頭痛薬の選び方は?症状別の効果的な治療薬を解説!
「頭痛薬を選ぶ際にはどのような点に注意して選ぶと良いのだろう」、「自分の頭痛症状に合った薬はどのようなものだろう」など、頭痛薬に関する疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
頭痛は非常に身近な症状であり、種類や治療方法も様々です。この記事では頭痛薬の選び方を始めとし、偏頭痛や緊張型頭痛など頭痛の種類に応じた薬の違いにも触れて解説しています。
頭痛にお悩みの方や、頭痛薬の選び方について知りたい方はぜひ参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
頭痛薬の選び方は?
頭痛薬を選ぶ際には以下のポイントを考慮するのが大切です。
- 年齢・性別・体重
- 成分・特徴
- 症状
以下でそれぞれの項目について詳しく解説します。
年齢・性別・体重で選ぶ
頭痛薬を選ぶ際は年齢・性別・体重を考慮しましょう。
同じ薬剤でも小児・成人・高齢者など年齢や、性別によって効き方が変わります。また小児でも体重が成人と同程度である場合や、成人でもやせ型であるなど体重によっても効果に差が出るため、総合的に判断して頭痛薬を選ぶことが大切です。
成分・特徴で選ぶ
頭痛薬は成分・特徴で選ぶことが大切です。
代表的な頭痛薬のひとつに痛みを速やかに抑える非ステロイド性抗炎症薬の「NSAIDs」がありますが、頭痛の種類によってはこの薬剤よりも相応しい薬剤も存在します。
また薬剤の成分がアレルギー反応を引き起こす可能性もあり、以前にも同じ成分の薬剤を使用した際に、アレルギーや喘息などを起こしたことがある方は注意が必要です。
そのため頭痛薬を選ぶ際には、薬剤の成分や特徴を十分に確認しましょう。
症状で選ぶ
頭痛薬は起きている症状から選ぶようにしましょう。
例えば頭がズキズキと痛む・吐き気を伴う頭痛があるなどの症状が出ている場合は「偏頭痛」であるケースが多く、これは「一次性頭痛」に分類されます。
一方で原因疾患があるタイプの頭痛を「二次性頭痛」と呼び、頭痛以外にも様々な原因疾患に伴う症状を来たします。
この場合は市販の鎮痛剤の服用で済ませることは危険であり、早期の病院受診が必要です。
このように頭痛には数多くの種類があり、それによって適切な頭痛薬や対応方法が変わるため、自身に起きている症状を正確に把握した上で頭痛薬を選ぶようにしましょう。
頭痛の主な種類と原因
頭痛の主な種類は次の通りです。
- 偏頭痛
- 緊張型頭痛
- 三叉神経・自律神経性頭痛
以下でそれぞれの発生機序や原因についてみていきましょう。
偏頭痛
偏頭痛とは原因となる病気がないのに起こる慢性頭痛であり、脈を打つようにズキンズキンと痛み、動くと悪化するのが特徴です。
頭の左右どちらか片側が痛む方が約6割、両側が痛む方が約4割とされており、女性に多くみられます。また頭痛の持続時間は4〜72時間と様々で、その方の状況によって異なります。
偏頭痛を引き起こす原因のひとつが、脳の視床下部によるものです。
視床下部はホルモン・体温の調節・心機能の維持などの働きを担い、視床下部で何らかの変化が起こると顔の皮膚の感覚を伝える三叉神経への炎症・脳内の血管拡張による三叉神経の刺激が起こり、痛みが生じます。
三叉神経の一部は脳の血管を取り巻くように走行するため、脈を打つような痛みが出現するのです。
また視床下部は女性ホルモンの分泌・睡眠・食欲・自律神経を司るため、月経や排卵・出産や更年期・睡眠不足・空腹・ストレス・強い光やにおい・人混みなどの騒音・アルコールなどが偏頭痛を起こす引き金になると考えられています。
緊張型頭痛
緊張性頭痛は、原因となる病気がないのに繰り返す「慢性頭痛」の中で最も多いタイプです。
緊張性頭痛は側頭筋・後頚筋群・僧帽筋などの、頭から首や背中にかけての筋肉が張ることで神経が刺激され、痛みを生じます。
長時間のデスクワーク・車の運転でのうつむいた姿勢の維持・悪い姿勢・不適切な枕・運動不足など「長時間の同じ姿勢の維持」や「首や肩への負荷がかかりやすい状態」が緊張性頭痛を引き起こしやすくなる原因です。
頭痛持続時間には個人差があり、30分程度で収まるものから1週間程度続くものまで様々です。
三叉神経・自律神経性頭痛
三叉神経・自律神経性頭痛とは目の周りや頭の片側のみに起こる頭痛で、総称して「TACs」と呼ばれており、中でも有名なのは「群発頭痛」です。
群発頭痛は目の奥や側頭部に極めて重度の頭痛が起き、2日に1回から1日に8回程度の頻度で通常は15〜180分程度持続し、一旦症状が現れると毎日頭痛発作が起こります。
また三叉神経・自律神経性頭痛の多くは、頭痛と同側だけに流涙・鼻汁・発汗などの所見が確認される「ホルネル兆候」を認めるのが特徴です。
今すぐ頭痛を軽くする方法は?
