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うつ病になっても仕事は続ける?症状や経済的支援・再就職のための制度も解説

 公開日:2024/03/15
うつ病 仕事

うつ病は働いている方々のなかで増加傾向にあり、社会全体の問題といっても過言ではないでしょう。

うつ病になっても仕事を続けるべきなのでしょうか、それとも休むべきなのでしょうか。またうつ病になった際に受けられる支援はどのようなものがあるのでしょうか。

これらの疑問に答えるべく、この記事では、うつ病と仕事というテーマを詳しく解説します。仕事を続けるべきなのかどうか・経済的な支援が欲しい・再就職できるか不安などの悩みを抱えている方は、ぜひ参考にしてください。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

うつ病になっても仕事は続ける?

悩む男性
うつ病と診断されたり、うつ病ではないかと自分で感じたりした際に、仕事を続けるべきなのかどうか迷う方も多いのではないでしょうか。
実際のところ、適切な治療と周囲のサポートがあれば、うつ病と診断された場合でも仕事を続ける事は可能です。しかし、症状や環境はそれぞれなので、続けた方がよいかどうかは状況によります。
うつ病を抱えながら働き続けることのメリット・デメリットを知り、医師や周囲の方に意見を仰いで、仕事を続けるかどうかを決めていくことが重要です。
大切なのは、体を第一に考えることです。無理せず体調を回復させることを優先しながら、仕事を続けるかどうか検討してください。

うつ病の症状

横になる女性
うつ病は、気分障害の一つです。
気分障害には主にうつ病性障害と双極性障害(躁うつ病)があり、うつ病はうつ病性障害の中でも「大うつ病性障害」という分類になります。
発症原因ははっきりとはわかっていませんが、精神的ストレス・身体的ストレスによって、感情・意欲などに関連した脳の働きに不調が生じるためと考えられています。
うつ病の症状は多種多様です。気が付きやすい場合もあれば、気が付きにくい場合もあります。だからこそ、正しい知識が必要です。
症状は、精神的な症状・身体的な症状のほかに、日常生活に支障を及ぼす行動面での症状があります。
それでは症状を以下で詳しく解説します。

身体的な症状

うつ病の身体的な症状には、以下のようなものがあります。

  • 不眠や過眠などの睡眠障害
  • 頭痛
  • 肩こり
  • めまい
  • 耳鳴り
  • 筋肉痛
  • 下痢と便秘の繰り返し

うつ病と聞くと、精神的な問題と考える方が多いかもしれませんが、実は身体的な症状も大変多いのです。身体的な不調の原因がうつ病だと気が付いていない場合も多く、周囲から指摘されて初めてうつ病だと気が付くケースもあります。
これらの症状はわかりにくいものが多く、感情をうまく表現できない方が特に陥りやすいとされています。心の中で感情が処理できずに、身体的な症状として現れてしまうためです。
上記のような症状があり、気分がすぐれない場合は、うつ病の可能性を疑ってみてください。早期に専門家に相談することで、適切な対応が可能です。

精神的な症状

悩む男性
うつ病の精神的な症状には、さまざまなものがあります。具体的には以下のような症状が挙げられます。

  • 気が滅入る
  • 悲しくなる
  • 後にひきずる
  • 決断ができない
  • 興味が湧かない

上記のような、気分が落ち込みネガティブな思考になってしまう状態が、主なうつ病の精神的な症状です。
また、時間の認識も変わってしまいます。今や未来よりも過去に意識が向くようになり、後ろ向きな考えをするようになる傾向があります。
特に危険な状態は、生きていても仕方がないと感じるようになってしまい、生きる希望を失ってしまうことです。自傷行為や自殺の考えがある場合は、すぐに周囲の方や専門家に相談し、援助を求めてください。
精神的な症状は、初めのうちは周囲の方からは見えにくいものです。少しでも異変を感じたら、早めに専門家に相談しましょう。

行動面での症状

うつ病の症状は、身体的な症状や精神的な症状のほかに、行動面にも現れます。症状には以下のようなものが挙げられます。

  • あまり会話をしなくなる
  • 笑わなくなる
  • 食欲不振
  • 時間を守らない
  • 身だしなみに気を使わない

これらの症状は、全体的な意欲の低下が原因です。意欲が低下するので、他者との関わりを避けたり、自身の服装や髪形に気を配らなくなったりしてしまいます。
行動面での症状は、日常生活に直接的な影響を及ぼすので、周囲の方が気が付きやすい症状です。周囲の方に指摘されたり、以前は活発だったのに意欲が低下してきたりした場合には、うつ病の可能性に注意してください。
繰り返しになりますが、少しでも気になる場合は、早めに専門家に相談しましょう。

うつ病で仕事を続けるメリットはある?

