糖尿病の分類や原因・治療方法|症状・食事・合併症についても解説
日本では、未治療の方も含めると7人に1人が糖尿病ともいわれています。
罹患者数からみると身近な病気といえますが、糖尿病とはどのような病気なのでしょうか。
この記事では、糖尿病の原因・分類・症状・合併症・治療方法などについて詳しく解説します。
監修医師:
井倉 和紀(西早稲田ライフケアクリニック)
目次 -INDEX-
糖尿病について
糖尿病とは、糖がうまく代謝されず血糖値が下がりにくくなる病気です。
血糖値とは、血液中に含まれるぶどう糖の濃度のことで、健康な方でも食後は血糖値が上昇します。
ぶどう糖自体は細胞のエネルギー源であり、私たちの身体に必要な物質です。しかし、血糖値が過剰に高い状態が続くことで血管が傷つき動脈硬化に陥ったり、臓器障害が起こったりする可能性があります。具体的な症状については、後述の症状・合併症も参考にしてください。
令和元年に厚生労働省が実施した調査では、糖尿病を強く疑われる方は男性の19.7%、女性の10.8%という結果でした。この調査での「糖尿病を強く疑われる方」には、糖尿病と診断された方のほか、健診などで糖尿病の疑いを指摘された方も含まれています。
糖尿病の診断数に関する正確な統計はありませんが、この統計をもとにすると国内には約1,860万人の糖尿病患者さんがいると推計できます。
では、なぜ多くの方が糖尿病・糖尿病予備軍になるのでしょうか。次の見出しでは、糖尿病の原因について解説していきます。
糖尿病の原因
糖尿病は「血糖値が高い状態」と認識されることがあります。しかし、血糖値が高くなるのは「結果」であり、根本的な原因はインスリンというホルモンが十分機能しないことです。
インスリンは膵臓から分泌され、細胞が糖を取り込む手助けをします。このインスリンが十分機能できなくなる理由は下記の2つです。
- インスリン分泌低下:分泌されるインスリンが不足している
- インスリン抵抗性:インスリンに対する反応が低下している
インスリン分泌低下の原因は、膵臓の機能低下です。膵臓の機能が低下する原因としては、自己免疫性疾患・膵臓の腫瘍・炎症などが挙げられます。
一方、インスリン抵抗性が現れる原因としては、遺伝・高脂肪食・肥満・運動不足・ストレスなどがあります。いずれの場合も、細胞は十分な量の糖を取り込めません。
その結果、取り込まれなかったぶどう糖が血中に余ってしまい血糖値が上がるのです。
糖尿病の分類
糖尿病は「なぜインスリンが十分機能しないのか」によって4つのグループに分類できます。それぞれ、どのような原因・特徴があるのでしょうか。
1型糖尿病
インスリンは、膵臓のβ細胞から分泌されています。
このβ細胞が破壊され、インスリンの分泌量が低下して慢性的な高血糖になった状態が1型糖尿病です。若年者に多く、発症のピークは思春期といわれています。
しかし、近年では小児期の発症が増加傾向です。1型糖尿病において、β細胞が破壊される主な原因は自己免疫だといわれています。
本来は細菌などを攻撃して体を守る「免疫」ですが、何らかの原因により異常な反応をして、自分の細胞を傷つけてしまうことがあるのです。
1型糖尿病になると必要な量のインスリンを分泌できなくなるため、インスリンを注射して補う必要があります。
2型糖尿病
2型糖尿病とは、インスリン分泌低下・インスリン抵抗性によって起こる糖尿病です。
1型糖尿病と比較すると症状の進行が緩徐で「症状が悪化するまで発症に気付かなかった」というケースもあります。
2型糖尿病は生活習慣病の1つで、運動習慣・食生活の改善などにより症状の悪化抑制が期待できます。
ただし、2型糖尿病に罹患した方が、必ずしも生活習慣に問題があったとはいえません。
前述の通り、インスリン抵抗性の出現には生活習慣のほか遺伝・ストレスなども関連しています。
なお、2型糖尿病の場合も、運動療法・食事療法で血糖値のコントロールがつかなければ薬による治療を行います。
その他の特定の機序・疾患によるもの
遺伝子の異常・糖尿病以外の病気・外的要因などにより糖代謝に異常が起きて糖尿病を発症する場合があります。
