子宮頸がんのステージはどのくらい重要? 子宮頸がんのステージと治療法について詳しく解説します!
「子宮がん」は、女性特有のがんの一つとして広く知られています。その中でも、「子宮頸がん(しきゅうけいがん)」は検査によって比較的簡単に発見でき、早期発見できれば治療の成功率が高まると言われています。
子宮頸がんは進行度に応じてステージが定められており、それぞれのステージで症状、治療方法、予後の過ごし方などが異なります。この記事では、それぞれのステージについて詳しく説明すると共に、子宮頸がんの診断を受けた場合に備えて知っておくと役立つ情報を提供します。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
子宮頸がんとは何か?
子宮がんは、胎児を育てる子宮体部に発生する「子宮体がん」と、腟と子宮を繋ぐ部分である子宮頸部に発生する「子宮頸がん」の二つに分類されます。ここでは、子宮頸がんについて詳しく解説します。
子宮頸がんの基本的な知識
子宮頸がんは、子宮の入り口、つまり子宮頸部から発生します。発生部位が子宮の入り口近くであるため、出血といった症状が早期に現れやすいと言われています。婦人科の診察でも観察しやすい、発見されやすい特徴があります。最近では、20代から発症するケースが増えてきています。
早期に発見されれば、比較的治療しやすく、予後も良好ながんです。一方で初期症状がほとんどないため、定期的に検診を受け、早期発見することが極めて重要です。近年では検診を受ける人が増えており、それに伴って早い段階で発見されるケースが増えてきました。
子宮頸がんの主な原因となるのが、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。このウイルスは、性的接触を経て子宮頸部に感染します。HPVは男性も女性も感染しやすい一般的なウイルスで、性交経験のある女性のほとんどが、一生に一度は感染することがあると言われています。
HPVに感染した場合でも、90%の人は免疫の力によりウイルスを自然に排除します。しかし残りの10%の人は、HPV感染が長期化します。これが自然治癒しない一部の人だけが、いわゆる前がん病変である異形成を経て、数年以上の時間をかけて子宮頸がんに進行します。
HPVウイルスとワクチン
上で述べた通り、HPVウイルスは私たちの皮膚や粘膜に普通に存在するウイルスで、いわゆる「イボ」の原因となっています。しかしハイリスクHPVと呼ばれるタイプのウイルスは、子宮頸がんだけでなく肛門がんや腟がんの発症にも関与します。
日本では現在、小学校6年生から高校1年生相当の女子を対象に、HPV感染症を防ぐワクチン(HPVワクチン)の定期接種が行われています。HPVには子宮頸がんを発症しやすい種類(型)があり、HPVワクチンはこれらの特定の型の感染を防ぐことができます。
日本で現在、使用できるワクチンは、防ぐことができるHPVの種類によって、2価ワクチン(サーバリックス)、4価ワクチン(ガーダシル)、9価ワクチン(シルガード9)の3種類となっています。
サーバリックスおよびガーダシルは、特に子宮頸がんを引き起こしやすいとされるHPV16型と18型の感染を防ぎ、子宮頸がんの原因の50~70%を防ぎます。また、ガーダシルはコンジローマを誘発する6型と11型も予防します。シルガード9は、これに加えて、31型、33型、45型、52型、58型の感染も防ぎますので、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぐことができます。
ただしワクチンには、体内のウイルスを除去する効果はありません。したがって、すでにハイリスクHPVに感染している場合は、ワクチンを受けても子宮頸がんになる可能性があります。そのため、性交経験を持つ前にワクチンの接種を受けることが最も効果的であるとされています。
子宮頸がんのステージ分けとその意味
