子宮頸がんの初期症状は?進行した子宮頸がんの症状や診断・治療方法・再発したときの症状も解説
子宮がんには、子宮頸部にできる子宮頸がんと子宮体部にできる子宮体がんがあります。
子宮体がんは閉経後の50~60代の女性に多いのに対し、子宮頸がんは20~40代で発症しやすいのが特徴です。
こちらでは、若い世代にも注意が必要な子宮頸がんについて解説していきます。
子宮頸がんの初期症状・進行した場合に出る症状・治療方法などについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
子宮頸がんの初期症状
多くの子宮頸がんは、がんの前段階である子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)や上皮内腺がん(AIS)を経て発症します。
この段階では、一般的におりものの異常・出血・腹痛などの自覚症状はほとんどないといわれています。
症状が出た時にはすでに進行してしまっているケースが多いため、自覚症状がなくても子宮頸がん検診を定期的に受けて早期発見を心がけましょう。
子宮頸がん予防のワクチンを打っていれば発症することはないと思っている方もいるでしょう。
しかし、ワクチンの効果は子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)のうち一部のウイルスの予防にとどまります。
すべてのHPVを予防できるわけではないため、ワクチンを打っている方も定期的に子宮頸がん検診を受けましょう。
検診の結果、がんの前段階である異形成と判断される場合もあるでしょう。異形成には軽度・中等度・高度の3段階があります。
軽度の場合は自然治癒することもありますが、進行するケースもあるため定期的に経過観察を受けることが大事です。
進行した子宮頸がんの症状
初期段階ではほとんど自覚症状がみられない子宮頸がんですが、進行するとさまざまな症状が現れます。
以下のような症状が現れた場合には注意が必要です。
- おりものの異常
- 不正出血
- 経血量の増加
- 性交痛
- 下腹部の痛み
一つずつ詳しくみていきましょう。
おりものの異常
子宮頸がんが進行すると、においを伴う濃い茶色のおりもの・膿のようなおりもの・水っぽいおりものなどがみられることがあります。
おりものの様子が明らかにいつもと違う場合は、子宮頸がんの症状である可能性もあるため注意が必要です。
不正出血
子宮頸がんが進行すると、月経時以外にも出血が起こることがあります。
また、すでに閉経している女性の場合にも、子宮頸がんの症状として出血がみられるケースがあるでしょう。
不正出血が気になる場合には、婦人科を受診しましょう。
経血量の増加
子宮頸がんが進行すると、経血の量が増加したり月経期間が長くなったりすることがあります。
経血の量が増える病気は子宮頸がんのほかにも子宮筋腫や子宮腺筋症などが考えられますが、経血量の増加のほかにも子宮頸がん特有の症状がみられる場合は注意が必要です。
子宮頸がんの可能性を考えて婦人科を受診することをおすすめします。
性交痛
子宮頸がんの初期には、通常は性交痛が起こることはないとされています。しかしがんが進行してくると、性交時に痛みや出血などが起こることがあります。
ただし、性交痛は子宮筋腫・子宮内膜症・女性ホルモン(エストロゲン)の低下など、子宮頸がん以外の原因で起こることも考えられます。
出血がある場合やほかの子宮頸がん特有の症状もみられる場合には、子宮頸がんを疑う必要があるでしょう。
下腹部の痛み
通常、子宮頸がんの初期には下腹部などに痛みを感じるケースはほとんどないといわれています。
子宮頸がんが進行して膣や骨盤壁まで広がると、下腹部痛や腰痛などが起こることがあります。
激しい痛みがある場合にはがんがかなり進行した状態だと考えられるため、すぐに婦人科を受診しましょう。
子宮頸がんの原因
