歯は“人生の資産”。後悔しないための予防歯科治療──痛くなる前に、自分に合う医院を【石川県白山市 なかがわ歯科】

「歯医者は、歯が痛くなったら行けばいい」。安易にそう思っている人はいまだに少なくないようだ。しかし実際のところ、痛みを感じてしまってからでは、すでにむし歯や歯周病がかなり進行しているケースも多い。そして、最悪の場合は歯を残せないことすらあるだろう。「どんなに優れたインプラントでも、自分の歯に勝るものはない」と語るのは、石川県白山市で予防治療を推進している「なかがわ歯科」の中川仁史院長だ。削らず・悪くさせないための“早期発見・早期管理”が何より大切という。そのための、予防治療の重要性についてお話を伺った。
なぜ今、予防治療なのか?歯は治すのではなく“悪くしないこと”
多くの人は、何らかのトラブルを自覚しないと歯医者に行かない印象があります。受診が遅れがちな理由を先生はどうお考えですか?
やはり「痛くなったら行けばいい」と考えている方が多いことが一番だと思います。ところが実際には、痛くなってから来院されたときには、すでに思っていた以上に進行していることが少なくありません。 とくに歯周病は自覚症状が出にくく、患者さんが「おかしいな」と気づかれたときには、すでに歯を残せないレベルまで進んでしまっているケースもあります。本当は痛みが出る前から、歯科医師に定期的に診せていただくことが大切なんです。

最近は「予防治療」という言葉も一般的になりました。それでも通わない人は多いようですね。なぜだと思われますか?
「予防治療」という単語だけが一人歩きしていて、中身がちゃんと伝わっていないのだと思います。 「予防治療=むし歯予防の歯磨き粉」くらいのイメージで、市販のもので何とかなると考えている方も多いように感じます。また、どのくらいお金がかかるのかわからない、何をされるのかわからないという“見えにくさ”もハードルになっているのではないでしょうか。 本来は、「悪くなる前に定期的に状態をチェックし、生活習慣も含めて整えていくこと」が予防治療です。そのイメージを、歯科側からもっと発信していく必要があると感じています。
年代による意識の違いは感じていらっしゃいますか?
10歳未満のお子さんのむし歯は、減っていると感じます。一方で、中学生・高校生・大学生くらいの年代になると、部活や受験で生活リズムが乱れたり、夜食が増えたりして、むし歯が増える傾向があります。 また、高齢の方は歯茎が下がることで歯の根元が露出し、そこがむし歯になりやすくなります。ですので、「子どもは少なくなったけれど、若い世代と高齢者は決して油断できない」というのが実感です。 最近はホワイトニングや矯正など審美的なニーズをきっかけに来院される方も増えています。最初は「見た目のため」でも、通っていただく中で少しずつ予防への意識が高まっていく方も多いですね。
歯や口の健康維持という点で、予防の重要性をどのようにお考えになりますか?
治療にはインプラントや入れ歯など、優れた方法がたくさんあります。それでもやはり、自分の歯に勝るものはありません。どんなによい詰め物・被せ物であっても寿命がありますし、一度削れば、その歯は再治療のたびに少しずつ小さくなっていきます。最終的には、抜歯せざるを得ないことも多いです。 ですから「削らない」「進行させない」ことが最も重要です。歯周病も同じで、一度なってしまうと完全に元どおりにするのは難しく、「進行を止める」「現状を維持する」ことが治療の中心になります。 最近は、初期の小さなむし歯であればフッ素塗布によって進行を止める「早期発見・早期管理」という考え方が主流になってきています。大きくなる前に見つけて、悪くならないよう管理していくことが、予防治療の役割だと考えています。
海外、特に北欧諸国では予防意識が高いと聞きます。日本との違いはどこにあるのでしょうか?