子宮頸がんは、その病状の進行具合(ステージ)により、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期の4つに大きく区分されます。これらの各ステージは、さらに具体的な状況を反映するために細分化されています。例えば、Ⅰ期はⅠA期とⅠB期に分けられ、ⅠA期はさらにⅠA1期とⅠA2期に、ⅠB期はⅠB1期とⅠB2期に分けられています。
子宮頸がんのステージ分けの基準
この病期分類は、がんの大きさや、がん細胞が粘膜内にどれだけ侵入しているかなどに基づいて定義されています。子宮頸がんでは、基本的に手術を行う前に病期が決定されます。手術を受けることによって、その病期が変わることはありません。
子宮頸がんの各ステージの特徴
・Ⅰ期:がんが子宮頸部に限局するもの(体部浸潤の有無は考慮しない)
ⅠA期:病理学的にのみ診断できる浸潤がんのうち、間質浸潤が5mm以下のもの
浸潤がみられる部位の表層上皮の基底膜より計測して5mm以下のものとする。
脈管(静脈またはリンパ管)侵襲があっても進行期は変更しない。
ⅠA1期:間質浸潤の深さが3mm以下のもの
ⅠA2期:間質浸潤の深さが3mmをこえるが、5mm以下のもの
ⅠB期:子宮頸部に限局する浸潤がんのうち、浸潤の深さが5mmをこえるもの(ⅠA期をこえるもの)
ⅠB1期:腫瘍最大径が2cm以下のもの
ⅠB2期:腫瘍最大径が2cmをこえるが、4cm以下のもの
ⅠB3期:腫瘍最大径が4cmをこえるもの
・Ⅱ期:がんが子宮頸部をこえて広がっているが、腟壁下1/3または骨盤壁には達していないもの
ⅡA期:腟壁浸潤が腟壁上2/3に限局していて、子宮傍組織浸潤は認められないもの
ⅡA1期:腫瘍最大径が4cm以下のもの
ⅡA2期:腫瘍最大径が4cmをこえるもの
ⅡB期:子宮傍組織浸潤が認められるが、骨盤壁までは達しないもの
・Ⅲ期:がん浸潤が腟壁下1/3まで達するもの
ならびに/あるいは骨盤壁にまで達するもの
ならびに/あるいは水腎症や無機能腎の原因となっているもの
ならびに/あるいは骨盤リンパ節
ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの
ⅢA期:がんは腟壁下1/3に達するが、骨盤壁までは達していないもの
ⅢB期:子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまで達しているもの
ならびに/あるいは明らかな水腎症や無機能腎が認められるもの
(がん浸潤以外の原因による場合を除く)
ⅢC期:骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの
ⅢC1期:骨盤リンパ節にのみ転移が認められるもの
ⅢC2期:傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの
・Ⅳ期:がんが膀胱粘膜または直腸粘膜に浸潤するか、小骨盤腔をこえて広がるもの
ⅣA期:膀胱粘膜または直腸粘膜への浸潤があるもの
ⅣB期:小骨盤腔をこえて広がるもの
※引用:「子宮頸がん進行期分類(日産婦 2020,FIGO 2018)」
子宮頸がんのステージごとの治療法
子宮頸がんの治療法は、ステージごとに異なります。これから各ステージごとの主な治療法を紹介します。
ステージごとの治療法
・ⅠA1期の治療
脈管侵襲が陽性の場合、子宮摘出(単純あるいは広汎子宮全摘術)と骨盤リンパ節の摘出を行います。陰性の場合は、さらに二つのケースに分けられます。子宮頸部円錐切除術の結果、切り口のがん細胞が陽性であれば単純子宮全摘出術を、陰性であれば単純子宮全摘出術、または妊娠を希望する場合は子宮摘出せずに厳重管理を、という方法が取られます。
・ⅠA2期の治療
脈管侵襲が陽性の場合、広汎子宮全摘術が行われます。陰性の場合は準広汎子宮全摘術(単純と広汎の中間)が適応されます。
・ⅠB期の治療
Ⅰ期、Ⅱ期ともに、広汎子宮全摘出(子宮周囲を広く切除する手術)が適用されます。手術の代わりに放射線治療(Ⅰ期のみ)、または同時化学放射線療法が選択可能です。再発リスクに応じて、術後に追加の治療(主に同時化学放射線療法)が行われます。
・Ⅱ期の治療
広汎子宮全摘出が適用されます。放射線治療(ⅡA1期のみ)、または同時化学放射線療法が選択可能です。再発リスクに応じて、術後に追加の治療(主に同時化学放射線療法)が行われます。