お金を数える
うつ病になってしまった場合、仕事を続けるべきかどうか多くの方が悩むのではないでしょうか。
結論からいうと、うつ病で仕事を続けるメリットはほとんどありません。
安定した収入やブランクが空かないなどの心配は減らせるかもしれませんが、うつ病になった際に優先するべきなのは、体調の回復と自身の健康です。
無理をしながら仕事を継続してしまうと症状が悪化してしまい、結果的に長期間仕事ができなくなってしまう場合もあります。
自身の体調を専門家と相談しながら、休むのか、仕事を続けるのかを検討してみてください。

うつ病で仕事を続けるデメリット

頭が痛い男性
うつ病で仕事を続けるメリットがある一方、当然デメリットも存在します。うつ病を抱えながら、仕事を続けるのは並大抵のことではないでしょう。
以下では、うつ病で仕事を続けるデメリットを解説します。安定した収入やブランクを防げるメリットを考慮しつつも、仕事を続けるデメリットも理解して、バランスのよい判断をしてみてください。

症状が改善しない可能性がある

うつ病で仕事を続けるデメリットとして、症状の改善が遅れたり、悪化したりする可能性があることが挙げられます。
仕事に関してはさまざまなストレスがあります。具体的には、仕事の量・仕事の質・昇進や昇格のプレッシャー・仕事への適性などです。
仕事を続けることで、これらのストレスを慢性的に受けると、心の健康に大きく影響を及ぼします。心の健康が害されるとうつ病が改善せず、症状が長期化してしまうので注意が必要です。
また、仕事によるストレスや忙しさは、心身を休ませる時間やリラックスする時間を削ることになります。回復に時間を避けないので、疲れやストレスがさらにたまり、悪循環のループに入ってしまうのです。
そのため、そのような仕事に従事している場合は、休むことが改善のためには大切となります。仕事を続ける場合でも、自分の症状や体調を常にチェックし、ケアを怠らないことが重要です。

職場の理解が得られないと評価が下がってしまう場合も

怒る人
うつ病で仕事を続けることのもう一つのデメリットは、職場の理解が得られないと、自分の評価が下がってしまう可能性があることです。うつ病は見た目に現れにくい場合があるので、職場で理解を得るのが難しいケースもあります。
うつ病になると、意欲が低下する傾向があるので、仕事の生産性に影響が出てきます。職場の理解が得られず、自身の生産性が低下すると、評価が下がる一因になってしまうかもしれません。
そのため、職場の理解が得られない場合は、休職を検討するのも一つの手段となります。自身の健康を第一に考え、専門家と協力して、適切な選択をすることが大切です。

うつ病の方が受けられる経済的な支援制度

カウンセリング
うつ病になった際は、日々の仕事を続けるのが大変だと感じるかも知れません。しかし、生活を考えると、仕事を休んだり辞めたりするわけにはいかないと考える方も多いのではないでしょうか。
そのような方をサポートするために作られたのが、支援制度です。これらの支援制度はうつ病と闘いながら日々を過ごす方々が、治療に専念できるように考えられています。具体的には以下のようなものです。

  • 傷病手当金
  • 自立支援医療制度
  • 精神障害者福祉手帳
  • 障害年金

これらのうち、うつ病の患者さんが仕事をしながら受けられる支援制度は傷病手当金となります。
以下で詳しく解説しますので、必要な時には積極的に活用してください。大切なのは、自分自身の健康を第一に考えることです。その際に頼れる支援制度があることを覚えておいてください。

傷病手当金

傷病手当金を記載する
うつ病で働けなくなった場合でも、健康保険に加入していれば、傷病手当金を受け取れます。ただし、国民健康保険の被保険者は、制度の対象外です。
傷病手当金とは、病気やケガの療養のため働けなくなった場合に、支給されるお金のことです。働けなくなった日から数えて3日後から、1年6ヵ月までの期間支給されます。
支給額は、おおよそ1日あたりの収入の3分の2に相当する金額で、直近12ヵ月の標準報酬月額をもとに算出されます。
ただし傷病手当金の対象となるうつ病は、その発症原因が仕事以外であることとなっており、注意が必要です。
対象の方は、ぜひ活用を検討してください。気になった方は、加入先に応じて健康保険組合か協会けんぽに相談しましょう。