頭痛が辛く「今すぐに軽くする方法が知りたい」と感じる方も多いのではないでしょうか。その具体的な方法について以下で解説していきます。
セルフケアをする(ツボ・蒸しタオル)
頭痛軽減にはセルフケアとしてツボ押しや、蒸しタオルが効果的です。頭痛軽減に効果的なツボの「天柱(てんちゅう)」は、首の後ろにあり、頭と首の境目にあります。
天柱はこわばった筋肉をほぐして血流を改善するため、頭痛だけでなく目の疲れや肩こりにも有効です。
ツボを押す際は次のような手順で押します。まず母指をツボに、四肢は後頭部に添えて支えます。次にゆっくりとツボを押し、5秒経ったら指を離します。これを5回程度繰り返すことで頭痛改善につながります。
また首や肩まわりの筋肉を温めることで血流改善につながるため、蒸しタオルも頭痛改善に効果的です。蒸しタオルは適温にして、首の後ろや肩に3~5分程度当てることで、自発的な血流を促します。
ツボ押しや蒸しタオルなどのセルフケアは自宅で簡単に実施できるため、気軽に試してみてください。
病院へ行く
頭痛が辛い時は、医師の診察を受けることで適切な治療が提供され、解決する場合があります。症状が強く不安になる場合は病院へ行くことを検討しましょう。
また頭痛には生命に関わるものもあり、以下のような症状が出ている場合にはすぐに病院を受診しましょう。
- 頭をバッドで殴られたような激しい痛みが突然起きて、激しく吐いた時
- 頭全体もしくは後頭部が強く痛み、体を動かすことで痛みが増し、発熱を伴う時
- 頭痛や吐き気に伴い痺れが起こり、意識が低下した時
- 頭重感や頭痛が少しずつ強まり、突然吐いた時
- 頭を強く打った後、頭痛の他に手足の痺れや尿漏れがみられた時
このような症状が出ている際は医師の診察を受けるのが重要です。
頭痛薬を飲む
頭痛を軽減する薬には市販薬も多く、辛い頭痛を早急に和らげたい場合や、すぐには病院受診できない場合などに有効です。
またその際は、起きている症状や自身の体質に合った頭痛薬を飲むようにしましょう。
症状別の効果的な頭痛薬とは?
症状別に効果的な頭痛薬にはどのようなものがあるのでしょうか。以下では偏頭痛や緊張性頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛に有効な頭痛薬を解説します。
偏頭痛には「アセトアミノフェン」や非ステロイド系抗炎症薬
偏頭痛の急性期治療にはアセトアミノフェンやNSAIDsと呼ばれる非ステロイド系抗炎症薬が有効です。
これらは、頭痛発作時に実施する「偏頭痛の急性期治療」として用いられ、ドラックストアでも入手可能です。
緊張型頭痛には「急性期の治療薬」
緊張性頭痛には「非ステロイド消炎鎮痛剤のNSAIDs」などの急性期の治療薬が有効です。
一般的に慢性の鈍痛が主体であるが、時に激しい痛みを生じるのが特徴の緊張性頭痛に対して、適宜NSAIDsを用いた鎮痛薬を投与し治療します。
またNSAIDs以外にも症状に応じて、筋弛緩薬である「塩酸エペリゾン」や抗不安薬である「ベンゾジアゼピン系薬剤のアルプラゾラム」などを使用し、緊張性頭痛を改善します。
三叉神経・自律神経性頭痛には「頓用薬」
三叉神経・自律神経性頭痛には、頓用薬の使用が有効です。
点鼻薬の鼻腔内噴霧やRM(Rapid Meltの略称)錠の発作時頓用など、頭痛発作期にその程度や発作頻度を和らげる目的での使用が効果的です。
頭痛薬別の注意点
頭痛薬の注意点にはそれぞれどのようなものがあるのでしょうか。以下ではアセトアミノフェン・非ステロイド系抗炎症薬・急性期の治療薬・頓用薬・漢方薬の注意点について解説します。
アセトアミノフェン
アセトアミノフェンは頭痛に効果のある薬剤ですが、その効果により一部の注意点もあります。アセトアミノフェン服用時の具体的な注意点は3つです。
まず1つ目は過剰摂取に注意することです。一度に服用し過ぎると、肝臓に悪影響を与える危険性があるため、使用量と使用頻度を確認する必要があります。
1回の内服量は成人で500~1000mg、1日に摂取できる総量は成人で4000mgまでです。
2つ目は肝臓に疾患等がある場合は避ける必要があることです。アセトアミノフェンは肝臓で代謝されるため、肝臓に疾患がある場合や肝機能が低下している場合は、肝機能を悪化させ全身状態に悪影響を与える可能性があります。
肝疾患を持つ方は服用前に医師に相談しましょう。
3つ目は疾患や薬剤との相互作用に注意が必要なことです。
