円形脱毛症の原因を解説!症状や予防方法も紹介します
円形脱毛症は突然始まり急激に脱毛が進むため、発症すると驚いたりショックを受けたりしてしまうものです。
円形脱毛症は保険適用なので、症状が現れたらすぐにクリニックにかかり、適切な治療を受けることがおすすめです。
進行したり範囲が広がったりすると直るまでに時間がかかるため、早めにクリニックに相談しましょう。
円形脱毛症が発症した際、適切に対処するために、種類や原因、AGAとの違いについて解説します。円形脱毛症の予防につながる、健康な髪と頭皮環境を保つ方法についても把握しておきましょう。
監修医師:
高藤 円香(医師)
目次 -INDEX-
円形脱毛症とは
円形脱毛症とは30歳以下、中でも15歳以下の子どもに多く見られる脱毛症です。円形の脱毛斑が突然発生し、急速に脱毛が進む疾患です。
円形脱毛症の種類
円形脱毛症は大きく分けて5種類あります。脱毛斑が発生する数や場所によって、型が変わります。
- 単発型:円形・楕円形の脱毛が1カ所に発生
- 多発型:円形・楕円形の脱毛が複数個所に発生
- 蛇行型:側頭部から後頭部の生え際にかけて、帯状に脱毛が発生
- 全頭型:多発型が広がり、髪の毛が全て抜ける
- 汎発型:髪の毛の他に、眉・まつ毛・ひげなど全身に脱毛が発生
単発型と、脱毛部が頭部の25%未満の多発型は、軽症にあたります。脱毛部が頭部の25%以上の多発型と全頭型、汎発型は重症です。
AGAとの違い
円形脱毛症は脱毛部分とそうでない部分の境目がくっきりしていて、目立ちやすい点が特徴です。脱毛部分の髪の毛だけが数日で急激に抜けるので、異変に気付きやすいでしょう。
一方AGAは、生えている髪の毛が細くなっていく点が特徴です。成長しきっていない髪の毛が、柔らかく短い状態で抜けるようになります。徐々に髪の毛のボリュームが減り、薄毛になっていくため、自覚しにくいケースが多く見られます。
また若い方に多く見られる円形脱毛症に対し、AGAの多くは、男性ホルモンに変化が現れる30代以上に多い疾患です。
クリニックでの円形脱毛症の治療は、保険診療にあたりますが、AGAは自由診療で適用外である点も、両者の違いです。
円形脱毛症の主な原因
髪の毛や全身の毛が急激に抜ける円形脱毛症を発症する原因について解説します。
いくつかの要因が重なって円形脱毛症になるケースもありますが、その多くは遺伝性です。詳しく見ていきましょう。
自己免疫疾患
円形脱毛症が発症する原因として、自己免疫疾患があげられます。免疫は本来、体外から侵入する細菌やウイルスなどから身を守る働きを指します。
この免疫機能が体内に存在する正常な細胞を攻撃してしまう疾患が、自己免疫疾患です。リンパ球が毛根を異物と認識して攻撃してしまうため、円形脱毛症が起こります。
花粉症やアレルギー性鼻炎などのアレルギー体質の方や、ストレスが溜まっている状態が続いている方は、自己免疫疾患につながりやすいといえます。円形脱毛症を引き起こしやすいと考えられるので、注意しましょう。
ストレス
「円形脱毛症の原因はストレスでは?」と考える人も多いでしょう。しかし強い精神的ストレスを感じても、それが直接円形脱毛症の原因になるわけではありません。
円形脱毛症になった方の多くは、ストレスを感じています。しかし中には、ストレスの自覚がない状態で発症した方もいるため、一概にはいえないのです。
ストレスは円形脱毛症の原因ではなく、引き起こすきっかけと考えられています。
ストレスは自律神経の乱れにつながりますが、免疫系機能にも影響を与えて狂わせます。免疫が狂うと前述の自己免疫疾患を引き起こし、円形脱毛症になる可能性が高まるのです。
遺伝
家族に自己免疫疾患やアレルギー体質、アトピー素因の方がいる場合、体質が遺伝している可能性が高いといえます。
円形脱毛症の発症は体質に大きく関係するため、家族に円形脱毛症がいる方は、気に留めておきましょう。
全てのケースで体質が遺伝するわけではありませんが、家族間の関係が近いほど遺伝しやすいと考えられています。
遺伝のみで円形脱毛症になるケースばかりではありません。遺伝に加え、精神的なストレスや疲労などの要因が合わさって、円形脱毛症につながることもあります。
アトピー素因
アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、ぜんそくなど、アレルギー性の疾患を発症しやすい体質をアトピー素因といいます。花粉症や気管支喘息も含まれます。
