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うつ病の症状とは?うつ病の初期症状や末期症状・種類・うつ状態を引き起こす病気もご紹介

 公開日:2024/05/23
うつ病の症状とは?うつ病の初期症状や末期症状・種類もご紹介

ストレス社会といわれる程、現代において人々が抱える心身の問題は深刻です。

うつ病を発症すると、気分が落ち込んでやる気が出ないといった精神的症状が現われ、眠れない、疲れやすいとか、体がだるいなどの身体的症状もみられます。

この記事では、うつ病の症状や種類、治療方法などについて詳しく解説します。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

うつ病の症状

男性
うつ病を発症すると、どのような症状が現れるのでしょうか。
詳しく解説していきましょう。

意欲の低下など精神的な症状

精神的な症状としては、主に次のような症状が現われてきます。

  • 抑うつ的な気持ちになる
  • 物事に対する興味や関心がなくなる
  • 思考が進まず(思考制止)、イライラする(焦燥感)
  • 集中力が低下する
  • 自尊心を失い、自責感や罪責感を感じる
  • 自殺を考えたり(希死念慮)、実際にそれを試みる(自殺企図)

上記のうち、自責感が強まることによって、次のような妄想が出現することもあります。

  • 貧困の妄想(金欠、破産、入院費未納など)
  • 罪業の妄想(犯罪で警察に逮捕されるなど)
  • 心気の妄想(重病にかかっているなど)

これらの妄想が重くなると、自発性が大きく低下して、無言や無動といった昏迷状態となる可能性もあるのです。

めまいなど身体的な症状

続いて、身体的な症状としては、主に次のようなものが現われます。

  • 食欲の低下による体重減少
  • 不眠や過眠
  • 倦怠感と性欲の低下、頭痛や頭重感とめまい、便秘や下痢など

うつ病にかかると、こうした身体症状を先に解決するため、精神科ではなく内科などを最初に受診することも多い状況です。

うつ病の初期症状

悲しむ女性
人間誰しも、日頃の生活のなかで嫌なことや不快な状況に直面し、気分が落ち込むことがあります。
こうした状況でも、心身ともに健全であれば、時間の経過によって気分は少しずつ回復します。
ところが、うつ病になってしまうと、精神的なストレスが強いために脳内のホルモンバランスが乱れてしまうのです。
気分が落ち込んだ状態から回復できず、それが継続して、心身の症状として現れてしまいます。
うつ病の初期症状は自分で意識がなく、意識しても精神科や心療内科を受けるのに抵抗を感じて、症状を一人で抱えて悩んでしまいがちです。
うつ病は、早期に専門の医療機関に受診すれば、回復の時間も短くすみます。
うつ病の初期症状について解説しましょう。

すぐに涙が出る

人は誰でも、悲しかったり感動したりすると涙を流すことがあります。
その理由を生理的にみると、自分でコントロールできない強いストレスや感情を有害物質と脳が認識し、それを涙の形で体外に排出するのです。
泣けば気持ちがリセットされてすっきりする状態は、このように体から有害物質が出てしまった証明となります。
ところがうつ病になってしまうと、心身のバランスを維持するホルモンとして有名なセロトニンが不足し、脳内のホルモンバランスが乱れてしまいます。
その結果、感情がコントロールできずに涙もろくなり、ちょっとした現象でも自然と涙が出てしまう現象が起きるのです。

楽しさを感じない

うつ病にかかると、これまで好きだったことや趣味のあることをやっても、楽しさを感じなくなってしまいます。
今までは楽しく集中して没頭できていた趣味ですら、やる気がなくなって集中できず、興味がなくなってしまうのです。
また、何かよいことや楽しいことに接しても気分があがらず、落ち込む要因となった事件などが解決しても、気分が落ち込んだままとなります。

気分が落ち込む

人間誰しも何らかの要因で気分が落ち込むことがありますが、ストレス発散を試みたり、また何もしなくてもそのうちに気持ちが軽くなります。
通常の気分の落ち込みとうつ病の症状の違いは、気分の落ち込みがどの程度継続するかによるのです。
うつ病の場合、落ち込んだままの状態が約2週間以上も続き、その間は何をやっても気分が晴れないと感じてしまいます。

食欲がない

うつ病の初期症状として、食欲の低下もみられるでしょう。
これは、胃腸が「副交感神経」というリラックスした状態で活発に働く神経に支配されていることによります。
このため、食欲が湧かないので食事をしたくない、また少ししか食べられずに胸焼けするなどのさまざまな胃腸の症状を引き起こすのです。

眠れない

さまざまな研究によれば、うつ病患者の約8割もが不眠症状を抱えていますが、この不眠はうつ病の初期症状としても代表的なものといわれています。
不眠のタイプとしては主に次の4つの症状がみられます。

  • 寝つきの悪さ(入眠困難)
  • 睡眠途中での目覚め(中途覚醒)
  • 早朝の目覚めとその後の不眠(早朝覚醒)
  • 熟睡を感じない(熟眠障害)

上記のうち、うつ病患者には入眠困難が特に多い状況ですが、入眠までに30分以上かかる場合には特に注意が必要です。
また、早朝覚醒はうつ病の大きな特徴で、うつ病が疑われる可能性が高いです。

うつ病を放置すると?

