生理痛の腹痛の対処法は?生理痛の原因・症状・和らげる方法について解説
生理が起こるのは女性にとって避けられないことですが、健康の証でもあります。しかし時には生理痛がひどくて仕事・学校・私生活に影響が出る方は少なくありません。
特に腹痛は生理痛のなかでよく見られる症状の1つです。生理中に腹痛が原因で動けないという方は多いでしょう。
それでも日常生活のさまざまな活動を滞りなくこなすには適切に対処する必要があります。
この記事では生理痛のなかでも特に腹痛に焦点を当て、生理痛の原因・症状・和らげる方法について解説します。
ほかの病気の可能性なども併せて解説するので、最後まで読んで参考にしていただけると幸いです。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
生理痛の腹痛の対処法は?
生理痛で腹痛がある場合、どのように対処しているでしょうか。おそらく動けなくてベッドで丸まるなどでその場をしのがれているのではないでしょうか。
しかし生理痛の腹痛は対処法がある程度決まっています。基本的には以下の2パターンです。
- 市販の鎮痛剤を使う
- 婦人科を受診する
以下、それぞれを詳しく解説します。
市販の鎮痛剤を使う
テレビやSNSなどの広告では、生理痛の腹痛に効く市販の鎮痛剤が多く取り上げられています。身近な対処法として、鎮痛剤の服用は有効です。
市販の鎮痛剤の大多数は非ステロイド抗炎症薬を含んでおり、生理痛の原因となるプロスタグランジンが生成されるのを防ぐことができます。
生理痛に効くとされている鎮痛成分として代表的なのは、ロキソプロフェン(ロキソニン)・ブルフェン(イブプロフェン)・アスピリン・アセトアミノフェンなどです。
また、ブチルスコポラミン臭化物(ブスコパン)という物質は子宮収縮を抑制する働きがあります。
ブチルスコポラミン臭化物が配合されている鎮痛剤は、プラスαで生理痛の改善が期待できるといえます。
なお、鎮痛剤が効いてくるのは服用してしばらく経ってからです。そのため、市販の鎮痛剤を服用する適切なタイミングは、「生理痛がそろそろくるかも」と感じた時がよいでしょう。
婦人科を受診する
鎮痛剤などを服用しても症状の改善がみられない場合、婦人科の受診を検討しましょう。
生理痛に対する鎮痛剤の効果がみられない場合、それは生理によるものではなく、何か別の病気の可能性もあるからです。婦人科にて原因をつきとめる必要があります。
また、重大な病気ではなくても、日常生活を快適に過ごすうえで治療は必要です。婦人科ではそれぞれの症状を踏まえて適切な治療法の検討が可能です。
場合によっては子宮の神経の一部を切断するなど、特殊な療法が必要となるケースもあります。
そのような療法が必要となる場合、早期発見・早期治療がより重要となってきます。普段の生活で異常な生理痛を感じる場合は婦人科の受診を検討しましょう。
生理痛の原因
上記では生理痛の対処法を解説しました。ただし生理痛に適切な対処を施すためには、生理痛の原因をつきとめる必要があります。
生理痛の主な原因は、先程も触れたプロスタグランジンという物質です。生理前後にプロスタグランジンの分泌量が増え、子宮内のさまざまな部分を過剰に収縮させることで生理痛が起こります。
そのため市販の鎮痛剤などには、プロスタグランジンの生成を抑える働きのものがたくさんあるのです。
このほかにも、体温の低下・血流の悪化などは生理痛を悪化させる要因として知られています。
就寝時にきちんと布団を被っていない・同じ姿勢で作業をし続けているなどの状態は体温の低下・血流の悪化につながります。
これらは自分の努力で防げるものなので、日頃から気をつけましょう。生理痛の改善にはまず、日々の習慣から変えていくことです。
生理痛の時に現れる症状
ここまで生理痛で起こる腹痛やその原因について解説しましたが、生理痛で起こる症状は腹痛だけではありません。
普段なんとなく調子が悪いと感じる症状も生理の影響かもしれません。生理痛で起こる症状は主に以下のとおりです。
- 腹痛
- 頭痛
- 胃痛
- めまい
- 吐き気
- 下痢
普段の体調不良が生理によるものかどうか理解しているだけでも、とれる対処法が変わってきます。ここではそれぞれの症状の特徴を解説します。
腹痛
本記事でメインに扱っている腹痛ですが、腹痛は生理痛の典型的な症状です。
生理痛の原因となるプロスタグランジンは子宮内で放出されると、子宮内膜などを過度に収縮する働きがあります。