このタイプの糖尿病を引き起こす「特定の機序・疾患」の例は下記の通りです。
- β細胞の機能に関する遺伝子異常
- インスリン作用に関する遺伝子異常
- 糖尿病を伴うことの多い遺伝的症候群
- 膵外分泌疾患
- 内分泌疾患
- 肝疾患
- 感染症による合併症
- 薬剤・化学物質
妊娠糖尿病
妊娠前は血糖値が正常だったにも関わらず、妊娠してから指摘される高血糖を「妊娠糖尿病」といいます。
妊娠糖尿病の主な原因は、胎盤から出ているホルモンの影響でインスリン抵抗性が高まることです。妊娠糖尿病と指摘されても、出産後には血糖値が正常値に戻り安定することが多いでしょう。
ただし、高血糖は胎児の健康・出産に下記のような影響を及ぼす可能性があります。
- 帝王切開率の上昇(巨大児)
- 流産・早産の増加
- 妊娠高血圧症候群の併発
- 子宮内胎児死亡
- 新生児低血糖
- 新生児高ビリルビン血症
- 小児期以降の肥満
また、妊娠糖尿病の既往がある女性は、糖尿病になる確率が高いとされています。このような問題を避けるため、妊娠中も適切な血糖値を保てるよう治療を行う場合があります。
糖尿病のステージ別の症状
病気の進行が緩やかな2型糖尿病では、初期にはほぼ自覚症状がありません。そのため、受診・健診などで高血糖を指摘されて初めて糖尿病だと気付く方が多いです。
しかし、病気が進行すると全身にさまざまな症状が出始めます。ここからは、糖尿病の患者さんが感じる自覚症状について紹介します。
のどの渇き
血中で糖の濃度が上がると、尿に含まれる糖が増えることで「浸透圧利尿」という作用が働き尿量自体が増加します。その結果、体内は脱水状態になり、のどの渇きを感じるのです。
このような仕組みで、糖尿病が進行すると「最近、異常にのどが渇く」「水分を摂る量が急激に増えた」などの自覚症状が現れます。
多尿・頻尿
高血糖状態では血中の過剰な糖を排出するため、尿量が増えます。それに加え、のどの渇きを感じて多量に水分を摂れば、さらに尿の量・排尿の頻度は増加するでしょう。
この状態になると、排尿に伴って体内の水分量は減り、再び体内は脱水状態になり、大量に水分を摂るという循環に陥ります。
だるい・疲れやすい
糖尿病は、インスリンの量・作用が十分ではない状態です。
インスリンがうまく作用しなければ、十分な糖が体内にあっても細胞に取り込めません。その結果、細胞に必要なエネルギーが不足して倦怠感・疲労感が現れます。
急激な体重減少
前述の通り、糖尿病が進行した患者さんは細胞に十分な糖を取り込めない状態です。
このような状態で不足した分のエネルギーは、体脂肪を消費することで補われます。そのため、糖尿病が進行すると「食べる量は減っていないのに体重が減る」といった症状が現れます。
糖尿病の食事
多くの糖尿病は、長期間にわたり高血糖状態が続いたことが発症の原因となります。
しかし、糖は身体にとって必要なエネルギーなので、制限しすぎても身体の負担となるのです。また、糖尿病になっても量やバランスに気をつければ、嗜好品を食べることもできます。食事の際のポイントは下記の3つです。
- 適正なエネルギー量
- バランスの良い食事
- 規則正しい食事
このポイントをみると、糖尿病の治療となる食生活は特別なものでなく、 健康な方にも理想的な食生活であることがわかるのではないでしょうか。
なお、他の持病・糖尿病の合併症により制限食が必要な場合は、糖尿病のみの治療よりも食事制限が強くなる可能性があります。
糖尿病から主な合併症につながるリスク
糖尿病が進行すると、全身にさまざまな影響が出ます。その中で、糖尿病の「三大合併症」とされるのが糖尿病網膜症・糖尿病腎症・糖尿病神経障害です。
糖尿病は症状が出にくいため患者さんにとって受診の動機づけが難しいといわれといますが、どのような合併症があるのか知ることでリスクをイメージしやすくなるでしょう。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、眼の中にある細い血管が傷むことで飛蚊症・視力低下などが現れる病気です。