考え事をする男性
うつ病を治療せずにそのまま放置すると、症状が重くなっていきます。常識を外れたことを考えてしまったり、強い孤独感を感じたりするでしょう。

常識を外れたことを考える

症状が重くなると身体の動きが緩慢になっていきます。また、自殺願望が強くなるなど、常識を外れたことを考えるようになってしまう特徴もあります。
「消えてしまいたい」と考えるだけではなく、実際に行動に移してしまう方もいるため、注意が必要です。

強い孤独感を感じる

うつ病になると物事をマイナスにとらえてしまうため、孤独感や絶望感を強く感じるようになる傾向があります。
孤独感は誰もが感じる感情ですが、孤独感以外に気分の落ち込みや食欲の低下など、先程お伝えしたうつ病の初期症状に当てはまる症状もでている方は、うつ病を発症しているのかもしれません。
お近くの医療機関などで相談してみることをおすすめします。

うつ病の種類

居眠り
うつ病は次の4つに分けることができます。

  • メランコリー型うつ病
  • 非指定型うつ病
  • 季節型うつ病
  • 周産期うつ病

下記ではこれら4つのうつ病について詳しく解説していきます。

メランコリー型うつ病

うつ病における代表的な種類として、メランコリー型が挙げられますが、その意味は「気がふさいでゆううつ」となり、有名なうつ病です。
主な症状は次のとおりです。

  • 抑うつ的な気分となる
  • 興味や喜びの感情を喪失する
  • 体重が変化する
  • 不眠や過眠といった症状が現われる
  • 精神的な焦燥感が出現する
  • 疲労感や気力の減退を感じる
  • 無価値観や強い罪悪感・罪責感がある
  • 思考力や集中力が低下して決断力が低下する
  • 自殺願望が起きる

非指定型うつ病

非定型うつ病は、従来のうつ病と比較すると好きなことや楽しいことに対しては気分がよくなりますが、嫌なことや不都合なことに対してのみうつ病の症状が現れます。20~30代の若い女性を中心として発症者が多いのが特徴です。
主な症状は次のとおりです。

  • ストレスを感じる状況で気分が落ち込んでしまう
  • その反面、遊ぶ時には気分が晴れやかになる
  • 他人を責める感情が発生する
  • 過眠や過食を続ける
  • 身体が鉛になったように重くてぐったりする

季節型うつ病

睡眠障害
季節型うつ病とは、特定の季節になると発症し、その季節が終わる頃に症状が落ち着くうつ病のことです。
季節別にみると冬季での発症が多く、その後春先になると回復する場合が多いようですが、原因はメラトニン不足と考えられています。
メラトニンは日光を浴びると生成されますが、冬は夏に比べると日光時間が少ないため、十分に生成できないのです。
このメラトニンは覚醒と睡眠のリズムを整える役割があるため、不足すると睡眠のリズムが不規則になり、精神的にも不安定となります。
季節型うつ病の主な症状は次のとおりです。

  • 食欲低下と体重減少
  • 不眠
  • 不安感
  • 精神的な不調全般

周産期うつ病

周産期うつ病は、出産後4週間以内に発症するうつ病のことを指します。
この症状については明確な原因は不明ですが、妊娠・出産によるホルモンバランスの崩れや睡眠不足、育児などの不安が関係しているようです。
周産期うつ病の主な症状は次のようになっています。

  • 気分が落ち込む
  • 集中力が落ち、家事や育児に集中できないト
  • 不眠になる
  • 自分の赤ちゃんに対する愛情が沸かない

うつ状態を引き起こす病気

手で顔を覆う女性
うつ病を引き起こす原因や病気は複数あります。
大変大きな出来事があってショックを受けたことがうつ状態を発症する契機となることが多いですが、それ以前に起きた要素が重なることもあるのです。
うつ状態を引き起こす主な病気について解説します。

