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ホルモン補充療法は太る?太るといわれる理由やホルモン補充療法の効果・開始時期も解説

 公開日:2024/03/27
ホルモン補充療法 太る

ホルモン補充療法HRTは、年齢により低下したホルモンを補充する治療方法です。

女性は閉経の前後5年間の更年期と呼ばれる時期に差しかかると、女性ホルモンの1つであるエストロゲンが揺らぎながら減少し、ホルモンバランスが変化します。

それに伴い、さまざまな心身の不調が起こる更年期障害に悩まれる方も少なくありません。

ホルモン補充療法は、更年期障害に対する治療方法の1つです。

また、エイジングケアを行いたい方、体力的・精神的・機能的に健康を維持したい方などにも効果的でしょう。

しかし、ホルモン補充療法は太りやすく脂肪がつきやすくなるなどの話を聞いて、治療を迷っている方もいるのではないでしょうか。

こちらの記事では、ホルモン補充療法が本当に太るのかを解説します。

ホルモン補充療法の効果・開始時期・副作用なども紹介しますので、参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

ホルモン補充療法は太る?

体重計
結論からいうと、ホルモン補充療法そのものが原因で太ることはほとんどないといわれています。
エストロゲンにはLDL(悪玉)コレステロールの低下や血糖値改善などの働きがあるとされており、むしろ脂質の代謝促進が期待できると考えられているのです。
では、なぜホルモン補充療法は太るといわれているのでしょうか。理由の1つとして、ホルモン補充治療を始め体調不良が改善し、食欲が戻ることによる体重増加が挙げられます。
しっかり食べられるようになり適正体重に戻ったことが原因だと考えられるので、健康になった結果だといえるかもしれません。

ホルモン補充療法が太るといわれる理由

スマホを見る女性
ホルモン補充療法が太るといわれる理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
ホルモン補充療法が太るといわれているのはホルモン剤の影響・一時的な食欲増加・むくみなどが理由だと考えられます。これらの理由を以降の章で1つずつ解説します。

ホルモン剤の影響で体のリズムが変わる

ホルモン補充療法を受けたことで、治療前に感じていた食欲不振や不眠が改善したという声が多く聞かれます。
治療によってこれまでの不調が改善されることで、毎日規則正しく睡眠をとれるようになり、食事もしっかり摂れるようになる方が多いでしょう。
その結果、体のリズムが整って本来の適正体重に戻るケースが多く、それをホルモン補充療法のせいで太ったととらえてしまう可能性が考えられるでしょう。

一時的に食欲が増える

食べ終わったお皿
ホルモン補充療法により、それまで感じていた胃腸の不調や気分の落ち込み、食欲不振などが改善して一時的に食欲が増えたように感じる可能性が考えられます。
こちらも心身の調子が整ったことによるものであり、直接ホルモン補充療法が原因で食欲が増えるのではないといえるでしょう。

体が水分でむくむ

ホルモン補充療法の副作用の1つとして、体がむくみやすくなる症状が挙げられます。
ホルモン補充療法では、女性ホルモンの1つであるエストロゲンを補うことで症状の改善を目指します。しかし、子宮がある方にエストロゲンを単独で補うことにより起こりうるのが、子宮内膜増殖などのリスクです。
そのため、子宮がある方の場合はもう1つの女性ホルモンであるプロゲステロンも併用して補充する場合があります。
プロゲステロンには体内に水分を溜め込む働きがあるため、副作用としてむくみが生じる可能性が考えられます。体がむくんだことで、ホルモン補充療法で太ったと感じてしまう方が少なくなありません。
治療に体が慣れるまではむくみが出ることがありますが、次第に症状が落ち着いてくるのが一般的とされています。症状が改善されず気になるようなら、医師に相談してください。

ホルモン補充療法の効果

カプセルと錠剤
ホルモン補充療法を行うとどのような効果がみられるのでしょうか。

  • 髪や肌などの若々しさを保つ
  • 更年期障害の改善
  • 不眠やうつ症状の緩和
  • 骨粗しょう症の予防

主に上記の4つの効果が期待できます。それでは1つずつ解説します。

髪や肌の若々しさを保つ

加齢による抜け毛や肌のしわ・たるみは、女性ホルモン(エストロゲン)の減少と密接に関係しています。ホルモン補充療法は、肌の水分量を保ちみずみずしくさせる効果があるエストロゲンを補充する治療です。
そのためホルモン補充療法を行うことで、髪や肌を若々しく保つ美容効果やエイジングケア効果が期待できます。
ただし、ホルモン補充療法を更年期障害や骨粗しょう症などの治療以外の理由で行う場合には自由診療となります。
治療費の目安は3ヵ月コースで330,000円(税込)程度です。これ以外に血液検査代やその他の諸経費が別途かかりますので、参考にしてください。
自由診療の場合は使用される薬剤によっても治療費に幅があるので、ホルモン補充療法を受ける前に、クリニックに問い合わせるとよいでしょう。

更年期障害を改善する

後ろ姿 ロングヘアの女性
閉経前後の更年期には、女性ホルモンの1つであるエストロゲンが揺らぎながら減少することより、さまざまな心身の不調が起こることがあります。
更年期に起こる不調のうち、日常生活に支障をきたす程の重い症状が出ることを更年期障害と呼びます。
更年期障害には、ホットフラッシュ・のぼせ・ほてり・発汗などのほか、めまい・頭痛・動悸などの身体的症状が出ることもあり、辛さを訴える方が少なくありません。
ホルモン補充療法で不足している女性ホルモンを補うことで、それらの辛い症状の改善を目指します。特に、ホットフラッシュには有効な治療法で、早ければ数週間から数ヵ月で改善するといわれています。
治療に使用する薬剤は飲み薬・塗り薬などの種類があり、子宮を摘出している場合はエストロゲンを単独で投与しますが、エストロゲンとプロゲステロンを併用するのが一般的です。
基本的に薬の投与は毎日行い、更年期障害の症状が落ち着いてくるまで続けます。