血糖値が高い状態が続くと血管が傷つき、傷ついて詰まった血管の機能を補うために新しい血管が作られます。
しかし新生血管は脆く、破れたり再生したりを繰り返すため、水晶体混濁・眼底出血・網膜剥離が起こり飛蚊症や視力低下を起こすのです。また、網膜剥離が進行すると失明する可能性もあります。
糖尿病腎症
腎臓の中には微細な血管が多数あり、この血管で血中の老廃物・余剰な成分を濾過して尿を作っています。
しかし、高血糖状態が続き腎臓の血管が傷むことで腎機能機能が低下すると、体内の老廃物・水分などをうまく排出できません。
この状態が、糖尿病性腎症です。初期のうちは自覚症状がありませんが、糖尿病性腎症が進行すると人工透析が必要になります。
糖尿病神経障害
糖尿病神経障害は、末梢神経が障害されることで手足の先の感覚障害・冷えなどが現れた状態です。
糖尿病により神経障害が起こる原因は、代謝異常による細胞の機能低下・血行不良による神経の栄養不足です。
末梢の感覚麻痺が起こると生活しにくいだけでなく、末梢の傷・やけどに気付きにくくなります。また、糖尿病の患者さんは健康な方と比べると、炎症がおさまりにくく傷が治りにくいのです。
そのため、小さな傷からでも足の潰瘍・壊疽(えそ)につながる可能性があります。
壊疽が起きると指や足の切断が必要になる可能性があるため、糖尿病と診断されたら足先・足裏の負傷にも注意が必要です。また、神経障害は末端だけでなく全身に起こり得ます。
その結果、本来であれば強い痛みを感じるはずの心筋梗塞を起こしても痛みがないため発見が遅れたり、自律神経の機能低下により下痢・排尿障害・立ちくらみなどを起こしたりすることがあります。
糖尿病の治療方法
ここまで、糖尿病の概要・症状・合併症などについて解説してきました。
では、糖尿病にはどのような治療方法があるのでしょうか。治療の「3本の柱」である食事療法・運動療法・薬物療法について紹介します。
食事療法
糖尿病の治療では、適切なエネルギー量・バランスの食事を規則正しく摂ることで、糖の過剰摂取・血糖値の急激な変動を抑えることが大切です。
そのため、自宅で糖尿病を悪化させない食生活ができるよう医師・栄養士などが患者さんに対して適切な食事方法・食事内容について指導を行います。
運動療法
適度な運動をすることで、筋肉への血流量増加・筋肉量の増加によりインスリンが作用しやすくなるといわれています。
運動の中でも特に糖尿病の治療に有効なのは、有酸素運動・筋力トレーニングです。運動療法では、患者さんの体力・持病に合わせた運動方法を指導します。
薬物療法
食事療法・運動療法のみで十分な治療効果が得られない場合は、血糖値を安定した状態に調整するため薬物療法が必要です。患者さんの状態に合わせて、下記の4種類の薬を組み合わせて使用します。
- インスリンを補充する薬
- インスリンの分泌を促す薬
- インスリンを作用しやすくする薬
- 糖の吸収抑制・排泄促進をする薬
インスリンを補充する薬・分泌を促す薬は、飲み薬だけでなく注射もあります。
注射が必要な場合は、自宅で患者さん・家族の方が注射をできるように自己注射の方法について指導があります。
糖尿病でお悩みなら西早稲田ライフケアクリニックにご相談を
糖尿病は症状が現れにくく、自覚症状が出たときには病気が進行している可能性が高い病気です。また、治療では血糖値を安定させるだけでなく、全身に現れる症状に対応する必要があります。
もし「糖尿病ではないかと不安」「血糖値だけでなく全身に目を向けてくれる医療機関に通いたい」と考えている方は、西早稲田ライフケアクリニックに相談してみてはいかがでしょうか。
西早稲田ライフケアクリニックの特徴を紹介します。
糖尿病早期発見・早期治療のための充実した設備
医院によっては、簡易的な血糖の検査を行った後に大きな病院へ患者さんを紹介して詳細な検査を依頼する場合もあります。
しかし、西早稲田ライフケアクリニックは糖尿病や神経障害を早期発見するために下記のような設備を導入されているため、クリニック内でさまざまな検査が可能とのことです。
