クラミジアの検査キットとは?クラミジアの症状や間違いやすい病気についても解説!
「クラミジア」という病気を聞いたことがあるでしょうか。クラミジアは、正確には「性器クラミジア感染症」といい、性感染症の中でも感染者数が多い病気です。自覚症状を伴わない場合が多いため、感染していることに気づいていない方も含めると、かなりの数の方が感染経験があると考えられます。知らず知らずのうちに感染が広がっている病気といえるでしょう。今回は、そんなクラミジアの症状や検査方法、自身でできる検査キットなどについてご説明します。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
クラミジアとは
まずは、クラミジアの概要について解説します。
性行為によって感染する「性感染症」
クラミジアは、主に性行為によって感染する性感染症です。クラミジア・トラコマチスと呼ばれる病原体が原因で感染する病気であり、粘膜や分泌物との接触により発症します。その感染部位によって呼び名や症状が異なっており、尿道が感染した場合はクラミジア性尿道炎、膣や子宮頚管に感染した場合をクラミジア性子宮頚管炎、喉の粘膜に感染した場合を咽頭クラミジアと呼びます。性感染症の中でも感染数が多い病気ではありますが、クラミジア自体は弱い病原体のため、粘膜や粘液などから離れてしまえば増殖などの可能性はなく、飛沫感染やタオルなどの共用物を介しての感染は基本的に発生しません。
若い世代に多い
クラミジアは、男女ともに20代前半から30代前半までの若年層に発症することが多く、男性と女性とを比べると、女性のほうが感染数が多いことが分かっています。また女性の場合は、出産時に母子感染する場合もあります。感染部位によって症状は異なりますが、女性の場合はその多くが無症状という特徴があります。しかし、男女ともに悪化すると不妊などにつながることもあるため、注意が必要です。
クラミジアになるとどうなる?症状は
それではここからは、クラミジアに感染した場合の症状について、感染した部位ごとに分けて解説します。
クラミジア性尿道炎
男性に多いクラミジア感染症が、クラミジア性尿道炎です。性行為などで尿道にクラミジアが入り込むことで感染が起こり、1~2週間の潜伏期間を経て発症します。主な症状は、排尿時の痛みや違和感となっており、粘り気のある膿が出ることもあります。また、クラミジア性尿道炎が悪化して感染が精巣上体にまで進むと、クラミジア性精巣上体炎を引き起こします。精巣上体に感染した場合、睾丸の腫れや痛み、発熱などの症状が現れます。治療は抗生物質の内服薬で行われることが多く、服用後に再度検査を行うことで陽性・陰性を判断します。症状がなくなったからといって治療を途中でやめてしまうと再発する可能性があるため、陰性が確認されるまでは医師の指示に従いましょう。
クラミジア性子宮頚管炎
クラミジア性子宮頚管炎は、女性の膣・子宮頚管部にクラミジアが感染して起こる病気です。ほかのクラミジア感染症と同様に、主に性行為によって感染しますが、感染しても半数以上は無症状という特徴があります。ただし、無症状だとしてもそのまま放置していると、卵管炎や腹腔内感染へと発展する可能性があり、子宮付属器炎・骨盤腹膜炎・肝周囲炎といった合併症や後遺症などにつながる恐れもあります。そのため、きちんと治療を受けることが大切です。症状がある場合は、おりもののにおいや量の変化、不正出血、下腹部痛、デリケートゾーンのかゆみなどが現れます。これらの症状がある場合はもちろん、症状がない場合も定期的に婦人科検診を受けることで、症状を放置してしまわないように気をつけましょう。クラミジア性子宮頚管炎の場合も、クラミジア性尿道炎と同じく、抗生物質の内服薬で治療を行います。
咽頭クラミジア
咽頭クラミジアは、オーラルセックスなどの性行為によりクラミジアが喉の粘膜に感染することで起こる病気です。潜伏期間は1~3週間ほどとなっており、発症すると喉の痛みや違和感といった症状が現れますが、無症状の場合もめずらしくありません。治療は、ほかのクラミジア感染症と同様に抗生物質の内服薬を用いて行いますが、咽頭クラミジアはほかのクラミジア感染症に比べて治療に時間がかかるという特徴があります。そのため、もし症状がある場合には早期に治療を開始することが大切です。症状が風邪と似ているため、性感染症だとは気づかずに市販薬で対処しようとする人もいますが、適切な治療を受けるためには医療機関で検査を受けることが大切です。
クラミジア性結膜炎
クラミジア性結膜炎は、目の粘膜にクラミジアが感染した場合に起こる病気です。充血やまぶたの腫れ、目やにの増加といった症状が現れますが、クラミジア感染症だとは気づかず放置されることもめずらしくありません。ただし、症状が悪化すると結膜にブツブツが現れ、徐々に大きくなっていきます。治療は、抗生物質を含む軟膏薬や内服薬を用いて行います。
クラミジアを放置するとどうなる
ここまで説明してきたことからも分かるように、症状がない場合や、ほかの病気と似通った症状が出る場合も多いため、クラミジア感染症だと気づかずに放置してしまう場合もあります。