他の薬剤との併用が原因で、副作用が増強する可能性があるため、特に肝機能が低下している場合・腎臓や心臓に疾患がある場合・妊娠中の場合・授乳中の場合は医師に相談した上で使用する必要があります。
非ステロイド系抗炎症薬
非ステロイド系抗炎症薬は痛みや炎症を和らげる効果があり、頭痛薬としても一般的な薬ですが、いくつかの注意点があります。
注意点の1つ目は消化器系の副作用についてです。非ステロイド系抗炎症薬は消化管に刺激を与え、消化性潰瘍・胃炎・腸閉塞などの副作用を引き起こす可能性があります。
また胃酸を中和する薬と併用すると、胃・十二指腸潰瘍のリスクが高まる可能性があるため、注意が必要です。
2つ目は腎臓への影響に注意することです。非ステロイド系抗炎症薬は腎臓に影響を与え、腎機能を低下させる可能性があります。
そのため慢性腎臓病がある場合、非ステロイド系抗炎症薬の服用は腎臓に悪影響を及ぼす可能性があります。
3つ目は血糖値の影響に注意することです。非ステロイド系抗炎症薬はインスリンの効果を抑制するため、糖尿病がある場合は血糖値を注意深く観察する必要があります。
4つ目は薬剤との相互作用を考慮することであり、非ステロイド系抗炎症薬は抗凝固薬や高血圧薬などとの相互作用に注意が必要です。
5つ目は妊娠中や授乳中の服用は避けることです。非ステロイド系抗炎症薬は胎児や授乳中の乳児に影響を与える可能性があるため、該当する方は服用を控えるようにしましょう。
急性期の治療薬
頭痛への急性期治療薬として最も代表的なものは「トリプタン系薬剤」です。偏頭痛の急性期治療に用いられることも多いですが、いくつかの注意点があります。
注意点の1つ目として、心疾患を持つ方は服用に気を付ける必要があります。
トリプタン系薬剤は血管を収縮させるため、心臓発作を引き起こすリスクがあり、心臓疾患や高血圧がある場合は注意が必要です。
2つ目は薬物相互作用への注意です。トリプタン系薬剤は特定の抗うつ薬・抗微生物薬・抗真菌薬との併用を避けるべきとしています。
3つ目は服用頻度を守ることです。1回あたりの最大服用量や1日あたりの最大服用回数が定められているため、服用頻度に注意する必要があります。
また頻繁な使用は薬剤過剰摂取の可能性があるため注意が必要です。
このように頭痛の急性期治療薬には様々な注意点があります。
頓用薬
頓用薬は食後などの決まった時間ではなく、発作時や症状のひどい時などに合わせて薬を飲む薬です。
頓服薬に対するよくある誤解として、「頓服薬とは包装紙にくるんだ薬であるとの理解」や、「症状が出たら何度でも飲んでよい薬であり、効き目が見られないと一度に繰り返して飲んでしまう」などが挙げられます。
頓服薬として出された頭痛薬は症状が出た時に服用するようにしましょう。
漢方薬
頭痛に効果的な漢方薬には代表例として「呉茱萸湯(ごしゅうとう)」が挙げられます。一般的に副作用が少ない漢方薬ですが、呉茱萸湯にもいくつか注意点があり、具体的には以下の通りです。
- 成人は1日7.5gを2~3回に分割して服用する
- 食前または食間に経口投与する
- 年齢・体重・症状により適宜増減する
- 発疹や蕁麻疹などの過敏症は副作用のひとつのため、そのような症状が出た場合には服用を中止する
- 肝機能異常がある方・高齢者・妊産婦・小児は医師に相談した上で服用を行う
頭痛軽減につながる漢方薬の呉茱萸湯には、このような注意点が挙げられます。
頭痛薬で悩んでいる場合は病院に相談を
頭痛の種類によって効果的な頭痛薬は異なります。また体質によってアレルギー反応を起こす可能性もあり、自己判断での頭痛薬の選択はリスクを伴う場合もあります。
自分に合った頭痛薬が分からない方や、頭痛薬の自己選択は病院へ相談しましょう。
編集部まとめ
代表的な頭痛薬にはアセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬があり、市販でも入手可能ですが、頭痛薬を選ぶ際には以下のポイントを考慮しましょう。
- 年齢・性別・体重
- 成分・特徴
- 起きている頭痛の症状
一方で頭痛には偏頭痛や緊張型頭痛などがあり、それぞれの種類に対して効果的な頭痛薬が異なることや、薬剤が体質に合わない場合もあるなど頭痛薬の選択にはリスクが伴います。
辛い頭痛を早く改善したい時・すぐに病院受診できない時・出先での急な頭痛などに便利な頭痛薬ですが、自身で選ぶ際には様々な注意点もあるため、頭痛薬の選択に迷う際には医師への相談も視野に入れましょう。