復職・再就職の際に活用できる支援制度・支援機関

プレゼン
うつ病の症状が落ち着き、復職・再就職を目指す方がスムーズに働き始められるように、支援制度・支援機関などでさまざまなサポートが受けられます。
以下で紹介しますので、新しい一歩を踏み出そうとしている方は、ぜひ参考にしてください。

復職支援

復職支援として、厚生労働省より事業者へ周知されているのが職場復帰支援プログラムです。主に、職場復帰の体制の整備・ルール化・教育の実施などが組み込まれています。
まず、休職中の方から復職の意思が確認されると、担当の医師のほかに産業医が職場の業務を遂行する能力があるかを精査して、職場復帰が可能かどうかを判断します。
その後、復職日・業務上のサポート内容・産業による助言や意見・フォローアップなどを加えて職場復帰支援プランを作成します。
職場の産業保健スタッフ・管理監督者・復職希望者との間で連携を取りながら、スムーズに職場復帰ができるよう進めていくのが大まかな流れです。
最終的に職場復帰をした後もフォローアップが行われ、プランの評価・見直しなどを行います。

再就職支援

再就職をしたい方向けに、以下の4つの就労支援機関を紹介します。

  • 就労移行支援事業所
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 地域障害者職業センター
  • ハローワーク

就労移行支援事業所は、企業で働くために必要なスキルやマナーを身に付けることをサポートしてくれる機関です。実際の職場の雰囲気を感じ取るための職場見学や、実践的なスキルを身に付けるための実習なども実施しています。
個人個人の能力や希望に合わせた職業訓練から就職活動の手伝い、そして就職後のフォローまで一貫したサポートをしてくれます。就職後にもし離職してしまっても、再就職に向けたサポートを行ってくれる点も、利用するメリットの一つです。
障害者就業・生活支援センターは、障害を持つ方々が自立した生活を送れるよう、就業面と生活面の支援を実施しています。
就業面での支援では、就業に関する相談支援・職場定着支援・関係機関との調整などを行っています。一方、生活面に関して行っている支援は、日常生活や地域生活に関する助言・関係機関との連絡調整などです。
このように、障害者就業・生活支援センターは、社会生活全般にわたり支援を行っています。これらのサポートを活用し行動することが、自立した生活を実現する第一歩となるでしょう。
地域障害者職業センターは、障害を持つ方々に対して、能力や状況に応じた専門的なリハビリテーションを提供しています。具体的な支援内容は以下のとおりです。

  • 職業評価
  • 職業支援準備
  • 職場適応援助者支援事業
  • 精神障害者総合雇用支援
  • 事業主に対する相談・援助
  • 地域における職業リハビリテーションのネットワーク構成
  • 地域の関係機関に対する職業リハビリテーションに関する助言・助成など

これらのサポートを通じて、地域障害者職業センターは、職業訓練や就労支援を行っています。全国47都道府県に設置されていますので、近くのセンターを探して、サポートを受けてみてください。
ハローワークは地域ごとのニーズに応じた雇用支援を行っています。全国に500ヵ所を超えるハローワークがあるので、気軽に利用できるのもメリットの一つです。
一般的な職業紹介を行っていますが、障害を持つ方々のための専門窓口も用意されています。専門窓口では、障害に関する専門知識を持つスタッフが就職活動のサポートをしてくれます。
就職活動に困った際に、ハローワークは有用なサービスです。積極的に活用して、新たな一歩を踏み出してみてください。
このように就労支援機関はさまざまなサポートを行っています。自身に合った再就職を行うために利用してみることをおすすめします。

編集部まとめ

笑顔の女性
うつ病になってしまった場合、仕事を続けるべきかどうかは、状況によるので一概にはいえません。仕事を続ける選択肢もありますが、さまざまな支援を受けつつ休む選択肢もあるでしょう。

大切なことは、体調の回復を優先に考えながら、無理なく生活を送ることです。そのためには、仕事を続けることによるうつ病への影響を理解することが重要です。

そして、うつ病になった際に受けられる支援を把握し、選択肢を増やすことが大切になります。

この記事では、うつ病の症状・うつ病で仕事を続ける場合の影響・受けられる経済的支援・活用できる就労支援機関を解説しました。本記事が、選択肢を増やす参考になれば幸いです。

この記事の監修医師