ICL(眼内コンタクトレンズ)のメリットは?デメリットやレーシックとの違いについても解説
近視・乱視などに対する治療法の一つとしてICL(眼内コンタクトレンズ)があります。ICLとは、どのような手術なのでしょうか。
この記事では、同じく視力矯正を目的とする手術であるレーシックとICLの違いや、ICLのメリット・デメリット・安全性などについて解説します。
監修医師:
柿木 一邦(かきのき眼科)
2001年 日本医科大学 眼科研修
2003年 聖路加国際病院 眼科研修
2007年 医療法人社団南 南眼科
2008年 聖路加国際病院 眼科医局長
2009年7月7日 かきのき眼科 開院
目次 -INDEX-
ICL(眼内コンタクトレンズ)とレーシックの違い
眼球の中には角膜・水晶体と呼ばれるレンズのような器官があり、眼に入った光は角膜と水晶体で屈折して網膜に像を結びます。
しかし、下記のような状態では網膜に焦点距離が合わず、対象物がぼんやりと見えます。
- 眼軸(眼球の奥行き)が長い・短い
- 水晶体の厚みを調整する機能の低下
- 水晶体にゆがみがある
このような場合に、従来は眼鏡やコンタクトレンズなどを装着することで焦点距離・水晶体のゆがみを補正して視力矯正を行うのが一般的でした。
しかし、近年ではICLやレーシックのような手術による視力矯正も可能になっています。
いずれも眼球の切開を伴う眼内手術ですが、ICLは人工的なレンズを眼内に挿入することで視力を矯正します。
一方、レーシックはレーザーによって角膜を削ることで、ピントの調整を行う手術です。
ICL(眼内コンタクトレンズ)のメリット
ICLは、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは、代表的な8つのメリットを紹介します。
レンズを取り外して元の状態に戻せる
ICLは角膜の一部を切開して、その3mmほどの隙間から虹彩と水晶体のあいだに眼内コンタクトレンズを挿入する治療です。
レーシックのように眼の内部を削る治療ではないため、必要に応じてレンズを取り出し、挿入前の状態に戻すことができる可逆性のある治療となります。
「眼をもとの状態に戻したい」というケースにはいろいろな理由がありますが、白内障の治療にあたり水晶体に白内障治療用の眼内レンズを挿入することになった場合などがその一例です。
裸眼で生活できるようになる
視力矯正の方法として、手術を伴わない眼鏡やコンタクトレンズなどを使用している方も多いでしょう。
しかし、取り外しやお手入れなどの手間や、紛失のリスクなどを煩わしいと感じている方もいるかもしれません。また、破損・紛失をすれば視力が低い状態のまま過ごさなければならない可能性もあります。
一方、ICL・レーシックなどの眼内手術によって視力矯正を行うと、裸眼で生活している方と同じく取り外し・手入れの手間がなく紛失・破損の恐れもありません。
強度の近視にも対応可能
近視の強さはD(ジオプトリー)という尺度であらわされ、近視のない状態を0.00Dとします。そして-3.00D未満が軽度近視、-3.00D以上~-6.00D未満が中等度近視です。
レーシックでは角膜を削って屈折率を調整するため、中等度近視にあたる-6.00D未満が適応対象となります。なお、-6.00Dよりも強い近視の場合は角膜が薄くなりすぎるため、それ以上の調整は行うことができません。
一方、ICLでは-16.00Dまでの近視が矯正可能とされています。
鮮やかな見え方が期待できる
レーシックと比較した場合、ICLのほうが術後に鮮やかな見え方が期待できます。なぜなら、レーシックでは角膜を削ることにより、術後にコントラストの感度が低下しやすいといわれているためです。
これに対して、同じく屈折矯正手術であるICLは眼内の器官を傷つけず、術後もコントラスト感度を保てる可能性が高い治療法です。
ただし、ICLの手術により健康な目よりも色の濃淡を識別する能力が上がるというわけではありません。
ドライアイの原因になりにくい
レーシック手術の術後・コンタクトレンズの継続的な使用は角膜知覚低下の原因になるといわれています。
角膜知覚が低下するとドライアイになりやすいため、レーシックの手術後やコンタクトレンズを使用する場合にはドライアイへの対処として点眼が必要になる場合があります。