アトピー素因が必ず円形脱毛症を引き起こすわけではありません。しかし円形脱毛症とアトピー素因は合併率が高いといわれています。
アトピー性皮膚炎の中でもフィラグリン遺伝子異常を持っている方は、重症の円形脱毛症を合併する傾向があるという研究結果が出ています。
家族がアトピー素因を持っている場合も遺伝により、円形脱毛症になるリスクが高い点を把握しておきましょう。
円形脱毛症の症状
突然脱毛が始まる円形脱毛症は、具体的にどのような症状なのでしょうか。型によって抜け毛の場所や広さが異なるため、それぞれについて解説します。
髪の毛が抜ける
円形脱毛症は5種類あり、頭髪と全身が脱毛する汎発型以外は、頭皮で起こる円形脱毛症です。
多くの場合、前触れもなく突然髪の毛が抜け始めます。人によっては脱毛前に、頭皮に違和感や軽いかゆみが発生するケースもあるでしょう。
また円形脱毛の症状が落ち着く慢性期に、脱毛斑の地肌がわずかに凹むこともあります。
型によって髪の毛の抜け方は異なりますが、多発型の円形脱毛症は注意が必要です。脱毛斑の大きさが変わったり、再発を繰り返したりして、慢性化する可能性があります。
髪の毛が徐々に細くなり、薄毛になっていくAGAとは異なる抜け方をする点が、円形脱毛症の特徴です。
健康な髪が急激に抜ける円形脱毛症は、脱毛斑と髪の毛が生えている部分の境界が、くっきりしています。
眉毛やまつ毛など体毛が抜ける
円形脱毛症で抜けるのは、髪の毛だけではありません。汎発型を発症すると、髪の毛以外に眉毛・まつ毛・ひげなど、全身の体毛が抜けるケースも見られます。
汎発型が重症になると髪の毛や体毛など、全身の毛が抜けてしまうのです。円形脱毛症の中でも治療が難しい型なので、速やかにクリニックを受診しましょう。
また人によっては髪の毛は抜けずに、眉毛だけ抜ける、ひげだけが脱毛症になることもあります。髪の毛以外の部分的な脱毛も、円形脱毛症の1種であることを覚えておきましょう。
髪の毛以外で発症する円形脱毛症も、クリニックで治療できます。眉毛やまつ毛が不自然な抜け方をしたら、クリニックに相談することがおすすめです。
爪が変形する
髪の毛や体毛が抜けるだけではなく、爪にも症状が現れる点が円形脱毛症の特徴です。円形脱毛症になった方のうち、約25%に爪の変形が見られます。
多く見られる爪の変形は、爪の甲に現れる点状の凹みです。円形脱毛症を発症したときや、再び症状が悪化するタイミングで、横1列に並ぶケースもあります。
その他には爪がざらついたり薄くなったりする症状も確認されています。爪の変形は円形脱毛症の症状に比例して変化するため、病勢の目安にすることも可能です。
円形脱毛症の予防方法
円形脱毛症を予防するためには、生活習慣の見直しが必要です。食生活や運動、ヘアケアについて、気を付けるポイントを解説します。
食生活を整える
健康で丈夫な髪の毛を育てるためには、髪の毛のための栄養と、土壌となる頭皮のための栄養が必要です。
- たんぱく質:髪の毛や頭皮を構成している成分
- ミネラル(特に亜鉛):髪の毛を成長させる毛母細胞を増やす
- ビタミン(特にB群):代謝や血行を促進し、頭皮環境を整える
亜鉛は毛母細胞を増やすだけでなく、男性ホルモンの発生を抑える効果も期待できます。
男性ホルモンは脱毛や薄毛を引き起こすため、意識して亜鉛を摂取するといいでしょう。またビタミンは代謝や血行を促進するだけではありません。髪の毛に重要な栄養素である、たんぱく質の吸収を促進する働きも期待できます。
適度な運動を行う
円形脱毛症を予防するためには、頭皮環境を整えることが大切です。食事で頭皮にいい栄養を摂取するだけでなく、適度な運動も取り入れるといいでしょう。
運動をすると血行がよくなるため、頭皮や髪の毛に栄養が行き渡りやすくなります。適度な運動で気分転換をすれば、健康な髪を育てる頭皮環境になると同時に、健康づくりやストレス発散にもなります。
体に負担がかかりすぎたり、ストレスにつながってしまったりするほどのハードな運動は避けましょう。体に過度の負担をかけると、休止期脱毛という脱毛につながってしまう可能性があるためです。
自分にあったシャンプーを使う
健康で抜けにくい髪の毛を育ててくれる頭皮環境にするためには、シャンプーが重要です。
頭皮環境を整えるためには、頭皮を清浄に保つことが大切です。皮脂やほこりが残っていると毛穴をふさぎ、炎症や脱毛につながる可能性があります。
しかし洗浄力の強いシャンプーを使っていると、頭皮の皮脂を過剰に洗い流してしまうため、注意が必要です。
