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自覚しにくい睡眠時無呼吸症候群。少しでも兆候を感じたら早目に治療【大阪府八尾市 松樹会松本クリニック】

 公開日:2025/03/28

自覚しにくい睡眠時無呼吸症候群。少しでも兆候を感じたら早目に治療
自覚しにくい睡眠時無呼吸症候群。少しでも兆候を感じたら早目に治療

「朝起きると頭や喉が痛い」「夜中にひんぱんにトイレに行きたくなる」「日中眠くてしかたがない……」
その原因、実は「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」なのかも…。とはいえ、眠っている間のこと。本人は自覚しにくく、「平日に時間をつくって病院に行こう」とまではなかなか思えないだろう。ただ、最近はオンライン診療が行われるようになり、在宅のまま症状を診てもらうことが可能となっている。重症化すると命の危険もあるといわれる睡眠時無呼吸症候群、長年この症状を診てきた松本クリニックの松本伸治院長に話を伺った。

Doctor’s Profile
松本伸治(院長)
松本クリニック

~略歴~
H18.3 和歌山県立医科大学医学部医学科卒業
H20.4 八尾市立病院外科
H26.5 「松本クリニック」を開院
H27.12.7 医療法人松樹会設立及び理事長就任
R2.11 看多機「ナーシングホームこもれび」開業
R3.2 松本クリニック こもれび訪問看護ステーション こもれびケアプランセンター 
こもれびヘルパーステーション 看多機「ナーシングホームこもれび」と在宅医療・介護
に関わる全ての事業が同一グループ内に稼働

~資格・所属学会~
日本外科学会認定医
PEACE主催緩和ケア指導者研修修了医
日本在宅医療連合学会
日本緩和医療学会
日本外科学会
日本内科学会

睡眠時無呼吸症候群とはなんですか?

その名のとおり、眠っている間に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりする病気です。それにより、体が低酸素状態になります。「Sleep Apnea Syndrome」の頭文字で、SAS(サス)とも呼ばれます。
原因は、喉の緊張が弛んで舌の付け根が下に落ち込むことです。それで空気の通りがさまたげられ、無呼吸(呼吸が止まる)になったり、大きないびき(断続的に空気が通る状態)をかいたりします。実は、私自身も数年前、家族に「夜中に何度も息が止まってるよ」と指摘されてSASだったことに気づきました。もともと、いびきがうるさいとはよく言われていたんですけれど。

自分は違うだろう…。勝手にそんなイメージを抱いてませんか?

寝ている間ですから、自覚するのは難しいですよね

そうですね。ただ、それ以外にも夜中に何度もトイレに行きたくなったり、朝起きるといきなり頭痛がしていたり、またいびきがすごすぎて喉が痛くなっていたりと、意識してみると思い当たる症状がいくつもありました。
いびきがひどいとか、息が止まるといったことは、周囲に気づいてもらえるとわかりますよね。自分自身で感じられる症状としては、「頭痛」をはじめ、「息苦しくて目が覚める」「夜間頻尿」「昼間の眠気」などです。いびきは口を開くので、喉が痛くなったり喉が渇いたりします。

症状がひどくなると、どうなっていくのでしょうか?

無呼吸を繰り返すと体が低酸素状態になるので、心臓、脳、血管に負担がかかります。それで「高血圧」「脳卒中」「心筋梗塞」などの「虚血性肺疾患」の発生リスクが高まります。
若いときはそれらを体力でカバーできても、最悪、突然死の原因にもつながります。また、SASが原因で高血圧になっているとしたら、どんなに高血圧の薬を飲んでも根本的な解決にはなりません。
軽度であったとしても、呼吸が止まると脳は低酸素状態から回復しようと、呼吸を再開させようとします。結果、寝ていても脳はずっと起きているような状態で、熟睡してないわけですね。当然、睡眠不足になります。
ですから、日中の強い眠気や倦怠感、集中力の低下、疲労感、気分の落ち込みなどが出てきて、ストレスも溜まります。学校や職場での日常の行動にも影響が出ますよね。

自分は違うだろう…。勝手にそんなイメージを抱いてませんか?

学校? 若い人でもなるのですか?

一般的に、男性では40~50代、女性では50代以降から増え始め、60~70代が多い病気とされています。「40~50代の肥満体型」みたいなイメージを持たれる方が多いようですが、SASは痩せていても、10代でもなる可能性がある病気です。
生活習慣病が原因の場合もありますし、鼻中隔という鼻の仕切りが湾曲していることが原因の場合もあります。子どもだと、アデノイド増殖症といって、喉の奥が肥大している場合があったり、あるいは「のどちんこ」が大きすぎたりしていることが原因だったりします。この場合は切るしかありません。
また、現代日本人の骨格の特徴でもある、下あごが小さかったり、後退していたりで気道が狭まる場合もあるので、一概にSASは「こういう人がなる」とは言い切れないんです。日本には、治療を受けていないSAS患者が600万人以上いるともいわれます。

使ってみれば一目瞭然! CPAP治療の効果

使ってみれば一目瞭然! CPAP治療の効果

原因はいろいろあるんですね。では、どのように治療していくのでしょうか?

まずは無呼吸状態がどの程度のものか、寝るときに検査キットを使ってもらって調べます。もっとしっかり検査する場合は脳波を調べたりしますが、これもコロナ禍の影響で、在宅でも調べられるようになりました。
調べた結果、鼻や下あごなど解剖学的な原因がある場合は、耳鼻科などでの外科手術が必要になります。一方、そうではない場合、最も普及しているのは「CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)」です。

CPAPとはどういうものですか?

