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大腸カメラで麻酔は使う?使わない?麻酔のメリットデメリットについて解説

 公開日:2024/02/06
鎮静剤を使えば胃カメラは怖くない?

大腸カメラで麻酔を使うかどうかご存じですか?本記事では大腸カメラの麻酔について以下の点を中心にご紹介します。
大腸カメラで使用する麻酔の種類
大腸カメラで麻酔をするメリット・デメリット
大腸カメラの麻酔がおすすめな方
大腸カメラの麻酔について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

松井 信平

監修医師
松井 信平(医師)

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慶應義塾大学医学部卒業、慶應大学関連病院での修練後、慶應大学のスタッフへ就任、2023年4月よりがん研有明病院スタッフ勤務。専門は消化器外科・大腸がん。

そもそも大腸カメラの目的とは?

そもそも大腸カメラの目的とは?
大腸内視鏡検査は、医療専門家が直腸から小腸の一部までを直接視覚化するための診断ツールです。この検査は、内視鏡を肛門から挿入し、大腸内の異常、例えばポリープやがん、炎症などを探すために行われます。大腸の内壁の色や形状の微細な変化を詳細に観察することで、初期のポリープなどの微細な異常を見つけられます。さらに、疑わしい組織を採取し、必要に応じてその場でポリープなどを除去できます。
大腸内視鏡検査によって検出可能な疾患には、大腸がん、大腸ポリープ、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など)、大腸憩室症、虚血性腸炎、感染性腸疾患(カンピロバクター腸炎や腸結核など)などがあります。
大腸内視鏡検査は、肛門を通じて内視鏡を挿入するため、患者さんは挿入時や内視鏡が大腸の内壁に触れる際に痛みを感じる場合があります。また、医師の技術や経験によっても痛みの度合いは変わる場合があります。
大腸内視鏡検査は、大腸の病変を直接確認し、早期に発見し治療を開始するための重要な手段です。しかし、痛みや不快感を伴うため、患者さんにとっては負担となることもあります。そのため、現在では麻酔(鎮静剤)を使用して、患者さんの痛みや不快感を軽減することが一般的になっています。
麻酔は、検査中の痛みや不快感を軽減し、患者さんがリラックスして検査を受けられるようにするためのものです。大腸カメラ検査における麻酔の使用は、患者さんの体調や状況、そして検査の内容によって異なります。そのため、麻酔を使用するかどうかは、医師と患者さんの間で十分なコミュニケーションを取りながら決定されます。
麻酔を使用することで、患者さんは痛みや不快感を感じずに検査を受けられますが、その一方で麻酔には一定のリスクも伴います。例えば、麻酔薬に対するアレルギー反応や、麻酔後の一時的な記憶喪失などがあります。また、麻酔を使用すると、検査後すぐには帰宅できない、車の運転ができないなど、日常生活に一定の制限が生じることもあります。
このように、大腸カメラ検査における麻酔の使用は、そのメリットとデメリットを理解した上で、患者さん自身が選択をすることが重要です。以降の文章では、大腸カメラ検査における麻酔の使用について、そのメリットとデメリット、そして麻酔が特に推奨される患者さんの特徴について詳しく解説します。患者さん自身が状況に合った選択をするための情報を提供します。

大腸カメラで使用する麻酔(鎮静剤)

大腸カメラで使用する麻酔(鎮静剤)
大腸カメラ検査における麻酔の使用について、ドルミカムとプロポフォールの2つの主要な薬剤に焦点を当てて説明します。これらの薬剤は、患者さんの不安や痛みを軽減し、検査をより快適にするために使用されます。

ドルミカム

ドルミカムは、大腸カメラ検査でよく使用される鎮静剤です。この薬剤は、患者さんを眠らせ、不安を和らげる機能があります。また、特筆すべきは健忘の効果に期待できることです。これは、検査中の不快な経験を忘れさせることで、検査が終わった後には、その痛みや不快感を覚えていないことが多いのです。
ただし、ドルミカムにはいくつかのデメリットもあります。その一つが、半減期が長いことです。これは、使用量が多いと、検査後に起き上がるのに時間がかかることを意味します。また、しばらくの間、ふらつきが残る可能性があります。さらに、一度打ち消されても再び鎮静の効果が再燃してしまう可能性があります。

