大丈夫?鎮静剤を使えば胃カメラは怖くない?鎮静剤を用いた胃カメラについて解説!
胃カメラと聞くと怖いイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか?
本記事では胃カメラの際に鎮静剤を使うことについて以下の点を中心に紹介します。
・胃カメラの際の鎮静剤のメリットとデメリット
・使われる鎮静剤の種類
・胃カメラにおける鎮静剤の費用
さらに胃カメラ検査の流れも解説します。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
そもそも鎮静剤って何?
鎮静剤は、興奮状態を鎮めたり、大脳皮質中枢の異常を抑制したり、不安や不眠を鎮める作用がある薬剤です。
胃カメラ検査などの医療処置で使用されることがあり、その目的は患者の苦痛を和らげ、不安を解消し、検査を楽に受けられるようにすることです。
鎮静剤は基本的には誰でも使用することができますが、アレルギーなどのために使用できない場合や、医療機関によっては鎮静剤を使用する胃カメラ検査に対応していない場合もあります。
そのため、使用するかどうかを判断する前に、医師の診察を受けることが重要です。
胃カメラの際に鎮静剤を使うメリットとデメリット
胃カメラのメリットとデメリットにはどんな事があるのでしょうか?
メリットとデメリットをそれぞれ紹介します。
メリット
検査中の快適性の向上:鎮静剤の使用により、患者さんは眠った状態で検査を受けられます。
これは、不快感を避けたい人や痛みに敏感な人にとって大きな利点となります。
病変の見逃し防止:鎮静剤を使用することで、患者さんは嘔吐反射を抑制でき、これにより微細な病変を見つける可能性が高まります。
また、内視鏡の性能はその太さに関係しますが、鎮静剤の使用により、患者の不快感を最小限に抑え、高画質の内視鏡を使用することが可能になります。
医師の精神的余裕:鎮静剤を使用することで、患者さんが眠っている間に検査ができ、その結果、検査をより冷静に、正確に行えます。
これにより、病変の見逃しを低減できます。
デメリット
自家用車での帰宅が困難:鎮静剤の影響で意識がはっきりしない状態で運転することは、事故を引き起こす可能性があります。
そのため、車での移動が必要な方は、タクシーや公共交通機関を利用するなど、事前に適切な交通手段を計画する必要があります。
副作用のリスク:鎮静剤は医薬品であり、その使用には副作用のリスクが伴います。
これは、どんな医薬品にも言えることです。
医師は患者さんの安全性を最優先に考え、鎮静剤の使用には細心の注意を払いますが、それでも副作用が発生する可能性はゼロではありません。
具体的には、アレルギー反応、呼吸の抑制、血圧の低下などが考えられます。
胃カメラでわかる病気
胃カメラを使用することによりどんな病気が調べられるのでしょうか?
以下に詳しく解説します。
胃カメラでわかる胃の病気
胃カメラによって、様々な胃の病気を発見することができます。
例えば、胃炎や胃潰瘍などの病気は、胃の内壁が炎症を起こしたり、潰瘍が形成されたりすることで発生します。
これらの病気は、胃の痛みや不快感、吐き気などの症状を引き起こす可能性があります。
胃カメラによる検査は、これらの症状の原因を特定し、適切な治療を行うために必要です。
また、胃カメラは胃がんの早期発見にも非常に有効です。
胃がんは初期段階では症状がほとんど現れないため、定期的な胃カメラ検査によって早期に発見し、早期治療を行うことが重要です。
胃がんの早期発見と治療は、患者の生存率を大幅に向上させることができます。
さらに、胃カメラはピロリ菌感染の診断にも使用されます。
ピロリ菌は胃の粘膜に感染する細菌で、長期間の感染は胃がんのリスクを高める可能性があります。
胃カメラによる検査は、ピロリ菌の感染を確認し、適切な除菌治療を行うために必要です。
胃カメラで分かる十二指腸の病気
十二指腸は、胃から腸へと食物を運ぶ管の最初の部分で、消化酵素と胆汁が混ざり合い、食物の消化が進行します。
この部位は、潰瘍や炎症、ポリープ、そして癌などの病気に影響を受けやすいです。
胃カメラによる検査は、これらの病気を早期に発見し、適切な治療を開始するための重要な手段となります。
十二指腸潰瘍は、胃酸や消化酵素によって十二指腸の内壁が損傷し、潰瘍(びらん)が形成される病気です。
痛みや吐き気、食欲不振などの症状が現れます。胃カメラによる検査で、十二指腸の内壁に形成された潰瘍を確認することができます。
また、十二指腸ポリープは、十二指腸の内壁から突き出た肉質の突起で、大部分は良性ですが、稀に悪性化することもあります。
