淋菌感染症(淋病)の症状は?感染部位別の症状や検査についても解説
淋菌感染症は、性感染症の一種で、もたらす症状は個人によって異なる場合があります。
不快な症状や合併症を防ぐためには、正しい知識が必要です。
本記事では淋菌感染症の症状について以下の点を中心にご紹介します。
・淋菌感染症の具体的な症状
・淋菌感染症の検査方法
・淋菌感染症の注意点
淋菌感染症の症状について正しく理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
淋菌感染症とは
淋菌感染症は、細菌によって引き起こされる性感染症です。この病気は性行為によって主に男性の尿道や女性の子宮頚管、さらには咽頭粘膜に感染し、炎症を引き起こします。
感染すると男性は排尿時の痛みなど明確な症状が現れやすい一方で、女性には自覚症状が出にくいことが特徴です。
なかでも、10代から20代の若年層では、性器クラミジアや梅毒と並び、感染者が増加しています。
未治療の淋菌感染症は不妊の原因となることがあります。
感染が疑われる場合には、自身だけでなくパートナーも検査を受けることが推奨されます。
淋菌感染症の症状
淋菌感染症に感染すると実際にどのような症状が現れるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
淋菌性尿道炎
淋菌性尿道炎は男性に多く見られる性感染症で、主に淋菌によって引き起こされます。感染から約1週間後に症状が現れ、強い排尿痛と膿の排泄が特徴的です。
症状が進むと、亀頭部が赤く腫れ上がり、さらには淋菌が精管を逆流して精巣上体に感染することもあります。
これにより、精巣上体炎を発症し、感染が進行すると精巣上体が腫れて精巣との境界が曖昧になります。これは激しい痛みと高熱を伴うことがあり、最終的には精子の通り道が塞がれ、不妊の原因となる場合があります。
淋菌性尿道炎の早期発見と治療は、重大な合併症を防ぐためにも重要です。
淋菌性子宮頚管炎
淋菌性子宮頚管炎は、淋菌によって引き起こされる女性特有の性感染症です。主な症状にはおりものの増加や子宮出血がありますが、これらは目立ちにくいこともあり、感染に気付かないこともあります。
その結果、無症状のまま性行為を通じて他者へ感染が拡大するリスクが高まります。
また、感染が子宮頚管からさらに進行すると、卵管や卵巣に炎症が及び、卵管炎や卵巣炎を引き起こし、結果として不妊の原因となることもあります。
妊婦の場合、感染が出産時に新生児に伝わり、新生児結膜炎のリスクをもたらすことがあります。
このため、性感染症の疑いがある場合は迅速に医師の診断を受けることが重要です。
淋菌性咽頭炎
淋菌性咽頭炎は、主に口腔性交により咽頭(のど)に淋菌が感染することで発症します。この感染症は、しばしば無症状であるため、自覚していない間に他者への感染拡大が進むことがあります。
症状が現れた場合、のどの腫れや痛み、せき、発熱など、風邪に似た症状が見られることが多い傾向にありますが、これらはほかの病気と誤診されることがあります。
性感染症の可能性に気付かずに適切な治療を受けないでいると、咽頭炎や扁桃腺炎など、更なる合併症を引き起こすリスクが高まります。
性器に淋菌感染が確認され、口腔性交の経験がある場合は、耳鼻科の診察も受けることを推奨します。
淋菌性結膜炎
淋菌性結膜炎は、淋菌が原因で引き起こされる目の感染症です。この病気は新生児において母子感染により発生しやすく、成人では感染部位や体液が目に接触することで発症する可能性があります。
症状としては、目やまぶたの裏が強く充血し腫れ上がり、黄色の膿性眼脂が大量に分泌されます。
重症化すると角膜に穴が開き、失明に至ることもあります。
そのため、淋菌性結膜炎は早期の診断と治療が重要です。
感染のリスクを減らすためにも、性感染症の予防策を遵守し、異常を感じたら速やかに医師の診察を受けることが勧められます。
淋菌感染症の感染経路
淋菌感染症はどのようにして感染してしまうのでしょうか。主な感染経路について以下で解説します。
性交渉
淋菌感染症は主に性交渉を介して感染します。具体的には、膣性交、アナルセックス、口腔性交が感染経路とされています。
性行為により、感染者の粘膜から分泌される精液や膣分泌液がパートナーの粘膜に接触することで、淋菌が伝播します。
口腔性交においては、感染した性器から直接のどに淋菌が移行し、咽頭感染を引き起こすことがあります。
咽頭感染感染はしばしば無症状であり、気づかぬうちにほかの方へ感染を広げるリスクがあります。
1回の性行為における感染率は約20~50%といわれています。
母子感染
妊娠中に母親が淋菌に感染していると、分娩時に赤ちゃんへ感染するリスクがあります。これは「産道感染」と呼ばれ、出産時に赤ちゃんが母親の感染した産道を通過することで、淋菌が赤ちゃんに移行します。
感染した新生児は化膿性結膜炎や関節炎を発症するリスクがあり、場合によっては生命を脅かす重症化も考えられます。
また、感染した妊婦は腟炎や子宮頚管炎を発症し、これが早産や低出生体重、流産のリスクを高める原因となるため、妊娠期間中の定期的な性感染症検査が重要です。
このように、淋菌感染の早期発見と適切な治療は、母子双方の健康を守るために必要です。
淋菌感染症の検査
早期発見と適切な治療が重要な淋菌感染症ですが、どのようにして検査を行うのでしょうか?
