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「低用量ピルが生理痛」に効果があるってご存知でしたか?医師が監修!

 更新日:2024/07/11
「低用量ピルが生理痛」に効果があるってご存知でしたか?医師が監修!

低用量ピルは、避妊のために用いる薬というイメージを持つ方は多いでしょう。しかし、この薬が持つ効果は、避妊効果だけではありません。

つらい生理痛を軽減する効果があり、医療機関でも処方されているのです。効果がある理由など気になっている方は多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、低用量ピルが生理痛の軽減に効果がある理由について解説します。服用する際の疑問点まで解説するので、参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

生理痛とは?

お腹を押さえる若い女性
低用量ピルは、生理痛軽減の効果をもっています。その理由を理解するためには、まず生理痛がどういったものなのかを把握した方が良いでしょう。
生理痛とは、生理の際に下腹部や腰に生じる痛みのことです。この痛みの原因は、プロスタグランジンというホルモンが密接にかかわっています。
通常、妊娠せずに不要となった子宮粘膜は、経血として体外へ排出されます。その際に、プロスタグランジンが、子宮粘膜から分泌されるのです。このホルモンは、子宮を収縮させる作用があります。収縮によって、不要になった粘膜を体外に押し出す働きをするのです。
しかし、このプロスタグランジンの分泌が多いと、必要以上に子宮が収縮します。その結果生じるのが生理痛です。
この生理痛は、仕事の疲れやストレスなどにより痛みが増すことがあります。これは、疲れ・ストレスなどによって血液循環が悪くなり、骨盤内にうっ血することが関係します。うっ血すると、痛みを敏感に感じるようになるのです。そのため、通常よりも生理痛の痛みが激しいように感じ、生理痛を助長するようになります。

低用量ピルが生理痛に効果はあるの?

生理中のメモと薬
低用量ピルは、生理痛に効果があります。これは、低用量ピルの効果の中に、子宮内膜を厚くなりにくくする効果があるためです。
低用量ピルには、エストロゲンプロゲステロンの2種類の女性ホルモンが含まれています。これらの女性ホルモンには、排卵を抑制する作用があり、子宮内膜が分厚くなるのを防いでくれるのです。
子宮内膜が厚くなりにくいということは、経血量も減少するということです。そのため、生理痛が改善されるようになります。
これまでは、生理痛に対しては、鎮痛剤を服用して対処することが多い状況でした。しかし、低用量ピルを服用すれば、鎮痛剤を用いなくても日常生活が快適におくれるようになります。

生理痛の治療に使われる低用量ピル

毎日飲む錠剤
生理痛の治療に使われる低用量ピルは、次のようなものが代表的です。

  • ヤーズ
  • ジェミーナ
  • ルナベル

低用量ピルは、エストロゲンの種類によって第一世代~第四世代に分類されています。
それぞれ効果も異なり、ヤーズは第四世代にあたる薬です。この薬には、ドロスピレノンと呼ばれる黄体ホルモンを使用しています。超低用量化されているため、非常に副作用も起きにくいことが特徴です。また、通常の生理痛だけでなく、月経困難症や子宮内膜症の治療にも使われるほどの薬となります。その他にも、ニキビやむくみを改善させる効果がある点も特徴です。
ジェミーナは、第二世代の薬です。レボノルゲストレルという黄体ホルモンを使用し、不正出血が起きにくいように作用してくれます。低用量ピルの中でも、特に低用量のピルではありますが、生理周期を安定化させる効果をもっています。
ルナベルは、第一世代の薬にあたり、一番最初に製造承認された薬です。ノルエチステロンと呼ばれる黄体ホルモンを含んでおり、出血量を減らし月経困難症をコントロールしてくれる効果を持ちます。ニキビ・肌荒れなどの改善にも、有効な手段です。

低用量ピルは誰でも服用できる?

薬を飲む女性
低用量ピルは、種類にもよりますが、非常に幅広く効果がある薬です。しかし、誰でも服用できるわけではありません。年齢や他の薬との併用が禁止されているなど、いくつかの条件があるのです。
ここでは、低用量ピルの服用できる条件服用できない条件についてご紹介します。

服用できる年齢や条件

低用量ピルを服用できる年齢は、生理が始まった思春期から閉経していない49歳までの女性で服用が可能とされています。
しかし、一般的に40歳以上は、心筋梗塞や心血管系障害が起こりやすい傾向です。そのため、服用するには慎重に判断する必要があります。医師への相談・受診のうえで、指示を聞きながら服用した方が良いでしょう。
また、この年齢以外にも条件があります。それは、煙草を吸っているかどうかです。40歳以上で喫煙をする方の場合、低用量ピルの服用は注意が必要です。この場合も、医療機関を受診して、普段からどの程度喫煙しているかを伝えて服用可能かどうかを確認しましょう。

健康上のリスクがあると服用できない場合も

服用できる場合の条件をご紹介しましたが、完全に服用できない場合もあります。これは、何らかの健康上のリスクがあるためです。服用できない主な理由としては、次のようなものが挙げられます。

