子宮頸がんワクチンの副作用は?有効性や症状まで解説
子宮頸がんは、女性の子宮頸部にできるがんです。子宮頸部は、腟へと細長く突き出た子宮の入り口部分を指します。
子宮頸がんの患者さんは、2019年の統計で年間10,000人程度と報告されています。
年代別にみると、20代後半から急激に増えて40代後半で横ばいに転じます。特に近年は、20代・30代の若い層での発症が増えてきました。
子宮頸がんの怖さは高い罹患率と死亡率にあります。早期に発見すれば治癒率が高いがんですが、進行した状態で発見されると治療が難しくなります。
しかし、最近では、子宮頸がんに関与しているといわれるHPV(ヒトパピローマウイルス)へのワクチンによる対策や定期的な子宮頸がん検診によって、感染予防が充実しています。
とはいえ、決して安心できるものではありませんので、今回は子宮頸がんとワクチンの説明します。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
子宮頸がんワクチンとは?
子宮頸がんワクチンは、子宮頸部がんやその前段階の異形細胞の増殖を予防するために開発されたワクチンです。
このワクチンの目的は、子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルスの感染を予防することです。
ヒトパピローマウイルスは、性行為を通じて感染するウイルスで、子宮頸がんのほとんどの症例に関与しています。
そのため、厚生労働省では、令和4年4月から子宮頸がんワクチンの接種対象を小学6年生から高校1年生の女子として、ワクチン接種を推奨しています。
子宮頸がんワクチンの接種により、ヒトパピローマウイルスの感染のリスクを減らし、発症率を抑えることが期待できる状況です。
しかし、子宮頸がんワクチンはあくまで予防手段ですので、すでに感染している場合の効果は確実ではありません。
子宮頸がんワクチンの副作用
子宮頸がんワクチンを接種後、いくらかの副作用があることがわかっています。
主な副作用は、発熱・接種した部位の痛みや腫れ・注射による痛み・恐怖・興奮などをきっかけとした失神などです。
また、まれに重い副作用があることも報告されています。具体的には、アナフィラキシー・ギランバレー症候群・急性散在性脳脊髄炎・複合性局所疼痛症候群です。
どのような副作用がどれくらいの頻度で起きるのかを説明します。
接種部位の痛み・腫れ
10%以上の頻度で接種部位の痛み・腫れが起きたことが報告されています。
子宮頸がんワクチンの注射は、筋肉注射です。そのため、接種を受けた部分の痛み・腫れ・赤みなどの症状が起こることがあります。
接種部位の痛みは、50%以上の頻度で発生するとされていますが、多くの場合は数日程度でおさまり、長期化はしません。
痒み
子宮頸がんワクチンの副作用で、10%から50%未満の方が痒みを感じています。
症状としては痒みがある部分が赤くなったり皮膚に湿疹が出たりします。この反応は、大抵軽度で一過性のものです。ワクチンを接種してから数日から数週間で改善されます。
発熱
子宮頸がんワクチンの摂取後、38度以上の発熱がでる場合があります。
子宮頸がんワクチンを接種した方のうち、10%から50%未満の方が発熱したという報告がされています。
しかし、この発熱は一過性のものです。これらの副作用は数日から数週間で自然に回復します。もし、発熱が長引くようであれば、病院で診察してもらうことをおすすめします。
また、発熱に伴い不快感や倦怠感を感じたり寒気や頭痛を感じたりする場合もあり、接種してから数日は注意が必要です。
失神
子宮頸がんワクチンの接種による失神の報告は、ごくまれにあります。頻度は1%にも満たない程です。特に若年層の女性にみられ、ワクチン接種中や直後に一過性の失神やめまいを起こします。
失神は一時的で、通常であれば接種後数分から数十分の間で回復します。多くの場合、この失神は、ワクチン自体によるものではなく、注射の痛み・恐怖・不快感・ストレスからくるものという考えが一般的です。
また、注射による一時的な反射的な反応・血圧の変動・自律神経系の反応などでも失神は、起こりえます。注射時に深呼吸をしてリラックスした状態で臨むなど注射時の緊張を和らげることが重要です。
また、接種後はすぐに立ち上がらず、少し休息して体調が安定するのを待つようにしましょう。
アナフィラキシー
ごくまれに、子宮頸がんワクチン接種によるアナフィラキシーが報告されています。
アナフィラキシーは、免疫系が異常な過剰反応を起こし、全身的な重篤なアレルギー反応が生じる状態です。一般的にアナフィラキシーは、特定の成分や材料に対して過敏反応を起こす症状です。
子宮頸がんワクチンの場合は、主要成分であるウイルス様粒子・アジュバントとしてのアルミニウム塩に対してアレルギー反応が起きるのではと考えられています。
ワクチン接種時にアナフィラキシーの症状が現れた場合には、すぐに対応する必要があります。
アナフィラキシーの症状には、全身のかゆみ・じんましん・湿疹・呼吸困難・むくみ・めまい・嘔吐などがあります。
もしアレルギー歴やアナフィラキシーのリスクがあるのでしたら、ワクチン接種前に医師に正確に伝えることが重要です。
子宮頸がんワクチンの有効性は?
