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大腸カメラ前の食事に注意が必要な理由は?前日に食べてはいけないものや注意点も詳しく解説

 公開日:2023/12/25
食事に悩む女性

大腸カメラ大腸内視鏡検査のことをいいます。胃カメラと違って肛門から高性能カメラ付きのスコープを挿入して、肛門・大腸・小腸に異常がないかを調べる検査です。

大腸カメラを受ける際、前日の食事には制限があるのですが、病院で説明してもらっても詳しい献立が分からず困った経験はありませんか。

そもそもなぜ検査の前日に食事制限が必要なのでしょうか。

この記事では大腸内視鏡検査の前日に食事制限が必要な理由と、検査前・検査後の食事における注意点を説明します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

大腸カメラ前の食事に注意が必要な理由

バツマーク
通常、大腸カメラは腸の病気が疑われるときに行います。目的は、大腸がんの病変の発見・潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の発見です。
大腸がんは、がん死亡数で女性第1位・男性第3位となっており早期発見が重要になります。
大腸内視鏡検査は腸の状態を直接観察できたり、必要に応じて腸の粘膜を採取できたりするため病気の発見への1番の近道です。
しかし、検査をされる側の正しい準備が必要になります。正しい準備とは、大腸内視鏡検査を受ける前に腸内を空っぽにすることです。
腸内に食べ物のカスや汚れが残っていると、小さな病変を見逃してしまい正しい検査ができなくなってしまいます。
腸内を空っぽにするために検査前日から下剤を内服しますが、下剤の効果を最大限に引き出すためには腸内環境を整えておかねばなりません。そのため、数日前からの食事が重要になるのです。

大腸カメラ2日~3日前の食事の注意点

サラダを手に持つ女性
わたしたちが食事を口から摂取して、便として排せつされるまでの時間は約24~48時間です。
胃で分解された食べ物は小腸に送られ、小腸は必要な栄養を吸収して、大腸には残ったカスが送られます。大腸は小腸から送られてきたカスから水分・ミネラルを吸収して便を作り出しています。
大腸内視鏡検査で病変の発見率をあげるためには、腸内を綺麗な状態にすることが大切です。そのため、2~3日前から食事に気を付けて便を増やしたり便の固形化を促したりする食べ物は避けなければなりません。
3日前から消化に良い食べ物を摂取して検査日の便の量を減らせるようにすると、当日下剤を内服する際に心の不安も軽減します。
具体的には、玄米・きのこ類・大豆製品・海藻といった食物繊維を多く含む食材や牛乳・揚げ物といった脂質の多い食事です。
また、キウイやイチゴなどの小さな種やゴマ粒があるような食材も大腸に残りやすいため避けましょう。食物繊維は小腸で吸収されることなく大腸に溜まっていくので検査の妨げになります。脂質は水に溶けないため、消化・吸収に至るまで非常に時間がかかります。
これらの食材に注意すれば、他はアルコール・コーヒーといった飲み物に気を付けていただき、食事は普段通りで構いません。
つまり、2~3日前の食事のポイントは消化の良い食事・食物繊維や脂質の少ない食材・種のない食材といえます。

消化に悪い食べ物を食べない

ピザを持つ女性
消化の良い・悪いの判断基準は胃にとどまる時間の長さです。胃は食べ物を分解する器官ですから、胃にとどまる時間が長いほど消化に悪い食べ物といえます。
消化に悪いとは、つまり摂取してから排便までに時間がかかることを意味します。2~3日前に消化に悪い食べ物を摂取すると、検査当日に腸内に残りカスや汚れが溜まりやすいです。
肉類の脂・鶏の皮・バター・乳製品が消化に悪い食べ物にあたります。きのこ類・海藻類・こんにゃくも消化に時間がかかる食材です。
またラーメン・パスタ・寿司・ケーキ・ドーナツもカロリーが高く消化に時間がかかります。
逆に、ご飯・パン・うどんなどの糖質や白身魚は消化に良くおすすめです。消化の良い食事でも食材を小さく切ったり、よく噛んで食べたりするとより消化を良くしてくれます。

食物繊維が多いものを避ける

食物繊維は小腸で吸収されることなく大腸に送られ、便を増やします。便秘時やダイエット時には摂取を推奨されているため、排便を促すために良いのではと思いがちですが消化されないため腸内に残ってしまいます。
消化されない食物繊維が大腸に残っていると正確な検査ができません。
糖質は消化に良いといわれているため、糖質を中心に摂取しようと考えている場合は玄米・胚芽パン・ソバのような食物繊維が多く含まれている食材は控えましょう。

