更年期障害の症状は治療で改善できる?更年期障害の症状や治療方法・ホルモン補充療法の特徴も詳しく解説します
女性における、閉経前と閉経後の5年間ずつを合計した10年間を更年期といいます。
多くの女性にとって、更年期に関する悩みは様々で、日々の生活にも様々な支障があるので大変です。
更年期に出現するさまざまな症状の中で、症状が重くて日常生活に支障をきたす状態を更年期障害と呼びます。
男性にも同様の兆候がみられる場合がありますが、多くの場合は女性に現われる症状を指すことが一般的です。
この記事では、更年期障害の症状と治療方法や、ホルモン補充療法の特徴などについて詳しく解説します。
ぜひ、この記事を参考としていただき、症状の改善に活かしていただければと思います。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
更年期障害の症状は治療で改善できる?
この症状に関する主な原因は、女性ホルモン(エストロゲン)がゆらぎの幅を広げて徐々に減少していくことです。
普段の生活で、女性ホルモンがゆらぎながら低下する症状は、なかなかご自分で改善することは難しいでしょう。
さらに、この症状は加齢による身体的因子や成育歴・性格などの心理的な因子や、職場や家庭での人間関係なども影響します。
更年期障害の治療にあたっては、まず十分に医師による問診を行うことが重要なので、自分に合った専門の医師を選定することが大切です。
相談を受けた専門の医師は、生活習慣の改善や心理療法を実施し、それでも改善しない場合には薬物療法などが処方されます。
更年期障害の症状
上述のとおり、更年期障害の症状にはさまざまなものがありますが、主な症状としては下記のような項目が挙げられます。
下記の症状のうち、「自分にもあてはまる」という場合も多いことでしょう。
月経不順
更年期に現われる兆候として、まずは月経の乱れ(月経不順)が挙げられますが、代表的な症状といえるものです。
それまで規則正しく訪れていた月経が、最初は短い周期で訪れるようになってきます。
減少した女性ホルモン(エストロゲン)をさらに分泌しようとするため、脳下垂体からの性腺刺激ホルモンが大量に分泌されます。
その結果、人によっては月に2回も月経が訪れますが、月経の際に出る血そのものの量は少なくなっていく現象が現われるのが一般的です。
ほてりなど自律神経の症状
この障害において現われる代表的な症状として、「ほてり」や「のぼせ」などの症状が挙げられます。
ほてりやのぼせは、風呂上りによくある現象と似ていますが、自分でも気づくことが多いです。
ほてりは、身体が異常にポカポカとしてくる状態で、実際に汗をかいて顔が赤くなることがあります。
のぼせは、毎回同じような時間や動作で、頭に血がのぼったような症状が現われます。
毎回同じような状況で同一の症状が出現するので、自分でもこの状況を自覚し、適切に対応することが必要です。
めまいや頭痛など身体的な症状
この障害の症状としては、めまいや頭痛といった身体的な症状も特徴的で、不快感を感じる方が多いです。
めまいの特徴としては、まるで船に乗っているようなフラフラ感が挙げられます。
めまいや頭痛は、通常であればしばらく安静にしていると治まってくることが多いです。
そのため特に慌てることなく、自然な状態で安静な対応が取れるよう工夫しましょう。
イライラなど精神的な症状
この障害を発症すると、イライラ・うつ症状・集中力欠如による不眠症・無気力・脱力感などの精神的な症状が現われる場合があります。
こうした症状に悩まされている場合には、そのまま放置していても状態がなかなか改善されないので、婦人科など医師への受診が必要です。
専門の医師に相談することで、精神的にも落ち着きますし、具体的な対処方法についてアドバイスが得られるでしょう。
特に気をつけるべきなのは、環境や人間関係などが原因で起きる精神的ストレスは、症状が悪化するケースが非常に多いことです。
ストレス社会といわれる現代において、環境や人間関係による精神的なストレスは避けて通れるものではありません。
どうしても発生してしまう精神的ストレスですが、なんとか打開策を見出し、折り合いをつける努力が必要となります。