子宮頸がんワクチンは、子宮頸がん全体の 50%から70%の原因といわれている16型と18型の2種類のヒトパピローマウイルスに持続感染などの予防効果をもつワクチンです。
これは、サーバリックス・ガーダシル・シルガード9の3種類のワクチンがそれにあたります。この3種類のワクチンにより16型と18型の感染や異形成を90%以上予防したと報告されています。
また、子宮頸がんワクチンは、同じHPV16型および18型に関連する腟がん・外陰部がん・肛門がんなどの予防にも一定の効果が出ています。
子宮頸がんワクチンは、適切な接種スケジュールで受けることで高い予防効果が得られますが、すでに感染している場合の治療には限定的です。
サーバリックス
サーバリックスは、ヒトパピローマウイルスの16型と18型に対する高い免疫応答を引き起こします。サーバリックスは、アルミニウム塩を含むアジュバントを使用しています。
サーバリックスの標準的な接種スケジュールは、初回接種の後1ヵ月後に2回目、6ヵ月後に3回目の接種です。
サーバリックスの副作用は一般的に軽度で一過性です。接種部位の痛み・腫れ・発熱・頭痛・筋肉痛などです。まれに重篤な副作用としてアレルギー反応やアナフィラキシーが報告されています。
ガーダシル
ガーダシルは、ヒトパピローマウイルスの16型と18型に加えて、 6型と11型にも対する免疫応答を引き起こす多価ワクチンです。
ヒトパピローマウイルス6型と11型は、性行為に伴う感染によって生じる尖圭コンジローマの主な原因とされているものです。ガーダシルは、アルミニウム塩を含むアジュバンドを使用しています。
ガーダシルの標準的な接種スケジュールは、初回接種の後2ヵ月後に2回目、6ヵ月後に3回目の接種です。ガーダシルの副作用は一般的に軽度で一過性です。接種部位の痛み・腫れ・発熱・頭痛・筋肉痛などです。
まれに重篤な副作用としてアレルギー反応やアナフィラキシーが報告されています。
シルガード9
シルガード9はヒトパピローマウイルスの16型と18型に加えて、31型・33型・45型・52型・58型にも対する免疫応答を引き起こす多価ワクチンです。
これらのタイプは、子宮頸がんのリスクを増加させることが知られています。
シルガード9の標準的な接種スケジュールは、15歳になるまでは、初回接種の後6ヵ月後に2回目の接種です。初回を15歳を過ぎてから受ける場合は、初回接種の後2ヵ月(最短で1ヵ月)に2回目、6ヵ月後(最短で4ヵ月)に3回目の接種です。
シルガード9の副作用は一般的に軽度で一過性です。接種部位の痛み・腫れ・発熱・頭痛・筋肉痛などです。まれに重篤な副作用としてアレルギー反応やアナフィラキシーが報告されています。
子宮頸がんの原因
子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルスの感染が原因であることがわかっています。
このウイルスは性的接触により子宮頸部に感染します。ヒトパピローマウイルスは男性にも女性にも感染するありふれたウイルスであり、性交経験のある女性の過半数は、一生に一度は感染機会があるといわれているほどです。
ヒトパピローマウイルスに感染しても、90%の人は免疫の力でウイルスが自然に排除されます。しかし、10%の人は感染が長期間持続し、そのうち自然治癒しない一部が数年以上かけて子宮頸がんに進行します。
HPVウイルスの感染が原因
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって引き起こされた子宮頸がん前駆病変(前がん病変)を通過して、最終的に年単位の時間をかけて子宮頸がんになります。
ヒトパピローマウイルスにはいくつかの型があります。そのなかで注目すべきは、感染すると子宮頸がんへ変わっていきやすいものの存在です。
なかでも16型や18型は、ほかに比べ子宮頸がんへ進行させる危険性が高いと考えられています。