子宮頸がんのほとんどは、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスへの感染が原因で発症します。
HPVには約100種類あり、その中でもハイリスク型と呼ばれるタイプのものが子宮頸がんを引き起こすとされているのです。
HPVは性的接触が原因で女性にも男性にも感染します。性的接触のある女性の過半数が一度は感染することがあるとされる、ありふれたウイルスなのです。
HPVに感染しても9割程度の人は免疫のはたらきなどによって自然にウイルスが消失しますが、1割程度の人はHPVウイルスが排除されず感染が持続してしまいます。
自然治癒しなかった場合には感染が持続して異形成と呼ばれるがんの前段階を経て、子宮頸がんに進行します。
子宮頸がんの進行は、がんの前段階である異形成・表面にがんがある状態の上皮内がん・周辺組織に入り込む浸潤がんという過程をたどるのが一般的です。
子宮頸がんはⅠ期からⅣ期に分類され、Ⅳ期まで進行すると膀胱や直腸の粘膜への浸潤や、離れた臓器への転移を起こします。
がんが子宮の外へ広がると、骨盤痛や腰痛・下肢のむくみ・血便や血尿など、子宮以外の部位にも症状が出ることがあるため、早めに婦人科を受診しましょう。
子宮頸がんの診断
子宮頸がんの診断を行う前に行われるのが、子宮の細胞を採取して調べる細胞診です。
子宮の入り口の細胞を綿棒やブラシのようなものでこすり取って、異常な細胞がないかどうかを顕微鏡で調べる検査です。この細胞診は、一般的に子宮頸がん検診と呼ばれます。
細胞診を行った結果、子宮頸がんの疑い(SCCまたはAGC)と判定されれば、さらに詳しく調べる必要があります。病理組織検査や画像検査をもって確定診断となります。
子宮頸がん検診は20歳以上の女性が対象で、2年に1回受けることが推奨されているため、自覚症状がなくても早期発見のために受診しましょう。
子宮頸がんの診断を行うための検査にはどのようなものがあるのか、詳しくみていきましょう。
病理組織検査
細胞診を行った結果、がんの疑いがある場合にはコルポスコピー(腟拡大鏡診)が行われます。
これは、子宮頚部から採取した組織を顕微鏡で調べる病理組織検査です。この検査により、上皮内がんか浸潤がんかといった診断が行われます。
病理組織検査の結果、浸潤がんが疑われる場合には、画像診断などを行いがんの広がり具合と他臓器やリンパ節への転移がないかどうかを検査します。
画像検査
子宮頸がんの画像診断では、超音波検査・CT検査・MRI検査・PET検査などが行われます。
超音波検査では、膣の中やお腹の上から超音波を当ててほかの臓器やリンパ節などへの転移がないかどうか調べます。
また、CT検査やMRI検査は、身体の内部を断面にして調べる検査です。TC検査ではX線、MRI検査では磁場を用います。
子宮頸がんの広がりやほかの臓器への転移の有無などを調べます。造影剤を用いると、より詳細に調べることが可能です。
超音波検査・CT検査・MRI検査で診断がつかなかった場合には、ブドウ糖液を注射してがん細胞へ取り込まれるブドウ糖の分布を調べるPET検査が行われることもあります。
子宮頸がんの症状をなくす治療方法
子宮頸がんの治療を行う際には、がんの病期(ステージ)・性質・患者さんの体の状態などを考慮して方法を選択します。
さらに、患者さんの年齢によっては治療後の妊娠希望の有無なども考慮する必要があるため、事前に主治医と治療方針についてよく話し合うことが大事です。
子宮頸がんの病期は以下のとおりです。
- Ⅰ期:がんが子宮頚部にとどまっている
- Ⅱ期:子宮頚部を超えて広がるが、膣壁下1/3または骨盤壁には達していない
- Ⅲ期:浸潤が膣壁下1/3まで達するならびに、または骨盤壁に達しているならびに、または水腎症や無機能腎となっているならびに、または骨盤リンパ節ならびに、または傍大動脈リンパ節に転移が認められる
- Ⅳ期:がんが膀胱粘膜または直腸粘膜に達するか、小骨盤控を超えて広がっている
