生理痛に低用量ピルが効く?期待できる効果や入手方法・注意点を解説
女性にとって毎月やってくる生理は、切っても切れない存在といっていいでしょう。成人女性のほとんどが生理痛や不快感に悩んでいるといいます。
生理痛は個人差が大きく、だるさや軽い痛みくらいならやり過ごせますが、日常生活に支障をきたす重い症状もあります。
これは月経困難症といわれる一種の病気です。月経困難症には、生理痛用低用量ピル(LEP)による治療が効果的です。
ここでは、生理痛に効果のある低用量ピルLEP(レップ)について、期待できる効果・入手法・注意点などを解説します。
また避妊用避妊用低用量ピル(OC)との違いについても紹介します。生理痛で毎月不快で憂鬱な思いをしている女性は、ぜひ参考にしてみてください。
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目次 -INDEX-
生理痛用低用量ピル(LEP)とは
ピルといえば「避妊目的」と思う方も多いでしょう。ピルとは経口避妊薬として最初にアメリカで認可された薬です。
当初はホルモンの配合量が多く、重大な副作用がありました。そこでホルモンの量を最小限にし、安全性が高くかつ効果的なピルが研究開発されました。それが低用量ピルです。
避妊を目的としたピルですが、避妊効果だけでなく、生理に関するさまざまな効果があることがわかりました。
低用量ピルには、生理痛を始めとする月経困難症・子宮内膜症などの治療目的で使われることもあります。
同じ低用量ピルですが、日本では治療目的のピルを「LEP」、避妊目的のピルを「OC(オーシー)」と呼んで区別しています。
生理痛用低用量ピル(LEP)のしくみ
生理痛用低用量ピル(LEP)は、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)を合成させた低用量ピルです。
妊娠するためには脳から卵巣へと指示が出されるしくみになっています。妊娠に必要なホルモンが分泌され、卵子の発育や受精しやすいように子宮内膜を厚くして待機しています。
しかし、ピルを服用することで脳は十分なホルモンが分泌されていると勘違いしてしまうのです。卵巣に脳からの指示が届かないため卵子は発育せず、さらには排卵も起こらなくなります。
卵子の発育や排卵が起こらないため、生理痛などの月経困難症を和らげられるのです。
避妊用低用量ピル(OC)との違い
生理痛用低用量ピル(LEP)と避妊用低用量ピル(OC)は基本的に同じ成分です。どちらも低用量エストロゲンとプロゲステロンが配合されています。
違いは治療目的か避妊目的かです。治療目的であれば健康保険の適用となり、ピルの値段も1~3割負担になるため避妊用低用量ピル(OC)よりも安くなります。
妊娠は病気ではありませんから、避妊目的の避妊用低用量ピル(OC)は、保険適用されず、全額自己負担の自由診療となります。
生理痛用低用量ピル(LEP)の価格目安
生理痛用低用量ピル(LEP)は、生理痛などの月経困難症の治療のため処方されるピルです。
医師が治療や症状の緩和のために必要と診断した場合だけ処方されます。そのため、直接医師の問診を受け、必要ならば検査を求められることもあるでしょう。
保険適用外の避妊用低用量ピル(OC)ではワンシート(1ヵ月分)が2,000円(税込)以上かかり、自由診療になるので、クリニックによって価格の差が出てきます。
一方で保険適用の生理痛用低用量ピル(LEP)の価格は、一般的にワンシートで540円〜2,500円程度が目安ですが、ジェネリック薬品や製剤の選択によって費用をさらに抑えることができるでしょう。
生理痛用低用量ピル(LEP)に期待できる効果
生理痛などの月経困難症や子宮内膜症といった病気治療に使用されるのが生理痛用低用量ピル(LEP)です。
具体的にはどのような効果があるのでしょう。
生理痛の改善
生理が始まる直前などに下腹部が重だるくなり、腰痛や頭痛などもともないます。吐き気・めまい・イライラ・下痢の症状があらわれることもあります。
生理痛が重い人のなかには寝込んでしまうこともあり、仕事を休まなくてはならない人もいて、日常生活に支障が出ることも珍しくありません。
