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大腸カメラは鎮静剤を使えば辛くない?鎮静剤の仕組みや効果について解説

 公開日:2024/02/06
大腸カメラ 鎮静剤

大腸カメラは辛いというイメージがある方も多いのではないでしょうか。
本記事では大腸カメラで鎮静剤を使うことについて以下の点を中心にご紹介します。
大腸カメラの際の鎮静剤のメリットとデメリット
大腸カメラで鎮静剤を使った方がいい人
大腸カメラの際の鎮静剤の使用方法と費用
大腸カメラの際に鎮静剤を使うことについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

大腸カメラってなに?

大腸カメラってなに?
大腸カメラ」は、大腸の内部を観察する検査であり、別名「下部消化管内視鏡」とも呼ばれます。
大腸カメラでは下剤を飲んで腸内を清潔にし、その後、細いカメラを肛門から挿入して大腸の内部を観察します。
大腸カメラによって直接大腸を視覚的に確認できるため、腹痛、下痢、便秘、血便などの症状の原因となる疾患を見つけられます。
また、ポリープやがんが発見された場合には、生検や切除できます。
そのため、病気の診断や治療に非常におすすめな検査法とされています。
検査中はカメラを肛門から挿入し、大腸の最深部まで進めながら観察します。
この過程は通常1〜3分程度かかり、カメラを抜きながら全体の大腸を観察します(抜くのには5〜10分程度かかります)。
ポリープやがんが発見された場合は、詳細に観察し、生検をし、切除が可能な病変は即座に切除することがあります。
大腸カメラは無理に押し込んだりすると痛みを感じる可能性がある検査なので、鎮静剤を使用することがあります。

大腸カメラの鎮静剤のメリットとデメリット

大腸カメラの鎮静剤のメリットとデメリット
大腸カメラで鎮静剤を使うとどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
以下に解説します。

メリット

大腸内視鏡検査では、内視鏡を挿入する際に大腸を伸ばし、内部を視覚的に確認するために空気(または炭酸ガス)を少量注入することがあります。
しかし、過度に注入するとお腹が膨らんだり、痛みを感じることがあります。
そのような場合には、鎮静薬を注射して意識を低下させ、緊張を和らげることで苦痛を軽減します。
通常、患者さんの反応に応じて適切な量の鎮静薬を投与し、検査します(意識下鎮静)。
ただし、この内容は医師の判断に基づきます。
患者さんの快適さと安全性を確保するために、適切な鎮静方法が選択されます。
以下メリットとなります。
大腸検査における鎮静剤の使用は、患者の苦痛を軽減し、検査のストレスを和らげる重要な手段です。
以下に、そのメリットについて詳しく説明します。
苦痛の軽減: 大腸検査は、内視鏡を挿入し、大腸を伸ばしたり、大腸の中を広げて視察するため、お腹がはったり、痛みを感じることがあります。
鎮静剤を使用することで、患者の意識を低下させ、緊張を和らげ、これらの苦痛を軽減することができます。
検査のストレスの軽減: 鎮静剤は、検査の不安やストレスを和らげる効果もあります。
これにより、患者は検査をより穏やかな心情で受けることができます。
検査の受けやすさ: 鎮静剤の使用により、検査による苦痛や不快感が軽減されるため、患者は検査を繰り返し受けやすくなります。
これは、特に定期的な検査が必要な患者にとっては大きなメリットとなります。

デメリット

大腸カメラでは、血圧の低下や呼吸の弱化が起こる可能性があるので、検査中および検査後は意識が完全に回復するまでモニターで監視します。
検査終了後も薬の影響が続くため、しばらくは休息が必要です。
また、鎮静薬を使用する場合は、検査後の当日は自動車、バイク、自転車の運転を避けるようにします。
安全のためには必要な措置です。
以下デメリットです。
意識の低下: 鎮静剤は患者の意識をぼんやりさせる効果があります。
これにより、患者は検査中の不快感を感じにくくなりますが、一方で意識がなくなる可能性もあります。
体調変化: 鎮静剤の使用により、血圧が下がったり、呼吸が弱くなることがあります。
これらの症状は一時的なものであることがほとんどですが、検査中と検査後もモニタリングが必要となります。
休息時間の必要性:鎮静剤の効果が完全に切れるまで、患者はしばらく休む必要があります。
これは検査の所要時間を延ばすことにつながります。
運転制限:鎮静剤の影響で反応速度や判断力が低下するため、検査後その日は自動車やバイク、自転車の運転を控える必要があります。

