まぶたが下がる原因は?片方のまぶただけ下がる理由や治療方法・予防する方法も詳しく解説します
「最近まぶたが重たい」「視界が徐々に狭くなってきている気がする」
このような症状は、もしかしたらまぶたが下がっていることに原因があるかもしれません。
ただまぶたが下がっているだけであれば危険度はそれほど高くないですが、場合によっては裏に大きな病気が隠れている可能性があり、決して軽視できません。
まぶたが下がっている原因が眼瞼下垂にある場合には、肩こり・頭痛・眼精疲労といった随伴症状が現れることもあり、早期に治療することが大切です。
今回は、まぶたが下がる原因や眼瞼下垂について解説します。治療方法や予防方法についても併せて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
まぶたが下がる原因
まぶたが下がる原因は、人によって様々に考えられます。
大きく分類すると先天的な原因と後天的な原因に分けられますが、後天的な原因によってまぶたが下がることの方が多いです。
ここでは、以下の3つの項目に分けて原因について解説します。
- 生まれつきの体質
- 神経系の病気
- 加齢による筋力の衰え
生まれつきの体質
まぶたが下がる原因には、まず生まれつきの体質が考えられます。
これは遺伝的要因によるもので、同じように家族でもまぶたが下がることで悩んでいらっしゃる方がいる可能性が高いです。
この症状は男女ともに見られ、性別によって差はありません。
生まれつきの体質の場合は、重症度を医師によって診断され、弱視の可能性がある場合には幼少期の頃に治療を受けることを推奨されることがあります。
神経系の病気
まぶたが下がる原因として、神経系の病気が考えられることもあります。具体的には、動眼神経・滑車神経・外転神経の3つの神経系の異常が原因です。
これら3つの神経は眼球を動かすために必要な神経で、まぶたの筋肉にも影響を与えています。これらに異常が生じるとまぶたが下がってしまうことがあります。
また、頭部外傷・脳腫瘍・脳出血などの脳の疾患も神経に影響を与えるため、まぶたが下がる原因になり得るものです。
これらの神経系の病気は、医師による診断や適切な治療を受けることが重要です。
少しでも思い当たる節がある場合は、早めに医師に相談するようにしましょう。
加齢による筋力の衰え
まぶたが下がる原因としてやはり多いのが、加齢による筋力の衰えです。
加齢によって顔面の筋肉は衰え、弱くなります。その結果、まぶたを上げるための筋肉も弱くなり、まぶたが下がるように見えてしまうのです。
顔面全体の筋肉が衰えていくので、顔の形状も変わり、顔の周りにたるみやシワが出現することもあります。
片方のまぶただけ下がる理由
中には片方のまぶただけ下がることにお悩みを抱いている方もいらっしゃるかもしれません。
片方のまぶただけ下がる理由としては様々なものが考えられますが、多いのは眼瞼下垂と呼ばれる病気です。
ここでは、眼瞼下垂についての概要を確認しましょう。
眼瞼下垂とは
眼瞼下垂とは、まぶたが下に垂れている状態のことを指します。眼瞼下垂になってしまう原因としては、生まれつき・年齢・疲れ・疾患などです。
まぶたを開けた状態でも目が半開きになり、まぶたが瞳孔を覆ってしまうため、まぶたが下がる以外にも様々な症状を引き起こすことがあります。
頭痛・肩こり・睡眠障害・眼精疲労といった症状に悩まされている方は、眼瞼下垂を疑って良いでしょう。
よく似たものに一重まぶたがありますが、一重まぶたは瞳孔にまでまぶたが下がるようなことはないことが特徴です。
眼瞼下垂は立派な疾患であるため、早期発見・早期治療が大切です。
眼瞼下垂になりやすい人
眼瞼下垂が起きる原因には、加齢や疲れなどが挙げられます。そのため、眼瞼下垂になりやすい人は40代以降の方が多いです。
年齢が上がるとまぶたを支える筋肉や繊維が弱くなるため、眼瞼下垂が起こりやすくなります。
目を酷使するようなデスクワークの方や、細かい作業をよくする方なども眼瞼下垂を患いやすいです。
先天的なものや神経系の疾患によって起こることもあるため、まずは医師の診断を受けるようにしましょう。
眼瞼下垂は早めに治療を検討しよう
眼瞼下垂は早めに治療を受けることが大切です。