歯1本の価値を金額にすると、どのくらいだとお考えですか?
感覚的には、1本1,000,000円~10,000,000円くらいの価値があると思っています。 日本のインプラントの相場は1本300,000円~500,000円ほどですが、それだけ払っても元の天然歯とまったく同じというわけではありませんし、メンテナンスも必要です。 「歯1本=1,000,000円」と考えると、28本で28,000,000円。 ご自身のお口の中には、それだけの“資産”があるということになります。その資産をできるだけ長く維持していくために、予防治療があると考えていただければうれしいですね。
“怒らない歯医者さん”の予防メニュー。診療の流れと痛みへの配慮

予防治療における、貴院の診療の流れを教えてください。初診時にはどのようなチェックを行いますか?
まずはレントゲン撮影と、お口の中の写真撮影を行います。そこに歯周病の検査やむし歯のチェックを組み合わせ、現在のお口の状態とリスクを把握します。 そのうえで、「全部しっかり治したいのか」「気になるところだけを治したいのか」といった患者さんのご希望を伺います。 部分的な治療をご希望の方には、その範囲に絞って治療を行い、すべてを整えたい方には治療計画を立てて順番に進めていく、という形です。 治療が一段落したあとは、むし歯や歯周病のリスクに応じて、メンテナンスの頻度を決めていきます。
「歯のお掃除」とは、具体的にどのような処置を行うのでしょうか?
いわゆる「歯のお掃除」は、歯周病の治療や予防処置にあたります。 歯の表面についたプラークや歯石は、単なる食べかすではなく、歯周病菌やむし歯菌といった細菌のかたまりです。これらを専用の器具で取り除くことで、お口の中の細菌数を減らします。 また、むし歯予防に重要なフッ素も、歯科医院専用の濃度の高いものがありますので、必要に応じて塗布していきます。 プラーク自体は毎日の歯磨きでも落とせますが、プラークが固まってできる歯石は、歯ブラシでは取れません。市販の歯石取り器具もありますが、ご自身で使うと歯の表面を傷つけてしまう危険性が高いので、おすすめしていません。
歯石取りは「痛い」というイメージもあります。痛みに対して何か対策はされていますか?
正直に言うと、歯周病がかなり進行していたり、歯石が大量についていたりする場合は、痛みを感じることもあります。 その場合は、必要に応じて局所麻酔を用い、歯石を取る機械のパワーを弱めて何回かに分けて進めるなど、なるべく負担を減らす工夫をしています。 知覚過敏が強い方には、特に慎重に進めますし、「痛かったらすぐ言ってくださいね」と声をかけながら、無理のないペースで行うようにしています。
設備面での特徴や、予防に力を入れている点を教えてください
歯科用CTやレントゲンなどの画像診断装置に加え、むし歯の深さや進行度を測るレーザー機器(ダイアグノデントペン)などを導入しています。 どちらかというと、「治療のための設備」だけでなく、お口の状態をしっかり“見える化”するための設備 に力を入れています。 また、歯周ポケットの検査なども組み合わせて、「今は症状がなくても進行しているリスク」を見逃さないようにしています。
院内の雰囲気づくりについて、心がけていることはありますか?
コンセプトとしては、「優しい医院」にしたいと考えています。 むし歯を放置してしまったことを怒られるのではないか、甘いものを食べたら注意されるのではないか、といった不安から、歯医者に行きにくくなってしまう方は少なくありません。 でも、僕自身お菓子も甘いものも好きですし、「食べるな」と言うことはできません(笑)。 大事なのは「どういうルールで食べるか」「どう予防するか」を一緒に考えることです。 スポーツをされている方であれば、脱水を防ぐために清涼飲料水を飲む必要がありますし、持病でお薬を飲んでいる方は唾液が出にくくなることもあります。そうした事情も含めて、患者さんの生活に寄り添いながら、現実的な予防策を一緒に考えていくことを大事にしています。 そのためにも、雑談を含めたコミュニケーションをとても大切にしています。「治療を受ける場所」というより、「話しやすい場所」でありたいですね。

一緒に守る“口の中の資産”。これからの予防治療とは?