大腸カメラで鎮静剤を使った方がいい人

大腸カメラで鎮静剤を使った方がいい人
では、大腸カメラで鎮静剤を使った方がいい人はどんな人でしょうか。
解説していきます。

女性

女性の場合、大腸カメラでは腸を伸ばすための骨盤のスペースが狭くなるため、一般的に痛みを感じやすい傾向があります。

40歳以下

大腸カメラにおいて、40歳以下の若い人は、不安からくる痛みを感じやすい傾向があると考えられます。

痩せ型の人

女性の場合と同じように、性別問わず痩せている人は腸を伸ばすための骨盤のスペースが狭くなるため、痛みを感じやすい傾向があります。

婦人科疾患術後の人

婦人科疾患の手術後、特に子宮や卵巣などの疾患の場合、癒着が起こりやすい傾向があります。
癒着によって腸が固定されることで、腸の引っ張りによる痛みを感じやすい可能性があります。

検査に対して不安の強い人

検査前に強い不安を抱える人は、その不安が痛みに影響を与えやすいとされています。

鎮静剤の使用方法

鎮静剤の使用方法
鎮静剤を腕の血管(静脈)に注射して患者さんを眠らせます。
この際にプラスチック製の筒であるサーフローを静脈に留置し、麻酔剤を注入します。
サーフローの留置は通常の採血に使用される針よりも太いため、少し痛みを感じることがあります。
大腸カメラ中は麻酔の深度を調整しながら進められます。
大腸カメラ前には患者さんの情報やアレルギーの有無を確認し、問題がないことを確認します。
鎮静剤の使用には副作用があり、呼吸抑制や血圧低下を引き起こすことがあります。
そのため、患者さんには生体モニターが装着され、酸素飽和度(SpO2)と血圧が適切かどうか確認されます。
大腸カメラの検査中もモニターで状態を監視し、適切な麻酔が行われていることを確認します。
検査時には酸素飽和度(SpO2)と血圧を適宜測定し、最低でも医療スタッフが2名以上で管理することが望ましいとされています。
患者さんの安全を確保しつつ検査を進めることが重要です。

鎮静剤について

鎮静剤について
ジアゼパム:この薬剤は催眠作用、鎮静作用、抗不安作用、健忘作用、抗痙攣作用、筋弛緩作用を持っています。
しかし、副作用として徐脈、低血圧、呼吸抑制、運動失調、薬疹、血栓性静脈炎、口渇、血管痛などがあります。
ミダゾラム: この薬剤も催眠作用、鎮静作用、抗不安作用、健忘作用、抗痙攣作用、筋弛緩作用を持っています。
副作用としては嘔気、嘔吐、呼吸異常(一過性無呼吸、舌根沈下による呼吸抑制)、血圧低下、心室性頻拍、アナフィラキシーショックなどがあります。
フルニトラゼパム:抗不安作用、抗痙攣作用、筋弛緩作用、鎮静作用、催眠作用を持っています。
副作用としては呼吸抑制、依存性、過鎮静、興奮、前行性健忘、眠気、注意力・集中力・反射運動神経の低下、血管痛などがあります。
デクスメデトミジン塩酸塩: 鎮静作用、鎮痛作用、交感神経抑制があります。
副作用としては血圧低下、徐脈、冠動脈痙攣などがあります。
ペチジン塩酸塩: 中枢性鎮静作用、鎮痛作用を持っています。
副作用としては呼吸抑制、喘息発作の誘発、起立性低血圧、頻脈、眠気、めまい、ふらつき、便秘、排尿障害、胆道痙攣、嘔気・嘔吐などがあります。

