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妊娠糖尿病とは?原因・症状・なりやすい人・対策を解説

 公開日:2024/02/01
妊娠糖尿病とは?原因・症状・なりやすい人・対策を解説

妊娠糖尿病とは、妊娠がきっかけで妊娠中のみ一時的に発症する糖尿病です。

妊娠中は、血糖値が上がりやすいため妊娠糖尿病と診断されやすくなります。産後に改善する場合が多いですが、しばらくして病気が再発してしまう場合もあります。

また、妊婦の糖尿病は母体だけでなく赤ちゃんにも影響を与えてしまうので、注意が必要な病気です。

妊娠糖尿病の患者数は年々増加しているといわれており、身近になっています。

今回は、妊娠糖尿病の原因・症状・対策方法などの情報をまとめました。妊娠中の方はぜひ、参考にしてください。

久高 将太

監修医師
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)

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琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。

妊娠糖尿病とは?

妊娠糖尿病とは?
妊娠糖尿病とは、妊娠中に一時的に血糖値が上昇し発症する病気です。この病気は、産後に改善する場合がほとんどです。
しかし、妊娠糖尿病が悪化してしまうと、母体・胎児に合併症を引き起こしてしまう可能性があります。また、妊娠糖尿病と一括りにしても種類がいくつかあるのです。
そのような妊娠糖尿病を患う妊婦は、年々増加しているともいわれています。そこで、病気の詳しい種類と、どれぐらいの妊婦が患っている病気なのかについて解説します。

種類

妊娠糖尿病は大きく分けて、以下の3種類に分類されます。

  • 妊娠糖尿病
  • 妊娠中の明らかな糖尿病
  • 糖尿病合併妊娠

妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発覚するもので、一般的な糖尿病よりも糖代謝異常が軽度です。産後は改善する場合がほとんどとされています。
妊娠糖尿病は、糖尿病として軽度ですが、母体・胎児ともに出産に悪影響を与える可能性があり注意が必要です。
また、妊娠中にはじめて糖代謝異常が発覚したが、症状がより重症のものを「妊娠中の明らかな糖尿病」と分類します。
妊娠中の明らかな糖尿病は、発覚が妊娠中だっただけで以前から発症していた可能性も考えられるでしょう。
最後に、妊娠以前から糖尿病を患っていた場合の病名を「糖尿病合併妊娠」といいます。
どの種類においても、糖尿病には変わりありません。妊娠に悪影響を与えるものなので、それぞれに合った適切な治療が重要です。

罹患率

妊娠糖尿病を患う妊婦は、妊婦全員を検査した場合約12%いるといわれています。また、妊娠中の明らかな糖尿病・糖尿病合併妊娠の妊婦を合わせると、約15%にものぼります。
この数字は、決して低い数字ではなく、どの妊婦さんもなりうることをしめしています。妊娠中は、他人事と考えず妊娠糖尿病の対策をしっかりしてください。

妊娠糖尿病の原因

妊娠糖尿病の原因
妊娠により、血糖値が通常より上がりやすい状態になることにより、妊娠糖尿病は引き起こされます。
妊娠することで、血糖値の調整をするインスリンの働きが悪くなり、血糖値が上がりやすいのです。さらに妊娠中は、インスリンが働きづらくなるタンパク質を分泌してしまうことも原因です。
胎盤が完成し、赤ちゃんへ栄養を与えるために必要な過程で起こってしまう作用なので、妊娠後期にかけて発症しやすくなります。
そのため、妊娠していない人よりも妊婦は糖尿病の症状が発症しやすく、妊娠糖尿病と診断されるのです。妊娠中の食生活の乱れや運動不足は、通常時より気を付けましょう。

妊娠糖尿病の症状

妊娠糖尿病の症状
妊娠糖尿病の症状はどのようなものなのでしょうか。実は、妊娠糖尿病の患者さんは多くの場合、目立った症状がなく検診などで発覚します。
自覚症状がないため、体の異変に気づかず長期間放置してしまうと症状が悪化し、合併症を引き起こしてしまう可能性もあります。
症状がないと、自分が妊娠糖尿病にかかっているかわからず不安だという方も多いはずです。どのように対処していけばよいのでしょうか。

自覚症状がないことが多い

妊娠糖尿病の患者さんは、自覚症状がほとんどない場合が多いです。そのため、定期検診ではじめて妊娠糖尿病が発覚することがほとんどです。
妊婦検診の時に2回スクリーニング検査を行う機会があります。そこで、陽性が出た場合、ブドウ糖負荷試験を行う流れです。この検診で怪しい症状が発覚すれば、悪化する前に対処することができます。