肌・髪の不調
この障害に伴って女性ホルモンが少なくなることにより、肌や髪が弱く敏感になり、その結果としてかゆみや湿疹などの症状が現われることがあります。
かゆみや湿疹は、症状が現われるととても不快であり、日常生活にも少なからず影響が出てしまうため厄介です。
加齢による角質層のセラミドの減少によって、このような肌や髪の症状に拍車をかける結果となることも多い状況です。
肌や髪の不調以外にも、手足の痺れや震えといった症状を伴うこともあるので、ケアが必要となります。
更年期障害の治療方法
みてきたように、さまざまな症状を伴う更年期障害ですが、こうした症状が現われたら適切な治療が必要です。
症状に応じた適切な治療方法を知って的確に対応することで、精神的にも落ち着きますし、安心感も高まります。
以下に、主な治療方法について解説していきます。
漢方療法
漢方薬は生薬の組み合わせから成り立っており、心と体全体のバランスの乱れを回復させる働きがあります。
更年期特有の障害を改善させる主な処方としては、婦人科三大処方として知られる、下記の薬材を活用することが多いです。
- 当帰芍薬散:体力が低下しており、冷え症で貧血傾向がある場合に処方
- 加味逍遥散:体質虚弱で疲労しやすく、不安や不眠などの精神症状を訴える場合に処方
- 桂枝茯苓丸:体力中等度以上でのぼせがみられ、下腹部に抵抗や圧痛を訴える場合に処方
向精神薬
この症状が出現すると、気分の落ち込み・意欲の低下・イライラ・情緒不安定・不眠といった、いわゆる精神症状が現われる場合も少なくありません。
こうした精神症状はとてもつらく、苦しいものなので、適切な対処方法をしっかりと実践することで気持ちが楽になるでしょう。
症状がとてもつらい場合には、抗うつ薬・抗不安薬・催眠鎮静薬などの向精神薬が投与される場合があります。
具体的には、次のような新規の抗うつ薬が挙げられますので、参考としていただければと思います。
- セロトニン再取り込みを阻害する薬(SSRI)
- ノルアドレナリンの再取り込みを阻害する薬(SNRI)
これらの薬は副作用も少なく、ほてりや発汗など、血管の拡張と放熱と関係がある症状にも有効なので活用してください。
サプリメント
更年期におけるさまざまな症状への対策として、サプリメントも有効です。
サプリメントには多種多様な種類がありますが、代表的なサプリメントとして、エクオールが挙げられます。
エクオールは大豆由来の食物サプリなので、副作用のリスクが低く安心して飲むことが可能です。
サプリメントを服用することに抵抗感のある場合でも、食物由来で副作用のないものであれば安心感があります。
エクオールにはエストロゲンと同等の作用があり、更年期症状を和らげるだけでなく、骨・皮膚・血管・脳を保護する働きもあります。
ホルモン補充療法
上述のとおり、更年期における障害の主な原因としては、女性ホルモン(エストロゲン)のゆらぎと減少が挙げられます。
この状態を改善するための、少量のエストロゲンを補う治療法としては、ホルモン補充療法(HRT:Hormone Replacement Therapy)が主流です。
HRTは、ほてり・のぼせ・ホットフラッシュ・発汗といった、血管の拡張と熱の拡散に関係する症状に対して特に有効です。
女性ホルモンが減少する状況は、更年期では避けて通れないことなので、こうした治療法を採用することで症状の軽減を図りましょう。
エストロゲンは、単独では子宮内膜増殖症のリスクが上昇するため、子宮がある場合には黄体ホルモンを併用します。
また、手術で子宮を摘出した場合には、黄体ホルモンを重複して投与する必要はありません。
HRT用に処方されるホルモン剤には、飲み薬・貼り薬・塗り薬など、いくつかの種類があり、投与法も同様です。
専門の医師と相談し、自分に合った投与方法を選択することが大切です。
ホルモン補充療法の特徴
ホルモン補充療法(HRT)は、不足した女性ホルモンを補う治療法として有効性がとても高く、更年期障害の治療としては第一に選択される薬です。
とても有効な薬なので、効果的に採用して症状の改善に役立てていただきたいものです。