・Ⅲ期の治療
手術はせず、根治を目指して同時化学放射線療法を行います。
・Ⅳ期の治療
ⅣA期では根治を目指した同時化学放射線療法が行われ、ⅣB期では症状緩和を目的とした化学療法が行われます。
子宮頸がんのステージごとの日常生活への影響
子宮頸がんの診断を受けた場合、そのステージによって日常生活への影響は変わります。通院や検査、さらには仕事や家族生活に至るまでの影響を考慮しながら、適切なケアを受けることが大切です。
ステージごとの日常生活への影響
治療や手術後も、定期的な通院と検査が必要です。そのため、すぐにもとの生活に戻る、というわけにはいきません。
検査の頻度は、がんの進行度や治療法によります。治療終了から2年までは3〜6カ月ごと、その後5年までは6〜12カ月ごとの経過観察が勧められています。
経過観察では、問診、腟鏡診、内診・直腸診などを行います。再発が疑われる場合には、CT検査、PET検査、MRI検査、超音波(エコー)検査などの精密検査が行われます。その他、必要と判断された場合には腫瘍マーカー検査や細胞診が行われます。
子宮頸がんが再発した場合の典型的な症状としては、骨盤内や腰から背中にかけての痛み、下肢の痛み、不正出血やおりものの増加、下肢のむくみなどがあります。気になる症状がある場合は、定期的な経過観察のタイミングを待たずに、早めに受診しましょう。
・会社や家族としっかり話し合いを
がんと診断されても日常生活は続きます。仕事や家事、育児の調整が必要となるため、しっかりと周囲の人と話し合いを行うことが大切です。
がん患者のなかには、職場に対して「迷惑をかけてしまうのでは」と必要以上に不安に駆られる人も多いです。また職場の人や家族が気を遣って、なかなか本音を話し合えないということもあるでしょう。
しかし自己判断せずに、職場側としても相談を受ければ、支援策を提案できるかもしれません。また、身近な人への相談を通じて、他の支援窓口を紹介してもらうことも可能です。家族も、患者さんの希望を理解することで、適切なサポートを提供しやすくなります。
子宮頸がんのステージごとの予後と生活の変化
治療・手術後には、それらが原因で身体に不調、トラブルが起こることがあります。その点に留意し、日ごろから健康管理に気をつけ、定期的に病院で検査してもらうことをおすすめします。
ステージごとの予後
・手術後の状況
ステージⅠからⅡまでの初期段階では、多くの場合、子宮を摘出する手術が行われます。手術の後遺症として、リンパ浮腫、排尿障害、便秘などが発生する可能性があります。
リンパ浮腫は、リンパ節を除去した場合に生じる可能性がある症状です。リンパ液の流れる経路であるリンパ節とリンパ管を除去することで、リンパ液の通り道が少なくなり、足や下腹部がむくみやすくなるのが特徴です。現在、リンパ浮腫の確実な予防法は存在しませんが、スキンケアや体重管理を継続的に行うことが予防に有効とされています。自分でマッサージなどのケア方法を学ぶことが重要です。
また、閉経前に卵巣を両側切除したり、放射線治療によって卵巣の機能が失われたりすると、女性ホルモンが減少し、更年期障害と同じような症状が現れることがあります。これを卵巣欠落症状と呼びます。主な症状には、ほてり、発汗、食欲減退、倦怠感、イライラ、頭痛、肩こり、動悸、不眠、腟からの分泌液の減少、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、高脂血症(脂質異常症)などが挙げられます。
・放射線治療後の状況
放射線治療を受けた後、数ヶ月から数年の間に合併症が発生することがあります。これを晩期合併症といいます。晩期合併症としては、消化管からの出血、閉塞、穿孔(穴が開くこと)、直腸腟ろう(直腸と腟がつながり、腟から便が漏れる症状)などがあります。
また尿路障害としては、出血、感染、膀胱尿管腟ろう(膀胱や尿管と腟がつながり、腟から尿が漏れる症状)などが起こることがあります。その他、腟が狭くなったり、腟壁同士がくっついたりすることもあります。
生活の質の維持と改善のためにできること