不眠やうつ症状を緩和する

頭を抱える女性
更年期障害では、自律神経の乱れによって起こる不眠やうつ症状などの精神的症状が起こる場合もあります。
更年期障害による精神的症状も、身体的症状と同じようにホルモン補充療法を行うことで緩和が期待できるとされています。
ただし、精神的症状のなかでも気分の落ち込み・イライラ・意欲の低下などの症状が強い場合、向精神薬が併用されるケースもあるでしょう。
しかしホルモン補充療法を行うことで、気持ちが前向きになったと感じる方もいるようです。

骨粗しょう症を予防できる

女性ホルモンの1つであるエストロゲンには、骨密度を増やす働きもあります。
そのため、閉経前後の更年期にエストロゲンの分泌量が低下すると、骨を形成する細胞と破壊する細胞のバランスを崩し、壊す細胞の働きが強くなります。
その結果骨密度が低下した状態になるのが、骨粗しょう症です。ホルモン補充療法でエストロゲンを補うことにより、骨粗しょう症の発症を予防する効果が期待できます。

ホルモン補充療法の開始時期とやめどきは?

錠剤 楕円
ホルモン補充治療を始める場合、開始時期と終了時期はいつなのでしょうか。
こうした治療は医師と相談しながら進めることが大切です。開始する時期も終了する時期も自分だけで判断せず、信頼できる医療機関でカウンセリングを受けながら決定してください。
以降の章で、一般的な治療の開始時期と終了時期を解説しましょう。

開始時期

ホルモン補充療法の開始時期は 閉経前後がよいでしょう。特に更年期障害の症状が重くなる前に、閉経後は早期に開始すると効果が出やすいといわれています。
閉経後10年以上経つと、血栓症のリスクが高まるなどの理由から通常はホルモン補充療法を行えないとされているので注意が必要です。
今はまだそこまで症状が辛くないので迷っている方も、閉経後10年を過ぎる前に検討するのがよいでしょう。

やめどき

薬 カラフル
ホルモン補充療法をやめる時期については特に決まりはありませんが、一般的に症状が改善したら治療を終了する場合が多い傾向があります。
ホルモン補充療法をやめることで、再び症状が現れることがあります。そのときは再び治療を開始することをおすすめします。
以前はホルモン補充療法を長期間行うと乳がんを発症するリスクが高まるといわれていました。しかし現在では、ホルモン補充療法による乳がんのリスクは少ないことがわかっています。
そのため必要があれば、治療を5年以上継続することも可能とされています。ただし、遺伝により乳がんのリスクが心配されるケースでは、ホルモン補充療法のやめどきを医師に相談するとよいでしょう。

ホルモン補充療法の副作用は?

頭を触る女性
ホルモン補充療法を行うことで、副作用が起こることはあるのでしょうか。
治療を始めて体が慣れるまでは副作用が起こることがあります。通常は、体が慣れたら副作用の症状が改善するケースが多いでしょう。
一般的に起こりやすい副作用は以下の3つの症状です。

  • 乳房や下腹部の張り
  • 不正出血
  • 吐き気

1つずつ解説していきます。

乳房や下腹部が張る

ホルモン補充療法を始めると生理前のような乳房や下腹部の痛みや張りを感じるかもしれませんが、1~2ヵ月で症状が落ち着くことが多いようです。
症状が続いて辛い場合は、我慢せずに医師への相談をおすすめします。

不正出血が起こる

不正出血はホルモン補充療法の一般的な副作用です。子宮内膜がホルモン剤に反応して出血する場合があります。
数ヵ月で症状が落ち着くことが多いようですが、症状が続く場合はホルモン剤の補充量を調整するなどの対策も可能ですので、医師に相談してください。

吐き気を感じる場合もある

ホルモン補充療法を開始後、数週間は吐き気や嘔吐などの症状が出やすくなります。体が慣れてくると症状が改善されるのであまり心配はいりません。
症状が続いて辛い場合は、我慢せずに医師に相談しましょう。
ホルモン補充療法により血栓ができるリスクが高まることなどが原因で、これらの疾患が悪化したり再発したりする可能性が考えられます。

編集部まとめ

振り向く女性
更年期障害は閉経前後の女性であれば誰でも起こりうる病気です。

ホットフラッシュ・のぼせ・ほてり・発汗など身体的な不調から、イライラ・気分の落ち込み・不眠など精神的な不調まで症状はさまざまです。

ホルモン補充療法は、それらの不快な症状に有効な治療で、早ければ数週間から数ヵ月で改善されたという報告もあります。

それだけでなく、女性ホルモンの1つであるエストロゲンの減少による骨粗しょう症や動脈硬化を予防する効果も期待できます。

髪や肌をつやつやにするエイジングケア効果も期待できるので、更年期障害の方のみならずエイジングケアを考えている方にもおすすめです。

更年期障害でお悩みの方・エイジングケアをしたい方・体力的にも精神的にも若さを保ちたい方は、ホルモン補充療法を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修医師