双極性障害など精神疾患

双極性障害は、気分が高まったり逆に落ち込んだりという、躁状態とうつ状態を繰り返す脳の病気です。
そして、激しい躁状態とうつ状態がみられる「双極I型」と、軽い躁状態とうつ状態を持つ「双極Ⅱ型」に分類されます。
躁状態では、気分の高まりに乗じて他人に話しかけたり、ずっと眠らずに活動したりと、行動が積極的になります。
また、ギャンブルにのめり込んだり高額ローンで買い物をしたり、という行動まで見受けられるのです。
さらに上司と揉めて関係を悪化させ、社会的信用や財産を失うことすらあります。
あまりに活発なので、周囲からも訝られ、距離をとられてしまいます。
一方うつ状態では、一日中憂鬱な気分になり、仮眠や不眠が生じるのです。一日中憂鬱な気分となって眠れず、またその逆に眠りすぎも生じるのです。
これまで没頭していた趣味などにも関心が薄れ、食欲が低下し、億劫で身体が動かせない症状も現われます。
双極性障害に関する研究は進んでおらず、対処法なども明確ではありませんが、珍しい病気ではありません。
20代から30代前後を中心として、男女に関わらず幅広い年代の人が発症する病気です。

脳血管障害など身体疾患

脳血管障害の症状は、手足の麻痺や、[blogcard url=”ろれつが回らなくなるなどが顕著です。
認知症にもつながりますが、それだけではなく、精神症状も出現します。
脳卒中など、脳血管障害後うつ病は英語でPSD(Post-Stroke Depression)と表現されますが、誰でもうつ病になる可能性を抱えています。
脳卒中によって重度の麻痺など重い後遺症が出た場合は、その後にうつ病になりやすい状況です。
また、病気の後に言葉を忘れたり記憶力が悪化したり、計算ができなくなるなどの知的能力障害が現れる場合もあります。
こうした症状は認知機能障害や高次脳機能障害と呼ばれ、病後に知的能力の障害が出た場合にもうつ病になりやすいです。

薬の副作用が原因の場合も

錠剤
通常のさまざまな病気を治療する際に投与される医薬品によって発症する(「薬剤惹起性うつ病」)場合があります。
具体的には、インターフェロン製剤や副腎皮質ステロイド薬などの服用を通じて起こる場合が多いようです。
次の症状が現われた場合には、医師や薬剤師に相談することが重要です。

  • 眠れない状態になった
  • 物事に興味が持てなくなった
  • 不安やイライラが募る
  • さまざまなことが億劫になったト
  • 食欲が減退した
  • 気分が落ち込むようになった

うつ病の診断基準

医師
診断基準の例を挙げていきます。
うつ病の診断基準として、次の症状が現われたら対応が必要となります。
診断基準その1は以下のとおりです。

  • 憂うつを感じ、気分が落ち込む
  • 物事に対する興味や喜びがなくなる

診断基準その2は以下のとおりです。

  • 食欲が減退する
  • 正常に睡眠できない
  • 気分がそわそわし、体が重い
  • 疲れやすいと感じる
  • 自分を責めてしまう(自責の念)
  • 思考力や集中力が低下している
  • 死にたいと考えてしまう

上記の診断基準のうち、1に挙げた症状のうち「どちらか1つ」があり、診断基準2で6~7つの症状が確認される場合は中等症のうつ病です。
また、診断基準のほぼ全部が当てはまると重症診断となりますが、絶対的指標ではなく、あくまでも「目安」と理解してください。
事例を挙げれば、診断基準1と2に当てはまる症状の数が少なくても、「死にたい」と考えてしまう症状が強く出ている場合には、注意が必要です。
なお、家族が本人に受診をすすめても拒否したり、実際に食事や水分を取らないといった、生活上で大きな支障がある場合は深刻にとらえましょう。
緊急性が高く、生命の危険が差し迫っている可能性があるからです。ただちに専門の医師に相談し、診断を仰ぐことが大切です。

うつ病の症状をなくすための治療方法

考える女性
うつ病の治療としては、休養と薬物療法、そして精神療法がありますが、1つの方法に絞るのではなく、すべての療法を組み合わせて対応するのが一般的です。
まず休養ですが、うつ病の治療では大変重要なポイントとなります。
仕事や家事など、普段は自分がやらなければならない項目を可能な限り最小限として、まずは休養を優先しましょう。
次に薬物療法では、担当する医師の判断にしたがって、細かな調整を行いながら対応します。
最初は少量の薬を処方し、徐々に量を増やすなど調整しますが、すぐに効果が期待されるのではなく、副作用も考えられます。
このため、担当医としっかり相談しながら、落ち着いて少しずつ進めていくことが重要です。
そして精神療法では、医師やカウンセラーとの対話を通じて問題解決の道を模索します。
担当医やカウンセラーが相談しやすく、相性がよいかという点も、治療を進めるうえで重要なポイントです。

編集部まとめ

イライラする女性
うつ病の症状や種類、治療方法などについて詳しく解説しましたが、現代においては誰もがかかる可能性がある病気です。

うつ病の症状や治療法をしっかりと理解し、万一発症した場合には、正しい対処法によって早期に回復するよう努めたいものです。

この記事の監修医師