胃カメラによる検査で、十二指腸内壁の異常な突起を見つけることができます。
十二指腸癌は、十二指腸の内壁の細胞が異常に増殖し、癌となる病気です。
初期段階では症状がほとんど現れないため、定期的な胃カメラ検査による早期発見が重要です。
これらの病気は、胃カメラによる検査で早期に発見し、適切な治療を行うことで、重篤な病状を防ぐことが可能です。
胃カメラで分かる食道の病気
食道の病気は、胃酸逆流症や食道癌などさまざまな形で現れます。
胃酸逆流症は、胃酸が食道に逆流することで起こる病気で、胸焼けや喉の痛み、吐き気などの症状があります。
これは食道下部の筋肉が正常に機能しないことが原因で、長期間放置すると食道の内壁が損傷し、食道炎や食道癌のリスクが高まります。
食道癌は、食道の細胞が異常に成長し始める病気です。
初期段階では症状がほとんど現れないため、進行してから発見されることが多いです。
症状としては、飲食時の痛みや困難、体重減少、胸痛などがあります。食道癌のリスク因子には、長期的な胃酸逆流、喫煙、過度のアルコール摂取、肥満などがあります。
胃カメラ検査は、これらの病気を早期に発見し、適切な治療を開始するために重要です。
特に食道癌は進行が早いため、早期発見が生存率を大きく左右します。
胃カメラ検査は、食道の健康状態を詳しく調べることができ、必要に応じて細胞や組織のサンプルを採取して更なる検査を行うことも可能です。
胃カメラで分かる咽頭の病気
咽頭は口から食道へと続く管で、食物や液体が通過する道です。
咽頭の病気は、その機能を妨げ、飲食に影響を及ぼす可能性があります。
胃カメラによる検査では、咽頭の内部を直接視覚化し、異常な部位を特定することができます。
これにより、咽頭の病気の診断と治療が可能になります。
咽頭の病気には、咽頭炎、咽頭がん、咽頭結石などがあります。
咽頭炎は、咽頭の炎症を引き起こす病気で、風邪やインフルエンザ、アレルギーなどによって引き起こされます。
咽頭がんは、咽頭の細胞が異常に成長し、腫瘍を形成する病気です。
咽頭結石は、咽頭の奥にある扁桃腺に結石が形成される病気で、口臭や喉の違和感を引き起こします。
使われる鎮静剤の種類
胃カメラの鎮静剤として使われる薬剤にはどんなものがあるのでしょうか?
以下によく使われる鎮静剤を2種類紹介します。
ドルミカム
ドルミカムはベンゾジアゼピン系の薬剤で、胃カメラ検査などで使用される鎮静剤として一般的です。
しかし、個々の体質により効果の出方には差があり、一部の人には効果が弱く、また一部の人には効きすぎてふらつきが残ることがあります。
副作用としては、しゃっくり、咳、不整脈、血圧の変動、覚醒遅延、めまい、頭痛などが挙げられます。
これらの特性を理解し、適切な使用と管理が求められます。
プロポフォール
プロポフォールは、全身麻酔薬として使用される薬物で、手術や診療中の鎮静に役立ちます。
急速に効果を発揮し、短時間で覚醒する特性があります。
しかし、血管痛、気管支痙攣、紅斑などの副作用が報告されています。
また、プロポフォール注射液には卵黄リン脂質が含まれており、卵アレルギーの患者さんには注意が必要です。
プロポフォールは麻酔導入時に気管支痙攣を引き起こす可能性があるため、適切な対応が求められます。
デクスメデトミジン
デクスメデトミジンという薬剤の一番の強みは、呼吸に対する影響が極めて少ない点です。
ただし、この薬物の効能を適切に引き出すためには、「ローディング」と呼ばれるプロセスにより血液中の濃度を調節する必要があります。
通常、デクスメデトミジンは内視鏡を使用した治療の際に使用されます。
それに対して、内視鏡による診断の際には使用されることはありません。
鎮静剤を使わなかった場合
鎮静剤を使わずに胃の内視鏡検査をすると、不快感や辛さが増す可能性があります。
患者さんが胃に空気を注入しようとするときに、ゲップを引き起こす可能性があります。
この反射的なゲップの結果、胃内の空気の供給が十分に行われず、胃の内側の折りたたみ間が適切に広げられないことがあります。
その結果、内視鏡による詳細な観察が十分に行われず、検査が不完全な状態で終わる可能性があります。
どんな場合に胃カメラをするのか
1.特定の症状が存在する場合
症状がある場合、例えば胸部の痛み、逆流性症状、暗色の便(上部消化管からの出血を示す可能性がある)、血液検査で貧血が検出された、またはバリウム検査で異常が指摘された場合、その原因を特定するために検査を受けます。
2.定期的な健康診断、または人間ドックで受ける場合