症状がないまま重篤な疾患を誘発してしまうことも

妊娠糖尿病は自覚症状がほとんどないため、発覚が遅れてしまうと以下のような大きな症状が起こってしまう可能性もあります。

  • 帝王切開率上昇
  • 妊娠高血圧症候群
  • 羊水過多
  • 網膜症
  • 腎症
  • 肩甲難産
  • 流産
  • 巨大児
  • 心臓の肥大(赤ちゃん)
  • 低血糖(赤ちゃん)
  • 多血症(赤ちゃん)
  • 黄疸
  • 胎児死亡
  • 子どもの小児期~成人期の肥満

これらの症状が起こる前に、治療していくことが重要です。そのためにも、妊娠糖尿病を早期発見できるよう妊娠検診は必ず行きましょう。

妊娠糖尿病になりやすい人の特徴は?

妊娠糖尿病になりやすい人の特徴は?
妊娠糖尿病になりやすいのは以下のような人です。

  • BMI25以上ある、もともと肥満体質の人
  • 妊娠後、体重が増えた人
  • 糖尿病患者が家族の中にいる人
  • 原因不明の流産・早産・死産の経験がある人

これらに当てはまる人は、特に妊娠糖尿病への注意が必要です。検診時に、医師にしっかり確認してください。また、自身の食生活をいままで以上に見直すことも大切です。
またほかにも、35歳以上の高齢出産・巨大児分娩歴がある・妊娠高血圧症候群・羊水過多などがある方も、妊娠糖尿病になりやすいので注意してください。

妊娠前から肥満体質である(BMI25以上)

妊娠前からBMIが25以上ある肥満体質の人は、妊娠糖尿病のリスクが高いです。そのため、妊娠が発覚したら、今まで以上に体重の管理を徹底しましょう。
妊娠中は通常よりインスリンが働きにくく、血糖値の調整がうまくできません。肥満であることは、さらにインスリンの働きに対して抵抗してしまいます。
そのため、肥満が原因で症状が発症する確率を上げてしまうのです。
また、このような方は、前触れもなく「明らかな糖尿病」といきなり診断されるケースも考えられます。この場合、産後も継続して治療の必要があるので、しっかり対策しておくことが重要です。
もともと肥満体質の方は、体重管理について医師と相談しましょう。

妊娠してから体重が増えた

妊娠してから体重が増えた
妊娠中は、胎児が成長し羊水や胎盤なども増えるので、体重が増加するのが当たり前です。しかし、それぞれに合った体重の増加幅から、大きく超えて体重が増えてしまうのは危険です。
大幅な体重の増加は、インスリンの働きが弱まるため血糖値があがりやすくなります。そのため、体重増加により妊娠糖尿病の症状が引き起こされてしまうのです。
体重増加の目安は以下の通りです。

  • BMI 18.5未満の方 9~12kg
  • BMI 18.5~25未満の標準体重の方 7~12kg
  • BMI 25以上の方 4~6kg(医師と要相談)

あくまでも目安なので、体重の増加幅・管理については医師と相談しましょう。しかし、過度なダイエットは母体・胎児に悪影響なので栄養バランスのよい食事を心がけてください。

家族の中に糖尿病患者がいる

一般的な糖尿病と同じく、妊娠糖尿病も家族の糖尿病歴が由来する場合があります。妊娠したら、今まで糖尿病を患ったことがある血縁の家族がいるか確認してください。
もし、糖尿病患者との血縁関係があった場合は、リスクが高いので妊娠経過を慎重にみていきましょう。

原因不明の流産・早産・死産の経験がある

過去に妊娠したことがある方で、原因がわからない流産・死産・早産を経験したことがある方は、妊娠糖尿病に注意が必要です。
この要因に当てはまる方は、定期検診時に注意深く症状が起こっていないかを確認すると安心です。

妊娠糖尿病の治療方法

妊娠糖尿病の治療方法
万一、妊娠糖尿病と判断された場合、どのような治療方法があるのでしょうか。事前に治療方法を知っておくことで、もしものことがあった場合冷静に対処できるでしょう。
妊娠糖尿病の治療方法は、以下の3通りです。

一般的に妊婦は運動できる量も限られているため、まずは食事療法を行います。その後、経過次第ではインスリン療法を実施します。
それでは、3つの治療方法についてそれぞれ詳しく解説しましょう。