その結果、生理中に下腹部を中心として腹痛を訴える女性が多い傾向があるのです。
頭痛
生理痛における頭痛はセロトニンの分泌が関係しているとされています。
生理中は女性ホルモンであるプロゲステロンが変動し、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌量が低下します。セロトニンの分泌が低下すると、プロスタグランジンが放出され、脳内の炎症につながるのです。
なお、幸せホルモンであるセロトニンの低下はうつ症状にもつながるとされており、生理前後の気分が落ち込む現象と関係しています。
胃痛
胃痛は腹痛と同じ原理で起こります。生理中に放出されるプロスタグランジンはあらゆる臓器を収縮させる作用がありますが、時には胃まで届いて胃痛を起こすこともあるのです。
普段から胃痛もちの方は気付きにくいかもしれませんが、生理による胃痛もあることを認識したうえで、鎮痛剤を服用するなどの対処を講じましょう。
めまい
めまいとは、自分や周りが回転しているように感じるなどの感覚の異常です。
めまいは男性にも起こる症状ですが、女性のめまいは男性の約2倍多いほか、女性ホルモンであるエストロゲンの変動が関係していることが特徴です。
また、めまいは回転性と浮動性に分かれ、症状の現れ方が異なります。普段の生活でめまいの症状がみられる場合、生理痛の可能性があるので、無理をせず適切に対処しましょう。
吐き気
生理痛における吐き気は先述しためまいと関連しているケースが多いです。特に回転性めまいの場合、自分や周りが回転しているように感じます。
その結果、歩行が不安定になり吐き気を感じることがあるのです。
めまいが起こった場合は横になって安静にする必要があります。万が一、手足の痺れ・舌のもつれ・意識の不安定などが確認される場合は、すぐに婦人科などへ相談する必要があります。
下痢
下痢は生理痛の症状のなかではあまり見られることがない症状です。しかし下痢が続くのは辛いものです。
生理痛における下痢の症状は、主にプロスタグランジンやその代謝物が血液の循環に入り込んでしまうことで起こるとされています。
下痢の症状がみられる場合は、特にお腹を冷やさないように工夫することが大切です。
生理痛の腹痛を和らげる方法は?
生理痛における腹痛の対処法については冒頭で述べました。ただし腹痛は鎮痛剤や婦人科を受診しなくても自分自身で和らげることが可能です。
主に以下の5つの方法があります。
- お腹を温める
- 体を冷やす食べ物や飲み物を避ける
- 適度に運動をする
- 入浴する
- 好きな香りでリラックスする
以下、それぞれ詳しく解説します。
お腹を温める
生理痛全般にいえますが、生理痛における腹痛にはお腹を温めることが大切です。体の冷えは血流を悪くし、生理痛を悪化させます。
特にお腹や腰に貼るカイロを使用するだけでも体温は保たれます。入浴時にシャワーだけでなく湯船に浸かることも推奨される対処法です。
身体を冷やす食べ物や飲み物を避ける
逆説的ではありますが、体を温めるためには冷やさないことも重要です。特に体を冷やす食べ物を避けることが対策になります。
体を冷やす食べ物と聞くとあまり思い浮かばないかもしれませんが、基本的には「夏野菜」と呼ばれるものです。それらの野菜は水分を多く含んでいることが特徴です。
また、当然ですが冷たい飲み物は体を直接冷やすことになるのでなるべく避けましょう。
適度に運動をする
適度な運動は生活習慣の改善につながります。そして生活習慣の改善は自律神経やホルモンバランスを整える効果があります。
また、適度な運動は体を温める効果があるほか、うまく筋肉がつけば代謝アップにつながるため体質の抜本的な改善が可能です。
さらに、運動そのものがストレス発散にもなるため、生理痛による気分の落ち込みなどにも一定の効果があります。
普段運動しない方にとってはハードルを感じるかもしれませんが、「体を温める」くらいの軽い気持ちで運動を始めましょう。
生理痛を和らげるという観点では、ウォーキングなどの軽い運動でも体温は上昇し、十分な効果が得られます。
入浴する
入浴は運動と同様、体を温めて血流をよくする効果があります。運動が苦手な方は、入浴をするだけでも生理痛の改善がみられる場合もあるのです。
また、入浴にはリラックス効果もあるため、自律神経を整えてホルモンバランスを安定させることにもつながります。