効果が期待される主な症状としては、特にホットフラッシュ・発汗・不眠などの自律神経症状に有効で、骨粗鬆症の予防効果もあります。
減少したホルモンを補う治療
ホルモン補充療法は、分泌が低下した女性ホルモンを補うことにより、更年期障害の症状を改善し、予防することが可能です。
HRTを施すことにより、女性の若さや活力を保つことを目的とした薬物療法になりますが、更年期による障害のすべてがエストロゲンの減少ではありません。
この障害は上述のとおり心理的要因・社会的要因・性格的要因が複雑に関与しており、ホルモン補充療法が万能な訳ではないのです。
このため、3ヵ月程度のホルモン補充療法で改善されない場合は、別の治療を検討することが必要となります。
こうした特徴をよく理解し、さまざまな選択肢を検討することが大切です。
副作用のリスクがある
ホルモン補充療法中には軽度の副作用があり、不正出血・乳房のはり・痛み・吐き気・頭痛などがよくみられます。
処方後の経過とともに気にならなくなる場合もありますが、改善しない場合には、投与量の減量や治療の中止を選択するのが現状です。
症状が改善しない場合は、担当の医師としっかり相談し、対応策を検討しましょう。
とてもまれな副作用としては、60歳以上の高齢者への投与や肥満・高血圧の場合に、静脈血栓塞栓症や脳卒中の危険性が増加するリスクがあります。
なお、ホルモン補充療法と乳がん発生の危険性との関連については諸説ありますが、結論が出ていません。
現時点では、ホルモン補充療法による乳がん発生リスクへの影響は小さいと考えられています。
ただし、乳がんはさまざまな要因によって誰にでも生じうる危険性をはらんでいます。
このため、乳がんに気づかないままホルモン補充療法を受けてしまうことがないよう、1年に1回の乳がん検診を受けることが重要です。
さまざまな症状は、乳がんなどとも複雑に絡み合って発生することがあるので、定期的な乳がん検診をはじめ、ほかの検診もしっかりと受けましょう。
更年期障害の治療を検討しているときは
更年期障害に襲われた場合、閉経後も女性ホルモンの減少に体が慣れるまでにはさまざまな症状がみられます。
この症状には個人差が大きく、まったく症状が現れない場合もあれば、症状がひどくて日常生活に支障が出る場合もあります。
症状がひどくてつらい場合は、専門の医師に相談し、適切な対応策を施すよう気を配りましょう。
なお、内科や外科の病気や精神科の病気が更年期障害の症状に隠れている場合があるので、注意が必要です。
こうした症状は、自分一人で気づいて改善できるものではありません。
この時期の不定愁訴を更年期障害と断定せず、症状に対する専門外来を受診し、基礎疾患を否定することも大切です。
特に鑑別が重要なのは甲状腺疾患とうつ病ですが、その他にも心血管系や神経脳外科系の疾患や、免疫代謝異常の疾患もあります。
多岐にわたり、また複雑に絡み合う症状ですが、しっかりと受け止め冷静に対処していきましょう。
また、この障害は夫や自分の退職・子どもの独立・親の介護など、社会文化的な環境因子も原因になっている状況です。
更年期には運動習慣を持つ女性の方がのぼせなどの症状が軽くなるといわれています。
この症状の治療中でも、軽い体操やウォーキングなどを取り入れるなど、生活全般にわたって注意をはらうことが重要です。
軽い体操やウォーキングなどは、健常者でも普段から取り入れる習慣をつけていれば楽しく実行することができます。
更年期障害だと思っていたものの実は女性特有の病気だったという可能性もあるので、女性検診を受ける習慣を持つことが大切です。
編集部まとめ
更年期障害の症状と治療方法、またホルモン補充療法の特徴などについても詳しく解説しました。
特に閉経後の女性にとっては、更年期に発生するさまざまな症状に悩まされることも多いと思われます。
この障害における症状はさまざまですが、該当する状態を抱えて日常生活を送るのは、身体的にも精神的にもつらいものです。
身体的にも精神的にも健全に、楽しく日々を過ごすためには、こうした症状に適切に対処し、改善していきましょう。
更年期障害に悩んでいる方は、この記事を読んで更年期障害の症状と治療方法についてよく理解し、適切な対応を取っていただければ幸いです。