鎮静剤の効きについて

鎮静剤の効きについて
鎮静剤の効き目にはどのような対策があるのでしょうか。
以下で解説していきます。

鎮静剤の効きが悪い場合

大腸検査で鎮静剤が効かない理由はいくつかあります。
まず、鎮静剤の投与量が少ない場合、十分な効果が得られないことがあります。
鎮静剤は体重に応じて適切な量が定められていますが、それを超過すると副作用が出たり、鎮静からの覚醒が遅くなったりする可能性があります。
しかし、微量の増減でも効果が変わるため、体重だけでなく患者の年齢や性別によって微調整することが求められます。
また、体質的に鎮静剤が効きにくい、あるいは鎮静状態から覚醒しやすい人もいます。
このような場合、一種類の鎮静剤だけでは効果が得られないことがあります。
そのため、異なる種類の鎮静剤を組み合わせることで、より効果的な鎮静状態を作り出すことが可能です。
さらに、普段から抗不安薬や安定剤を服用している人は、鎮静剤に対する耐性が形成されていることがあります。
これにより、鎮静剤が効きにくい状態となることがあります。
しかし、これらの問題に対しても、鎮静剤の量や種類の調整により対応可能で、多くの患者が苦痛なく検査を受けられるようになっています。

鎮静剤の効きすぎる場合

鎮静剤が効きすぎる主な要因としては、患者の体の機能が弱っている場合があります。
特に、高齢者や肺や肝臓などの内臓の機能が落ちている人は、鎮静剤が効きすぎてしまう可能性があります。
これは、鎮静剤が体内で代謝される速度が遅く、鎮静剤の効果が長く続くためです。
また、鎮静剤が効きすぎると、一日中だるさが残ったり、酸素の値や血圧が落ちてしまう可能性があります。
これは、鎮静剤が中枢神経系に作用し、体の機能を抑制するためです。
しかし、医療機関ではこれらのリスクを踏まえ、患者の体調や状態に合わせて鎮静剤の量を調整します。
経験豊富な医師が適切な量の鎮静剤を使用し、患者の安全を確保することが最優先です。

大腸カメラの鎮静剤の費用

大腸カメラの鎮静剤の費用
大腸カメラにおいて鎮静剤を使用する場合、麻酔剤の費用は種類によって異なりますが、一般的な点数は6点から54点程度です。
したがって、費用はおおよそ60円から540円程度となります。
自己負担率はその1割から3割程度なので、鎮静剤自体は費用的にはそれほど高くないでしょう。

大腸検査後の食事について

大腸検査後の食事について
大腸検査後の食事は、検査の結果によって異なる注意点があります。
ポリープ切除を行っていない方は、特に制限はありませんが、お腹に優しい食事を心がけると良いでしょう。
一方、ポリープ切除を行った方は、当日は消化しやすい食べ物を選ぶことが推奨されます。
具体的には、白粥、素うどん、豆腐、ゼリー、プリン、ヨーグルトなどが挙げられます。
翌日に腹痛や出血がないことを確認したら、消化に良い食事から徐々に普通の食事に戻していくことが推奨されています。
ただし、唐辛子などの香辛料や刺激の強いもの、アルコールは検査後1週間程度控えることが良いとされています。
大腸検査後の食事は、体調や検査結果により異なるため、医師の指示に従うことが最も重要です。
また、食事だけでなく、適度な休息も忘れずに取ることで、体調管理に役立つでしょう。

まとめ

まとめ
ここまで大腸カメラの際で鎮静剤を使うことについてお伝えしてきました。
大腸カメラで鎮静剤を使うことの要点をまとめると以下の通りです。
大腸カメラの際の鎮静剤は、不安や苦痛を和らげ、今後も大腸カメラを受けやすくするメリットがあり、血圧が下がったり、意識がなくなったり、当日の運転を避けるデメリットがある。
大腸カメラで鎮静剤を使った方がいい人は、女性や40歳以下の若い人、痩せている人や婦人科疾患手術後の人などが挙げられる。
大腸カメラでの鎮静剤は、鎮静剤を静脈に注射して患者さんを眠らせ、検査中もモニターで状態を確認する。
鎮静剤の費用は60円から540円程度の1割から3割の値段になる。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師