一方、ICLはドライアイになりにくい治療方法です。なお、もともと重度のドライアイがある方にはコンタクトレンズをおすすめできない場合があります。このような方にも、目の表面に刺激を与えない眼内コンタクトレンズであれば適用できる可能性があります。
紫外線カット効果がある
ICLの眼内レンズには、紫外線をカットする効果がついています。
眼科疾患の中には、白内障のように紫外線への曝露が原因となるものもあるため、紫外線をカットすることは目の組織を守る効果が期待できます。
維持費がかからない
手術を伴わず、また眼鏡よりも裸眼に近い感覚で利用できるなどの理由からコンタクトレンズを使用している方もいるでしょう。
しかし、コンタクトレンズは定期的に交換が必要なので、使用した期間の分だけ維持費がかさみます。メンテナンスに必要な物品や消耗品も購入する必要があります。
こうした維持費のことを考えた場合、ICLは一度挿入して状態が落ち着くまで経過観察をした後は、基本的にメンテナンスや追加でかかる費用はありません。
医療費控除の対象になる
医療費控除とは、当年の1月~12月にかかった医療費の自己負担分が下記の金額を超えた場合に受けられる所得控除制度です。
- 10万円(総所得が200万円以上の方)
- 総所得金額等の5%(総所得金額200万円未満の方)
医療費控除の対象となる「医療費」にはさまざまな決まりがあり、入院時の個室料金や美容整形等の費用、疾病を治癒する目的ではない施術などは対象外とされています。しかし、ICLは医療費控除の対象となります。
そのため、確定申告書と対象となる医療費の明細書などを税務署に提出することで、対象となる金額に応じた還付金を受け取れます。
ICL(眼内コンタクトレンズ)のデメリット
ここまで、ICLのメリットを紹介してきました。では、ICLを選択した場合のデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
自由診療のため費用が高額になりがち
ICLは医療保険が適用にならない治療方法です。そのため、治療費は全額自己負担となります。
さらに、同じく医療保険適用外の屈折矯正手術であるレーシックと比較しても、手術の費用相場は下記のようにICLのほうが高額になります。
なお、医療保険適用外の治療にかかる金額は医療機関ごとに大きく異なります。
相場よりも安価にICLの施術を行っている場合もありますが、医療機関を決める際には金額だけでなく下記のようなポイントも確認することをおすすめします。
- 執刀医の経歴や手術歴
- 治療後の保証範囲・保証期間
- 眼内手術の件数
持病などにより適応外になるケースがある
ICLは角膜を切開して人工物を眼内に挿入する手術です。そのため、眼球内の状態がレンズを入れるのに適さない方や合併症のリスクが高い方などは、手術を受けられない可能性があります。
ICLの適用外になる具体的な例は下記の通りです。
- 前房深度が2.8mm以下
- 進行性の円錐角膜
- 活動性の外眼部炎症
- 視力以外の眼科疾患(白内障・緑内障・ブドウ膜炎など)
- 重度のドライアイ
- 重症の糖尿病・アトピー性疾患など
- 免疫不全疾患
前房とは角膜から水晶体までの空間のことで、ICLのレンズを挿入する部位です。この深度が浅いと、レンズを入れること自体が難しい可能性があります。
また、糖尿病・アトピー・免疫不全疾患などがある方は傷の治りが遅い・炎症を起こしやすいといったリスクが高いため、重症度によりICLが適用できない場合があるでしょう。
ICL(眼内コンタクトレンズ)の安全性
かつては、ICLを挿入することで虹彩周辺を循環している「房水」の流れが悪くなり、緑内障・白内障になるケースもありました。さらに、こうした合併症を減らすためにICL挿入前にレーザーでの虹彩切開を行っており、これもICLの安全性を低下させる一因とされていました。
そこで、改良の結果生まれたのが、房水の流れを妨げないよう微細な穴をあけたICLです。これにより術前の虹彩切開は不要となり、術後に緑内障・白内障を発症する確率も大きく低下しています。
ただし、眼球の一部を切開する治療のため、確率としては稀ですが術後感染により眼内炎などを起こすリスクがあります。
またICLのサイズ・度数が合わなかった場合には、術後にレンズの入れ替えが必要になるため注意が必要です。
ICL(眼内コンタクトレンズ)のことならかきのき眼科にご相談を