しかし、クラミジア感染症には合併症や後遺症のリスクがあります。その代表的なものが不妊です。例えば、子宮頚部に感染したクラミジアが卵管まで波及し、卵管炎が慢性的に起こる状態になったとします。その場合、悪化すると卵管の線維化や卵管内腔の狭窄、卵管蠕動運動の障害といった症状を引き起こす可能性があります。このような状態になると、自然に回復することは基本的になく、子宮外妊娠や卵管性不妊の原因になるため注意が必要です。また、骨盤腹膜炎の場合も、卵管采周囲癒着、骨盤内の癒着、卵管留膿腫、卵管留水腫などのリスクにつながります。外科的な治療が必要になったり、自然妊娠が難しくなったりするため、内服薬で治療が可能なうちに対処しておくことが重要です。さらに、クラミジアなどの性感染症に感染している状態は、HIVに感染するリスクが高くなるともいわれています。これは、感染により粘膜に炎症が起きると、ウイルスなどが侵入しやすくなるためです。このような理由からも、クラミジア感染症は放置せず、早期に治療を受けることが大切といえるでしょう。
クラミジアかどうかは検査キットでわかる
ここまで、クラミジアに感染して起こるさまざまな症状や、治療を放置するリスクについて解説してきました。これらのことからも分かるように、症状がある場合はもちろん、パートナーがクラミジア検査で陽性だった場合や、コンドームを使わずにオーラルセックスを含む性行為をした場合には、検査を受けることをおすすめします。クラミジア感染症は、尿検査や感染部位の分泌物を採取して行う検査、うがい検査、血液検査などで感染を確認することができます。しかし、デリケートゾーンに症状がある場合は、性感染症の診察を受けることに抵抗がある方も多いかと思います。そのためここからは、そのように受診に抵抗感を持っている方も比較的受けやすい検査方法について解説します。
クラミジアの市販検査キット
クラミジア感染症を検査する方法としてもっとも匿名性が高いのは、市販の検査キットを用いて検査を行う方法です。検査を行っている各業者の公式サイトから申し込みを行い、自宅に届いた検査キットを用いて検体を採取し、返送することで検査を行います。やり取りはすべて郵送で行われるため、人と顔を合わせる必要がなく、自分のタイミングで検査を行えることが特徴です。ただし、検査を行うのは専門の検査業者のため、陽性だった場合にも、その業者から薬を処方されたり治療を受けたりといったことはできません。
陽性だった場合は、近隣の医療機関等に出向いて治療を受ける必要があります。また、自分自身で検体を採取することになるため、誤った方法で採取してしまい、検査結果が正しく出ない可能性があることも頭に入れておいたほうが良いでしょう。市販の検査キットを使う場合は、説明書や説明動画を事前にしっかりと確認することが大切です。
クリニックのオンライン診療
泌尿器科や産婦人科といった医療機関に実際に足を運ぶことに抵抗がある場合は、オンライン診療の利用を検討してみてもいいでしょう。オンライン診療は、自宅などでパソコンやスマートフォンなどを利用して行う診療です。ビデオ通話が基本となるため、医師に顔を見せる必要はありますが、ほかの患者さんと顔を合わせる必要がなく、プライバシーを保ちやすいという特徴があります。また、市販の検査キットで検査するのとは異なり、自身の症状を医師に伝えることができ、その症状や、検査の結果に合わせて適切な治療を提案してもらえることもメリットです。一般的にオンライン診療で性感染症の検査を受ける場合は、ビデオ通話などで診察を行ったあとに、症状に応じた検査薬が郵送で自宅まで送付され、自身で検体を採取し返送したあとに、再度診察という流れになります。クリニックに直接足を運んでの検査の場合は、当日中に結果が出るものもありますが、その場合は検査結果が出るまでに数日かかるものよりも、検査の精度が劣るという注意点があります。
感染が分かったら
前述した検査でクラミジアの感染が確認されたら、クリニックで治療を受けましょう。治療は基本的に内服薬となり、1回の内服で終了するものもありますが、1週間ほどの服薬が必要なもの等あります。また、その後は再度クリニックに出向き、陰性になっているかどうかの検査を受ける必要があります。クラミジア感染症は性行為によって感染するため、感染が確認された場合はパートナーも検査・治療を受けることが大切です。
クラミジアと間違いやすい病気
最後に、クラミジア感染症と間違いやすい病気について解説します。
マイコプラズマ・ウレアプラズマ
マイコプラズマ・ウレアプラズマは、クラミジアと同じく、性行為によって感染する病気です。デリケートゾーンのかゆみのほか、尿道や喉の痛みといった、クラミジア感染症と似た症状が現れます。また、マイコプラズマ・ウレアプラズマも不妊の原因になることがあります。
淋病
淋病も性感染症の一種であり、クラミジア感染症に続いて感染数が多いとされています。症状は、おりものの量の増加や色の変化、喉の痛みや咳などが多く、目に感染した場合は目やにや充血、直腸に感染した場合は肛門のかゆみや血便など、さまざまな症状が考えられます。また、クラミジアと同様に、女性の場合は無症状の場合が多いことも特徴として挙げられます。
まとめ
クラミジア感染症の症状や検査、治療法などについて説明しました。クラミジアは、一度の性行為で30~50%の確率で感染するともいわれています。感染したが無症状のまま進行していったり、さらに気付かないうちに感染を広げてしまう恐れもあるため、定期的な検査の受診を心がけましょう。
参考文献