さらにこれらは、若い女性にとても良く見つかっています。感染したヒトパピローマウイルスのほとんどは排除されますが、これは本来自分自身で持っている免疫力です。
そのため、16型や18型に感染していることが判明したからといって、すぐに子宮頸がんになってしまうのではありません。がん化には年単位の時間がかかります。
普段からきちんと検診を受けていれば、子宮頸がんになる前のがん前駆病変の間に見つけることができます。
性的接触によって子宮頸部に感染する
子宮頸がんが子宮頸部に感染するのは性的接触によるものです。ほとんどの子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルスであり、性的接触によって感染が広がることがわかっています。
感染した人が性行為をするとウイルスがほかの人に感染するリスクが高まります。特に、性行為において体液や粘膜との接触がある場合には感染が起こりやすいです。
しかし、必ずしも性的接触でなければ感染しないわけではありません。性的接触以外でも感染はまれに起こります。
例えば、感染した母親から新生児に感染する垂直感染や、ヒトパピローマウイルスが存在する皮膚や粘膜との接触によって感染などの場合です。
子宮頸がんの症状
子宮頸がんは早期の段階では、ほとんど自覚症状がありません。しかし、進行するに連れて異常なおりもの・月経以外の出血・性行為の際の出血・下腹部の痛みなどが現れます。
では、これらの症状を詳しく説明しましょう。
異常なおりもの
子宮頸がんが進行すると、異常なおりものが出てくるようになります。このおりものは、臭いが強く濃い茶色や膿のようなものです。
また、水っぽいおりものの場合もあります。さらに、粘液がたくさん出るなどの症状がみられるのも特徴の1つです。
不正出血
がんが子宮の外に広がっていくと現れる症状が、不正出血です。また、骨盤・下腹部・腰に痛みを感じるようになります。
さらに、尿や便に血が混ざり、下肢のむくみなどが気になり始めます。
このような不正出血は、通常の月経周期とはまったく異なるので、不安になることでしょう。少しでも気になる症状があるときには、ためらわずに婦人科を受診しましょう。
下腹部の痛み
子宮頸がんが進行してしまうと、不正出血だけにとどまらず、下腹部の痛みを感じるようになります。
この痛みは骨盤の周辺にも広がっていき、不快感が表に出てしまう程の痛みになります。
子宮頸がんワクチンはキャッチアップ接種も可能
子宮頸がんワクチンはキャッチアップ接種も可能です。
キャッチアップ接種とは、ワクチンが推奨される年齢に達していない人や推奨されたスケジュールに遅れがある方に対して、後から遡ってワクチンを接種することです。
一般的に、子宮頸がんワクチンは、10代の少女や若い女性に対しての予防策として積極的に接種を推奨します。
しかし、ワクチン接種を受けていない成人女性・設定の変更などで年齢が狭間になってしまった女性・年齢が推奨年齢を超えている女性であっても、キャッチアップ接種によってワクチンを受けることができます。
キャッチアップ接種の具体的な対象年齢やスケジュールは、地域や国によって異なる場合が多いようです。
日本の場合は、通常、未接種の場合は2回または3回のワクチン接種が推奨されています。
詳細な接種スケジュールや回数は、打つワクチンによっても異なるので、しっかりとかかりつけの医師や保健当局の指示に従うようにしましょう。
編集部まとめ
子宮頸がんは、初期のときには自分自身に自覚がなく、やっかいな病気です。
しかし、早めの対策を打つことでがんになる前に消滅させることができ、がんのリスクを減らせます。
また、ワクチンを打ったからといって絶対に感染しないとはいえません。
定期的な検査とともに、ちょっとした違和感があればすぐにかかりつけの医師に相談しましょう。
参考文献