というのも、眼瞼下垂が進行すると視野が狭くなり、目の疲れや頭・肩の痛みを引き起こすこともあるからです。
また、眼瞼下垂は眼粘膜を乾燥させ、眼疾患を引き起こす可能性もあります。
眼瞼下垂は治療を受ければ改善できるため、我慢せずに早期に治療を受けることがおすすめです。
軽症の場合の治療方法
まぶたの下がり具合が軽症の場合には、以下のような治療方法があります。
- 余剰皮膚切除法
- 挙筋腱膜タッキング法
- ミュラー筋タッキング法
- 挙筋腱膜前転術
これら4つの治療方法について、順に見てみましょう。
余剰皮膚切除法
眼瞼下垂の余剰皮膚切除法とは、まぶたの下部にある余分な皮膚を切除することで、まぶたを上にあげる手術法です。
手術は、局所麻酔下に行われます。手術後は約1週間程度の療養期間が必要で、手術後の約2週間は目を濡らしたり擦ったりするのを避ける必要があります。
手術後の数週間は目にやさしい洗顔料を使用し、眼周りには軟質クリームを塗りましょう。
皮膚を二重のラインや眉のすぐ下で切除するので、仕上がりイメージについてしっかりと医師と相談しておくことが求められます。
挙筋腱膜タッキング法
挙筋腱膜タッキング法とは、まぶた下部の筋肉を糸で引っ張りながら縫い合わせることで、まぶたを上げる手術法です。
余剰皮膚切除法と同様、麻酔下で行われます。手術後は約1週間から10日間の療養が必要です。
挙筋腱膜タッキング法は、眼瞼下垂が軽度から中程度の範囲にある場合に適しています。特にまぶたを上にあげる筋力が低下している場合に効果的です。
ミュラー筋タッキング法
ミュラー筋タッキング法とは、ミュラー筋と呼ばれる柔らかい筋肉を手繰り寄せて極細の糸で縫い付ける手術法です。
切開をしない眼瞼下垂の手術法として知られており、国内でも多く行われています。
まぶたを開けたときのラインが自然になりやすいですが、軽症の方にしかできない手法のため、医師との相談が必須です。
挙筋腱膜前転術
挙筋腱膜前転術とは、挙筋腱膜を切除してまぶたを上げる筋肉の効果を高める手術法です。
この手術は、眼瞼下垂が遺伝性や年齢によって引き起こされる場合に有効であると考えられており、眼瞼下垂で最も多く行われています。
ただ筋肉の機能が極度に弱まっている場合には向きません。
重症の場合の治療方法
眼瞼下垂が重症の場合の治療法としては、以下の2つが挙げられます。
- 挙筋腱膜短縮法
- 前頭筋吊り上げ術
それぞれの治療法について確認していきましょう。
挙筋腱膜短縮法
挙筋腱膜短縮法とは、挙筋腱膜とミュラー筋を剥がしてまぶたに固定する手術方法です。
この手術は、まぶたを上げるためにまぶた下部の筋肉の長さを短縮するようなイメージだとわかりやすいのではないでしょうか。
瞳孔の半分を覆うような重度の眼瞼下垂を患っている方に効果的です。
しかし、手術で筋肉を短縮しすぎるとまぶたに対して過剰な張りを与えることになり、逆効果になる可能性があります。
そのため、手術をする際には経験豊富な医師による施術が望ましいです。
前頭筋吊り上げ術
眼瞼下垂の前頭筋吊り上げ術は、挙筋腱膜短縮法でも改善できそうにない眼瞼下垂に有効な手術方法です。
挙筋腱膜短縮法は、まだ挙筋の機能が残っていることを前提にした手術のため、その機能がないことが予想される場合には前頭筋吊り上げ術が実施されます。
他の手術方法に比べて手術時間がかかりやすく、リスクも高いので慎重に検討するようにしましょう。
まぶたが下がるのを予防する方法
まぶたが下がるのを予防する方法としては、セルフケアを心がけ、あまり目に負担をかけないようにすることが有効的です。
具体的に見てみましょう。
セルフケアをする
何事の予防方法でもセルフケアは非常に大切ですが、それはまぶたが下がるのを予防する際にもいえます。具体的な方法は、以下の5つです。
- まぶたのストレッチ:まぶたを上げるストレッチをすることで、前頭筋を鍛えることができます。適度なストレッチで、眼瞼下垂を防ぎましょう。
- 良質な睡眠を取る:睡眠は身体の健康に大きな影響を及ぼします。睡眠不足だと身体機能が低下してしまうため、しっかりと質の良い睡眠を取りましょう。
- 正しい姿勢を保つ:例えばパソコンを見るとき、前屈みになってパソコンに異常に目を近づけてしまってはいませんか?