プロポフォール

プロポフォールは、催眠、鎮静、抗不安に役立ちますが、鎮痛は期待できません。そのため、痛みを和らげるような働きかけはドルミカムより弱いと言えます。しかし、吐き気や嘔吐の副作用が少ないというメリットがあります。

プロポフォールのデメリットとしては、注射時に血管痛が生じる場合があります。また、プロポフォールの影響を打ち消す薬(拮抗薬)は存在しません。さらに、大腸カメラ検査での使用は保険適用外となっています。ただし、大腸ポリープの切除などの手術の際には保険適用となります。

ドルミカムとプロポフォールの影響をまとめると、プロポフォールは「すっきりと麻酔が切れる」薬と言えます。自動車運転シミュレーターを使用した研究では、ドルミカムを使用した場合、53%の人が投与後2時間でも注射前の状態に戻らなかったのに対し、プロポフォールを使用した場合、全例が60分で注射前の状態に改善したと報告されています。

ドルミカムとプロポフォールはそれぞれ異なる特性を持っています。患者さんの体質や症状、検査の内容によって、どちらの鎮静剤を使用するかが決まります。医師と十分に話し合い、患者さんに合った選択をすることが重要です。

大腸カメラで麻酔をするメリット

大腸カメラで麻酔をするメリット
大腸カメラ検査は肛門から直接内視鏡を挿入するため、痛みや違和感を伴うことがあります。そのため、麻酔を使用することで、痛みや違和感を軽減できます。

腸内の圧迫感、腹痛を軽減

麻酔を使用することで、患者さんは軽く眠ったような状態で検査を受けられます。これにより、腸内の圧迫感やお腹を突き上げられるような苦痛を軽減し、肛門や腸内の痛みや違和感を感じることなく、検査を受けられます。また、腸内を広げるためにガスを注入する際も、圧迫感などに苦しむ可能性が下がります。また、医師も患者さんの苦痛を減らそうと急ぐことなく、落ち着いて検査ができるため、より詳細な検査ができます。

見逃しのない検査ができる

大腸カメラ検査では、大腸内にポリープ、腫瘍、炎症などの異常がないかを観察することを目的に、大腸内を広げるためにガスを注入します。麻酔を使用すると、患者さんはこのガスの注入による圧迫感を感じにくくなります。また患者さんが痛みで動くことが少なくなるため、医師はより丁寧に検査を行えます。これにより、見逃しのない検査ができます。また、空気や炭素ガスをしっかりと注入できるため、腸のひだの間なども詳細に検査できます。これにより、小さなポリープなどの異常も見逃すことなく発見できます。
以上のように、大腸カメラ検査で麻酔を使用することは、患者さんの不快感を軽減し、より精密に検査できるという大きなメリットがあります。

大腸カメラで麻酔をするデメリット

大腸カメラで麻酔をするデメリット
大腸カメラの麻酔のデメリットについて解説します。

準備がかかる

大腸カメラ検査に麻酔を使用する場合、その準備は少々煩雑となります。麻酔は静脈を通じて行われるため、点滴の設置が必要となります。また、麻酔中は全身のモニタリングも行うため、心拍数や血圧、酸素飽和度などを常にチェックする装置を身につける必要があります。これらの準備は専門的な知識と技術を必要とし、医療スタッフの手間と時間を取るため、麻酔を使用しない場合よりも時間と手間がかかるというデメリットがあります。

すぐに帰宅できない

麻酔を使用した大腸カメラ検査後は、麻酔が切れるまでの時間が必要となります。そのため、検査後すぐに帰宅することは難しいです。麻酔が完全に切れ、体調が安定するまでには約1時間程度の休息が必要とされています。その間は病院で安静に過ごすことが求められます。医療スタッフは患者さんの体調を観察し、麻酔からの回復を確認します。そのため、検査を受ける日は、時間に余裕を持ってスケジュールを組むことが重要です。