種を含むものを食べない

種を含む食材はスループット食材と呼ばれています。スループット食材とは人間の身体で消化・吸収できず、便としてそのまま排出される食材のことです。
咀嚼が足りないといった理由ではなく、そもそも人間の消化酵素では消化できません。
そのため種を含む食材は腸内に残り検査の妨げになったり、スコープの吸引孔に詰まったりする原因になります。イチゴ・キウイ・スイカ・トマトなど種を含む果物や野菜は食べてはいけません。

アルコールを避ける

アルコールも大腸内視鏡検査前には厳禁となります。アルコールには腸の動きを活発にする作用があるからです。
アルコール自体は胃で20%・小腸で80%吸収されますが、その際消化酵素の働きを阻害してしまいます。
アルコールを大量に摂取した翌日に下痢になった経験はありませんか。消化酵素が十分に働かず、アルコールと一緒に摂取した食べ物が分解されずに大腸に送られるからです。
分解されずに送られてきた食べ物を急いで排出しようと腸の動きが活発になり、分解されずに排出されるため腸内に食べカスが残ります。
また、アルコールには血管を拡張させる作用があり出血のリスクが高まります。検査による出血を避けるためにも、アルコールの摂取は控えましょう。

コーヒーを飲まない

コーヒー
コーヒーに含まれるカフェインには、身体を覚醒させる他にも作用があります。中でも血管拡張作用・胃酸分泌促進作用大腸内視鏡検査に影響を及ぼします。
血管が拡張すると出血のリスクが高まり、胃酸の分泌が増えると腸の活動が活発になるからです。1杯程度でしたら影響はありませんが、カフェインを多量に摂取することは避けましょう。
飲む際の注意点として、ミルクは入れずにブラックコーヒーにしてください。ミルクは腸壁に付着したり、腸内を白く濁らせたりする危険性があります。脂肪分で消化にも悪いため、どうしても飲みたい場合はブラックコーヒーを1杯にとどめることです。
また、胃液や腸液が着色して検査の妨げになる可能性もあるため、飲料はできるだけ無色透明な水・お茶を推奨します。

食べ過ぎないよう食事量を控えめにする

食べ過ぎると胃腸に負担がかかり消化不良を起こします。通常食べ物が胃の中に留まる時間は長くても5~6時間ですが、長時間胃に滞在することがいわゆる胃もたれです。
消化不良のまま十二指腸(小腸)に送り出されては、十二指腸から戻されて胃に溜まっていきます。一気に腸内に送られた食べ物は腸の動きを活発にして便を増やしたり、下痢になったりします。
やはり腸内に食べカスや汚れが残ってしまい検査が正しくできません。検査前は適切な食事量を守りましょう。

大腸カメラ前日に食べてはいけないもの

リンゴとバナナ
前日になると更にしっかりとした食事管理が必要です。消化に悪いもの・脂質が多いもの・食物繊維が多いもの・スループット食材を避けます。
具体的には、ラーメン・そば・加工肉・ハンバーガー・菓子パン・青魚・野菜・海藻などです。ラーメン・ケーキ・ハンバーガーなどは明らかに消化に悪そうなため分かりやすいと思います。
重要な点は、普段健康に良いとされている食物繊維の多い野菜・種を含む果物・ゴマなどを食べないことです。これらは便を増やしたり、腸内に残ったりして検査の妨げになります。
消化の良いおかゆ・白身魚・鶏肉・豆腐・バナナなどを摂取しましょう。

大腸カメラ前日の食事の注意点

レンジを使う女性
たとえ前日に食べても良い食材だけを摂取したとしても、調理方法によっては消化に悪影響があります。
何度もいいますが、腸内に食べ物が残っていたり汚れが付着していたりすると正しい検査ができず、病変の発見が遅れます。前日の食事の注意点として、消化を促すために調理方法が大切です。

よく煮込む

食べ物を食べると、まず口腔内の唾液による消化酵素で分解されて胃に送られます。胃では胃液による消化酵素で分解され、小腸で栄養を吸収した後に大腸へ運ばれて便となって排出されます。
硬い食べ物は、消化するのに多くの消化酵素を必要とし、時間がかかるのがデメリットです。
よく煮込み柔らかい状態にしておくと、消化が早く進むため胃腸の負担が減ります。白米をおかゆにしたり、うどんをくたくたになるまで煮たりするのがおすすめです。

焼く場合は油を少なくする

鶏肉や白身魚の調理は焼くことが多いと思いますが、その際油は最小限にしましょう。
脂質である油は消化に時間がかかり、胃腸の滞在時間が長くなるからです。糖質・たんぱく質の消化時間が約2~5時間に対して、油は10時間程度かかります。
テフロン加工のフライパンを使用したり、オーブン調理を取り入れたりすると、焼く調理方法でも最低限の油でおいしい料理ができます。

