を使って頭痛の発生を予測する手法が有効です。基礎体温表は生理周期や排卵日、そして体調変化を観察するための一つの道具として広く利用されています。
基礎体温を毎朝同じ時間に測定し記録をつけることで、体内のホルモンレベルの変化を確認できます。基礎体温表を元にして頭痛の発生を予測することができれば、早めの対策が可能となるでしょう。
たとえば、基礎体温が上昇または下降した際に頭痛の発生に繋がっていることが分かるかもしれません。その場合、基礎体温が変動したタイミングで痛み止めを事前に服用する、リラックスできる時間を意図的に取る、または十分な休息を取るといった予防策が考えられます。
基礎体温表を付けることにより、自分自身の生理周期と体調の変化をより深く理解することができ、月経関連片頭痛に対する早期対応が可能となるのです。
適切な睡眠
適切な睡眠は、月経関連片頭痛の対策として非常に重要です。睡眠不足になるとホルモンバランスが乱れ、強い頭痛を引き起こす可能性が高まります。特に、レム睡眠と非レム睡眠が適切に交互に来るように、6〜8時間程度の睡眠をとるようにすると良いでしょう。
また、良い睡眠を確保するためには、就寝前にカフェインやアルコールの摂取を避け、深呼吸をしたり温かいお風呂に入るようにしましょう。寝具にこだわって眠りの質を上げることも大事かもしれませんね。
人混みや強い光を避ける
多くの人々が集まる場所や強い光は神経系に負担をかけるため、月経関連片頭痛を引き起こす原因となる場合があります。特に、店内の照明や太陽光、スマートフォンやパソコンの画面光は注意が必要です。人混みや強い光を避けるためには、暗めのサングラスを使用する、帽子をかぶる、または明るい場所での作業を避けるなどの対策が考えられます。さらに、不快に感じる音が発生する場所も避け、可能であれば静かな環境で過ごすことが望ましいでしょう。
熱いお風呂やサウナ、運動はNG
意外かもしれませんが、熱いお風呂やサウナ、過度な運動は月経関連片頭痛には逆効果となることがあります。熱いお風呂やサウナは体温を急激に上げるため、ホルモンバランスに影響を与えてしまうかもしれないのです。また、激しい運動は心拍数が上がるため、さらに頭痛を悪化させてしまう可能性があります。
はやめに鎮痛剤を飲む
月経関連片頭痛が始まった兆候を感じたら、できるだけ早めに鎮痛剤を服用することをおすすめします。痛みが激しくなる前に薬を飲むことで、効果が最大限に発揮される可能性が高まります。ただし、鎮痛剤の選択や服用量、頻度は必ず医師の指導に従うようにしましょう。
頭痛のタイミングや症状を日記形式で残す
日常生活で頭痛に悩まされている場合、頭痛の具体的な症状や発生したタイミングを日記形式で記録することが有用です。なぜなら、医療機関での診断時に非常に参考になるからです。例えば以下のような内容を書くと良いでしょう。
・頭痛の症状の詳細
頭痛の位置、程度、持続時間などを具体的に記録します。
・その日の状態
頭痛が起きた日の食事内容、睡眠状態、気圧変動などもメモしておきましょう。
・生理周期との関係
特に女性の場合は生理周期と頭痛の関連があり得るため、生理の日程も一緒に記録するとよいでしょう。
日記形式で記録を取っておくことは、自分の頭痛の傾向を掴むために非常に有効です。また、医師が診断を行う際に具体的な治療方針を立てやすくなるメリットもあります。
まとめ
生理周期と頭痛は密接に関係しており、特に生理痛の際に頭痛が起こることが一般的です。この記事では、生理痛が引き起こす頭痛について、緊張型頭痛と月経関連片頭痛という二つの主要なタイプに焦点を当てて解説しました。
緊張型頭痛は生理中のストレスや疲労が主な原因で、ストレッチや疲労解消が効果的です。また、月経関連片頭痛は生理周期と密接に関連している特殊な片頭痛で、基礎体温表を付けることで症状を予測する方法が有効です。
生理痛と頭痛に悩む多くの方々に、これらの情報が少しでも役立てば幸いです。
参考文献
- 「生理時の頭痛」をなんとかしたい!予防&対処法 | Lidea(リディア) by LION
- 片頭痛と月経 | 脳疾患を知る | 桑名眼科脳神経クリニック
- 月経痛|一般のみなさまへ|日本女性心身医学会
- 緊張型頭痛
- 「生理時の頭痛」をなんとかしたい!予防&対処法 | Lidea(リディア) by LION
- 生理痛?ズキンと頭の片側が痛む|頭痛の悩み.jp|大塚製薬
- 「生理前に頭痛が起こる」という人へ。月経周期と片頭痛の関係を知って早めのセルフケアを!
- 生理時の頭痛について|生理痛のはなし|EVE(イブ)【エスエス製薬】
- 『医師が監修』生理痛の症状を緩和する方法|おしえて生理痛
- 【医師監修】この時期に限って・・・生理中の頭痛の原因と対処法/産婦人科医コラム|マイピルオンライン