車の運転に注意が必要

大腸カメラ検査で麻酔を使用した場合、その日のうちに麻酔の影響が残る可能性があります。そのため、検査後に車やバイクなどの運転をすることは推奨されません。また、細かい作業をすることも難しいとされています。麻酔の影響で、一時的に反応速度や判断力が低下する可能性があります。麻酔の影響が完全になくなるまで、落ち着いた環境で過ごすことが重要です。検査の日は患者さん自身で車を運転することを避け、公共交通機関を利用するか、家族や友人に送迎してもらうことを検討すると良いでしょう。
以上のデメリットを理解した上で、患者さんの状況や体調に合わせて、麻酔を使用するかどうかを検討してください。大腸カメラ検査は重要な健康チェックの一つであり、早期発見・早期治療に繋がる可能性があります。そのため、麻酔の使用によるデメリットを理解し、適切な対策を講じることで、落ち着いて検査を受けられます。

穿孔・穿通合併症の症状が出にくくなる可能性

大腸カメラ検査で麻酔を使用する際、患者さんが痛みを感じにくくなることにより、穿孔(穴が開く)や穿通(穴が開き、他の臓器や腹膜腔に通じる)などの合併症の症状が発現しにくくなる可能性があります。これは、麻酔によって痛みや不快感が鈍化し、異常を早期に察知しづらくなるためです。さらに、麻酔薬の「過鎮静」が起こると、呼吸抑制に至るリスクも存在します。薬剤の使用量は体重に基づいて決定されますが、同じ体重の患者さんでも薬の効き方には個人差があります。また、腹膜炎症状が現れないことで、発見が遅れる可能性もあります。患者さんにとっては、鎮静状態での検査が望ましい場合もありますが、これには相応のリスクが伴うことを理解しておく必要があります。

大腸カメラで麻酔がおすすめな方

大腸カメラで麻酔がおすすめな方
以下に紹介する方々は、麻酔を使用することで大腸カメラ検査をより快適に受けられる可能性があります。

痩せ型の方、女性の方

大腸カメラ検査は、腸を伸ばして行われます。痩せ型の方や女性の方は、骨盤のスペースが狭いため、腸が伸ばされることで痛みを感じやすいとされています。そのため、痩せ型の方や女性の方は、麻酔を使用することで、検査中の痛みや不快感を軽減できます。ただし、麻酔が強すぎると副作用が出る可能性があるため、適切な量を確認することが重要です。

若い方

若い方は、不安から痛みを感じやすい傾向があります。大腸カメラ検査は、体内にカメラを挿入するという特異な経験から、不安を感じる方が多いです。そのため、若い方は特に麻酔を使用することで、検査中の痛みや不安を和らげ、痛みの軽減が期待できます。ただし、麻酔後の運転は避けるべきであり、検査後はしっかりと休息をとることが必要です。

腹部手術既往のある方

大腸カメラ検査において、腹部手術の既往がある方や婦人科疾患の手術を受けた方は特に、鎮静剤の使用をおすすめします。これらの患者さんは、手術後の癒着により腸が固定され、大腸カメラの挿入が困難になりがちです。特に子宮や卵巣の手術を経験した方は、癒着によって腸が引っ張られ、検査時に痛みを感じやすくなることがあります。過去に大腸カメラ検査で強い痛みを経験した方も、鎮静剤の使用により、より快適に検査を受けられます。

検査前に不安が強い方

大腸カメラ検査は、体内にカメラを挿入するという特異な経験から、不安を感じる方が多いです。不安は痛みにつながりやすいといわれています。そのため、検査前に不安が強い方は、麻酔を使用することで、検査中の痛みや不安を和らげられます。ただし、麻酔が強すぎると副作用が出る可能性があるため、適切な量を確認することが重要です。
以上のように、麻酔を使用することで大腸内視鏡検査の痛みを軽減できます。しかし、麻酔の使用には副作用のリスクも伴うため、患者さん自身の体調や状況を考慮して、医師と十分に話し合った上で適切な方法を選択することが重要です。

まとめ

まとめ
ここまで大腸カメラの麻酔についてお伝えしてきました。大腸カメラの麻酔についての要点をまとめると以下の通りです。
大腸カメラの麻酔にはドルミカムとプロポフォールが使用されることが多い
大腸カメラの麻酔のメリットは痛みの軽減、見逃しのない検査ができること。大腸カメラの麻酔のデメリットは麻酔の影響によって準備や検査後の行動に制限がかかること
大腸カメラの際に麻酔が向いている方は、痩せている方、女性、若い方、腹部手術既往のある方、検査に対して不安がある方
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師