予防治療の観点で、お子さんは何歳くらいから始めたらいいです?また、子どもの診療で大切にしていることは何でしょうか?
基本的には、「歯が生えたら」です。0歳何カ月であっても、歯が生え始めた時点でケアは始まっています。 発達段階によって、できること・できないことがありますので、「今は2歳なので、ここまではやりましょう」「これはまだ難しいので次の段階で」など、親御さんにもご説明しながら進めています。 お子さんに対しても大切なのは「痛みをできるだけ与えないこと」です。押さえつけられて治療した経験から、歯科恐怖症になられた大人の方も多くいらっしゃいます。 ですから、「むし歯になったから治療する」だけでなく、むし歯になりにくい環境を一緒につくること、できたことを少しずつ増やしていく「スモールステップ」の考え方を大切にしています。
定期健診は、どのくらいの頻度で通うのがよいでしょうか?
基本の目安としては 4カ月に1回をおすすめしています。 ただし、むし歯や歯周病のリスクの高さは人によって違います。 リスクが高い方は、1カ月~2カ月に1回。リスクが低い方は半年に1回や1年に1回といった形で、患者さんと相談しながら調整します。 半年に1回で通っていただいている方でも、生活習慣や口腔状態の変化によってリスクが上がってきた場合には、間隔を短くすることもありますし、その逆もあります。 年齢やライフステージ――たとえば引っ越し、転勤、出産、家族構成の変化などによっても生活リズムは変わります。その変化をキャッチする意味でも、定期的に通っていただくことがとても大事だと思います。
予防治療の原点ともいえるセルフケアについて、ポイントを教えてください
むし歯予防のポイントは、まず「フッ素を正しく使うこと」です。市販の歯磨き粉にもフッ素は入っていますが、年齢に応じたフッ素濃度のものを選んでいただくとよいと思います。大人の方であれば、歯磨き粉は2cmくらいを目安にして、1日2回以上の歯磨きをおすすめしています。 うがいは、少量の水で1回だけにしましょう。何度も口をゆすいでしまうと、せっかくのフッ素が流れてしまいます。これは複数の学会からも推奨されている方法です。 歯周病予防については、歯ブラシだけだとプラークの除去率は6割程度といわれています。そこにデンタルフロスや歯間ブラシを加えることで、9割近くまで上げることができます。 ただし、自分に合っていないサイズや使い方をすると、かえって歯茎を傷めてしまうこともあります。フロスを「通しているだけ」で汚れが取れていないケースも多いので、まずは一度歯科医院で「自分に合った道具」「正しい使い方」を教わることをおすすめします。
貴院での予防治療にかかる費用の目安を教えてください
保険診療で行う一般的なメンテナンスであれば、1回あたり3,000~4,000円(税込)程度を目安に考えていただければよいかと思います。加えて、年に1回程度のレントゲン撮影で5,000円弱(税込) かかるイメージです。 むし歯が見つかった場合でも、初期の小さなものであれば、すぐに削るのではなく「経過観察」を行い、フッ素などで進行を抑えながら管理していくこともあります。

予防治療において、先生が一番大切にされていることは何でしょうか?
クリーニング自体ももちろん大事ですが、いちばん重視しているのは 患者さんとのコミュニケーション です。 正しい知識をお伝えし、生活習慣のなかにある原因を一緒に探し、少しずつ改善していくこと。それこそが「真の予防」だと思っています。 私自身もスタッフも、まだまだ勉強していく必要がありますが、患者さんと一緒に、お口の中の“資産”を守っていけたらうれしいですね。
最後に、Medical DOCのサイトを訪れる読者の方にメッセージをお願いします
歯医者は「痛くなったら行くところ」というイメージが強いかもしれません。しかし、痛みが出るということは、すでに病気がかなり進行しているサインです。予防治療は、その“痛み”をできるだけ遠ざけ、自分の歯で一生過ごすための一番の近道です。 ただし、予防治療は“どの歯科医院で受けるか”も、とても大切です。皆さんが自分に合った歯医者さんを見つけ、気軽に相談できる環境を整えてほしいと願っています。 歯科医師にもそれぞれ個性がありますし、医院の雰囲気も異なります。安心して話せる、遠慮なく相談できる、生活習慣の変化に寄り添いながら支えてくれる――そんな“あなたの味方”になってくれる先生をぜひ見つけてください。 自分の歯で噛めることは、人生の質を大きく左右します。どうか、未来の自分のために、歯を守る選択を続けていきましょう。
編集部まとめ
今回の取材を通して強く感じたのは、予防治療とは「どこに通うか」も含めて、患者さん自身が主体的に選び取る医療であるという点です。 中川先生は、診療の中で患者さんと対話しながら、その人に合った予防方法を一緒に考えていく姿勢を大切にされています。特定の歯科医院にこだわる必要はなく、“安心して相談できる場所” を見つけることが何より大切だという言葉が印象的でした。本記事をきっかけに、予防治療をより身近に感じ、自身に合う信頼できる医院を見つけてください。

医院名
なかがわ歯科
診療内容
予防治療 小児歯科 一般歯科 など
所在地
石川県白山市相木町516-1
アクセス
IRいしかわ鉄道線「松任」駅より徒歩14分




