噛む機能に配慮した、患者さんに合った治療法【和歌山県海南市 タブチ歯科クリニック】


歯を失ったとき、「入れ歯か、ブリッジか、それともインプラントか」と、治療法の選択に迷う人は多い。また費用や手術への不安から、十分に検討しないまま判断を先送りにしてしまうケースも少なくない。インプラント治療は、噛む力や見た目の自然さに優れた選択肢である一方、「手術が怖い」「大がかり」「高額」といったイメージが先行し、治療の実際が正しく伝わっていない面もある。では、歯科診療の現場でインプラント治療はどのように捉えられ、何が重視されているのだろうか。今回はインプラント治療において多様な症例経験を積んでいる和歌山県海南市の「タブチ歯科クリニック」にて、院長の田渕 雄基先生にインプラント治療の考え方と実際について話を伺った。
田渕 雄基(たぶち ゆうき)
タブチ歯科クリニック 院長
朝日大学歯学部卒業後、医療法人デンタルハート Y,sデンタルクリニック、国立学校法人島根大学医学部附属病院歯科口腔外科および救急救命センターなどで臨床研修を重ねる。さらに医療法人星真会アモウデンタルクリニックをはじめとする複数の医療機関に勤務し、インプラント治療を含む幅広い歯科診療に携わったのち、タブチ歯科クリニック院長に就任。
日本口腔外科学会、顎顔面インプラント学会、口腔インプラント学会、SJCD、FTA、FDPに所属。
費用に加え、手術への漠然とした不安がインプラント治療を迷わせる
インプラント治療を希望される患者さんは、どんな方が多いのでしょうか?
インプラントを希望される方は、口腔内への意識が比較的高い方が多い印象です。「できるだけよい治療を受けたい」「自分の歯に近い感覚で噛みたい」「日々の手入れの負担を減らしたい」と考えて来院されることが多いです。

最初から「インプラントをしたい」と決めて来られる方は多いのでしょうか?
実はそう多くありません。体感では1割程度です。歯を失ったことをきっかけに相談に来られ、そのなかで初めてインプラントという選択肢を考える方がほとんどです。
歯を失ったとき、患者さんはどのようなことで悩まれていますか?
「本当にそこまでの治療が必要なのか」「まだ我慢できるのではないか」「年齢的に今さら治療する意味があるのか」といった迷いを抱えている方が多いですね。費用面の不安に加え、手術に対する漠然とした怖さも大きいと思います。
歯を多く失った場合でも、インプラントは選択肢になり得ますか?
たとえ口腔内の全ての歯を失ってもインプラントを用いて治療を行う事は可能です。ただし、かなり高額な治療になりますが。
一方で、しっかり噛めるようになり、話しやすさや違和感の少なさなど、生活の質が大きく改善されることが多い治療なので、むしろ失った歯が多いほど違いを実感しやすいという面もあるかもしれません。

若い方や、1本だけ歯を失った場合でもインプラントを検討しますか?
もちろんです。1本だけの場合、若い方ほど慎重に考えます。インプラントは入れたら終わりではなく、噛み合う歯の形や力のかかり方まで考えないと、結果として長持ちしません。
若い方は、これから先何十年とその歯を使うことになるため、「どれだけ長く使い続けられるか」という視点が重要になります。
入れ歯やブリッジではなく、インプラントを選ぶ理由は何でしょうか?
インプラント治療の不安を減らすために、知っておきたいこと