症状が無い場合でも、食道、胃、十二指腸の癌は早期に発見すれば、内視鏡による治療で除去することが可能で、その治療の成功率も非常に高いとされています。
定期的な検査を受けることで、体への負担が少ない治療をし、癌を完全に治療する可能性が高まります。
したがって、リスクが高い人々にとっては定期的な検査が重要です。胃カメラは通常、年に1回程度行えば十分です。
3.ポリープ等があり、経過観察の目的で検査を受ける場合
特定の異常が見つかり、即時の治療が必要ないが、その変化を観察を必要とする場合もあります。
これらは通常、消化管の壁の中にできる粘膜下腫瘍やポリープなどで、その大きさや性質により、経過観察だけで良いのか、さらなる検査や治療が必要かを判断します。
鎮静剤を用いた胃カメラの費用について
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)の費用についてですが、自費診療の場合、一般的には約10,000円から30,000円程度が目安となります。
一方、健康保険が適用される場合は、患者さんの負担は約3,000円から4,000円程度となります。これは3割負担の場合の目安です。
次に、鎮静剤の費用についてです。
胃カメラ検査において鎮静剤を使用する場合、自費診療の場合は約5,000円から10,000円程度が一般的です。
健康保険が適用される場合は、3割負担で約1,500円から3,000円程度となります。
これらの費用はあくまで一般的な目安であり、施設により異なる場合があります。
具体的な費用については、受診を検討している医療機関に直接お問い合わせください。
鎮静剤を用いた胃カメラの流れ
実際に鎮静剤を使う場合、当日どのような流れで胃カメラ検査が行われていくのか、一般的な場合の流れを以下に紹介します。
所要時間について
胃カメラ検査自体の時間は、胃カメラが体内に入ってから抜けるまでの時間で、大体5分前後となります。
これは検査の主要部分で、胃の内部を詳しく観察する時間を指します。
しかし、胃カメラ検査の全体の所要時間、つまり来院から診察終了までを考えると、約60分から90分程度が一般的です。
この時間には、受付、事前の説明、準備、検査、そして検査後の観察や説明などが含まれます。
病院到着してからの流れ
検査当日は水分摂取が可能ですが、内服薬については事前に医師と確認し、指示された薬のみを検査の2時間前までに服用します。
医療機関に到着後、胃内の泡を取り除く消泡剤を飲み、口腔内に表面麻酔を塗布します。
その後、検査台に移動し、必要に応じて鎮静剤が注射されます。
胃カメラの検査自体は約5分程度で終了します。
検査終了後、鎮静剤を使用していない場合は、医師から直接検査結果の説明を受けます。
ただし、生検した場合は、その結果を待ち、後日改めて結果を聞きに行くことになります。
鎮静剤を使用した場合、麻酔が覚めるまで約1時間程度休息が必要です。
また、安全のため、検査後は車の運転や激しい運動、長時間の入浴は避けてください。
鼻からの胃カメラをおすすめしない人
花粉症、鼻ポリープなどの鼻粘膜の病気をお持ちの方:
鼻粘膜が炎症を起こしている場合、経鼻内視鏡検査は症状を悪化させる可能性があります。
鼻腔が狭い方:
鼻の通り道が狭い場合、内視鏡を挿入する際に困難が生じる可能性があります。
検査中に苦痛を感じることが予想されます。
鼻血が出やすい方:
経鼻内視鏡検査中に鼻血が出やすい場合、検査中に出血が増加する可能性があります。
これは検査の可視性を損なうだけでなく、出血のリスクを高めることもあります。
経鼻内視鏡検査を受けた際に苦痛や不快な思いをされた方:
過去の経鼻内視鏡検査が不快な体験となった場合、同様の経験を避けるために、再び鼻からの胃カメラ検査を受けることは適切ではありません。
経鼻内視鏡検査を試みたが、鼻腔が狭く挿入できなかった方:
鼻腔の狭さが原因で内視鏡を挿入できなかった場合、再度同じ手法を試すことは困難です。
以前に経鼻内視鏡検査中に鼻出血があった方:
内視鏡検査中に鼻からの出血が起きた場合、同様のリスクが再び発生する可能性があります。
まとめ
ここまで胃カメラの際の鎮静剤についてお伝えしてきました。
ここまでの要点をまとめると以下の通りです。
・胃カメラの際の鎮静剤のメリットは患者さんも医者も安心して検査できること。デメリットは副作用が出る場合があること
・使われる鎮静剤にはドルミカムやプロポフォールがありそれぞれの特性や注意点を把握することが大切
・胃カメラにおける鎮静剤の費用は保険適用だと1500〜3000円である
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献