  • 血栓症の方や疑いのある方
  • 脂質異常症の方
  • 高血圧症を薬でコントロールできない方
  • ヘビースモーカーの方

現在、血栓症を治療中の方や疑いのある方は、服用ができません。これは、低用量ピルの副作用が関係しています。血栓症を引き起こす副作用があり、さらに血栓症リスクを高めてしまうのです。
脂質異常症の方も、血栓症を発症しやすい体質のため、同様の理由から服用できません。
さらに、高血圧症を薬でコントロールできない方も、服用が不可能です。血圧が160mmHg/100mmHg以上の方は服用できません。
30歳以上の方で、1日15本以上煙草を吸うヘビースモーカーの場合も服用不可能です。これは、煙草の影響で血流が悪化している可能性があるためです。低用量ピルの服用によって、さらに血流が悪くなる可能性があります。
その他にも、妊娠している可能性のある方や授乳中の方も服用はできません。

低用量ピルを服用する際の注意点

注意を知らせる男性医療従事者
低用量ピルを服用できる条件・服用できない条件をご紹介しました。しかし、服用できる条件に該当していても、注意すべきポイントがあります。知らないまま服用すると、身体に不調をきたす可能性もあるでしょう。
そこで、ここでは低用量ピルを服用する際の注意点をご紹介します。

併用をやめた方がいい薬がある

併用をやめた方が良い薬としては、次のような薬が挙げられます。

  • てんかん治療薬
  • 結核治療薬
  • 解熱鎮痛薬
  • HIV感染症治療薬
  • 子宮内膜症治療薬
  • 糖尿病治療薬
  • ステロイド内服薬
  • 抗うつ剤
  • 喘息治療薬

これらの薬と併用すると、低用量ピル・治療薬のいずれかの薬の作用を減弱してしまう可能性が高いです。また、最悪の場合、身体に悪影響を及ぼす可能性もあります。
現在、併用中の薬がある場合は、併用が可能かどうかを確認・医療機関に相談のうえで服用した方が安全といえるでしょう。

副作用があらわれることも

低用量ピルの服用によって考えられる副作用は、次のようなものが挙げられます。

  • 吐き気
  • 頭痛
  • 不正出血

発症が現れる時期には個人差がありますが、軽度な症状であれば、服用開始後1ヶ月~2ヶ月程度で現れます。
しかし、いつまでも症状が続くことは少なく、おおよそ3ヶ月程度経過すると症状を感じなくなるでしょう。これは、薬の服用を続けていることで、身体が慣れてくるためです。万が一、3ヶ月以上症状が引かない場合は、専門の医療機関に相談しましょう。
上記の副作用は軽度な部類ですが、血栓症などの重篤な副作用には注意が必要です。血液が固まり、血管の流れを止めてしまう病気であり、最悪の場合命に関わる可能性があります。
肥満の方や喫煙中の方は、副作用の効果と相まってさらに血栓症のリスクを高めるため、注意が必要です。

低用量ピルに関するよくあるQ&A

ひらめく女性
低用量ピルを服用する場合には、服用可能な条件や副作用を正しく理解することが非常に大切です。また、服用にあたっては疑問を解消したうえで利用することが重要です。
ここでは、低用量ピルに関する良くあるQ&Aをご紹介します。服用を考えている方がどのような疑問を感じているのかを参考にして、低用量ピルの理解を深めましょう。

生理痛用の低用量ピルに避妊効果はありますか?

生理痛用に処方された低用量ピルの場合、その治療効果しかないように思う方も多いです。
しかし、生理痛用の低用量ピルの場合でも、避妊効果はあります。これは、どの低用量ピルでも、同様の成分によって作られているためです。排卵を抑制し、受精卵が着床しにくい状態にするなどの効果は、どの低用量ピルでも共通となります。
しかし、どの低用量ピルでも、正しく服用しなければ避妊効果は得られません。避妊率は99.7%といわれている薬ですが、飲み忘れなどがあると効果は薄れてしまうため注意が必要です。

低用量ピルを長期間服用すると体に影響がありますか?

薬の長期服用となると、身体への影響が心配になる方も多いです。しかし、低用量ピルは、長期服用した場合でも身体への影響はありません。120日間の連続服用など、長期服用を前提に作られた薬であるためです。
先述したように、服用可能な条件を満たしている場合は、基本的に飲み続けても問題はありません。
万が一、特別な異常が現れた場合には、直ちに服用をやめて早急に医療機関へ相談しましょう。

ピルを飲み忘れたらどうすればいいですか?

理想は飲み忘れがないことですが、万が一飲み忘れた場合には、忘れていた日にちによって対処方法が異なります。
飲み忘れが1日のみの場合、飲み忘れた1錠を気づいた時にすぐに飲みましょう。そして、その日飲む予定だった1錠に関しては、通常通り服用してください。つまり、1日に2錠飲むことになります。2錠飲んでも問題はありません。
しかし、2日以上飲み忘れてしまった場合は、服用を一度やめましょう。そして、飲み忘れた日から数えて、1週間休み、新たに飲み始めるようにしましょう。新しいシートで飲み始めることをおすすめします。
低用量ピルの服用は、正しく効果を得るために、忘れないようにすることが大切です。忘れないためには、就寝前・起床時・昼食後など、忘れにくいタイミングに服用を習慣化するとよいでしょう。
また、飲み忘れを防ぐ方法としては、スマートフォンのアラームや通知機能のあるアプリを活用するなどの方法も有効です。

編集部まとめ

地球儀と医療イメージ
低用量ピルは、生理痛に効果のある薬です。病院から処方される薬でもあるため、安心して服用できます。

しかし、誰でも服用できる薬ではありません。服用できる条件や、併用を避けるべき薬があり注意が必要です。

また、副作用もあるため、これらを理解したうえで服用する必要があるでしょう。生理痛や薬のことなど、不安に思うことは医療機関に相談して正しく服用しましょう。

この記事の監修医師