鼻マスクを通して寝ている間に空気を送り、気道が塞がらないようにして、無呼吸状態を防ぐものです。「Continuous Positive Airway Pressure」の略で、日本語では「経鼻的持続陽圧呼吸療法」といいます。
方法としては、寝ている間に専用のマスクをつけ、外気を取り込み、加圧した空気を鼻から送り込むことで、睡眠中の無呼吸を防ぎます。CPAPの装置は、睡眠時無呼吸症候群と診断され、かつ「簡易検査で1時間40回、精密検査で1時間20回以上の無呼吸・低呼吸を認める」「毎月病院の外来を受診する」などの一定の基準を満たせば、健康保険が適用されてレンタルができます。
装置には鼻だけを覆うネーザル、鼻と口を覆うフルフェイス、鼻の穴に挿入するピローと3種類があり、状態に合わせて使い分けます。私自身はネーザルタイプを使っています。

患者さんに応じて、タイプを使い分けるということですか?

おそらく、一番使いやすいのがネーザルタイプなんですよ。眠るときに口が開いている人は、マスクじゃないとダメかもしれませんね。
慣れてくると、口を閉じて眠るようになってくる方が多いようです。

CPAPの治療効果は大きそうですね

症状を放置してると、夜間頻尿にもなるし、高血圧や脳の血管障害のリスクも高まるわけですが、逆にいえば、たとえば高血圧の方は実はその根本原因が睡眠時無呼吸かもしれないわけです。すると、いくら高血圧の治療ばかりしても、原因はそのままで解決していないことになる。もしかすると、睡眠時無呼吸症候群を治せば、高血圧の薬はいらないということもあり得るでしょう。

使ってみれば一目瞭然! CPAP治療の効果

まずは検査を。オンライン診療で手軽に、かつ柔軟に

まずは検査を。オンライン診療で手軽に、かつ柔軟に

ただ、症状が疑われても、よほどでなければ日中に病院に行くのはハードルが高いかもしれませんね

当院はオンラインで専門外来を行っていますが、最近は同様にオンラインを採用しているクリニックが多いですよ。日時を予約してもらえれば、朝の出勤前とか、お昼休み、夜間など、どんな場面でも診療が受けられます。
在宅の脳波検査なども当院ではまとめて行えます。生活習慣病の改善が優先という場合もありますし、骨格の問題なら専門医とつなぐし、CPAPの治療からおすすめする場合もある、という感じですね。
もしCPAPを始めたら、1カ月に1回程度の経過観察がありますが、これもオンラインでは異常がなければ5分程度です。通院でも診療時間は同じですが、オンラインはその前の待ち時間がありません。

なるほど、SASはオンライン診療との相性がよさそうですね

そうですね。自宅で就寝中の「血中酸素濃度」「心拍数」「呼吸状態」「寝返り回数」など睡眠の状態を記録し、その結果を専門機関で分析してもらうだけで総合的に診断ができます。いつでも好きな場所で受けられるオンライン診療は、通院せずに済むというメリットが大きいですね。

逆に、CPAP治療のデメリットは何かあるのでしょうか?

装置をつけて寝るので、慣れるまで時間がかかります。続けられない人もいるかもしれません。逆に、一日目から違和感なくぐっすり眠れる人もいますけれどね。
ただ、慣れてしまうと、多分やめられないと思いますよ。やめたら、改善されていたリスク要因が元に戻ってしまうというのがデメリットといえるかもしれません。

まずは検査を。オンライン診療で手軽に、かつ柔軟に

貴院では、治療費用はどのくらいかかりますか?

当院では、すべて保険診療の範囲内です。検査代金が3割負担で3,000円ぐらい。CPAPをつけるとなれば、毎月の管理料が1,500円ほど、そこに再診料などプラスされて、トータル5,000円ぐらいです。

SASの治療を検討されている方にメッセージをお願いします

SASは自覚症状として現れにくく、自覚できたときには重度になっている可能性があります。思い当たる症状がひとつでもあるなら、突然死のリスクを下げるためにも、検査だけでもされたほうがいいですね。CPAPで治療できるなら、受診も検査も治療もすべて在宅で可能です。
SASを原因とした糖尿病などのリスクが下がり、すでに何らかの治療薬を飲んでいる方も、SAS治療で根本原因が解決してお薬を減らせる場合もあるでしょう。
「よく眠れないな」「疲れが取れないな」などと思っていらしたなら、あるいはご家族の方などに「呼吸が止まっている」「いびきがうるさい」などと言われたなら、ぜひ一度検査をおすすめします。

編集部まとめ

近年、さまざまな健康維持・疾病予防の話題の中でも、睡眠の大切さを強調することが多いと感じます。「もしかしたら自分は睡眠時無呼吸症候群なのかも」と思うようなことがあるならば、やはり検査をしてみるべきでしょう。
松本先生は終始穏やかで、お話には笑いも交えて親しみやすく、相談しやすい雰囲気がありました。また、松本クリニックは治療だけでなく、グループ内に睡眠時無呼吸症候群の検査、機器レンタルなどの会社も内包しており、患者の情報が一元化されて共有されるので安心感も高いのではないでしょうか。

松本クリニック

医院名

松本クリニック

診療内容

生活習慣病外来 内科 外科 整形外科 など

所在地

大阪府八尾市南本町4丁目1-11

アクセス

近鉄大阪線「近鉄八尾」駅より徒歩15分
JR大和路線「八尾」駅より徒歩17分

この記事の監修医師

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