Ⅰ期からⅣ期のステージは腫瘍の大きさやがんの広がり具合などによってさらに細かく分類され、ローマ字や数字を用いて表されます。
さらに、治療を行うにあたっては子宮がんの組織型も重要です。主な組織型には扁平(へんぺい)上皮がんや腺がんがあります。
子宮頸がんの治療には以下のような方法があります。
- 手術療法
- 放射線療法
- 化学療法
それぞれについて詳しくみていきましょう。
手術療法
がんになる前の段階からⅡ期B(子宮傍組織浸潤はあるが骨盤壁までには達していないもの)では、手術療法が行われるのが一般的です。
がんの進行具合によって、子宮を温存するか摘出するかが変わってきます。
前がん病変・上皮内がん・微小浸潤がんで治療後に妊娠を望む場合には、子宮の入り口の付近を部分的に切除する子宮頸部円錐切除術を行い、子宮を温存するのが一般的です。
子宮を残すことを希望しない場合やがんの広がり具合によっては、単純子宮全摘出術が行われます。
Ⅰ期A2(間質浸潤の深さが3mm超5mm以下のもの)からⅡ期B(子宮傍組織浸潤はあるが骨盤壁までには達していないもの)の進行期では、子宮頸がんの根治手術である広汎子宮全摘術が行われるのが一般的です。
がんの進行具合や妊娠希望の有無によっては、准広汎子宮全摘術や広汎子宮頸部切除術が選択されることもあります。
単純子宮全摘出術は、周りの組織を取らずに子宮のみを切除する手術です。開腹手術・膣式手術・腹腔鏡手術のいずれかの方法で行われます。
准広汎子宮全摘術は、子宮を支えている基靭帯などの組織や膣の一部を切除する手術です。膀胱の神経の大部分が温存され、排尿困難が起こりにくいとされています。
広汎子宮全摘術は、子宮とともに周りの組織も大きく切除する手術です。リンパ節郭清も行い、骨盤内のリンパ節も一緒に切除します。
がんを完全に切除できる可能性は高くなるものの、排尿トラブル・リンパ浮腫・性生活への影響が起こることがある点を理解しておきましょう。
放射線療法
Ⅲ期やⅣ期では基本的に手術療法は行われず、放射線療法や化学療法を行うのが一般的です。また、Ⅰ期やⅡ期でも必要に応じて放射線療法が行われるケースもあります。
放射線療法は、高エネルギーのX線やガンマ線などをがんに照射して行う治療方法です。
子宮頸がんの場合には、骨盤の外から照射する外部照射・直接子宮頚部にあるがんに照射する控内照射・がんやその周辺の組織に放射線を出す物質を直接挿して行う組織内照射があります。
放射線療法は単独で行われる場合と、化学療法と放射線療法を組み合わせて行う化学放射線療法があり、がんの進行度合いなどによって治療方針が決まります。
化学療法
化学療法は、抗がん剤を用いてがんを治療する方法です。遠隔転移したがんや再発したがんなどに対して行われます。
子宮頸がんの治療で用いられるのは、細胞の増殖の一部を阻害してがん細胞を攻撃する細胞障害性抗がん薬や、がん細胞の増殖に関わるたんぱく質を攻撃する分子標的薬です。
細胞障害性抗がん薬の副作用には、吐き気・脱毛・白血球減少・末梢神経障害などがありますが、用いられる薬によっても差があります。
一方、分子標的薬の副作用は消化管に穴があく・血栓・高血圧・出血・傷が治りにくい、タンパク尿などです。
副作用の程度によっては治療の継続が困難になるケースもあるため、ご自分が受ける化学療法の副作用について事前に確認しておくことも大事でしょう。
子宮頸がんが再発したときの症状
子宮頸がんの治療が完了しても、心配なのが再発ではないでしょうか。がんの再発とは、治療によってなくなったがんが再び現れることを指します。
再発はもともとがんがあった場所やその周辺に起こるだけではなく、別の臓器に転移したがんがみつかるケースもあるため注意が必要です。
再発の可能性は、治療前の子宮頸がんの進行度合いによっても変わってきます。進行度合いが高い程、再発の可能性も高くなるといわれているため注意しましょう。