食事療法

食事療法では、バランスの取れた食事を摂取するように指導されます。
妊婦には体重・妊娠周期に応じて、目安の摂取カロリーが設定されています。妊娠糖尿病を患う妊婦は、通常の妊婦の30%カットでエネルギー摂取することが推奨されているのです。それ以上の制限は、危険です。
しかし、カロリーを調整するだけでは、胎児・母体ともによくありません。妊娠中に合わせた、栄養バランスを考えた指導がされるので、医師の指示にしっかり従いましょう。
妊娠糖尿病の場合の血糖値の目標値は、食前が95mg/dl未満・食後2時間で120mg/dl未満とされています。
この数値に近づけるためには、周期によって食事内容が異なります。妊娠糖尿病と診断された場合は、その時期に合わせた食事をとることがポイントです。

運動療法

運動療法
一般的な糖尿病であれば、運動療法は有効です。しかし、妊娠糖尿病にも運動療法は効果自体はありますが、あまりおすすめできない場合もあります。
妊婦が運動を行うときは、通常と体の状態が違うのでケガの恐れ・体調の急変の可能性があります。そのため、医師の指示に従った内容の運動療法を行ってください。
基本的に、妊娠中の運動はウォーキング・ヨガ・エアロビ・体操といった有酸素運動が推奨されています。
しかし、医師から運動療法が勧められなかった場合は、勝手な判断はせずほかの治療法に頼ってください。

インスリン療法

インスリン療法は、食事療法で目標値を達成できない場合に行われる治療法です。基本的に、経口薬は胎児の影響を考えると妊婦に使用できないため、インスリン注射を採用します。
また、妊娠糖尿病は基本的に妊娠中のみの一時的なものなので、出産するとインスリン治療は終了です。しかし、妊娠中はホルモンバランスが変化することによって、インスリンが効きづらく処方量が通常の倍になることもありえます。
インスリン療法は薬を使用する治療方法なので、胎児への影響を懸念される方もいるかもしれません。
しかし、インスリンには妊娠に関する添付文書の義務付けがされており、世界でも安全に使用された実績があります。それでも不安を感じている方は、治療に入る前に医師から説明をしっかり受けてください。

妊娠糖尿病の対策方法

妊娠糖尿病の対策方法
妊娠糖尿病は、母体への影響だけではなく、おなかの赤ちゃんへの影響もある危険な病気です。
この病気を予防するために、どのような対策をとればよいのでしょうか。
まず、食生活を意識することが重要です。肥満や体重の増加は、妊娠糖尿病のリスクを高めてしまいます。また、定期検診をしっかりうけることで重症化する前に防ぐことも可能です。
それでは、妊娠糖尿病の対策方法について詳しく説明しましょう。

食生活に注意する

妊娠糖尿病は、肥満・妊娠中の急激な体重の増加が原因で起こる病気です。ほかにも原因はありますが、体重の管理に気を付けることは予防の第一歩です。
妊娠中は、おなかの中で赤ちゃんを育てているので、いつも以上にエネルギーを摂取しなくてはいけません。しかし、食の好みが変わったり、食べられるものに偏りがでたりする妊婦もいます。
そのことにより、栄養バランスが崩れたり、過剰なエネルギー摂取につながったりしてしまいます。また、妊娠中は今まで以上に家でゆっくり過ごす時間が増え、間食の機会も多くなることも考えられるでしょう。
しかし、食欲をコントロールせず好きなだけ食べてしまうと、妊娠糖尿病を発症する確率が高まります。
胎児の栄養面だけでなく、病気の対策をするためにも、バランスの良い適切な食生活を送ることを意識してください。

定期的に検診を受ける

定期的に検診を受ける
妊娠糖尿病を予防するためには、定期検診をしっかり受けることが大切です。
妊娠中に実施される定期検診では、初期・中期に糖尿病のスクリーニングが行われます。このスクリーニングを受けることで、事前に妊娠糖尿病を予防することもできるでしょう。
また、万一妊娠糖尿病と判明した場合でも、定期検診を受けることで早期発見につながり重症化を防げます。
定期検診は、妊娠糖尿病対策だけでなく、母体・胎児にとってあらゆる危険を事前に防ぐことができる重要なものです。忘れず、期間通りにしっかり受けましょう。

編集部まとめ


妊娠中は、通常より血糖値が上がりやすいことが原因で妊娠糖尿病になりやすいです。

妊娠糖尿病になると、母体・胎児ともに合併症を起こしやすく大変危険です。

さらに、自覚症状がほとんどなく気づかないことが多いといわれています。そのため、妊娠糖尿病を早期発見するためには定期検診をしっかり受けておくことが重要です。

また、妊娠糖尿病は妊娠中の食生活を見直すことによって対策できます。

安全な妊娠・出産のためにも、バランスの良い食生活をこころがけましょう。

この記事の監修医師