体調を保つためには規則正しい生活が必要です。そのために、禁煙、適度な飲酒、バランスの良い食事、適切な運動などを習慣にすることが推奨されています。
・食事
とくに、食事に関する制限は設けられていません。栄養バランスを考慮しつつ、食事を楽しむことが大切です。ただし開腹手術や放射線治療を受けた人は、治療後に腸閉塞を発症する場合があるため、食物繊維が多い食べ物や消化しにくい食べ物を控えるよう推奨されています。
・運動
退院直後は体力が低下しているため、無理せず、疲れたらすぐに休む、足を高くして休むなどを心がけましょう。体力の回復に合わせて散歩などから始め、少しずつ運動量を増やしていくことが望ましいでしょう。
子宮頸がんのステージごとのサポートとケア
子宮頸がんをはじめとする病気を乗り越えるためには、周囲の多くの人々によるサポートやケアが必要です。
医療チームによるサポート
まず、医師や看護師などで編成される医療チームのサポートが欠かせません。
緩和ケアとは、がんと診断された時からQOLを維持するために、がんによる体と心のさまざまな苦痛を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。がんが進行してからだけでなく、がんの診断時から必要に応じて行われ、希望に応じて幅広く対応します。
患者さんを中心としたケアスタッフ(家族・医療者)間のコミュニケーションを充実させ、一つのチームとして対応することが、患者さんや家族へのより良いケアにつながるとされています。
このケアでは、何より患者さんの希望が重視されます。そのため、自分がどのような人生を望み、どんなサポートが欲しいかをじっくりと話し合う必要があります。医療チームはこれを基に治療方針を決めるため、遠慮せずに希望を伝えることが大切です。
家族や友人からのサポート
がんはすぐに治る病気ではなく、長い時間をかけて付き合っていくものです。その過程で、家族や友人など身近な人からのサポートが重要になります。
患者さんがそれまで家事を主に担っていた場合、家族がその役割を担う必要があります。また、体力回復のためには栄養バランスの取れた食事が重要なので、その点についてのサポートも大切です。
また、がんの治療や療養中は、気分が落ち込むこともあります。そんな時は、気分を変えてくれる相手が必要です。人と話すだけで気持ちが軽くなることもあります。何もできないと考えず、話し相手になるだけでもサポートになるととらえてみましょう。
・サポート者自身のケアも重要
介護疲れという言葉があるように、ケアが必要なのはサポートを受ける患者さんだけではありません。サポートする側にも必要です。サポート者自身の心情や体力を無視しないことも、長期間のケアには不可欠です。
地域やオンラインコミュニティからのサポート
医療スタッフや身近な人以外にも、がん患者をサポートする人たちは存在します。その一例として、地域のつながりやオンラインコミュニティがあります。がん患者が中心となったコミュニティに参加することで、多くの知識や心の支えを得ることができるでしょう。
パートナーや子どもなど、身近な人には言いづらい悩みや相談があるかもしれません。そのような相談も、コミュニティという場では対話の相手が見つかる可能性があります。一人で悩みを抱え込むのではなく、上手にストレスを発散する場を見つけましょう。
また、どんなに理解しようとする人がいても、同じような病気を抱える患者同士でしか共有できない悩みがあります。そういった問題も、がん患者が集まるコミュニティでは話しやすいでしょう。
まとめ
子宮頸がんは、女性であれば誰しもがなる可能性のある病気です。病状の進行に伴ってステージⅠからⅣまで分けられ、ステージⅠの早期段階で発見されれば、治る可能性が高いとされています。しかし、ステージが進行するにつれて治療の成功率は低下します。さらに初期症状がほとんど現れないため、定期的な検診を受けることが非常に重要となります。
たとえがんと診断されても、その後もずっと生活は続きます。治療方法や手術後の生活については、医師や看護師、家族、職場の人、友人など周囲の人とよく話し合いながら、納得のいくケアを続けていくのが良いでしょう。