揚げ物・炒め物は食べない

油は消化に時間がかかるため、揚げ物・炒め物は食べないようにしてください。
脂肪分は消化の開始も遅く、食後3~4時間後にようやく吸収が始まります。脂肪はまず胆汁によって乳化され、その後消化酵素による分解が始まるため、消化の開始に時間がかかります。
前日の食事時間は、病院によって異なりますが遅くても20時までと決まっており消化に良い食べ物が前提です。消化に時間がかかる揚げ物・炒め物を前日に食べるのはやめましょう。

大腸カメラ当日の食事の注意点

お腹を抑える女性
大腸内視鏡検査の当日は、検査終了まで絶食になります。当日は更に制限が多く辛いですが、正しい検査を行うためには必要です。
では、当日検査が始まるまでの食事について詳しく解説していきます。

検査終了まで食事はできない

先ほど述べたように当日朝から検査終了までは何も食べられません。検査が午後に行われる場合は、昼食もなしになります。基本的には飴やガムも禁止です。
当日は腸をできる限り空っぽにするため、腸洗浄液といわれる下剤を内服します。この下剤を内服すると頻回に排便が起こり、便が水様で薄い色になったら腸管洗浄が完了します。
腸管洗浄をスムーズに行うために、当日は起床時から絶食を守ることが大切です。

水分を多く摂る

水を飲む女性
ひと昔前は大腸内視鏡検査の当日は絶飲食といわれていましたが、現在は水分を積極的に摂ることが推奨されています。下剤を内服して頻回に排便することによる、脱水症状を防ぐためです。
特に当日は絶食のため、身体は食べ物からの水分摂取ができていない状態になっています。1度に多量の水を摂取すると身体に吸収されることなく尿として排出されるため、コップ1杯程度をこまめに飲むことが大切です。

大腸カメラ後の食事の注意点

おかゆ
大腸内視鏡検査は、観察しやすいように大腸内に二酸化炭素を入れて腸を膨らませてから内視鏡を挿入します。
検査食後はお腹が張っているため、苦しくてすぐに食事は摂れません。ガスを出すと少しずつお腹が楽になってきます。
まずは水を飲んで異常がなければ少しずつ食事を再開しましょう。検査準備のための食事制限により、身体は脱水傾向にあるためしっかり水分摂取を行うことも大切です。
また検査時に処置を行ったかどうかで食事の注意点が異なります。大腸の観察のみでしたら水分摂取後に普通の食事に戻しても良いですが、組織を採取したりポリープを切除したりした場合は回復食を摂取します。

組織を採取した当日は消化にいいものを食べる

組織を採取した場合、採取部分から出血することがあります。そのため多少の食事制限が必要です。特に、血行を良くする熱い食べ物・辛い食べ物・アルコールは避けてください。
当日はおかゆ・うどん・スープなどの消化に良い食事を行いましょう。1日経過して出血・腹痛がない場合は翌日から普通の食事に戻しても良いです。
もし、ひどい出血・腹痛がみられる場合は検査をした病院を受診してください。

ポリープを切除した場合は1週間程度腸に負担をかけない

切除したポリープの数・大きさ・深さによって異なりますが、組織の採取と比べて出血のリスクは高く1週間は注意が必要です。そのため大腸の粘膜に負担がかからず、消化の良い食事を行います。
最初は水分程度にとどめ、気分不快・出血等の異常がないかを確認しながら食事を再開していきます。ゼリー・ヨーグルト・具なしスープのような流動食から始め、豆腐・プリン・お粥など少しずつ段階を上げながら固形の食事に戻していきましょう。
コーヒー・アルコールなどの飲料や脂っこい食事・消化に悪い食事は1週間は控えてください。

大腸カメラ前に薬やサプリメントを飲んでも大丈夫?

薬を飲む人
普段飲んでいる薬については必ず医師に確認をしてください。
血液をさらさらにする薬は出血のリスクを高めるため数日前から中止する場合もあります。糖尿病の薬は当日絶食となるため中止だったり、薬の種類が変更されたりします。飲んでも良い薬もあるため、事前に担当医に確認して指示を守ることが大切です。
サプリメントは当日朝はやめておくのが無難です。市販のサプリメントは成分によっては、腸内に残ってしまう場合や下剤の効果を阻害する場合があります。どうしても飲みたいのであれば医師に許可をとりましょう。

編集部まとめ

ご飯を食べる女性
今回は大腸カメラ前後に食事制限が必要な理由について、注意点とともに解説しました。

腸内が空っぽで綺麗な状態であればあるほど検査の精度が高まるため、食べるのが好きな方にとっては辛いですが事前の準備が重要です。

検査前は消化の良い食事を摂取して、正しい検査が行えると異常の早期発見につながります。ご飯をおいしく食べ続けるためにも、40歳を超えたら大腸カメラを1度は受けてみてください。

この記事の監修医師