忙しくてなかなか入浴の時間がとれない方は、半身浴から始めてみることが推奨されます。
好きな香りでリラックスする
実は「香り」も生理痛の緩和に有効です。アロマテラピーとされる手法は「匂い」が電気信号として脳に伝達されることで、その効果を発揮します。
脳に届いた電気信号は視床下部などに作用し、ホルモンの分泌を安定させるのです。また、アロマテラピーによる施術には生理痛の緩和に対して一定の効果があるとの研究成果もあります。
その研究によると、同じマッサージを行う場合、アロマなどの精油を使用したマッサージの方が生理痛の痛みを緩和する傾向があります。
日常生活に支障が出るなら月経困難症の可能性も
ここまで生理痛の原因や対処法などを解説しました。しかし上記の対処法などを行っても生理痛が改善されない場合、月経困難症の可能性があります。
生理のある女性のなかでも実に25%程度が月経困難症に該当するとされており、特に若年層で多いのが特徴です。
月経困難症には器質性月経困難症と機能性月経困難症の2種類があります。器質性月経困難症は子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫など原因がはっきりしているものです。
機能性月経困難症は原因が特定できない月経困難症を総称します。月経困難症で悩む女性の多くは機能性に分類されます。
日常生活に支障が出る程の生理痛が続く場合、月経困難症が疑われるため、早期に婦人科を受診しましょう。
ひどい生理痛の場合は病気が隠れている場合もある
生理痛がひどい場合、上記で紹介した対処法などを試してみましょう。それでも改善しない場合、放っておくのはよくありません。
なぜなら生理痛がひどい場合、ほかの病気などが疑われる場合もあるからです。特に主に以下の3種類が生理痛と関連した病気です。
先述した月経困難症のなかでも「器質性月経困難症」に分類される病気となります。以下、それぞれ詳しく解説します。
- 子宮内膜症:主な症状として、生理痛が年々悪化している・生理の時以外に腹痛がある・性交時に痛みがあるなどが挙げられます。子宮内膜症のうち約30%が不妊症だとされています。発症原因は特定されていませんが、20〜40代に多い病気です。生理期間が長い方も発症しやすいとされています。
- 子宮筋腫:子宮筋腫は子宮の筋肉にできる良性の腫瘍です。良性なので悪化するリスクは極めて低いといえます。ただし子宮筋腫が大きくなりすぎると生理期間が長くなったり、不正出血などを引き起こしたりするので要注意です。生理期間以外で生理痛が起こることもあるので、自分の体調を注意深く観察して異常があるようなら婦人科などを受診しましょう。
- 子宮腺筋症:子宮腺筋症は、子宮内膜が本来の位置とは違う場所で発生・発育してしまう病気です。女性の20〜60%程度に該当するとされています。お腹がぽっこりしている・貧血がある・排便時に肛門が痛いなどの症状がある場合、子腺筋症状の可能性があります。放置すると貧血を起こす程出血量が増加したり、不妊症の原因になったりするので要注意です。
編集部まとめ
この記事では生理痛の原因・症状・和らげる方法などを解説しました。
生理痛は女性の多くが経験するものですが、なかでも「腹痛」に関しては仕事やプライベートに支障が出る程切実な悩みを抱えている方も多いでしょう。
基本的に腹痛の対処法は鎮痛剤を服用するか、婦人科を受診するかのどちらかに分かれます。
そもそも生理痛が起こる原因はプロスタグランジンの分泌と大きく関わっています。プロスタグランジンが増加するとさまざまな臓器を収縮する作用があるため、痛みがともなうのです。
プロスタグランジンが作用した結果として起こる生理痛の症状には、腹痛・頭痛・胃痛・めまい・吐き気・下痢などがあります。
ただし生理痛の症状は体温調整・食事・運動などの自助努力によって和らげることも可能です。
これらの努力によっても改善しない場合、重大な病気が隠れている可能性があります。それらは主に子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症などです。
女性にとって生理が正常に起こることは健康のバロメーターともいえますが、生理痛がひどい場合の対処法は「我慢」だけではありません。
和らげるための改善法や薬などを試すことで隠れた病気などの早期発見につながる可能性もあります。
気になる症状がある場合は、迷わず婦人科を受診しましょう。
参考文献