インプラント手術は「痛そう」「怖い」というイメージを持つ方も多いと思います
確かに、顎の骨に人工歯根を入れると聞くと、大きな手術を想像される方が多いと思います。ただ、実際に使うインプラントは非常に小さく、現在主流となっているものは直径4mm前後、長さも1cmほどです。実物を見ると、想像よりずっと小さいと感じる人がほとんどですので、「思っていたよりも大がかりではない」と安心される患者さんが多いですね。
手術中や術後の痛みについてはいかがでしょうか?
処置中は麻酔をしっかり効かせるため、基本的に痛みはありません。術後についても、強い痛みを訴えられる方はほとんどいません。これは、事前にしっかりと治療計画を立て、できるだけ短時間で処置を終えることを重視しているからです。
また、麻酔が効いている状態で帰宅していただき、痛みが出る前に鎮痛薬を服用してもらうことで、術後の痛みのピークを抑える工夫もしています。
インプラント治療では、噛み合わせも重要と聞きました
インプラントは天然歯に近い噛み心地が得られるとのことですが、あえて「天然歯との違い」を挙げるならば、どんなことがありますか?
治療期間が長いという印象もありますが、実際はいかがでしょうか?
先生は、インプラントに限らず、矯正治療や審美治療も含め、さまざまな側面から診断し治療計画を立てていると伺っています。どのような点を意識されているのでしょうか?
お口の全体を診ているわけですね
そうです。一部分だけを治すのではなく、口腔内全体、さらには顔全体のバランスを踏まえたうえで治療計画を立てることで、結果的に長持ちし、再治療のリスクを減らすことにつながります。
患者さんご自身が気づいていない原因が隠れていることも多いため、その点をきちんと説明し、理解していただいたうえで治療を進めることも、診療の重要な一部だと考えています。

「噛めること」は人生の質を支えることにつながる

インプラントにデメリットとなる要素はあるのでしょうか?
インプラントのデメリットとして挙げられるのは、定期的なメンテナンスが必要になる点です。人工物なので、ネジの緩みや噛み合わせの変化が起きていないかを確認する必要があります。放置するとトラブルにつながる可能性があるため、定期的なチェックは欠かせません。
歯科医院では、どのようなメンテナンスを行うのですか?
噛み合わせの確認、ネジの緩みのチェック、歯ブラシでは届きにくい部分の清掃などを行います。人工歯と天然歯では硬さが異なるため、使い続けるうちに噛み合わせが変わることもあります。必要に応じて調整を行い、長く使える状態を保ちます。
インプラントはどのくらいの期間使えるものなのでしょうか?
明確に「何年持つ」と言い切れるものではありませんが、適切に管理すれば20年から30年持つ可能性は十分にあります。天然歯でも20年持たずに失われるケースがあることを考えると、インプラントは決して短命な治療ではありません。大切なのは、入れた後の管理と噛み合わせへの配慮です。
高齢になった場合、インプラントが負担になることはありますか?
インプラント治療が向かないという人はいますか?
喫煙習慣がある方や、重度の糖尿病、心疾患、骨粗しょう症の治療で注射薬を使用している方などは慎重な判断が必要です。全身状態を考慮したうえで、治療が可能かどうかを見極めることが重要になります。
また、インプラント治療を受けられた後も、なるべく禁煙をおすすめしています。

インプラント治療の費用について教えてください
当クリニックのインプラント治療は、1本あたり440,000円です。手術費用が286,000円、仮歯の費用が22,000円、上部構造の費用が132,000円となります(いずれも税込)。安定するまでの期間は約3ヶ月~6ヶ月、また3ヶ月に一度の定期的なメンテナンスを推奨しております。
最後に、インプラント治療を考えている方やMedical DOCの読者へ、メッセージをお願いします
歯は、痛みが出てから歯科医院に来られる方が多いのですが、その時点ではすでに症状がかなり進んでいることも少なくありません。少しでも違和感を覚えたら、早めに相談してほしいと思います。
また、「年齢的に今さら」と治療をためらう必要もありません。歯を失った状態を放置すると、食事の楽しみや生活の質に大きく影響します。実は私自身、現在歯列矯正中で、以前のようにごはんがおいしく食べられないと感じています。だからこそ、食事をおいしく楽しめることの大切さを、身をもって実感しています。
噛めること、食べられることは、人生の質を支える大切な要素です。その価値を取り戻す手段として、インプラント治療を前向きに考えていただければと思います。
編集部まとめ
インプラント治療は「高額」「怖い」というイメージから、十分に検討されないまま選択肢から外されてしまうことも少なくありません。今回の取材を通じて感じたのは、治療法そのものよりも、歯を失った背景や生活への影響をどう捉えるかが重要だという点でした。噛めること、食事を楽しめることは、日々の満足感に直結します。歯に違和感を覚えたとき、早めに専門家に相談することが、結果として将来の選択肢を広げることにつながるのではないでしょうか。