生理痛用低用量ピル(LEP)には排卵をさせない効果があるため、子宮内膜の増殖を抑える効果があります。
また、ピルを服用すると生理痛の原因である痛みの物質であるプロスタグランジンの放出が少なくなり、さらには子宮の収縮運動も抑制されるため生理痛が軽くなります。
月経不順の改善
月経周期は、生理が始まった日から次の生理が始まる前日までの日数のことです。およそ28日周期になります。
しかし、「毎月きちんと生理が来ない」「生理が3ヵ月以上ない」「生理がダラダラ続く」このように月経周期が不規則になる状態を月経不順と呼びます。
原因はさまざまです。例えば、無理なダイエット・ストレス・環境の変化などによっても月経不順は起こります。
ホルモンバランスが乱れると月経不順は起こりますが、生理痛用低用量ピル(LEP)を服用することで女性ホルモンが安定し、定期的に月経様出血をおこします。
月経周期をコントロールできるため、毎月のスケジュールも立てやすくなるでしょう。
PMSの改善
PMSとは月経前症候群と呼ばれる症状で、生理が始まる数日前から不快な症状があらわれます。例えば、吐き気・頭痛・イライラ・不眠・うつ状態などです。
PMSは、身体だけでなく、精神的にも影響が出ることです。特に20~30代の女性に多く症状があらわれるのが特徴となっています。
これらの症状は、排卵後に卵巣から分泌されるプロゲステロンの影響だと考えられています。
黄体ホルモンは、受精しやすくなるように子宮内膜を厚くし、着床後の胎児のために体内に水分や栄養を溜め込む働きがあります。
その結果、生理前になると体がむくむ・便秘になりやすい・体温が上昇するなどの不快な症状があらわれるのです。
生理痛用低用量ピル(LEP)を服用すると黄体ホルモンの分泌量が抑えられるため、PMSの症状が緩和されます。
生理痛用低用量ピル(LEP)を服用する際の注意点
生理痛用低用量ピル(LEP)を服用する時には、いくつかの注意点があります。
ほかの薬を服用している場合など、医師と相談する必要があります。また、初めて生理痛用低用量ピル(LEP)を服用する人は、副作用に注意しましょう。
飲み忘れても2回分飲まない
生理痛用低用量ピル(LEP)は、飲み忘れに注意が必要です。特にピルを服用し始めた頃は、習慣が身についていないため飲み忘れすることもあるでしょう。
1錠飲み忘れてしまったら、気付いた時点ですぐ飲みましょう。その後は通常どおり飲めば効果は持続します。
2錠飲み忘れてしまったら、直近に飲むピルをなるべく早く飲みましょう。残りは通常通り飲みつつ、7錠以上連続して飲むまでは妊娠のリスクを回避するためにコンドームなどほかの避妊方法を併用して性行為を行うか、もしくは性行為をやめる必要があります。
飲み始めは副作用が出ることがある
生理痛用低用量ピル(LEP)に含まれる黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用によって、副作用が出ることがあります。副作用は、むくみ・吐き気・頭痛・不正出血などです。
初めて服用する人は、体が慣れていない状態ですから、こうした副作用が起きやすくなります。継続して服用するうちに体が慣れて、副作用の症状も気にならなくなるでしょう。
副作用が続くようなら、ピルの種類が体質に合っていないのかもしれません。医師と相談しましょう。
血栓のリスクが高い人は処方できない可能性がある
ピルを服用すると血栓ができやすくなるという副作用が報告されています。血栓は、エコノミー症候群などの原因となるものです。
血管の中に血液の塊ができ、その塊が血液の流れを止めてしまいます。塊が脳や心臓で血液を止めてしまうと、脳卒中や心筋梗塞などの重篤な病気を引き起こします。
高度な肥満症、喫煙習慣があるなど、血栓のリスクが高い人は生理痛用低用量ピル(LEP)が処方できない可能性もあるので、医師と相談しましょう。
併用してはいけない薬に注意する
ピル以外に薬を服用している人は注意が必要です。ピルと併用するとピルの効果が弱まってしまうケースや逆に作用が強まってしまうケースもあります。
さらにピルの効果や併用した薬の効果が変化する可能性があります。ピルを服用しながらほかの処方薬を飲む場合は、必ず医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