- グリコヘモグロビン分析装置
- 小型尿分析器
- 神経伝導検査装置
また、糖尿病の患者さんにとって非常に重要な足のケアについても、フットプリント・フスフレーゲモーターなど精度の高いケアを行うための設備が揃っています。
日本フットケア・足病医学会認定師によるフットケア外来
足にトラブルがあると、日々の生活も制限されてしまいます。特に、糖尿病の患者さんは末梢神経障害・血流障害により足のトラブルを抱えやすい状態です。
足にできた潰瘍がもとで足を切断しなければならなくなる場合もあるため、糖尿病になったら患者さん自身が足の状態に注意するとともに、専門職によるケアを続けることが重要です。
このようなケアに対応するため、日本フットケア・足病医学会では、専門性の高いフットケアを実施できる人材を育成する「認定師制度」を設けています。
認定師制度の対象となるのは、学会員となっている医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・理学療法士などです。
西早稲田ライフケアクリニックでは、研修などを経て認定師を取得した医師によるフットケア外来を行っています。
全身のトータルケアを目指した治療を提供
糖尿病では、全身のさまざまな部位に高血糖の影響・合併症が現れます。そのため、治療の際は患者さんの全身に気を配ることが重要です。
西早稲田ライフケアクリニックでは、院長が専門とする糖尿病・フットケアの診療経験を生かして「頭のてっぺんから足の爪先まで」全身のトータルケアを目指すという考えのもと治療が提供されています。何歳になっても自由に歩ける丈夫な足を目指し、足の爪のケアやタコなどのトラブルに対する治療も行っているそうです。また、患者さん自身でもできるフットケアを一緒に考え、実践できるようサポートされているとのことです。
西早稲田ライフケアクリニックは、糖尿病とフットケアのスペシャリストとして、患者さんに適切な医療を提供できるよう努めています。
西早稲田ライフケアクリニックの基本情報
アクセス・住所・診療時間
東京メトロ副都心線 西早稲田駅 2番出口 徒歩1分
JR山手線・東京メトロ東西線・西武新宿線 高田馬場駅 徒歩10分
東京メトロ東西線 早稲田駅 徒歩10分
都電荒川線 学習院下駅 徒歩10分
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
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8:30〜12:30 | ● | ● | ● | ● | - | ▲ | - |
14:00〜18:00 | ● | ● | ● | ● | - | ■ | - |
▲:08:30~12:00
■:13:30〜15:30
※受付は診察終了時間の30分前までとなります。
参考文献
- 西早稲田ライフケアクリニック
- 血糖値|厚生労働省
- インスリン抵抗性|厚生労働省
- 令和元年国民健康・栄養調査結果の概要|厚生労働省
- 糖尿病|厚生労働省
- 糖尿病ってどんな病気?|一般社団法人 日本糖尿病学会
- 高齢者糖尿病の特徴|公益財団法人 長寿科学振興財団
- 糖尿病性腎症|公益財団法人 長寿科学振興財団
- 1型糖尿病|一般社団法人 日本内分泌学会
- 妊娠と妊娠糖尿病|国立研究開発法人 国立成育医療研究センター
- 体重減少の原因は?|国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
- 網膜症|国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター
- 糖尿病の運動のはなし|国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター
- 薬で血糖値が下がるしくみ|国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター
- 学会認定師について|一般社団法人 日本フットケア・足病医学会