このような悪い姿勢は、目や首にかかる負担を大きくしてしまいます。
正しい姿勢を保つためには、肩を下げて背筋を伸ばし、首を中央に向けるようにすることが大切です。 - 適度な運動をする:適度な運動をすることで、全身の筋肉を鍛えることが可能です。特に、顔面や首の周りの筋肉を鍛える運動をするようにしましょう。
まずは目を軽くつぶり3秒数えてください。3秒経ったら今度はもう少し強くつぶりましょう。
また3秒経過したら、まぶたをぎゅっと絞るように5秒つぶり、ゆっくりと目を開けてください。
これをちょっとしたときに3セット行うと眼瞼下垂の予防につながります。 - 目疲れを防ぐ:目の疲れは眼瞼下垂の原因の1つです。長時間パソコンやスマートフォンを使用しないようにしましょう。
目安としては、20分に1回は目を休めることをおすすめします。
自分自身で眼瞼下垂を予防するために、上記のようなセルフケアを行うことが大切です。
また、何か少しでも違和感があるときは、遠慮せずに専門家に相談するのも大切なセルフケアの1つです。
眼瞼下垂は進行性があるため、放置せずに早めに医療機関を受診するようにしましょう。
まぶたに負担をかけないようにする
眼瞼下垂の予防には、徹底的にまぶたへの負担を減らすことも有効です。具体的な方法は、以下の5つです。
- まぶたを擦らない:特に花粉やアレルギーを患っている方は、我慢できずにまぶたを擦ってしまうことがあるでしょう。
刺激になるのでまぶたを擦るのは避けてください。目薬やクリームを使って痒みを軽減させましょう。 - アイプチの使用頻度を減らす:アイプチもまぶたに大きな負担をかけてしまいます。使用頻度を減らすか、二重整形などを視野に入れて検討しましょう。
- アイメイクを薄くする:アイメイクもアイプチ同様まぶたに負担をかけてしまいます。あまり濃くしすぎないようにすることで刺激を減らしましょう。
- 眼の周りのスキンケア:目の周りは肌が薄いため、保湿クリームなどを使用して定期的に保湿してあげてください。
- ハードコンタクトの使用頻度を減らす:ハードコンタクトを長年使用している方は、眼瞼下垂になりやすい傾向にあります。
ハードコンタクトは固い異物を目の中に入れている状態なので、多少なりともまぶたに負担がかかってしまうのです。
メガネやソフトレンズを活用して、ハードコンタクトの使用頻度を減らしましょう。
これらの方法を取り入れることで、まぶたに負担をかけないようにできます。
まぶたへの負担は加齢とともにどんどん積み重なってしまいますので、今からでも心がけておくと良いでしょう。
まぶたが下がっているのが気になるときはクリニックへ相談を
まぶたが下がっているのが気になるときには、クリニックへ相談しましょう。
加齢によるまぶたの下がりの場合、年だからと諦めてしまう方もいらっしゃいますが、眼瞼下垂と呼ばれる立派な病気の可能性も否定できません。
神経の異常によるものの可能性もあるため、軽視しないようにすることが大切です。
まぶたの垂れ下がりは、適切な治療を施すことで改善することが叶います。
頭痛や肩こりといったその他の症状にも悩まされているという方は、早めに相談するようにしましょう。
編集部まとめ
今回は、まぶたが下がる原因や手術法などについて解説しました。
まぶたが下がる原因には先天性のもの以外にも、神経系の病気を指摘できる可能性があります。
特にまぶたが下がる以外の症状に悩まされている方は、一度医療機関の受診を検討することをおすすめします。
まぶたの下がりを改善する治療方法としては、症状の程度によって変わってくることがポイントです。
軽症の場合は手術も簡単でリスクも少ないことが多いですが、重症の場合はそれだけ手術も複雑になるためリスクが高くなります。
手術を検討する際は、医師の実績を重要視することが大切です。
また、まぶたが下がるのを予防するためには、やはりまぶたを労ってあげることが大切となります。
特に最近では日常生活から電子機器が切り離せません。
仕事の時間はパソコン、プライベートの時間はスマホといったように、常に電子機器を扱っている方は少なくないでしょう。
電子機器は目の疲れに直結するため、ほどほどにすることが求められます。
ただそれも難しいことがありますから、まぶたのストレッチをしたり、定期的に目を休ませたりすることを心がけるようにしましょう。
参考文献
- 【第50回】眼瞼下垂について|杉並区医師会
- 眼瞼下垂に悩むかたへ|公益社団法人 日本眼科医会
- 眼瞼下垂
- 【東京】眼瞼下垂になりやすい人の特徴 眼瞼下垂の予防法 形成外科で眼瞼下垂手術|医療法人社団 形成会 酒井形成外科
- 眼瞼下垂(がんけんかすい)|社会福祉法人 恩賜財団 済生会
参考リンク