子宮頸がんの治療後は、再発のリスクなどに応じて経過観察が行われます。治療終了から2年までは、3~6ヵ月ごとに行われるのが一般的です。
さらに、手術後5年くらいまでは6~12ヵ月ごとに経過観察を行うのが望ましいとされています。
子宮頸がんが再発した場合には、以下のような症状が現れることがあります。体調の異変に注意し、再発を見逃さないようにしましょう。
- おりものの増加
- 骨盤・背中の痛み
- 下肢のむくみ
それぞれについて詳しく解説していきます。
おりものの増加
子宮頸がんが再発すると、おりものが増えることがあります。
おりものの増加は膣炎・免疫力の低下・排卵期・感染症などによって起こることもありますが、子宮頸がんの治療を行った後のおりものの増加には注意が必要です。
また、閉経後にはおりものがみられないのが一般的です。子宮頸がん治療後の方で閉経後におりものがみられる場合には主治医に相談するのがよいでしょう。
骨盤・背中の痛み
骨盤内・腰・背中の痛みは、子宮頸がんが再発した場合によくみられる症状の一つです。
前日に無理な運動を行ったなど特に思い当たることがなく、ほかにも子宮頸がんが再発した場合にみられる症状がある場合には注意が必要です。
早めに主治医に相談しましょう。
下肢のむくみ
子宮頸がんが再発した時に、下肢のむくみや痛みが現れることがあります。
むくみは立ちっぱなしや座りっぱなしなどによる足の静脈の血行不良によって現れることが多い症状です。また、心臓や腎臓などの病気が原因で現れることもあります。
子宮頸がん治療後の方で、特に思い当たる点がないのに下肢のむくみがひどいという場合には注意しましょう。
気になる場合は、次の検診日を待たずに早めに受診することをおすすめします。
子宮頸がんの早期発見には症状を知ることが大切
子宮頸がんの初期には、基本的に自覚症状が現れません。症状が出た時にはある程度病気が進行していると思う必要があるでしょう。
子宮頸がんが進行した場合に現れることが多いおりものの異常・不正出血・経血量の増加・性交痛・性交時の出血・下腹部の痛みなどが現れた場合には注意が必要です。
子宮頸がんで現れる症状をあらかじめ知っておき、早めに対処しましょう。また、子宮頸がん治療後の方は再発によって現れることが多い症状も知っておくことが大事です。
おりものの増加・骨盤や背中の痛み・下肢のむくみなどがみられたら、早めに主治医に相談してください。
編集部まとめ
子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)はありふれたウイルスで、性的接触の経験がある女性の過半数が、一生のうちに一度は感染するといわれています。
子宮頸がんは初期症状がほとんど現れないといわれているため、早期発見するためには検査が欠かせません。気になる症状がなくても、2年に1回は子宮頸がん検診(細胞診)を受けましょう。
子宮頸がんは20代の若い世代で見つかるケースも多いため、若い方も積極的に子宮頸がん検診を受けることをおすすめします。
参考文献
- 子宮頸がんについて|国立研究開発法人国立がん研究センター
- 子宮頸がん|社会福祉法人 恩賜財団 済生会
- 子宮頸部異形成について|東邦大学医療センター 大橋病院 産婦人科
- 性交痛があります。どうしたらいいですか|公益社団法人 日本産婦人科医会
- 子宮頸がん|産婦人科|新百合ヶ丘総合病院|南東北グループ 医療法人社団 三成会 新百合ヶ丘総合病院
- 子宮頸がん|公益社団法人 日本産科婦人科学会
- 子宮がん末期|公益財団法人長寿科学振興財団
- 子宮内膜症|社会福祉法人 恩賜財団 済生会
- 子宮頸がん 治療|国立研究開発法人国立がん研究センター
- 子宮頸がん 療養|国立研究開発法人国立がん研究センター
- 放っておけない場合も-女性のおりもの-
- 子宮筋腫|社会福祉法人 恩賜財団 済生会
- 子宮腺筋症|一般社団法人 日本内分泌学会
- むくみ|社会福祉法人 恩賜財団 済生会