視力は、生活の快適性に大きく関わる機能です。ICLは専門性の高い手術であるため、治療を受ける際には医療機関の選び方が重要となります。
「眼の定期検診なども兼ねてICLについて相談したい」「子どもの近視について診察を受けたい」といった場合には、かきのき眼科に相談してみてはいかがでしょうか。
かきのき眼科の特徴を紹介します。
不安を除去する低濃度笑気ガス麻酔を使用した安心の手術
かきのき眼科では、治療の際に低濃度笑気ガス麻酔を使用しています。笑気ガスとは亜酸化窒素のことで、鼻から吸入する「吸入麻酔薬」です。
笑気ガスを使用することで、痛みを抑えリラックスした状態で治療を受けることができるでしょう。笑気ガスには、下記のような特徴があります。
- 吸入後の効果発現が早い
- 吸入終了後の速やかな作用消失
- 呼吸・循環への影響が少ない
- 腎臓・肝臓への負担が少ない
日本眼科学会眼科専門医である院長による専門性の高い治療
かきのき眼科の院長は日本眼科学会眼科専門医であり、眼内コンタクトレンズ(ICL)専門の医師です。
日本眼科学会眼科専門医は、一定の基準を満たす知識・技術があり、なおかつ認定のための試験を通過した医師であるため、豊富な知識と経験があるといえるでしょう。
繊細な感覚器である眼球の手術だからこそ、確かな技術を持つ医師や治療経験の多い医療機関での治療をおすすめします。
先進的な医療機器を導入し症状や要望に合った幅広い治療を提供
医療機器は日々進化しており、新たな機器を使用することで検査でわかる情報が増える、治療の安全性が上昇する、患者さんの苦痛を軽減するなどのメリットが期待できます。
かきのき眼科は、検査・治療に使用する機器に先進的な設備を整えています。また、近視の改善に対してもICLに限らずオルソケラトロジー(ナイトレンズ)・コンタクトレンズ・眼鏡外来など幅広い治療を提案しています。
なお、小児眼科を標榜しているほか、高齢者に多い白内障の治療なども行っているため、さまざまな年齢層の患者さんに対応可能です。
眼に関するお悩みがある方は、かきのき眼科に相談してみてはいかがでしょうか。
かきのき眼科の基本情報
アクセス・住所・診療時間・費用・治療回数・期間
東急目黒線 西小山駅より徒歩0分
東京都品川区小山6丁目3−9 ウエストヴィレッジビルディング4階
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
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9:30~13:00 | ● | ● | ● | ● | ■ | ● | - | - |
15:00〜19:00 | ● | ● | ★ | ● | ● | ▲ | - | - |
★…手術のみ
■…眼形成外科外来のみ
▲…15:00〜17:00
※最終受付は午前は診療終了の30分前、午後は診療終了の60分前となります。
【費用(税込)】ICL:片眼315,770円
【治療回数】手術は1日
当日から2日間くらいはまぶしくなったり、物が見えにくくなる
術後1週間ほどは、炎症などで視力が変動することがありますが、回復とともに改善します。
【治療期間】手術1回
その後定期的な検査
手術翌日/1週間後/1ヶ月後/3ヶ月後 など
参考文献
- 糖尿病とは|国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター
- 医療法人社団結和 かきのき眼科
- 近視とは?|日本近視学会
- ドライアイ診療ガイドライン
- Implantable Collamer Lens挿入術後白内障の病型
- 屈折矯正手術について|公益社団法人 日本白内障屈折矯正手術学会
- ICLの合併症|公益社団法人 日本白内障屈折矯正手術学会
- ICLを考えている方へ|公益社団法人 日本白内障屈折矯正手術学会
- ICLの基礎知識|公益社団法人 日本白内障屈折矯正手術学会
- 【コンタクトレンズとのお付き合い】|公益社団法人 日本眼科医会
- 近視・遠視・乱視|公益財団法人 日本眼科学会
- 全身麻酔における亜酸化窒素(笑気)の有用性
- No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除) | 国税庁