生理痛用低用量ピル(LEP)を処方してもらう方法
生理痛用低用量ピル(LEP)を処方してもらうためには、どのようにしたらよいのかわからない人も多いでしょう。
生理痛用低用量ピル(LEP)は医師の診断が必要になり、保険適用となります。
クリニックを受診する
一般的な入手方法としては、婦人科などのクリニックを受診することです。生理痛用低用量ピル(LEP)の処方は、病気治療を目的としていなければなりません。
病気であることを確定するために、問診や検査は必須となるでしょう。生理痛の痛みは数値であらわせません。
痛みへの反応は人それぞれですから問診時に「生理痛が辛い」と訴えれば、血栓リスクが高い人以外は処方が可能でしょう。
オンライン診療で処方してもらう
最近では、オンライン診療でピルを処方してくれるクリニックも増えてきました。オンラインで問診・診察を受け、問題がなければ処方してもらえます。
実際は、初診は対面で、次回以降はオンライン診察で処方してくれるクリニックが多いようです。
オンライン診療でピルの定期便配送サービスが利用できれば、ピルがいつも手元にあるので飲み忘れも防げます。
生理痛用低用量ピル(LEP)は保険適用になる?
生理痛や月経困難症などを治療するための生理痛用低用量ピル(LEP)は、治療目的なので保険適用になります。
生理痛用低用量ピル(LEP)が保険適用になるのには、以下のようにいくつかの条件が必要となります。
- ピルを処方する理由が月経困難症や子宮内膜症の治療目的であること
- 処方されるピルの種類が保険適用であること
- ピルが必要だと医師が判断した場合
この条件を満たしていない場合には、保険適用外の避妊用低用量ピル(OC)となります。
ピルを服用しても生理痛が治らない場合の受診目安
生理痛用低用量ピル(LEP)は、生理痛などの月経困難症の治療に効果が期待できます。しかし、なかにはピルを服用しても生理痛が治まらない人もいます。
その原因として考えられることはピルが体質に合っていない場合です。
同じ生理痛用低用量ピル(LEP)でも、種類によっては配合されているホルモンの量やバランスが異なっています。ピルにも体質との相性があり、生理痛に効果が出ない場合もあります。
生理痛が治らないだけでなく、頭痛や吐き気などが2~3ヵ月以上続くようであれば、体質に合っていないのかもしれません。医師に相談して、ピルの種類を変えてもらうとよいでしょう。
また、ピルを正しく服用していない可能性もあります。ピルは必ず1日1錠、決まった時間に飲み続けることで効果があらわれます。
飲み忘れなどが続くと効果が薄れてしまうので、ピルの服用習慣を身につけることが大切です。
ピルに効果がない場合、病気が潜んでいるのかもしれません。子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症といった病気が考えられます。
子宮内膜症は、放置しておくと不妊の原因となります。子宮筋腫は大きくなるとまわりの臓器にも影響を与えるため、医師に相談することが大切です。
また、受診目安としては、痛み止めを飲んで和らぐ程度であれば心配いらないでしょう。
しかし、痛み止めを飲んでも強い痛みがある、痛みが2日以上続く場合には、早急に受診した方がよいでしょう。
編集部まとめ
ピルというと避妊のイメージが強いのですが、生理痛にも効果が期待できます。日本では大きく分けて2種類のピルが処方されています。
保険適用になる生理痛用低用量ピル(LEP)と保険適用外の避妊低用量ピル(OC)です。違いは「治療」か「避妊」かで、生理痛用低用量ピル(LEP)は治療にあたるため、保険適用となります。
生理痛用低用量ピル(LEP)は、生理痛・月経不順・過多月経・PMSの改善が期待できます。
生理痛用低用量ピル(LEP)を服用する時には飲み忘れに注意し、副作用があることを理解しておきましょう。また、血栓リスクの高い人や複数の処方薬を飲んでいる人は、医師に相談しましょう。
生理痛は、もはや我慢するものではありません。生理痛で日常生活に支障が出るなら、ピルも選択肢の1つとして加えてみてはいかがでしょう。