淋菌感染症の検査方法について以下で詳しく解説します。
検査方法
淋菌感染症の検査は、主に病原体の検出に基づいて行われます。
尿検査や分泌物の採取を行い、咽頭感染が疑われる場合には咽頭からの擦過物やうがい液が検体として採用されます。
淋菌感染症はほかの性感染症と併発することが多いため、クラミジアなどほかの病原体に対する追加検査も同時に行われることがあります。
検査結果が出るまでには数日から1週間程かかることもあるため、明確な症状がある場合には検査結果を待たずに治療を開始することもあります。
検査キットで自宅でも調べられる
自宅での淋菌感染症検査は、プライバシーを重視する方におすすめの方法です。専用のキットを使用し、自分自身で検体を採取した後、専門機関へ郵送して分析を依頼します。
自宅検査キットは、性器を他の方に見せることに抵抗がある方や、自身の性感染症の状態を他人に知られたくない方に向いています。
また、「もしかして淋菌感染症かもしれない」といった不安を抱えている場合でも、気軽に検査を受けられるのが利点でしょう。
淋菌感染症の検査キットの使い方は次の通りです。
検査キットの種類と検体の採取方法:
1.尿(性器への感染):紙コップに尿を採取し、検査液の入った容器に入れる
2.ぬぐい液(性器・ノド・目・肛門への感染):綿棒で患部を数回ぬぐい、検査液の入った容器に入れる
3.うがい液(ノドへの感染):水または専用液でうがいを行い、専用の容器に採取する
検体の確認とテスターでの検査:
1.採取した検体をテスターに入れ、抽出液を作成し、結果を確認する
2.陽性の場合はCとTに線が現れ、陰性の場合はCのみに線が現れる
検査結果の確認:
・検査結果が出るまで約2〜3日
・結果はWEBやメールで確認
淋菌感染症の治療
淋菌感染症の治療方法は、まず抗生物質が主流です。
治療は淋菌性尿道炎を疑う症状が見られたら速やかに行われます。
治療には点滴が必要な場合もあるため、泌尿器科や性感染症内科を受診しましょう。
具体的な治療方法としては、淋菌性尿道炎や咽頭淋菌の場合、注射や点滴が行われます。
1回の注射や点滴で治療できますが、耐性菌の可能性がある場合は、再検査が必要です。
また、淋菌性結膜炎の場合は、点眼薬と内服薬を併用します。
早期かつ適切な治療を受けることで、症状の改善と合併症の予防につながります。
淋菌感染症の注意点
淋菌感染症の注意点を以下で紹介します。
パートナーと同時に治療する
淋菌感染症にかかった場合、ただちに検査を受け、パートナーとも同時に治療を開始することが不可欠です。症状が軽いからといって放置すると、感染が拡大し、ほかの方にも感染を広げてしまうリスクがあります。
パートナーが症状を示さなくても、感染している可能性があるため、検査を受けることが重要です。
治療は自己判断で中止せず再検査を行う
淋菌感染症の治療を行う際には、自己判断で治療を中止しないことが重要です。症状の改善が見られても、途中で治療を中断すると淋菌が再び活性化する可能性があります。
治療の終了を決定するには、尿検査によって淋菌の消失を確認する必要があります。医師の指示に従い、治療を続けましょう。
また、治療後には必ず再検査を受けましょう。
淋菌感染症の治療後は、約2週間後を目安に再検査を受けることが推奨されています。
症状が改善しても、感染部位に菌が残っている可能性があるため、再検査で陰性が確認されるまで治療を続ける必要があります。
コンドームを使用し予防
淋菌感染症を予防するために重要なのは、正しいコンドームの使用です。
淋菌は、目や咽頭、腟、尿道、肛門などの粘膜から性行為によって感染することが主なルートです。そのため、性行為をする際にコンドームを適切に使用することで感染リスクを減らせます。
口腔性交も含めて、全ての性行為においてコンドームの着用を心がけましょう。
また、不特定多数との性行為は感染リスクが高まりますので、できる限り避けるようにしましょう。
自身やパートナーの健康を守るために、安全な性行為の実践が重要です。
ただし、コンドームを使用しても感染を完全に防ぐことはできません。
相手の感染状況が不明な場合や感染が疑われる相手との性行為には、特に注意を払いましょう。
自分やパートナーの健康を守るために、予防策をしっかりと実践しましょう。
まとめ
ここまで淋菌感染症の症状についてお伝えしてきました。
淋菌感染症の症状の要点をまとめると以下の通りです。
・淋菌感染症の症状は、男性の場合には尿道炎による排尿痛や膿の排泄、女性の場合には子宮頚管炎によるおりものの増加や子宮出血、また咽頭炎や結膜炎によるのどの腫れや目の充血などが見られる
・淋菌感染症の検査は尿や分泌物を採取し病原体を検出することで行われ、プライバシーを重視する人には自宅検査キットという選択肢もある
・淋菌感染症にかかった場合、パートナーと同時に治療することが不可欠であり、治療中の自己判断や再検査の重要性、正しいコンドームの使用が予防に役立つ
これらの情報を参考に、淋菌感染症の症状を正しく理解していただけますと幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。