頭皮の汚れや脂をやさしく落としつつ、必要な皮脂は残してくれるシャンプーがおすすめです。低刺激性のシャンプーや育毛シャンプーなど、自分の頭皮や髪質に合ったシャンプーを使いましょう。
円形脱毛症の治療方法は
円形脱毛症はクリニックにかかると、保険適用で症状に合った治療をしてもらえます。どのような治療方法があるのか把握しておきましょう。
ステロイド局所注射療法
単発型や軽度の多発型のような、脱毛斑が狭い円形脱毛症には、ステロイド局所注射療法が用いられます。
脱毛斑に直接副腎皮質ステロイドを注射する方法で、注射した部分のみの毛が再生します。そのため広範囲の脱毛症には向いていません。
ステロイド局所注射は痛みがあるため、脱毛斑に局所麻酔をしてから行うケースもあります。注射した部分が凹んだり、皮膚が縮んだりと、多くの副作用が現れるため、長期間の治療には使用されない傾向です。
局所免疫療法
局所免疫療法は、範囲が広い円形脱毛症の治療に有効です。脱毛斑にSADBE・DPCPを塗り、軽度のかぶれを繰り返し起こす治療法です。
1〜2週間に1回の頻度で局所免疫療法を行うと、免疫機能のバランスが変化します。自己免疫疾患などで、免疫機能が狂って円形脱毛症になった方に有効です。
60%の有効率なので、他の治療方法が合わなかった方でも効果が期待できます。
しかし局所免疫療法を辞めると、円形脱毛症が再発してしまう可能性がある点がデメリットです。根気よく年単位で治療を繰り返すケースもあることを、覚えておきましょう。
外用療法
外用療法は塩化カルプロニウム外用やミノキシジル外用を塗布する方法です。塩化カルプロニウム外用は長年診療に使われているため、安全性が担保されている点がメリットです。
効果自体はあまり高くないものの、単発型や多発型に対し、併用療法として多く使われています。
ミノキシジル外用も単発型や多発型に使われる薬です。現時点で日本での効果は実証されていないものの、海外において高い診療実績を持っています。
ミノキシジル外用は毛母細胞を活性化させ、毛組織の血流改善作用が期待できるため、円形脱毛症の治療にも用いられるようになりました。
AGAで処方されると自費診療ですが、円形脱毛症の治療に使用する際は保険適用です。
内服療法
円形脱毛症で処方される主な内服薬は、グリチルリチンやセファランチン・アレグラです。
どちらも単体での使用では効果が弱いですが、安全性が高いことと保険適応であることから、併用療法として処方されています。
アトピー性皮膚炎で処方されていたバリシチニブが、2022年に円形脱毛症の治療薬として承認されました。バリシチニブは重症な円形脱毛症への効果が期待できます。
バリシチニブは免疫機能が毛根を攻撃するのを防ぎます。そのため原因からの改善を期待できるでしょう。
紫外線療法
紫外線UVBを脱毛斑に照射し、免疫機能が毛根を攻撃しているのを抑制する方法です。2020年から円形脱毛症の治療での使用にも、保険適用になりました。週に1〜3回の照射を、2〜6カ月程度続けます。
高い効果が期待できる治療法ですが、光線過敏症や免疫抑制剤の治療中など、治療ができないケースもあります。妊娠中の女性やペースメーカーを装着している人もNGです。
円形脱毛症は再発する?
円形脱毛症は既往症がなければ、1年以内に約80%で回復できますが、再発率が高い疾患です。再発率が高い原因は、自己免疫疾患やアトピー素因など、改善しにくい体質にあります。
また全頭型や汎発型など、広範囲に渡って脱毛する重症な型の場合、治癒までに時間がかかってしまうケースが多く見られます。長期的な治療が必要になる疾患であることを、把握しておきましょう。
元々の体質やかかった円形脱毛症の型、治療方法により、回復率や再発率は変動します。再発率の高い疾患であることを頭に入れ、症状が現れたらすぐにクリニックにかかるようにしましょう。
編集部まとめ
円形脱毛症は自己免疫疾患やアトピー素因など、免疫系の異常が多く見られることが原因です。徐々に薄毛が進行していくAGAと異なり、突然始まり急激に脱毛が進む点が、円形脱毛症の特徴になります。
クリニックにかかった際の円形脱毛症の治療方法は、ステロイド局所注射療法や外用療法などさまざまです。AGAは自由診療ですが、円形脱毛症の治療は保険が適用されます。
円形脱毛症は頭髪だけでなく、眉毛・まつ毛・体毛など、全身が脱毛する型もあります。重症の場合は治療に時間がかかるため、異変を感じたらすぐにクリニックに相談するのがおすすめです。
参考文献